二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編 11話「怠惰の城下町」 ( No.160 )
日時: 2014/11/11 00:43
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 八とコシガヘヴィのデュエル。
 怠惰の名を冠し、だるいだるいと言うだけあってなのかなんなのか、コシガヘヴィは先攻にもかかわらず出遅れていた。場には《ダーク・ルピア》のみ、シールドは四枚。
「あー、だりぃ……《ウラギランド》を召喚……」
「自分のターンっす! 《俊足の政》召喚! 山札から《狩猟のガイア・エッグ》を手に入れて、《ヤッタレ・ピッピー》と《斬込の哲》でシールドブレイクっす!」
 あっという間にコシガヘヴィのシールドは残り二枚に。やはりスピードではステロイドカラーが軸となっている八の方が上だ。
 しかしコシガヘヴィも、いつまでも腰を下ろしてはいない。
「だりぃぜ……《怠惰の悪魔龍 コシガヘヴィ》を召喚……」


怠惰の悪魔龍 コシガヘヴィ 闇文明 (5)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、カードを1枚引く。
スレイヤー


「分身作って場に出すとか、マジで面倒くせぇ……こんなこというのもだりぃし、説明すんのかったるい……とりあえず俺を破壊しとくぜ」
 《コシガヘヴィ》の能力で破壊するのは、自分自身。それによりコシガヘヴィの手札が増え、
「っ!? なんすか!?」
 八のクリーチャーが一体、爆散した。散ったのは《ヤッタレ・ピッピー》だ。
「《ダーク・ルピア》の能力……説明だるいから、適当に見といてくれや……」


ダーク・ルピア 闇文明 (3)
クリーチャー:ファイアー・バード 1000
自分のドラゴンが破壊された時、相手のクリーチャーを1体破壊してもよい。


「あー、攻めるのかったりー……でもやんねぇとなぁ。《ウラギランド》で《斬込の哲》、攻撃な……」
 《ウラギランド》が牙を剥き、《斬込の哲》を食い千切る。
 しかしその代償として、《ウラギランド》は罰を受ける。味方を裏切らなくてはならないという罰を。もしも裏切れないのなら、罰を受けられないというのなら、己が死を迎えるだけだ。
「《ウラギランド》を破壊……《ダーク・ルピア》で、もう一体破壊だ……あー、言わせんなよ、かったりぃ……」
 バトルで《斬込の哲》が破壊され、続けて《俊足の政》も破壊される。
「ぜ、全滅っすか……」
 やる気のないことばかり言っているコシガヘヴィだが、気付けば1ターンにして、三体並んでいた八のクリーチャーは全滅してしまった。コシガヘヴィも二体のクリーチャーを失ってはいるが、闇文明なので自壊はさほど気になるデメリットではないだろう。
「いや、でもまだっすよ! 《ガイア・エッグ》と《流星のコブシ・エース》を召喚っす!」
「もう俺のターンかよ……ちっとはゆっくりさせろよな、かったりぃ……」
 自分のターンが来たというのにやる気のないコシガヘヴィ。
「あー……じゃ、《ボーンおどり・チャージャー》……んで、《ブラッドレイン》と《ブラッディ・メアリー》を召喚……はぁ、だるかったぜ。ターン終了……」
 しかしやることはきっちりとやってからターンを終える辺り、手を抜いているというわけではないようだ。
「自分のターンっす! まずは《ガイア・エッグ》の能力で山札を捲るっすよ!」
 それがハンターならそのまま場に出せるが、ここで八が捲ったのは、呪文の《ドンドン吸い込むナウ》。
「う、失敗っす……でも、これで終わりじゃないっすよ! 《若頭の忠剣ハチ公》を召喚! 能力で山札から二体目の《ハチ公》を手に入れてそのまま召喚っす!」
 さらにその能力で《ハチ公》を手に入れ、クリーチャーを展開していく八。
「これで場にハンターは三体っすけど、まだ《コブシ・エース》じゃ《ブラッディ・メアリー》は超えられないっす……ここはターン終了っすよ」
「一気に二体も増えやがった、面倒くせぇ……」
 酷く憂鬱そうにごちるコシガヘヴィだが、しかし彼にはその軍勢を破壊する手段があるのだ。言うほど面倒なことでもなく。
「《ディメンジョン・チョーカー》を召喚……墓地の《ウラギランド》と《コシガヘヴィ》二体を回収……よっこらせ、っと。はーぁ、墓地のクリーチャー戻すのも一苦労だぜ……んで、俺を召喚だ」
 《コシガヘヴィ》が召喚されるが、すぐさま破壊される。そして、
「一枚引いて……《コブシ・エース》を破壊だ……」
「うおっす!」
 またも八のクリーチャーが潰される。今度は一体だが、手札にはもう一体の《コシガヘヴィ》がいる。《ディメンジョン・チョーカー》の存在も考えれば、弾切れをおこすことはなさそうだ。
「でも、だったらそれ以上のスピードで展開するだけっすよ! 《ガイア・エッグ》の効果発動っす!」
 威勢よく山札を捲る八だが、しかしその威勢の良さとは反対に、運は悪かった。次に捲れたのも、ハンターではない《アクア・サーファー》だ。
「あー、またっすか……仕方ないっす。《ハチ公》を召喚して《ハチ公》を呼び、またまた《ハチ公》を召喚っす! 《ハチ公》でシールドブレイク!」
「だりぃけど、守るわ……《ブラッディ・メアリー》でブロック」
「もう一体の《ハチ公》で攻撃っす!」
 次々と《ハチ公》を展開し、攻めていく八。この調子なら物量で攻め切れるのでは、と思ったが、
「S・トリガー、発動するのも面倒くせぇ……《魔狼月下城の咆哮》だ。《ハチ公》のパワーを−3000……かったりぃが、マナ武装5も発動……もう一体の《ハチ公》も破壊だぜ……」
 運悪くS・トリガーを踏んでしまい、このターン展開した《ハチ公》がすべて破壊されてしまう。
「っ……!」
「《ウラギランド》《コシガヘヴィ》を召喚……俺を破壊だ、だりぃし……」
 さらに再び《コシガヘヴィ》を出されてしまう。それにより、
「《ダーク・ルピア》の効果……《ハチ公》を破壊だ……」
「くぅー……! どんどんこっちのクリーチャーが破壊されるっす! 本当に厄介っすよ、《コシガヘヴィ》——」
 思わずそう漏らしたところで八は、ふと気づく。
(あれ? でもよく考えたら、《コシガヘヴィ》って相手を破壊する能力ないっすよね? だったら、破壊してるのは——)
 と、コシガヘヴィの周りでバサバサと羽ばたいている、黒い鳥を見つめる。
「……そうだったっす。本当に厄介なのは《コシガヘヴィ》なんかじゃなかったっす」
「なぁ……早くターン進めてくんねーか? さっさとこの対戦終わらせてぇ……あーでも、俺のターンが早く来るのは嫌だな……マジかったりぃぜ……」
 そんな反応困るような、相反することを言うコシガヘヴィ。しかし八は対照的に、いつでも一直線だ。
「言われなくても、自分のターンっすよ! まずは《ガイア・エッグ》の能力発動っす!」
 二連続で能力が不発に終わっている《ガイア・エッグ》だが、三度目の正直か、このターンはきっちりクリーチャーを呼び出した。
「《アクア・ジェット》をバトルゾーンに! 効果で一枚ドローっすよ! そして呪文《ナチュラル・トラップ》っす!」
 速攻ほど速くないものの、ビートダウン性能の高い八のデッキで、除去呪文を手打ちすることは珍しい。それほどに除去したいクリーチャーが、今のコシガヘヴィの場にはいた。それは、
「——《ダーク・ルピア》をマナ送りっす!」
「あぁ……ばれたか、面倒くせぇことになった……」
 八が除去するのは、《ダーク・ルピア》。
 この《ダーク・ルピア》こそがコシガヘヴィのデッキの核だったのだ。
 《ダーク・ルピア》はドラゴンの破壊に反応して相手を破壊するクリーチャーであり、自壊するドラゴンと相性が良い。コシガヘヴィはモデルとなった《龍神ヘヴィ》と比べると、相手クリーチャーを破壊できない点で劣るが、それを《ダーク・ルピア》で補っていたに過ぎない。
 つまり、《ダーク・ルピア》が消えた時点で、《コシガヘヴィ》の除去能力は大きく衰退したのだ。
 まあ、八の注意力がもっとあれば、すぐに気付けたことだが。
「あー……どうっすか、考えんのもだりぃけど、とりあえず俺を召喚して、破壊……」
 だが、《ダーク・ルピア》はいないので一枚引くだけだ。
「とりあえず、《ブラッディ・メアリー》を三体召喚して、ターン終了……」
「自分のターンっす! そろそろ決めにかかるっすよ!」
 そんな勢いと共に、八は彼のデッキにおけるエース級のクリーチャーを呼び出す。
「《熱血ボス!バルス・カイザー》召喚っす! そんで《アクア・ジェット》で攻撃! 《バルス・カイザー》の能力発動っす!」
 山札を捲り、それが攻撃クリーチャーよりコストの低いハンターなら、そのまま場に出せるのだ。
 《ガイア・エッグ》で不運を見せつけた八だが、この時捲れたカードは、
「……《スーパー・ゴーオン・ピッピー》っす! これで《バルス・カイザー》はスピードアタッカーすよ! 攻撃っす!」
「《ブラッディ・メアリー》でブロック……」
 しかし山札が捲られ、それがハンターなら場に出て来る。捲られたのは、《ニドギリ・ドラゴン》。
「やったっす! 《ニドギリ・ドラゴン》も《スーパー・ゴーオン・ピッピー》の能力でスピードアタッカーっす! 攻撃っす!」
「もういっちょ、ブロック……」
 この攻撃で捲れたのは、コスト5の《俊足の政》なので踏み倒せなかったが、しかし、
「《ニドギリ・ドラゴン》は各ターン初めの攻撃時にアンタップして、もう一回殴れるっす! 攻撃っすよ!」
「ブロック……」
 これで、コシガヘヴィのブロッカーはいなくなった。
 そして、この攻撃で捲れたカードは、
「……《流星のエグゼドライブ》! スピードアタッカーっすよ!」
 コシガヘヴィにはシールドがなく、ブロッカーもいない。
 八の場には攻撃可能なクリーチャーが一体残っている。
 なので、

「《エグゼドライブ》で、ダイレクトアタックっす!」