二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編 11話「怠惰の城下町」 ( No.162 )
日時: 2014/11/12 20:00
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 《忍者屋敷 カラクリガエシ》が龍解し、一体の悪魔龍となる。その姿は、凶暴な悪魔龍とは思えない愛嬌のある面持ちだが、各所にツギハギのある身体をしているところから、やはりどことなく不気味さを感じさせる。
「これが、3D龍解……」
『左様だ。だが、これで終わりではない。拙者のターン、拙者の場に闇のクリーチャーが二体以上いるため《魂喰いの魔狼月下城》の龍解条件も成立だ! 龍解!』
 相手のターンに、自分のターン初めにも龍解する《ニンジャリバン》。今度は《魂喰いの魔狼月下城》が吠える。獣の如き、雄叫びを上げる。
『出でよ! 《魔狼の悪魔龍 ミナゴロッセオ》!』


魔狼の悪魔龍 ミナゴロッセオ 闇文明 (6)
ドラグハート・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 5000
バトルゾーンにある自分のクリーチャーはすべて「スレイヤー」を得る。
相手のターンのはじめに、相手はバトルゾーンにある自身の、攻撃できるクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーは可能であれば攻撃する。


『さらに《冥府の覇者ガジラビュート》を召喚! 貴様のシールドを一枚、墓地送りなり!』
「っ!」
 直接シールドを墓地に送り込まれてしまう空護。
『さらにさらに《学校男》を召喚! 能力で《ガジラビュート》と《ウツセミヘンゲ》を破壊! 貴様のクリーチャーも破壊せよ!』
「別にいいけど、わざわざ3D龍解させた《ウツセミヘンゲ》を破壊……?」
 比較的難度の低い条件だが、《ウツセミヘンゲ》まで龍解しておきながら、なぜここで破壊するのか。残りデッキが僅かな《ニンジャリバン》が、ここでアタッカーを自ら潰す理由はないように思える。
 ——それが、本当にアタッカーが潰れるのであれば、だが。
『その考え、浅はかなり! 《ウツセミヘンゲ》は破壊される代わりに、墓地のカード四枚を山札に戻すことで、破壊を免れるのだ』


絡繰の悪魔龍 ウツセミヘンゲ 闇文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 7000
W・ブレイカー
このクリーチャーが破壊される時、かわりにカードを4枚、自分の墓地から山札の一番下に好きな順序で置いてもよい。


 《ニンジャリバン》の墓地のカード四枚が山札に戻ると、《学校男》に飲まれかけていた《ウツセミヘンゲ》は、いつの間にかバトルゾーンにいて、平然としていた。
『これぞ忍法、空蝉の術! さらに呪文《デッドリー・ラブ》! 拙者の《ウツセミヘンゲ》と貴様の《スペース・クロウラー》を破壊なり!』
「ブロッカーが……!」
 空護のシールドは、《ガジラビュート》で一枚消されて四枚。そして《ニンジャリバン》の場には、自身を含む四体のクリーチャー。一体はWブレイカーで、合計五打点。
『これで終わりだ! 拙者でシールドをブレイク!』
 このターンで、勝負が決まってしまうかもしれなかった。
『《ミナゴロッセオ》でシールドをブレイク!』
 獣の遠吠えが響き渡り、刹那、空護のシールドが食い破られる。
「っぅ……!」
 これで残りシールドは二枚。《ウツセミヘンゲ》と《ドクロスカル》が、その残りのシールドを破壊せんと迫ってくる。
 しかし、
「S・トリガー発動! 《インフェルノ・サイン》!」
 《ミナゴロッセオ》に破られたシールドが、光の束となり収束する。現れたのは、《インフェルノ・サイン》。
 これなら、墓地のブロッカーを復活させて一時的に凌ぐことができるが、
「墓地から《魔龍バベルギヌス》をバトルゾーンへ」
 空護が復活させるのは、ブロッカーではなく《バベルギヌス》。しかし、かと言ってこのターンの攻撃を凌がないわけではなかった。
「《ドクロスカル》を破壊して、貴方の墓地から《爆弾魔 タイガマイト》をバトルゾーンへ」
『ふん、運よく1ターン生き長らえたようだが、無意味だ。《タイガマイト》のマナ武装3により、貴様の手札を捨ててもらうぞ』
「当然……ま、捨てたカードが墓地に行くとは限らないけどね」
『……? なにを言っている』
「百聞は一見にしかず……見れば分かるよ」
 そう言って空護は、手札を一枚墓地へ落とす——代わりに、場へと投げ込んだ。

「シノビ流狩猟忍法、毒ガマの影討ち! 現れよ、《ゲロ NICE・ハンゾウ!》」

 手札から捨てられるはずのクリーチャーは、《ゲロ NICE・ハンゾウ》。相手のカードの効果で捨てられるとき、代わりに場に出るマッドネスのクリーチャーだ。
「その登場時能力で、《ウツセミヘンゲ》のパワーを−6000」
『だからなんだというのだ。拙者の《ウツセミヘンゲ》のパワーは7000、それでは足りぬ。このターンにとどめは刺せぬが、貴様のシールドはすべて頂くぞ! 《ウツセミヘンゲ》でWブレイク——』
 と、《ウツセミヘンゲ》が飛び出した、刹那。

 《ウツセミヘンゲ》の首が吹き飛んだ。

『なんだ……!?』
「ニンジャ・ストライク——《威牙の幻ハンゾウ》を召喚」
 見れば、空護の場には二体の蝦蟇蛙がいた。一体は《ゲロ NICE・ハンゾウ》。そしてもう一体は、《威牙の幻ハンゾウ》。片やマッドネス、片やニンジャ・ストライクで、二体の《ハンゾウ》が場に出揃った。
「《ハンゾウ》の能力で《ウツセミヘンゲ》のパワーをさらに−6000。パワーがゼロ以下になったので破壊ですねー」
『……ふっ、笑わせてくれるな。だからどうしたというのだ。忘れたのか? 《ウツセミヘンゲ》は破壊されても、墓地のカードを山札に戻すことで、破壊を免れる!』
 墓地から山札にカードを戻し、《ウツセミヘンゲ》の空蝉の術を発動させる《ニンジャリバン》。
 しかし、
「そっちこそ忘れたんですかー? その《ウツセミヘンゲ》、まだパワーがゼロですよー?」
『なに……? ……!』
 そこで、《ニンジャリバン》は気付いた。
 確かに《ウツセミヘンゲ》は破壊を免れる効果によって、除去耐性が高い。しかしなにも、タダで破壊を免れているわけではなく、その能力を使うためには墓地のカードを山札に戻さなければならない。
 パワーがゼロになった《ウツセミヘンゲ》は、山札にカードを戻すことで生き長らえるが、それでもパワーはこのターン中ゼロのまま。《ニンジャリバン》の墓地のカードがすべて山札へと行ってなくなっても、《ウツセミヘンゲ》のパワー低下はそのままであり、最終的に破壊される。
 二体の《ハンゾウ》によって、空蝉の術は破られ、《ウツセミヘンゲ》はその姿を闇の中へと埋めることとなったのだ。
『ま、まさか、拙者の《ウツセミヘンゲ》が……!』
 消え去る《ウツセミヘンゲ》の姿を見て、驚愕の表情を見せる《ニンジャリバン》。
「僕のターン。《終焉の凶兵ブラック・ガンヴィート》を召喚」
『くぅ、だが! 貴様のシールドは所詮残り二枚だ! 拙者の場にはまだ四体のクリーチャーが残っている! どの道、このターンで終わりだ!』
 切り札を破壊されて焦っているのか、声を荒げる《ニンジャリバン》。まだ彼の優位は消えていないはずだが、余裕は消失してしまっている。
『《深淵の悪魔龍 バセオアビス》を召喚! 自身を破壊し、貴様のクリーチャーのパワーはすべて−3000だ! そして《学校男》でWブレイク!』
「ニンジャ・ストライク。《光牙王機ゼロカゲ》を召喚してブロックですー」
 一撃目は軽くブロッカーで防がれてしまう。スレイヤーで相打ちだが、攻撃が通せなかったことに変わりはない。
『ぐぬぬ、ならば拙者でシールドブレイク! 《タイガマイト》でブレイクだ! これでシールドはなくなったな、《ミナゴロッセオ》でとどめ——』
「そう慌てないでくださいよー。S・トリガー発動ですからー」
 空護の最後のシールドが、光の束となり収束していく。そして現れたのは、
「《霊騎秘宝ヒャックメー》を召喚。能力で僕の手札をすべて墓地へ」
 手札にシノビはないが、それでも自分の手札をすべて捨てるというディスアドバンテージを負ってしまう空護。これでは最後のダイレクトアタックを防げない——かに見えたが、
「《斬隠蒼頭龍バイケン》をバトルゾーンへ。そして《ミナゴロッセオ》をバウンスですー」
『な……っ!』
 《ゲロ NICE・ハンゾウ》などの新型とは違う、旧型マッドネス。相手のカード効果ではなく、相手ターンに手札から墓地に行くことで、場に出て来るクリーチャーだ。
 《ミナゴロッセオ》を消され、いよいよ《ニンジャリバン》のとどめの一撃が届かなくなってしまった。
「じゃ、僕のターンですねー。《スペース・クロウラー》を召喚、呪文《スパイラル・ゲート》で《タイガマイト》をバウンス」
 とりあえず最低限の保険は賭け、今度はこちらが攻めに出る。
「《終焉の凶兵ブラック・ガンヴィート》で攻撃、そして能力発動!」
 次の瞬間《ブラック・ガンヴィート》の放つ瘴気によって《ニンジャリバン》の手札が墓地へと落ちて行った。


終焉の凶兵ブラック・ガンヴィート 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド 7000+
B・ソウル
このクリーチャーが攻撃する時、各プレイヤーは自身の手札をすべて捨てる。
ノー・チョイス
NC—このクリーチャーのパワーは+5000される。
T・ブレイカー


 相手の手札をすべて墓地に叩き落とす能力は強いが、自分の手札も失う点は痛い。とはいえ空護の手札は、前のターンに《ヒャックメー》を召喚していたため既にゼロ。損失はない。
 むしろ、手札を自ら捨てることで《ブラック・ガンヴィート》はその力を解放するのだ。
「僕の手札はないので、《ブラック・ガンヴィート》はパワー12000のTブレイカーですよー。シールドをTブレイク!」
『なんだと……ぐぅ!』
 一瞬にして、《ニンジャリバン》のシールドが三枚、砕け散った。
『ぬぅ、S・トリガーだ! 《デーモン・ハンド》で《ヒャックメー》を破壊!』
「それなら《バイケン》でブレイク!」
 悪魔の手によって《ヒャックメー》が墓地に送り込まれるが、気にせず攻撃を続ける空護。《バイケン》が残りのシールドを薙ぎ払ったところで、《ニンジャリバン》は完全に打つ手なしだった。残るシールドには、S・トリガーはなし。
『ここまでか……殿、不甲斐ない拙者をどうか、お許しください——』
 とどめの一撃が放たれる直前、《ニンジャリバン》は希うように目を閉じ、そしてそっと口走る。 

 ——満月に散りゆく我の怠惰なり

 それが、彼の残した最後の言葉。彼の懺悔の一句だった。

「《ゲロ NICE・ハンゾウ》で、ダイレクトアタック——」