二次創作小説(紙ほか)

43話「ラヴァー再戦」 ( No.165 )
日時: 2015/05/19 02:13
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

「《ヴァルハラナイツ》の能力で、《GENJI》をフリーズ……」
「《GENJI》が動けなくなっちゃった……」
 ラヴァーのデッキは非常にブロッカーが多い。なので攻撃しながら無条件でブロッカーを破壊できる《GENJI》は大事にしたかったが、これでは返しのターンに殴り返されてしまう。
「さらに、《アリエース》で、シールドをブレイク……」
「シールドブレイク……?」
 少し首を傾げる暁。
 ラヴァーは今までの対戦で、最後に勝負を決める時以外はほとんどシールドには攻撃しなかった。今の状況を見ても、暁の残り手札が少ないことも考慮すれば、下手にシールドは割りたくないはず。
「……S・トリガーはないよ」
「なら、ターン終了……その時」
 《ハレルヤ・ゾディア》の能力でラヴァーのクリーチャーがアンタップする——前に、
「《ジャンヌ・ミゼル》を装備した、《アリエース》がタップ状態……《ジャンヌ・ミゼル》の、龍解条件、達成……」
「あ……」
 つまりはそういうことだった。
 単純な話だ。ラヴァーは《ジャンヌ・ミゼル》を龍解させるために攻撃しただけに過ぎない。
 ただその攻撃で暁に手札を与えるよりも、龍解によって現れるクリーチャーの方が重要であるという考えからの攻撃だろうが。
「《ジャンヌ・ミゼル》、龍解……《聖槍の精霊龍 ダルク・アン・シエル》……」


聖槍の精霊龍 ダルク・アン・シエル 光文明 (5)
ドラグハート・クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 5500
ブロッカー
このクリーチャーが攻撃またはブロックした時、またはバトルゾーンを離れた時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップしてもよい。


 天に打ち上げられた《ジャンヌ・ミゼル》に一筋の光が迸り、その中から鈍く輝く、銀色の龍が現れた。
 さらに《ハレルヤ・ゾディア》の効果でラヴァーのクリーチャーがすべてアンタップされ、本当にラヴァーのターンが終了する。
「《GENJI》は動けないけど……でも、これで10マナ溜まったよ……!」
 手札を一枚マナゾーンに落とし、足元を見遣る。
 そこには、火文明のカードが合計十枚。10マナが蓄えられている。
 つまり、
「もう一度行くよ! 暁の先に歴史を残せ——《勝利天帝 Gメビウス》召喚!」
 《ガイムソウ》の力を借りずとも、手札から普通に《Gメビウス》が出せるのだ。
「手札に取っておいた甲斐があったよ。《Gメビウス》で攻撃!」
 その時、相手のパワー6000以下のクリーチャーを一体、破壊することができる。できればブロッカーを破壊して、ガンガン攻めたいが、
「《ヴァルハラナイツ》は無理だし、《ダルク・アン・シエル》も《ハレルヤ・ゾディア》がいるからパワー6500……ギリギリ無理か」
 火力範囲がほんの少し足りず、《ダルク・アン・シエル》を焼くことはできない。ならば、そのパワーを支える権化を破壊するまでだ。
「《Gメビウス》の効果で《ハレルヤ・ゾディア》を破壊! Tブレイク!」
 火球を放ち《ハレルヤ・ゾディア》を燃やしながらアンタップ。追撃態勢を整えつつ《Gメビウス》はラヴァーのシールドへと特攻していく。
 だがその間に、割って入る影があった。
「……《ダルク・アン・シエル》で、ブロック……」
「でもまだ二撃目があるよ! もう一度Tブレイク——」
 《Gメビウス》の攻撃を、《ダルク・アン・シエル》が防ぐ。当然《ダルク・アン・シエル》は破壊され、《Gメビウス》は二度目の攻撃を繰り出そうとするが、
「無理……《ダルク・アン・シエル》がブロックした時、相手クリーチャーを一体、タップする……」
「え……っ?」
「……《Gメビウス》、タップ……」
 起き上がったが、すぐにまた寝かされる《Gメビウス》。
 《Gメビウス》の効果は、攻撃してすぐに行われる。攻撃した直後に火力を放ち、アンタップする。なのでブロックした時には既にアンタップ状態となっており、その時にブロックされたため《ダルク・アン・シエル》の効果でタップされてしまった。
「また、《Gメビウス》が止められた……!」
 しかも今度は一度も攻撃を通せないまま、実質《ダルク・アン・シエル》一体に止められてしまった。
 ラヴァー相手に攻撃が止められたら、その後、そのクリーチャーはもう攻撃できないくらいの覚悟でいた方がいい。
 特に、《ヴァルハラナイツ》がいる時は。
「私のターン……呪文《ジャスティス・プラン》」
 山札の上から三枚が捲られる。捲られたのは《聖龍の翼 コッコルア》《導きの精霊龍 サリヴァン》《聖歌の聖堂ゾディアック》。《ゾディアック》以外の二枚がラヴァーの手札に入る。
「……さらに、《サリヴァン》を召喚……互いに二枚引き、手札から《コッコルア》、《フィルミエ》を、バトルゾーンへ……そして《ヴァルハラナイツ》の能力、発動……《Gメビウス》と《GENJI》を、フリーズ……」
 《ヴァルハラナイツ》の力で、暁のクリーチャーの動きが次々と止められていく。《Gメビウス》も、次に動ける時がいつになるのか、分かったものではない。
「まだ……《ヴァルハラナイツ》で、《GENJI》に攻撃……相打ち、だけど《フィルミエ》のセイバー、発動……《ヴァルハラナイツ》の代わりに破壊……」
『一方的に討ち取られたか……無念……!』
 《GENJI》も破壊されてしまい、暁の場に残ったのはフリーズ状態の《Gメビウス》のみ。
「……いや、まだ。まだデュエルは終わってないよ! 《熱血龍 バクアドルガン》《爆竜 バトラッシュ・ナックル》召喚! 《バトラッシュ・ナックル》の能力で《コッコルア》とバトル!」
 鋭い鍵爪を振るい、《バトラッシュ・ナックル》が《コッコルア》を破壊した。
「そして私の火のクリーチャーの勝利によって、手札からこのクリーチャーをバトルゾーンに!」
 迸る熱血の力、戦闘の空気を感じ取り、仲間の勝利に反応して現れる、戦いの権化たる龍が推参する。

「暁の先に、勝利を刻め——《爆竜勝利 バトライオウ》!」

 両腕の刃を打ち鳴らし、雄叫びを上げバトルゾーンに降り立つ《バトライオウ》。その眼は、戦いの相手をまっすぐに見据えている。
「さらに《バクアドルガン》で《ヴァルハラナイツ》を攻撃!」
 《バクアドルガン》のパワーは4000、《ヴァルハラナイツ》のパワーは7000。普通なら《バクアドルガン》がバトルに負けて破壊されるが、
「さあ、頼んだよ! 《バトライオウ》!」
『おう! 俺に任せな!』
 《バクアドルガン》が走るよりも速く、《バトライオウ》が地を駆ける。そして《バクアドルガン》の代わりに、《ヴァルハラナイツ》とのバトルを始めた。
「《バトライオウ》は味方の火のクリーチャーバトルを、代わりに引き受けることができる! 《ヴァルハラナイツ》を破壊!」
『うおぉぉぉ! うらぁっ!』
 《ヴァルハラナイツ》が放つ円月輪状の武器を弾き飛ばし、《バトライオウ》は《ヴァルハラナイツ》へと一閃——その身を切り裂く。
 これで暁は、毎ターンクリーチャーの動きを止められるようなことはなくなった。次のターンには《Gメビウス》も動けるようになるかもしれない。
 そう思ったが、しかしラヴァーは甘くない。そんなことは最初から分かっていた。

「私の世界の英雄、龍の力をその身に纏い、聖歌の祈りで武装せよ——《護英雄 シール・ド・レイユ》」

 美しい讃美歌が鳴り響き、その歌と祈りの力で武装した白龍が姿を現す。
「《シール・ド・レイユ》の能力で……《Gメビウス》と、《バトライオウ》を、シールドへ……」
「な……!」
 やっとフリーズから解放されたと思ったら、今度は直接除去された。
「さらに、《サリヴァン》で《バクアドルガン》を、攻撃……」
 《バクアドルガン》も殴り返されてしまう。《バトライオウ》がいないので、バトルを引き受けてもらうこともできない。
 瞬く間に暁のクリーチャーが除去されていき、残ったのは《バトラッシュ・ナックル》のみ。
 しかし、ラヴァーが危機的なタイミングで《シール・ド・レイユ》を引いたように、暁もここで、この状況を打開するカードを引き当てるのだ。
「……やっぱり、こういう時に来てくれるんだね」
 このターンに引いた一枚、たった一枚の手札。暁はその中に秘められた龍の世界を——解放する。

「暁の先に、龍の世界を——《龍世界 ドラゴ大王》!」