二次創作小説(紙ほか)
- 烏ヶ森編 12話「太陽山脈」 ( No.169 )
- 日時: 2015/05/20 00:43
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「……3D龍解、完了。ここからが、本番ですよー」
《カラクリガエシ》から《ウツセミヘンゲ》へと3D龍解を果たした空護。ここから、彼の反撃が始まる。
空護は残り少ないマナを払って、手札を切った。
「呪文《デッドリー・ラブ》! 《ウツセミヘンゲ》を破壊して、《ゴシック・ヘレン》も破壊!」
『っ、直接狙いますか、しかし残念でしたね。《フィルミエ》のセイバー能力発動! 私の破壊を防ぎます。そして私の能力で、山札から《オリオティス》をバトルゾーンへ!』
「ですが、僕の《ウツセミヘンゲ》も破壊される代わりに、墓地のカード四枚を山札に戻して、場に留まりますよー」
一度は爆散したかと思われた《ウツセミヘンゲ》だが、しかしそれは身代わり。空蝉の術によって、死した魂を贄とし、《ウツセミヘンゲ》は生き残る。
「《ウツセミヘンゲ》で《ゴシック・ヘレン》を攻撃!」
『《オリオティス》でブロックです! 私の能力で、山札から新しく《アリシオン》をバトルゾーンへ!』
「《ヴォルグ・ティーガー》で攻撃!」
『《アリシオン》でブロック! 山札から《コッコルア》をバトルゾーンへ!』
「《フドウガマオウ》で攻撃!」
『《コッコルア》でブロック! 《フィルミエ》をバトルゾーンへ!』
空護の連続攻撃をことごとく防ぐ《ゴシック・ヘレン》。攻撃をすべて防御し、その防御が緩む気配は見えないが、彼はどこか焦っているように見える。
「では、貴方のターン始めに、《フドウガマオウ》の能力で、《フィルミエ》を選択しますねー」
『くっ……《導きの精霊龍 サリヴァン》を召喚! 互いにカードを二枚引き、私は手札から《フィルミエ》を二体バトルゾーンへ! そして、前のターンに出した《フィルミエ》で《フドウガマオウ》を攻撃します……!』
《フィルミエ》はなす術もなく《フドウガマオウ》に消されるが、《ゴシック・ヘレン》の能力で、新しく《蒼天の翼 ラウ》が現れる。
『私で最後のシールドをブレイク!』
「……終わりですかねー?」
空護の最後のシールドが破られるが、しかし彼はまだまだ余裕だ。
狐面のような顔には、はっきりとした表情は浮かばない。しかし彼の纏う雰囲気が、彼に流れを手繰り寄せているかのように、彼の優勢を示していた。
「では、僕のターン。まずは、僕の場に闇のクリーチャーが二体以上いるので、《魂食いの魔狼月下城》龍解——《魔狼の悪魔龍 ミナゴロッセオ》」
ターン開始時、《魔狼月下城》が龍解し、《ミナゴロッセオ》となる。
しかし、これだけでは終わらない。
「《シバカゲ斎》のマナ武装5、発動。山札を五枚削って、墓地からバトルゾーンへ。さらに、《深淵の悪魔龍 バセオアビス》を召喚」
深淵の悪魔龍 バセオアビス 闇文明 (6)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、そのターン、バトルゾーンにある相手のクリーチャーすべてのパワーは−3000される。
W・ブレイカー
現れたのは、深淵に潜む悪魔龍、《バセオアビス》。
他人の罵声がなによりの好物で、罵られることで、その力を高め、発現させることができる。
だが、仮にも仲間のクリーチャー。共に戦う仲間が罵声を浴びせようだなんて、そうあることではない。
なので《バセオアビス》は、最上の罵声を得るために、罪を犯す。
「《バセオアビス》の能力で、《ウツセミヘンゲ》を破壊。そして、相手クリーチャーのパワーをすべて−3000!」
『な……!』
罵声を得るために、《バセオアビス》が犯す罪。それは単純明快、仲間を殺めることだ。
《バセオアビス》は《ウツセミヘンゲ》を切り裂く。そして、それを見た他のクリーチャーからの罵声を浴びる。
その罵声が力となり、《バセオアビス》の身体から溢れる瘴気が、《ゴシック・ヘレン》のクリーチャーを闇に侵していく。
だが、《ゴシック・ヘレン》の能力があれば、クリーチャーが破壊されようと、新たなクリーチャーを生み出せる。《ゴシック・ヘレン》を破壊しなければ、場数が減ることはない。
そう思ったが、しかし、
『……《聖歌の翼 アンドロム》《蒼天の翼 ラウ》《不屈の翼 サジトリオ》をバトルゾーンに……!』
「やっぱり、思った通りですねー」
ニヤリと微笑む空護。その理由は、《ゴシック・ヘレン》が呼び出したクリーチャーの数にある。
《バセオアビス》の能力で、《ゴシック・ヘレン》のクリーチャーは、彼自身と《コッコルア》《サリヴァン》を残し、消し飛んだ。その数は計六体。
しかし、《ゴシック・ヘレン》の能力で現れたクリーチャーは三体。これは一体、どういうことか。理由は単純明快だ。
「もうそのデッキに、3コスト以下のクリーチャーはほとんどいないようですねー」
『ぬぅ……!』
空護の言葉は、《ゴシック・ヘレン》に深く刺さる。
確かに、《ゴシック・ヘレン》のデッキは3コスト以下のクリーチャーが多くい。アタッカーを削ってまで、それらのクリーチャーで守りを固めている。
しかし、だからと言ってそのようなクリーチャーばかりではないだろう。先ほど《サリヴァン》を出していたように、4コスト以上のクリーチャーや、防御用S・トリガー、呪文なども投入しているはず。
度重なる破壊により、《ゴシック・ヘレン》は山札の3コスト以下のクリーチャーを、ほとんど使い切ってしまったのだ。
もはや、彼に救済を与える力は残されていない。
『《アンドロム》の能力で、《ヴォルグ・ティーガー》をフリーズ!』
「それくらい構いませんよ。二体目の《学校男》を召喚。自身と《ウツセミヘンゲ》を破壊、する代わりに《ウツセミヘンゲ》は墓地のカードを山札へ戻します」
『《サジトリオ》を破壊! 私と《サジトリオ》の能力、山札を捲り——《ラウ》を、バトルゾーンへ……!』
やはり、クリーチャー数が残り少なくなっているようだ。二枚と三枚、合計で五枚捲っても、出せたのは一体。それも1コストの軽量ブロッカーである《ラウ》。
もうあと一押しといったところか。
「《ウツセミヘンゲ》《フドウガマオウ》で《ゴシック・ヘレン》を攻撃」
『二体の《ラウ》でブロックです!』
同時に、《ゴシック・ヘレン》の能力が発動するも、もうなにも出ては来なかった。
「なら、《学校男》で攻撃」
『《アンドロム》でブロック……!』
「もうなにも出ませんね? なら、これで終わりですよー……《ニンジャリバン》で、《ゴシック・ヘレン》を攻撃」
《ニンジャリバン》は《ミナゴロッセオ》の能力でスレイヤーとなっている。
闇文明秘伝の猛毒を塗り込んだ苦無が、《ゴシック・ヘレン》の首元を掠める。《ゴシック・ヘレン》は《ニンジャリバン》を払い退け、そのまま破壊するが、一撃貰った時点で、彼は終わっている。
猛毒が天使龍の身体を駆け巡り、ほどなくして、《ゴシック・ヘレン》は墓地へと堕ちていくのだった。
「ぐうぅ……私のターン……」
毒の影響か、苦しそうに息を切らすゴシック・ヘレン。
しかしその瞳は、まだ死んではいない。
「はぁ、はぁ……私をここまで追い込んだのは、貴方が初めてです……しかし、これで終わりですよ! 呪文《聖歌の聖堂ゾディアック》! 《ヴォルグ・ティーガー》《ホネンビー》《シバカゲ斎》をフリーズ!」
「っ……!」
どこからともなく、聖なる歌声が響き渡る。
その歌声は、マナから光の力を受け、空護のクリーチャーの心を打った。
それにより、空護のクリーチャー——特に、ブロッカーの動きを封じられてしまう。空護のシールドはゼロ、対するゴシック・ヘレンの場には、《サリヴァン》が残っている。
「さぁ、これで終わりです! 《導きの精霊龍 サリヴァン》で、とどめ——」
と、ゴシック・ヘレンが価値を確信した、刹那。
《サリヴァン》の首が吹き飛んだ。
「……な、なにが……!?」
「ニンジャ・ストライク《威牙の幻ハンゾウ》……このくらいの用心はしてますよ」
いつの間にかそこにいたのは、巨大な蝦蟇のような悪魔。
知る者こそ多かれど、その姿を見た者はすべからく闇に葬る悪魔の忍、《ハンゾウ》。
ニンジャ・ストライクで相手ターン中にも場に現れ、登場時に相手クリーチャーパワーを6000下げるクリーチャーだ。その能力によって、《サリヴァン》も闇へと葬り去られた。
勝利を確信した瞬間、いきなり攻め手を潰され狼狽えるゴシック・ヘレン。それに対し、空護はさも当然と言うように告げる。
「一度や二度の戦いで手持ちの手段をすべて使い尽くすのは、忍としては半人前らしいんですよねー……そうでなくても、スパーク呪文が飛んでくる可能性もあるのに、ブロッカーだけで守りを固められたなんて思いませんって」
確かに空護の言う通りではある。タップで相手の守りをこじ開ける光文明相手に、アタッカーを残し、ブロッカーだけで安全だと思うのは甚だ思い上がりである。
普通に考えればそこまで思考が行きつく。しかしゴシック・ヘレンは、その一歩まで思考を進めることができなかった。
「ま、要するにー——」
それを、空護は一言で纏める。
その一刹那、ほんの少しだけ。彼の眼は、敵を射殺さんばかりに暗く光ったような気がした。
「——詰めが甘かったな」
それは、とても冷たく、突き放したような一言であった。
まるで、既に目の前の敵は葬り、もはやこれ以上、なにも言うべきないとでも言うかのように。
結局ゴシック・ヘレンの攻撃は空護には届かず、空護のターンが訪れる。
「さ、後は数で攻め切ってしまいましょうかねー、《学校男》でWブレイク!」
「く……っ!」
クリーチャーを失ったゴシック・ヘレンのシールドが、遂に破られる。
「《フドウガマオウ》でWブレイク! 《ミナゴロッセオ》でシールドをブレイク!」
立て続けの空護のクリーチャーが、シールドを食い破るように砕く。S・トリガーはない。
そして、闇に潜む悪魔龍が、影より天使龍へと忍び寄る——
「《絡繰の悪魔龍 ウツセミヘンゲ》で、ダイレクトアタック——!」