二次創作小説(紙ほか)

Another Mythology 7話「ピースタウン」 ( No.18 )
日時: 2014/04/24 22:40
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「しっかし、昨日は随分な体験をしちゃったわねぇ」
「でも楽しかったですよね。コルルも新しい仲間ができたって喜んでたし」
「まあねぇ。私は楽しかったわよ」
 エリアスの封印を解いた翌日、遊戯部の正式な部員となった暁(といつの間にか出した覚えのない入部届が受理されていた柚)は、部長の沙弓と対戦しながら、昨日のことを振り返っていた。
「じゃあ、これでとどめね」
「え、ちょっ、マジで!? 流石は部長、私を倒すなんて……!」
「まあね。カイ、次やらない?」
「……俺はいいです」
「じゃあ霞さんは?」
「わ、わたしも、遠慮しておきます……」
「二人ともつれないわねぇ……仕方ないから、空城さんともう一戦するわ」
「望むところです! 今度こそ私が勝ちますよ!」
 と、意気込んでデッキをシャッフルする暁だが、制服のポケットから携帯の着信音が鳴る。
「あ、ちょっとタンマ。誰だろ……?」
 発信者は知らないアドレスだった。
「『このアドレスに送信してね』? なんだろ」
「あ、あの、あきらちゃん。それって、詐欺かなんかじゃ……」
「え? なにか言った?」
 柚が言うよりも早く、暁は送信していた。
 そして四人の姿は、いつの間にか消えていた。



 四人が飛ばされた先は、クリーチャー世界だった。
 そこにはリュンがいて、コルルがいて、エリアスもいた。
「メールを送信したはずが、なんでクリーチャー世界に……そう言えばリュンも、こっちとあっちを行き来する時、携帯使ってたよね」
 携帯電話で移動ができるということだろうか。一体どんな理屈だと問うてみると、
「クリーチャー世界と君らの世界に限った話ではないんだけど、僕は星間移動をする際、互いの星の座標さえ分かっていれば、移動が可能なんだよ。その時に“送信”という概念を持った物体を介して、その周囲にある生命体を概念量子に変換して、“送信”の概念に乗せて指定した座標へと送信する。だから別に携帯電話じゃなくても、“送信”の概念を持ったものであれば移動できるんだよ。ただ、これはコンパクトで持ち運びが便利だから使ってるだけで」
「なに言ってんのか全然分かんない……なんなの、概念量子って……」
「要するに、携帯でもパソコンでも、メールかなにかを“送信”する機能を持ったもので俺たちをこの星に送信している、ってことだろ」
「まあ、そういうことだね」
 なにはともあれ、四人は三度このクリーチャー世界へと足を踏み入れたのであった。
「今日もクリーチャーの封印を解くの?」
「いいや。残念ながら、まだ他の封印場所の情報は手に入ってないんだ。だから今回は、支配地域の解放をしてもらおうかなって」
「支配地域?」
 そう言えばこの前も、十二神話の支配地域がどうこうと言っていたが、そのことだろうか。
 と思ったが、違うらしい。
「前に言った支配地域とは別物なんだけど、この世界が今や無法にして不毛の地になっているということは、前に話したよね?」
 一同は頷く。
「世界を治める者がいなくなったせいで、この世界は土地もクリーチャーも荒れてしまっている。土地の方は自然文明の領土を中心に回復しつつあるんだけど、クリーチャーの方はそうはいかなくてね。暁さんは知ってると思うけど、一部のクリーチャーが暴れたり、他のクリーチャーを追いやってテリトリーを拡大させたりしているんだ」
 この世界はいくつものエリアに分割することができるのだが、今やその半分以上のエリアが、それぞれクリーチャーに占有されてしまっているらしい。
「つまり、そのエリアを占拠しているクリーチャーを倒して、エリアを解放しろ、と」
「そういうこと。そのために《語り手》を目覚めさせたんだけどね」
 しかし、リュンはその目覚めた《語り手》に対して違和感を感じていた。あるいは失望か。
 暁たちは十二神話の力を正確に理解していないようだが、その力は簡単には言い表せないほど絶大なのだ。そんな十二神話が最も信頼を寄せる部下が、弱いはずはない。むしろかなり強力なはずだ。
 だが、封印が解けて出て来たのは、小さなクリーチャー。リュンとてその力のすべてを知っているわけではないが、こうして行動を共にする中で、ある程度は彼らの力量を理解しているつもりだ。そしてその力は、はっきり言って大したことはない。そんじょそこらのクリーチャーと、それほど変わらない程度の強さだ。
(十二神話の残したクリーチャーだし、もっと強い力を秘めていると思ったけど、そんな感じはしない……まだ分からない点が多いとはいえ、これじゃあこの世界を元に戻す力としては、期待できない)
 ならばと、リュンは考えた。クリーチャーの力が弱いのなら、そのクリーチャーを操る者——即ち暁たちの力を借りようと。
 本当なら封印だけ解いてもらって後はこちらでなんとかしようと考えていたが、そうは行かなくなってしまったので、致し方ない措置である。
「そういうわけだから、行くよ」
 そう言ってリュンが指差したのは、高くそびえ立つ山だった。



「ここって、私が最初に来た山だよね?」
「そうだよ。太陽山脈サンライト・マウンテンって言ってね、多くの火山が連なっているんだ」
 暁が倒した《トルネードシヴァ》はコルルが封印されていた神殿周辺をテリトリーにしていた。今回も暁の見覚えのある景色であることから、その近くであろう。
「この火山の両側には町があるんだけど、その移動にこのルートが一番よく使われるんだ」
「だから、この道を安全にしておきたい、ということでしょうか……?」
「そういうこと」
 しばらく山道を歩き続ける一同は、途中で脇道に逸れ、さらに山を登る。
「ここだよ」
 ある程度上ると、少し開けた岩場に出た。
 その岩場の奥は小さな穴蔵のようになっており、そこには、一体の龍が眠っている。
「あれって……」
「《バトラッシュ・ナックル》だ。あいつもオレたちの仲間だったんだけど……随分と荒れちゃってるな」
「あのクリーチャーが、この辺りの山道を占領してるってことかしら」
 今は眠っているようだが、確かに両手に備わっている鉤爪は、見る者に恐怖を与えるだろう。
「よーし、じゃあ私がパパッと懲らしめてあげるよ。行こうコルル!」
「おう!」
「あ……あきらちゃん、気を付けてくださいっ!」
「分かってるって」
 少々不安が残るものの、暁は率先してバトラッシュ・ナックルへと駆けていく。
 そして、バトラッシュ・ナックルに近づき、足音に気付いたバトラッシュ・ナックルがゆっくりと身体を起こす瞬間に、
「コルル!」
「了解!」
 神話空間が開かれ、暁とバトラッシュ・ナックルのデュエルが始まった。



「《ピアラ・ハート》を召喚! 効果で《フレフレ・ピッピー》を破壊!」
 暁とバトラッシュ・ナックルのデュエルは、今のところは暁優勢だ。
 暁の場には《ライラ・ラッタ》と《ピアラ・ハート》。バトラッシュ・ナックルの場は《フレフレ・ピッピー》が破壊されてしまったのでなにもいない。
「《ライラ・ラッタ》でシールドをブレイク! 一枚目貰った!」
「グルルル……!」
 バトラッシュ・ナックルのターン。《爆槍 ヘーゼル・バーン》を召喚して終了する。
「私のターン! 《鬼切丸》を召喚!」
 《鬼切丸》は、自分のマナゾーンのカードが火か無色だけなら、パワー4000のスピードアタッカーとなる。
「《鬼切丸》で攻撃! 続けて《ライラ・ラッタ》と《ピアラ・ハート》も——」
「グルアァァ!」
 二体のファイアー・バードも攻撃しようとしたが、S・トリガーで《スーパー炎獄スクラッパー》が発動。《ライラ・ラッタ》と《ピアラ・ハート》は破壊される。
「っ、しまった、こっちから攻撃すればよかったよ……」
「グラアァァァ!」
 さらに《ボンバ・ドール》で《鬼切丸》も破壊されてしまった。
「やば……うぁっ」
 続けて《ヘーゼル・バーン》でシールドブレイク。暁のシールドの一枚目が割られた。
「やるなぁ、でもまだまだ、私のターン! 《勝負だ!チャージャー》を対象なしで発動して、マナを追加! そして残った3マナで《スピア・ルピア》を召喚!」
「グルルル……ガアァァァ!」
 クリーチャーを展開しなおそうとする暁だが、ここで遂にバトラッシュ・ナックルの切り札が現れる。