二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編14話「一騎vsラヴァー」 ( No.184 )
日時: 2015/06/22 01:22
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

「っ……《ガイギンガ・ソウル》で、もう一度攻撃! シールドをWブレイク!」
 《ガイギンガ・ソウル》のパワーは8000、《ゾディアック》があるとはいえ、《ヴァルハラナイツ》とは相打てるパワーだ。勿論、チャンプブロックという線もあるが、相手としても、あまりこんな大型クリーチャーは残しておきたいとは思わないはずだ。特に、《ガイギンガ・ソウル》にはアンタップ能力も備わっているのだから。
 だが彼女は、一騎の思い通りには動かない。
 次の瞬間、攻撃をかけたシールドがすべて切り裂かれた。
「ブロックしない……!?」
「……S・トリガー、発動」
 いくら守りを固めているとはいえ、シールドゼロは流石にリスキーだ。相手は守りの牙城を崩落させる火文明。いつ何時、その鉄壁が崩されるとも分からないのだ。
 だが彼女は、最後の防衛ラインだけは、いつだって死守している。
 その結果が、彼女の盾から展開される、龍門の印だった。
「《ドラゴンズ・サイン》……《天運の精霊龍 ヴァールハイト》をバトルゾーンへ」
「くっ、またシールド追加か……!」
 先ほど《エメラルーダ》で仕込んだシールドだ。さらに、手札に《ヴァールハイト》も握っていたのだろう。
 いくら一騎が攻め、彼女の守りを崩したと思っても、彼女の盾は絶え間なく生み出され、彼女と一騎の接触を妨げるかの如く立ち塞がる。
 そして、彼女の盾はさらなる鎧となるのだ。
「……私のターンの初め、《浮遊する讃美歌 ゾディアック》、龍解——《賛美の精霊龍 ハレルヤ・ゾディア》」
 賛美の聖歌が響き渡る、浮遊する教会。その真の姿は龍。
 《ゾディアック》は機械的に変形し、巨大な槍を携え、一体の天使龍へと姿を変えた。
 さらに、
「《導きの精霊龍 サリヴァン》を召喚……二枚ドロー……《純白の翼 キグナシオン》《聖龍の翼 コッコルア》を、バトルゾーンへ……」
 後続のドラゴンに加え、軽量ブロッカーを並べてくる。しかも、このタイミングで小型クリーチャーが現れるということは、即ち支配が始まるということだ。
「《ヴァルハラナイツ》の能力、発動……《ガイバーン》《マッカラン・ファイン》をフリーズ……《ラ・ローゼ・ブルエ》、《ヴァルハラナイツ》で、《ガイギンガ・ソウル》、《マッカラン・ファイン》を、攻撃……」
「く……っ!」
 一騎の主要なクリーチャーが立て続けに破壊され、しかも《ラ・ローゼ・ブルエ》の能力で相手のシールドは増える一方。特に、マナ武装でスピードアタッカーを付加する《マッカラン・ファイン》を失ったことは大きい。
「……ターン終了……《ハレルヤ・ゾディア》の能力で、私の光クリーチャーをすべて、アンタップ……」
 攻め手を潰し、守りを固め、反撃は許さないとでも言わんばかりの鉄壁。殴り返し要員は再び起き上がり、守りの体勢を取った。
 この強固な守りを突破することなんてできるのだろうか。一騎は、一瞬そんな思いがよぎる。
 ——このままでは、恋を救うことなんて、できないのではないのか。
「……いや、まだだ! まだ終わらないぞ、恋!」
 マイナスへと向かいそうになる思考を振り切って、一騎は手札のカードを、叩きつけるように場へと繰り出す。
「呪文《メテオ・チャージャー》を二枚発動! 《ヴァルハラナイツ》と《キグナシオン》を破壊! さらに《爆熱血 ロイヤル・アイラ》を召喚! マナ武装3発動、手札を一枚捨てて二枚ドロー!」
 とりあえず、フリースで動きを止める《ヴァルハラナイツ》と、増えたシールドにS・トリガーを与える《キグナシオン》を優先的に破壊する。厄介な《ラ・ローゼ・ブルエ》も破壊したいが、生憎ながら光の呪文以外では選べないので、今は放置するしかない。
 《ロイヤル・アイラ》の能力で手札も補充し、一騎は次のターンに備える。
「……呪文《ジャスティス・プラン》……《光神龍セブンス》を、召喚……ターン終了……」
「俺のターン!」
 相手も相手で、息切れし始めたのか、動きが緩んでいた。まだ攻め時ではないため、打つ手も今はないということだろうか。
「っ……《ネクスト・チャージャー》を発動! 手札をすべて山札の下に戻して、戻した枚数分ドローだ!」
 しかし打つ手がないのは一騎も同じだった。小型のヒューマノイドを並べても、今は効果が薄い。
 この状況を打開できるカードを引くことに賭けて、一騎は手札をすべて入れ替える。
 そして、
「《グレンモルト》……!」
 果たして手札に来たのは、《龍覇 グレンモルト》だった。
 今まで、幾度と一騎を助けて来た、彼のエースと言っても過言ではないクリーチャーだ。様々な武器を振るい、いざという時には頼りになる存在だ。
(いや……でも、この状況は《グレンモルト》じゃ突破できない……)
 いくらなんでもブロッカーの数が多すぎる。《ガイバーン》が行動できるようになったとはいえ、彼女には《ラ・ローゼ・ブルエ》や《セブンス》を初めとした、ブロッカー軍団と増え続ける盾がある。
「どうすれば……」
「一騎」
 と、その時。
 すぐ横で、テインが彼を呼んだ。
 その呼びかけは、いつもと同じ調子。しかし、どこか優しげで、一騎をなにかに導くかのようであった。
「テイン……」
「前にも言ったよね。倒せない相手には、武器を変えるんだって」
「そうだけど、でも、ここはあの場所じゃない……まさか、ここにも君の隊長の武器が眠っているとでも言うのか?」
「いいや、違うよ。この状況を打開する武器、それは《グレンモルト》と、彼の剣、そして、一騎。君自身にある」
「《グレンモルト》に《プロトハート》、そして、俺……?」
 いまいちなにを言っているのか分からない。
「そうだ。見てごらん、かの刃を。聞いてごらん、魂の唸りを。感じてごらん、龍の鼓動を」
「刃……魂……龍……」
「《プロトハート》は、一つの剣としては完成していない。本当の龍の魂は、そこにはまだないんだ。でも、君ならきっとそれを引き出せる。いや、もう彼は目覚めている。そして、解放されたがっている。君たちの、その手によって」
 一騎は、ゆっくりと超次元ゾーンへと目を向ける。
 そして、感じる。テインに言われた通り、《プロトハート》を、その刀身を見つめる。そして、刃から伝わる魂の叫びを、魂から轟く龍の鼓動を、感じ取る。
「さあ、あとは感じたままにカードを繰るだけさ。君の、彼女を救いたい気持ちが本物であれば——その強き志に、熱血の魂は応える」
 導くようなテインの言葉に引き寄せられるように、自然と一騎の手は動いていた。
「……《龍覇 グレンモルト》、召喚」
 呼び出すのは、《グレンモルト》。
 そしてこの時、彼の能力が発動する。
「その能力で、超次元ゾーンから、コスト4以下のドラグハートを、バトルゾーンへ……」
 一騎の眼に炎が灯る。
 今までは理解が及ばない中でカードを繰っていた。
 だが、今は違う。はっきりと感じる。《プロトハート》に眠る、真の龍の魂を。
 そして、その力を解き放つ術を。
「超次元ゾーンから、来い——」
 銀河の果てから飛来する、一振りの大剣。
 それが今、一人の剣士の手に渡る。

「——《銀河大剣 ガイハート》!」

 《グレンモルト》は大剣を握る。
 《プロトハート》という仮の姿を破り捨て、二重に勝利を重ねた熱血の剣、《ガイハート》。
 今、彼は、彼らは、その力を解放せんとする。
「……行くよ、恋」
 そう、小さく呟いて、一騎は動く。
 この戦いを、終わらせるために。
「《猛烈将龍 ガイバーン》で攻撃! その能力で、《ガイバーン》よりパワーの低いクリーチャー、《セブンス》を破壊!」
「……《デネブモンゴ》で、ブロック……」
「まだだ! 《ガイハート》を装備していない《グレンモルト》で攻撃!」
「……《ラ・ローゼ・ブルエ》で、ブロック……」
 《ガイバーン》の斬撃で、《セブンス》と《デネブモンゴ》が消し飛ぶ。
 《グレンモルト》の攻撃は通らず、《ラ・ローゼ・ブルエ》に返り討ちにされる。
「……これで決まりだ、恋」
「…………」
 その言葉に、彼女はなんの反応も示さない。
 それはその言葉の意味を理解していないのか、それとも、理解していてなお策があるのか、それは定かではない。
 だが彼女がどう思っていようと、もう一騎は止まらなかった。
「《ガイハート》の龍解条件は、ターン中に二回攻撃すること。そして俺は、《ガイバーン》と《グレンモルト》、二体のクリーチャーで二回攻撃した。よって、龍解条件成立だ!」



銀河大剣 ガイハート ≡V≡≡V≡ 火文明 (4)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーは「スピードアタッカー」を得る。
龍解:自分のクリーチャーが攻撃する時、そのターン2度目のクリーチャー攻撃であれば、攻撃の後、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。



 一騎は二本の指を突き立てる。
 それはまるで、勝利を確信し、それを証明するかのように。
 《グレンモルト》は、大剣を空高く投げ飛ばす。
「勝利の銀河、熱き闘魂を呼び覚まし、熱血の未来を解放せよ——」
 《ガイハート》は仲間の熱血に応え、銀河の力を得て、内に秘めたる龍の魂を解き放つ。
 それこそが、龍解。
 その姿が、ここに現れる——

「——《熱血星龍 ガイギンガ》!」