二次創作小説(紙ほか)
- 52話/烏ヶ森編 19話 「太陽神翼」 ( No.195 )
- 日時: 2016/03/15 03:33
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)
太陽神翼 コーヴァス 火文明 (8)
進化クリーチャー:ファイアー・バード/アーマード・ドラゴン 11000+
進化—自分の《太陽の語り手 コルル》1体の上に置く。
メソロギィ・ゼロ—バトルゾーンに自分の《太陽の語り手 コルル》または《コーヴァス》と名のつくクリーチャーがおらず、自分のファイアー・バードまたはアーマード・ドラゴンを含む火文明のカードのコストの合計が12以上なら、進化元なしでこのクリーチャーをバトルゾーンに出してもよい。
このクリーチャーはバトルゾーン以外のゾーンにある時、進化でないクリーチャーとしても扱う。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーが攻撃する時、相手のクリーチャーを1体選びこのクリーチャーをバトルさせてもよい。
このクリーチャーがバトルに勝った時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せ、その中から火のドラゴン、またはファイアー・バードを1体選びバトルゾーンに出してもよい。その後、残りを好きな順序で山札に一番下に置く。この能力でバトルゾーンに出たクリーチャーは、このターン「スピードアタッカー」と「パワーアタッカー+5000」を得る。
バトル中、このクリーチャーのパワーは+4000される。
W・ブレイカー
燃え盛る太陽が、黒き羽を舞い散らし、その姿を現す。
それは太陽の化身。黒翼を広げ、輝くもの。
太陽神話を継承する者だった。
「コルル……その姿は……」
『……思い出した』
彼は、コルルは——否、《コーヴァス》は、語るようにぽつぽつと言葉を紡ぐ。
『これが、俺の本来の姿……太陽の語り手の、本当の姿……コルルじゃない、真の太陽の語り手、《コーヴァス》だ……!』
《コーヴァス》は拳を握り締め、黒翼を羽ばたかせる。
あたたかい風が、暁の頬を撫で、彼女の黒髪をなびかせた。
『これが……俺の真の姿。そして、アポロンさんの力を得た、本当の語り手としての、神話を継承する者としての、あるべき姿だ』
「……よくわかんないや」
暁は《コーヴァス》の言葉を、そんな風に投げてしまった。
難しいことは、彼女には分からない。それが空城暁という少女なのだから仕方ない。
ただ、今の彼が、とても頼もしい存在であることだけは分かった。
暁は、自分自身と、共に戦う仲間のすべてを、彼に託す。
黒翼を抱く、太陽の継承者に。
「お願い、コルル——いや、《コーヴァス》!」
『あぁ——任せろ!』
刹那、爆風が巻き起こった。
「《コーヴァス》がバトルゾーンに出た時、相手クリーチャー一体とバトルする! 《バラディオス》とバトル!」
瞬く間に《コーヴァス》は《バラディオス》へと肉薄していた。
『俺のパワーは、バトル中+4000! 《バラディオス》を破壊だ!』
そして、轟々と燃え盛る鉄拳を、その身に叩き込む。
その一撃で、《バラディオス》の身体は粉々に砕け散った。
「な……っ」
「さらに! 《コーヴァス》がバトルに勝った時、山札の上から三枚を見て、その中の火のドラゴンかファイアー・バードを一体、バトルゾーンへ呼び出せる!」
《コーヴァス》の羽ばたきによって巻き起こる黒き旋風が、暁のデッキを吹き飛ばす。
宙を舞うカードは、《超竜サンバースト・NEX》《超熱血 フルボコ・ドナックル》そして——
「暁の先に、龍の世界を——《龍世界 ドラゴ大王》!」
龍のみが存在することを許された王権が、その主が、君臨する。
赤黒い巨大な翼を広げ、《ドラゴ大王》は静かに、それでいて厳かな重圧をもって、戦場へと降り立った。
そして、《コーヴァス》の姿を一瞥し、口を開く。
『《コーヴァス》……遂にその姿を取り戻したか』
『《ドラゴ大王》……お前は、俺のこの姿を知っていたのか?』
『ふん、当然だ。むしろ腑抜けた貴様の姿を見て、なにゆえあれほど惰弱であったのか、不思議に思った』
『そうか、そいつは悪かった……が、今の俺は、もうあの時の俺じゃないぜ』
それは《ドラゴ大王》と出会った《コルル》としての自分ではない、そして“ただの”《コーヴァス》でしかなかったあの時とは違うということ。
今の自分は、《太陽神翼 コーヴァス》。
太陽神話の力を受け継いだ、黒翼の太陽なのだから。
『その態度といい、物言いといい、奴を思い出す……ふん、我は貴様も好かんな』
『俺はあの人の意志を受け継いでいるんだ、そいつは当然だし、光栄なことだ』
『減らず口を……貴様がどう思おうと、我は我の王権を振るうまでよ』
『あぁ、そうしてくれ。頼むぞ——《ドラゴ大王》』
『抜かせ。我に指図をするな』
いつもの傲岸不遜な態度のまま、《ドラゴ大王》は咆哮する。
戦を告げるかのように。
火蓋を切るかのように、戦闘を、引き起こす。
『指図をしてよいのは、大王たる我だけだ! 行け、《コーヴァス》!』
『大王様に言われるまでもねえぜ! 行ってくる!』
《コーヴァス》は《ドラゴ大王》の咆哮と共に、再び飛翔する。
「《ドラゴ大王》の能力で、もう一度バトルを起こすよ! 《コーヴァス》と《エバーラスト》をバトル!」
戦闘を引き起こす雄叫びにより、《コーヴァス》と《エバーラスト》の一騎討ちが始まった。
《エバーラスト》は巨大な槍を鋭く突き出すも、それは《コーヴァス》には当たらない。掠りもしない。
横に薙ごうが、縦に振り下ろそうが、前に押しても後ろに引いても、その攻撃が当たることはない。
『——ここだぜ』
どころか、《コーヴァス》はいつのまにか、《エバーラスト》の死角に回り込んでいた。
そして、爆炎を灯した拳を——叩き込む。
その一撃で、《エバーラスト》は爆散した。
「《エバーラスト》……! そんな、まさか……!」
狼狽えるラヴァー。先ほどの、怒りがこみ上げたようなそれではなく、現状を許容できなくなったかのように、混乱している。
もしくは、太陽のような光に、戸惑っているのかもしれない。
昏い光を明るく照らす、太陽の光に。
「《コーヴァス》が再びバトルに勝利! 山札から《熱血龍 バトルネード》をバトルゾーンへ! そして!」
遂に、漆黒の翼を持つ太陽が、戦場を駆け抜ける。
「《コーヴァス》で攻撃、能力発動! 《コーヴァス》は、《コーヴァス》自身が攻撃する時にも、相手クリーチャーとバトルできる! 《ヴァルハラナイツ》とバトル!」
黒羽を散らしながら、大空を舞い、《コーヴァス》は三度その拳を燃え上がらせ、《ヴァルハラナイツ》を捉える。
《バラディオス》《エバーラスト》を粉砕したその拳は、世界を支配する天使龍、《ヴァルハラナイツ》をも——打ち砕いた。
「まったまた《コーヴァス》がバトルに勝利! 《真実の皇帝 アドレナリン・マックス》をバトルゾーンに!」
「く、ぐぅ……っ!」
「まだまだ! 《ドラゴ大王》《バトルネード》《アドレナリン・マックス》——《コーヴァス》の能力でバトルゾーンに出たクリーチャーは、すべてスピードアタッカーだよ! 《バトルネード》で攻撃!」
またしても大風が巻き起こる。爆風のような、熱き烈風が、追い風のように吹き荒ぶ。
そして、戦闘龍による熱血の戦が、幾度となく行われる。
《バトルネード》から伸びる竜巻のような鎖が、《エメラルーダ》を引き寄せる。
そして、引き寄せられた《エメラルーダ》を、《コーヴァス》の拳が木端微塵に粉砕した。
「《コッコ・ルピア》をバトルゾーンに!」
ラヴァーのクリーチャーが、瞬く間にいなくなった。
そして暁の場には、次々とクリーチャーが、龍たちが現れる。
まるで、彼女に引き寄せられるかのように、太陽に向かって行くかのように。
数多の龍たちが、火の鳥たちが、暁の太陽の下に集う。
「……S・トリガー、《マスター・スパーク》……!」
「効かないよ! 《アドレナリン・マックス》の能力で、私のドラゴンはすべてアンタップ!」
砕かれたシールドから眩い閃光が放たれ、あらゆる生命の動きを封じてしまう。
だが、暁はそれでも止まらない。《アドレナリン・マックス》の力で、すべての龍は滾る熱血の魂を再燃させる。
「っ……《キュプリス》!」
もはや打つ手のないラヴァーの手札から飛び出したのは、《キュプリス》だった。
しかしたった一体のブロッカーでは、暁の攻め手を止められようはずもない。
『……ごめん、君を守ることが、ボクの使命だった。でも、これは……!』
彼女を守ろうという《キュプリス》の意志は、暁の意志には敵わなかった。
ただ、それだけだ。
「なんで……なんで、こんな……こんな、火、なんて……!」
「——いい加減、前を見なよ!」
「っ……!」
迫り来る怒涛の爆炎、爆風に気圧される彼女を、暁は叱咤するかのように、叫ぶ。
「これは一騎さんの言葉だ! ちょっと私の言葉も混じってるけど……そんなことは関係ない! 過去のことを忘れろなんて言わない、あなたが味わってきた痛みは私にも分かる……でも!」
爆発するかのように、暁は己の内に秘めた言葉を、思いを、すべて吐き出す。
「だからって、こんなことをしてなにになるの!? 一騎さんは、ただあなたに幸せになってほしくて、その一心であなたに尽くしてきたんだよ! それが分からなかったなんて言わせない、それが邪魔だったなんて、言わせないからね! あの人の思いを拒絶したこと、それだけは許さない!」
それは、暁の怒りだった。
あらん限りの力で叫んだ暁は、肩でを息をするほどに、息が上がっている。
だが彼女が次に見せた表情は、期待と、希望に満ちた——微笑みだった。
「私はもっとあなたのことが知りたい……今までの戦いでも分かったことはたくさんあるけど、それ以上に、もっと、もっと、もっと! あなたと分かり合いたい。分かり合えることが、絶対にあるはずなんだ!」
感情のままに叫ぶ暁。その言い分は、どこか支離滅裂だった。
だが、彼女の思いは、これでもかというくらいの熱い意志は、彼女の心を焦がすかのように、強く、強く触れている。
「私は一騎さんじゃない。だから、あなたに戻って来いだなんて言えない。それは、あの人の言葉だから、あの人が言うべきことだから。だから!」
だから、
「私は、こう言う!」
《コーヴァス》が飛翔する。
黒き翼を羽ばたかせ、太陽の如き炎と、輝きを放ち、大空を舞う。
——数多の仲間と共に。
そして、暁の言葉が、紡がれる。
太陽神話を受け継ぐ者と、共に。
「《太陽神翼 コーヴァス》で——」
私と——
「——ダイレクトアタック——!」
——友達になろう——
——恋