二次創作小説(紙ほか)

53話/烏ヶ森編 20話 「ユースティティア」 ( No.200 )
日時: 2015/07/13 02:15
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

「よくも恋を……!」
「不必要なものを切り捨てるのは、知能的生命体として当然のことだ。貴様とて、邪魔な“ゴミ”は捨てるであろう。それと同じだ」
「ふざけるな!」
 一騎は怒りを露わにし、その衝動のまま、叩きつけるようにしてカードを繰り出す。
「《トップギア》でコストを下げて、《龍覇 ストラス・アイラ》を召喚! 《熱血剣 グリージー・ホーン》を装備!」
 現在、一騎の場には先ほど呼び出した《ストラス・アイラ》と《グリージー・ホーン》に加え、《一撃奪取 トップギア》がいる。
 対するユースティティアの場には、《聖鐘の翼 ティグヌス》《青銅の鎧》。ブロッカーの《ティグヌス》で一騎の攻撃を牽制しつつ、マナを伸ばしている。
「我がターン。呪文《超次元フェアリー・ホール》。マナを追加し、《勝利のガイアール・カイザー》をバトルゾーンへ。《勝利のガイアール・カイザー》で《ストラス・アイラ》を攻撃」
「く……っ!」
 《勝利のガイアール・カイザー》は、場に出たターンのみ、アンタップクリーチャーが攻撃可能になる。
 龍解を狙っていた一騎は、攻撃する前に《ストラス・アイラ》を破壊されてしまい、龍解の機会を潰されてしまった。
「まだだ! 《龍覇 スコッチ・フィディック》を召喚! その能力で超次元ゾーンから、《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》をバトルゾーンへ!」
 《スコッチフィディック》の力によって、一騎の場に、龍の天守閣を持つ城がそびえ立つ。
 これにより、一騎の火のクリーチャーは、バトル時のみパワーが+2000される。バトルでは簡単には破壊されないだろう。
 しかし、ユースティティアも、それに合わせて動き出す。
「《龍覇 セイントローズ》を召喚」
「っ、ドラグナー……!」
「その能力で、超次元ゾーンよりコスト5以下の光のドラグハートをバトルゾーンへ。出でよ、《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》」
 光文明の掲げる正義を象徴した、“天獄”の箱船《ヘブンズ・ヘブン》。
 そこから発せられる光は、他の文明の力を抑制し、正義のために自軍にさらなる力を与える。
「ターン終了時、《ヘブンズ・ヘブン》の能力を発動させる。手札より光のブロッカー、《高貴の精霊龍 プレミアム・マドンナ》をバトルゾーンへ」
 大型ブロッカーを呼び出し、守りを固めていくユースティティア。早くあのフォートレスをなんとかしなければ、延々とブロッカーを並べられてしまうが、フォートレスを除去することは簡単ではない。《ヘブンズ・ヘブン》の能力で呪文の使用も制限されてしまっているので、なおさらだ。
 しかし、そうであろうとなかろうと、今の一騎には関係ない。そのような守りは、火力でぶち抜くだけだ。
 今の一騎は、そのことしか頭になかった。
「ターンの初めに、俺の場に火のクリーチャーがニ体以上! 龍解条件成立! 《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》、龍解! 《熱血龍 ガイシュカク》!」
 龍の天守閣は、さらなる熱血の力を得て、龍の姿、《ガイシュカク》へと龍解する。
 さらに、
「《龍覇 グレンモルト》召喚! そして、来るんだ——《銀河大剣 ガイハート》!」
 一騎は《グレンモルト》を呼び出す。そして、現在、彼の持つ最強の剣——《ガイハート》を、掴み取る。
「《ガイハート》を《グレンモルト》に装備! スピードアタッカーになった《グレンモルト》でシールドをブレイク! 《ガイシュカク》でシールドをWブレイク!」
「《プレミアム・マドンナ》でブロックだ。《プレミアム・マドンナ》は、相手ターン中には場を離れない」
「だけど、《ガイシュカク》の能力も発動だ! ターン中に初めてブロックされたので、《ガイシュカク》をアンタップ! さらに!」
 一騎は二本の指を突き立てた。
「ターン中に二回攻撃したので、《ガイハート》の龍解条件成立!」
 《グレンモルト》は、熱血の力を受け、激しく、荒ぶるように揺れ動く《ガイハート》を、空高く投げ飛ばす。
「龍解!」
 遙か天空で、《ガイハート》は内に秘めた熱血の力を、そして大剣に眠っている龍の姿を、解放する——

「——《熱血星龍 ガイギンガ》!」

 その翼で風を切り裂き、その両足で大地を鳴り響かせ、《ガイギンガ》は戦場へと降り立った。その雄叫びは、仲間たちに勝利をもたらす怒号となる。
「《ガイギンガ》が龍解した時、相手のパワー7000以下のクリーチャーを破壊する! 《セイントローズ》を破壊!」
 《ガイギンガ》が大剣を振るうと、その切っ先から衝撃波が放たれる。それによって、《セイントローズ》は一刀両断にされてまった。
「そして、《ガイギンガ》で、シールドをWブレイクだ!」
「……《ティグヌス》でブロック」
 続けて《ガイギンガ》は飛び、再びその大剣を振り抜く。シールドにこそ届かなかったが、その斬撃で《ティグヌス》が木っ端微塵に吹き飛んだ。
 ユースティティアのシールドは二枚、ブロッカーはもういなくなった。そして一騎の場にいるアタッカーは、《トップギア》と《スコッチ・フィディック》、そしてアンタップした《ガイシュカク》。
 ひたすらに怒りがこみ上げ、その感情のみで独走している一騎は、余計なことは考えずに、衝動に突き動かされる。
 己が為すべきことは、ただただ、目の前の敵を攻め続けることのみ。
「行け! 《ガイシュカク》でシールドをWブレイク!」
 《ガイシュカク》の二度目の猛進で、ユースティティアのシールドはすべて粉砕される。
 しかし、最後に割ったシールドだけが、彼の手中で光の束となった。
「……S・トリガー、発動。《ヘブンズ・ゲート》……手札より《提督の精霊龍 ボンソワール》《蒼華の精霊龍 ラ・ローゼ・ブルエ》をバトルゾーンへ」
 龍の門が開かれると、二体のブロッカーが降り立つ。
 これで、一騎はこのターンにとどめが刺せなくなってしまった。
 《ボンソワール》はともかく、《ラ・ローゼ・ブルエ》がブロックすれば、ユースティティアのシールドが増える。残り二体のアタッカーの攻撃は、実質的にすべて受け止められてしまうのだ。
 しかも、《ラ・ローゼ・ブルエ》のパワーは7500、《ガイシュカク》の能力でパワーアップした《スコッチ・フィディック》でも勝てないので、ここでは無理に攻撃できない。
「くっ……ターン終了」
 なので一騎は、仕方なくターンを終える。
 それでもまだ、一騎が有利な盤面だ。
「……さて、裁きの時間だ。不必要な“塵”のために怒り、我に刃向かったこと、その不義を悔いるがいい。我がターン」
 告げるようにそう言って、ユースティティアのターンが始まる。
 しかし彼は、カードを引かない。それよりも先に、為すべきことがあるかのように。
「我がターンの初めに、我が場にブロッカーが三体……よって、《ヘブンズ・ヘブン》の龍解条件は満たされた」
「っ……!」
 ユースティティアの場には、《プレミアム・マドンナ》《ボンソワール》《ラ・ローゼ・ブルエ》……合計で三体のブロッカーが並ぶ。
 それにより、《ヘブンズ・ヘブン》の龍解条件は達成された。
 三体の光の龍が持つ守りの力を受け、正義の箱舟は真の姿を現す——

「——我が正義、ここに現れよ! 《天命賛歌 ネバーラスト》!」

 箱舟は変形し、一体の龍となる。
 輝く槍を携え、天命を下し、讃歌を受け、己が正義を執行する、光の龍。
 その名も、《天命讃歌 ネバーラスト》。
 《天命王 エバーラスト》よりも、なお光り輝く龍だ。
「呪文《超次元ホワイトグリーン・ホール》。《勝利のプリンプリン》をバトルゾーンへ。《ガイシュカク》を選択し、攻撃を封じる。さらに光のサイキック・クリーチャーを呼び出したので、《ホワイトグリーン・ホール》の効果で手札を一枚シールドゾーンへ置き、《勝利のプリンプリン》は自然のサイキック・クリーチャーでもあるため、マナゾーンからカードを一枚手札に。そして《聖鐘の翼 ティグヌス》《制御の翼 オリオティス》を召喚」
 ここに来て守りを固めるユースティティアだが、それは単なる保険にすぎない。
 彼は、このターンで終わらせるつもりなのだ。
「行け。《プレミアム・マドンナ》でWブレイク!」
「くっ……S・トリガー発動! 《爆流剣術 紅蓮の太刀》! マナ武装5発動で、《勝利のガイアール・カイザー》と《青銅の鎧》を破——」
「それは叶わぬ」
 《プレミアム・マドンナ》に砕かれたシールドの一枚目が、光の束となって収束し、一騎はS・トリガーを発動させようとするが、それはできなかった。
 見れば、《紅蓮の太刀》のカードが、光る鎖のようなもので縛り付けられている。
「これは……!?」
「《ネバーラスト》がいる限り、光以外のコスト5以下の呪文は封殺される。正義に反する力は抑圧されて然るべし。さあ、もう一枚のシールドもブレイクだ!」
 《紅蓮の太刀》が《ネバーラスト》によって封じられてしまい、もう一枚、シールドが砕かれる一騎。
 だが、二枚目のシールドも、光が収束していく。
「! S・トリガー発動! 《超爆デュエル・ファイアー》! この呪文はコスト6、《ネバーラスト》の能力は受け付けない!」
 《ネバーラスト》が封じられるのは光以外で、コスト5以下の呪文のみ。コスト5を越えた強力な呪文ともなると、封じることができないのだ。
 これで二体の《プレミアム・マドンナ》に加え、《ティグヌス》《オリオティス》、さらには《ネバーラスト》自体も破壊できる。
 そうなれば、ユースティティアはこのターンにとどめを刺すだけの打点を揃えられず、返しの一騎のターンで攻めきれる。
 そう、なるはずだったのだ。
「……! な、なんで……!?」
 爆炎に巻き込まれたブロッカーは一掃された。《プレミアム・マドンナ》も、《ティグヌス》も《オリオティス》も燃やし尽くされた。
 ブロッカーは全滅したのだ。そう——

 ——《ネバーラスト》を除いては。

「……その程度で、我が《ネバーラスト》を破れると思うな」
 ユースティティアは、一騎を見下すように、告げた。
「《ネバーラスト》の能力、エスケープ。我がシールドを手札に加えることで、《ネバーラスト》は破壊から逃れることができる」
「っ、そんな……!」
 だからユースティティアは、《ホワイトグリーン・ホール》でシールドを増やしていたのだ。
 このような事態を想定し、《ネバーラスト》を破壊から守るために。
「さて、このような無為な時間は、迅速に終わらせるべきである。《ネバーラスト》でTブレイク!」
「ぐぁ……!」
 残る三枚のシールドも、一瞬で砕け散った。S・トリガーはない。あっても、コスト5以下の呪文では、唱えることができない。
 シールドがすべてなくなった一騎に、ユースティティアの最後の一撃が繰り出される。
 そして、
「これで終わりだ……やれ、《勝利のガイアール・カイザー》」

 その正義に、裁かれた——