二次創作小説(紙ほか)

55話/烏ヶ森編 22話 「正義」 ( No.207 )
日時: 2015/09/08 05:11
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 恋とユースティティアのデュエル。
 お互いにまだシールドは五枚。《制御の翼 オリオティス》を出しつつマナ伸ばすユースティティアに対し、恋も《栄光の翼 バロンアルデ》で後を追っている。
「我がターン。呪文《超次元ドラヴィタ・ホール》。墓地の《フェアリー・ライフ》を手札に加え、超次元ゾーンより《アクア・アタック<BAGOOON・パンツァー>》をバトルゾーンへ」
「私のターン……呪文《グローリー・スノー》で、2マナ追加……」
「ターン初めに、《アクア・アタック》の能力でカードを引き、我がターンだ」
 マナから手札の補充にシフトしたユースティティア。一方、恋はさらにマナを伸ばし、ユースティティアを追い抜く。
 ユースティティアは自然文明を追加し、サイキック・クリーチャーを採用している利点として、マナ加速と手札補充をバランスよく絡めながら展開しているが、光単色で、超次元ゾーンの枠をドラグハートにのみ割いている恋には、そのような器用な真似はなかなかできない、
 単純なマナの量ではユースティティアを超えても、総合的な質では、とても勝っているとは言い難い。
「《虚構の支配者メタフィクション》を召喚。ターン終了」
「呪文《ヘブンズ・ゲート》……《蒼華の精霊龍 ラ・ローゼ・ブルエ》と《龍覇 エバーローズ》をバトルゾーンへ」
 天国の門が開かれる。
 そこから舞い降りるのは、蒼い薔薇の花弁を散らす聖なる龍《ラ・ローゼ・ブルエ》と、龍と心を通わす光の使者《エバーローズ》。
 《エバーローズ》は天に、そして超次元の彼方に呼びかけ、一つの槍を手にする。
「来て……《不滅槍 パーフェクト》。《エバーローズ》に装備」
 先んじてドラグハートを呼び出し、ターン終える恋。
 しかし、龍解条件を満たすには、クリーチャーがまだ足りない。あとニ体必要だ。
 ふと、ユースティティアが声を発した。
「……愚かだな、ラヴァー」
「……私は、恋。日向恋。その名前は、もう捨てた。ユースティティア」
「己の世界で生きることができず、この世界に“逃避”した惰弱な人間がなにを言うか」
 恋はすかさず訂正するも、ユースティティアに切り捨てられる。
「貴様は惰弱であったが、我々にはなかったものを多く持っていた。貴様の存在は、我々にとっては非常に意義のあるものだった。たとえばそれは、語り手の存在。たとえばそれは、クリーチャーと通い合う才。それらを利用することは、我々の目的を達するためには有意義なものであった。そして、我の正義に沿うものであった」
 ユースティティアは、いつものような高圧的な語りではなく、回想するように、懐かしむように、悲しむように、そして、慈しむように、言葉を紡ぐ。
 しかし、
「だが、今はどうだ」
 その口調が、一気に強く、険しく、非難するかのような語調になった。
「貴様は我々を裏切り、我らの目的を阻害するものと組み、我の前に立ちふさがる。これは、如何なことか?」
「私は……」
 ユースティティアの言葉は、問いかけだった。
 恋は一瞬、戸惑う。自分が今、こうしている理由。今の自分がある理由。それは一体、なんなのか。
 彼女は迷う。悩み、惑う。
 いつかの自分の世界のように。
 しかし、その答えは、すぐに見つかった。
「……私は、戻っただけ。元通りに、なっただけ」
 静かに、彼女には告げた。
「私は最初から、あなたたちと一緒にいるべきではなかった、だから裏切った……私は昔から、つきにぃと一緒だった、だからあの人たちと一緒にいる……私は元々の、自分のあるべき姿を見つけた、だからあなたと戦っている……」
 ただ、それだけ……
 と、彼女は、日向恋は、答えた。
 ラヴァーではなく、日向恋としての、答えだった。
「……そうか」
 ユースティティアは、どこか残念そうに、呟く。
 だが、次の顔を上げた時。
 その瞳は裁く者の眼となっていた。
 己が正義を信じ、己の正義によって裁く者。
 ユースティティアにとって、恋は、完全なる裁かれるべき者へと成ったのだ。
「ならば委細なし。我々を裏切り、こうして立ちふさがる貴様は、我が正義で裁く」
 そう言ってユースティティアは、手札のカードを切る。
 切り札を呼ぶ、鍵となるカードを。
「《龍覇 セイントローズ》を召喚」



龍覇 セイントローズ 光文明 (7)
クリーチャー:ジャスティス・ウイング/ドラグナー 6500
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、光のコスト5以下のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
バトルゾーンに自分の光のドラグハートがあれば、このクリーチャーは「ブロッカー」を得る。
W・ブレイカー



 恋の召喚した《エバーローズ》よりも、さらに強き光を放つドラグナー、《セイントローズ》が現れる。
 《エバーローズ》は4コストまでのドラグハートしか呼び出せないが、《セイントローズ》は、5コストの光のドラグハートまで呼び出せる。
 呼び出されるドラグハートはなにか、そんなものは決まっている。
 少なくとも恋には分かっていた。
 呼応するのは、ユースティティアの正義そのもの。その具象が顕現する。

「さあ、来るのだ。我が正義の箱舟——《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》」

「っ……」
 恋は小さく歯噛みする。
 ユースティティアの場には《オリオティス》《メタフィクション》。そして能力が発動した《セイントローズ》と、既に三体のブロッカーが並んでいる。
 さらに箱舟からは、新たな光の使者が舞い降りる。
「ターン終了……そして、《ヘブンズ・ヘブン》の能力発動。手札より《天団の精霊龍 エスポワール》をバトルゾーンへ」



天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン ≡V≡ 光文明 (5)
ドラグハート・フォートレス
自分のターンの終わりに、「ブロッカー」を持つ光のクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
光以外の呪文を唱えるコストは1多くなる。
龍解:自分のターンのはじめに、バトルゾーンにある自分の「ブロッカー」を持つクリーチャーが3体以上あれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。



 これで四体目。《ヘブンズ・ヘブン》の龍条件はブロッカーを三体場に残すことなので、ニ除去しなければ、龍解を許してしまう。
 しかし元々、恋のデッキは除去カードに乏しい。どうしたって次のターンに四体中ニ体以上のブロッカーを退かして、龍解を阻止することはできないだろう。
「……《導きの精霊龍 サリヴァン》を、召喚……カードを二枚ドローして、《殉教の翼 アンドロ・セイバ》を二体、バトルゾーンへ……そして」
 恋のバトルゾーンにクリーチャーが六体。《パーフェクト》の龍解条件が満たされた。
「世界の王よ、正義を掲げ天より降り立ち、不滅の生と命を授ける。龍解——」
 《エバーローズ》が《パーフェクト》を、天高く撃ち上げた。
 不滅の槍は一筋の光となり、そして、内に秘めた龍の魂を解放する。

「——《天命王 エバーラスト》」

 そして、《エバーラスト》が、その姿を現した。
 だが、ユースティティアは静かに、彼女を見据えている。
 彼女を、侮蔑するように。
「……ラヴァーよ、貴様は不義であった。我の前にこうして立つことこそが正義に反する業——即ち不義」
 それが貴様を裁く罪状だ、とユースティティアは告げる。
 恋の正義に反するように。
 《エバーラスト》に反目するように。
 ユースティティアは、己の正義を貫く。
「さあ——我が正義を、執行する」
 刹那、箱舟がより一層、光輝いた。
「我が正義、ここに現れよ! 龍解——」
 そして、ユースティティアの掲げる正義の形が、ここに具現と化す。

「——《天命讃華 ネバーラスト》!」