二次創作小説(紙ほか)

57話/烏ヶ森編 24話 「新しい世界へ」 ( No.211 )
日時: 2015/07/25 09:52
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 神話空間が閉じる。
 そこは当然ながら、白くて白い、あの部屋だった。
 終わったのだ、なにもかも。
 乗り越えたのだ、自分は。
 ユースティティアを。
 そして、過去の自分を。
 ラヴァーとしての過去を。
「……?」
 はらりと、なにかが舞うように落ちてくる。まるで天使の羽のように、ゆっくりと、神々しく舞い落ちてくる。
 恋は、それを何気なくつかみ取った。
「……ユースティティア……」
 そして。
「……あ……っ」
 それはほどなくして、砂のように崩れ去る。
 さらさらと、虚無色の灰のように。
 この世から、消えたのだった。
「ユースティティア……ごめん……」
 そして、ありがとう。
 と、恋は小さく呟く。
 それが、最後まで己の正義を信じて疑わなかった、自分の恩人への、最期の言葉だった。
 そして、ふと背後の扉から、足音が聞こえてくる。
「——恋っ!」
「……あきら……」
 そこにいたのは、暁だった。
 少しばかりの不安を顔に滲ませていたが、しかし恋の様子を見るや否や、その顔が綻び、晴れやかになる。
 やがて彼女は、恋に輝くような笑顔を見せる。
「やったんだね!」
「……うん」
 しかしその笑顔は、少しだけ眩しすぎた。
 本当によかったのかと、自問自答する。
 だが、答えはすぐに出た。
 これで、よかったのだと。
 いつかはユースティティアとの関係も、正さなくてはいけなかった。遅かれ早かれ、彼女との対立は避けられなかった。
 どんなに悲しんでも、哀れんでも、いつかは訪れる結末であり、自分が乗り越えなければいけないものだった。
 だから恋は、前に進む。
「帰ろう、恋」
 そして、戻るのだ。
 彼のもとへ。
 そして、歩むのだ。
 彼女のもとへ。
 新しい世界がそこにある。
 その世界の扉の鍵は、もう開いている。
 あとはただ、踏み出すだけだ。
 日向恋としての、最初の一歩を。

「……うん——」