二次創作小説(紙ほか)
- 60話 「『popple』」 ( No.219 )
- 日時: 2015/08/16 13:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
暁と姫乃のデュエル。
暁の場には《コッコ・ルピア》が一体。対する姫乃の場には《光器ユリアーナ》。
「わたしのターン、いくね。マナチャージして、5マナ。全部使って《光器パーフェクト・マドンナ》を召喚するよ」
「うーん、困ったなぁ……」
返しのターン。早速、暁は困ったような表情を浮かべていた。
「とりあえず、呪文《メテオ・チャージャー》を使うけど……」
それでは、なにも起きない。
《ユリアーナ》は選ばれないブロッカーなので、対象にはできない。しかし《パーフェクト・マドンナ》はパワー低下以外では場を離れない。
ゆえに、《メテオ・チャージャー》は実質的な空撃ちとなり、暁のマナに送られるのだった。
「《熱血龍 バクアドルガン》を召喚! スピードアタッカーだからすぐに攻撃して、山札の上の《ガイアール・アクセル》を手札に加えるよ! シールドブレイク!」
「《パーフェクト・マドンナ》でブロックするよ」
「……だよねー」
《パーフェクト・マドンナ》によって《バクアドルガン》の攻撃は止められる。
暁のデッキでは、どう足掻いても《パーフェクト・マドンナ》を除去することはできない。なので、毎ターン攻撃しようとも、毎ターン一回は攻撃を止められてしまうのだ。
ビートダウンでとにかく殴る暁にとって、このクリーチャーの存在は非常に大きく、辛いものだった。
「むぅ……でも、《バクアドルガン》の能力で、山札を捲ってドラゴンなら手札にできます。さぁ来い!」
そうして捲れたのは《ガイアール・アクセル》。ドラゴンなので手札に入った。
とはいえ、これだけでは突破口は開けそうにはない。
「じゃあ、わたしのターンだね。えっと……《知識の精霊ロードリエス》を召喚。カードを一枚引いて、ターン終了だよ」
姫乃の動きは、まだ大人しい。しかし《ロードリエス》を召喚することで、手札の源泉を作り出した。
暁もあまりもたもたしていられない。早く姫乃の防御を突破しなければ。
「《ガイアール・アクセル》と《熱血龍 タイマンド・ツクデ》を召喚! 《タイマンド・ツクデ》の能力で私のドラゴンは、アンタップしているクリーチャーを攻撃できる! 《バクアドルガン》で《ユリアーナ》を攻撃!」
「《パーフェクト・マドンナ》でブロックだよ」
アンタップキラーでアンタッチャブルの《ユリアーナ》を破壊しようとするも、やはり《パーフェクト・マドンナ》壁が立ちふさがる。
それでも、《バクアドルガン》の能力でカードを手に入れようとするが、
「う……《コッコ・ルピア》か……」
捲れたのは、ドラゴンではない《コッコ・ルピア》。なので手札には入らず、山札に戻される。
「まずいなぁ、どうやって攻めよう……あ、ターン終了です」
暁も暁でクリーチャーを展開してきたが、しかし相手のブロッカーの壁は高い。そろそろ一発逆転できるような大型ドラゴンでも引いて、一気に攻め込みたいところだ。
だが、しかし、
「じゃあ、《パーフェクト・マドンナ》を召喚するよ」
「げ……!」
現れたのは二体目の《パーフェクト・マドンナ》。これで暁の攻撃は、毎ターン確実に二回は止められる。
(このおねーさん、恋よりも守りが堅いよ……コーヴァスがいてくれれば、一気に攻められるんだけど……)
生憎、コーヴァスどころかコルルすらここにはいない。
コーヴァスでバトルを発生させて、大量のドラゴンを並べることができれば、無敵の《パーフェクト・マドンナ》の守りでも防ぎきれない物量で攻め込むことができれば、勝機が見えるのだが。
「! そうだ……これだ!」
そんなことを思いながらカードを引いた暁は、引いたカードを見るや否や、瞳の炎を燃え上がらせる。
溜めこんできた攻めの意志を、爆発させるかのように、そのカードを盤面に叩きつけた。
「さぁ、頼んだよ! 《ジャックポット・バトライザー》を召喚!」
暁が召喚するのは、コーヴァスほどではないが、類似した踏み倒し能力を持つドラゴン、《ジャックポット・バトライザー》。
このドラゴンを起爆剤に、暁は一気に攻勢に出る。
「《ジャックポット》で《ロードリエス》を攻撃!」
「ん……《パーフェクト・マドンナ》でブロックするよ」
突貫する《ジャックポット》の攻撃を《パーフェクト・マドンナ》は受け止める。その攻撃は完全に防がれるが、
「攻撃はブロックされたけど、《ジャックポット》がバトルに勝ったことに変わりはないよ! だから、山札から三枚を捲るよ!」
《ジャックポット》の呼び声によって、新たな龍が呼び覚まされる。
暁が捲った三枚は、《天守閣 龍王武陣》《コッコ・ルピア》《龍世界 ドラゴ大王》。
それを見た瞬間、暁はほぼ反射でそのカードを掴み取り、バトルゾーンへと投げつける。
「よし来た! 頼んだよ! 《龍世界 ドラゴ大王》をバトルゾーンに! 《ドラゴ大王》の能力で、《ジャックポット》と《ロードリエス》を強制バトル!」
「あ……ってことは……」
「その通りですよ。もっかい《ジャックポット》の能力発動! 山札の上から三枚を捲って——」
捲られたカードは、《ネクスト・チャージャー》《怒英雄 ガイムソウ》、そして——
「——《勝利天帝 Gメビウス》! そのままバトルゾーンへ!」
《ドラゴ大王》と並ぶ、暁のデッキにおける最重量ドラゴン。
強烈にシナジーし合う三つの能力によって、圧倒的な攻撃力、破壊力を叩き出す勝利の龍。
ドラゴン以外の存在を許さず、相手を束縛する《ドラゴ大王》とは対極にある強さ。それを、今ここで示す。
「ドラゴンは揃ったし、一気に攻めるよ! 《Gメビウス》で攻撃!」
「《パーフェクト・マドンナ》でブロックするよ……っ」
「でも、このターン初めてタップされたから、《Gメビウス》はアンタップ! もう一度攻撃!」
「《ユリアーナ》でブロック……!」
アタックトリガーによる6000火力は、《ユリアーナ》が選べないため、場を離れない《パーフェクト・マドンナ》しか対象なので効果がないが、それでもTブレイカーの大型獣が二連続で攻撃するとなれば、相当な脅威となり得る。
実際、《Gメビウス》の二連撃で、姫乃のブロッカーはすべて行動不能になった。もはや、暁の猛攻を止める壁は存在しない。
「よーし、ガンガン行くよ! 《ドラゴ大王》でTブレイク! さらに、《ガイアール・アクセル》でWブレイク!」
これで姫乃のシールドはゼロになる。さらに暁の場には《コッコ・ルピア》《バクアドルガン》《タイマンド・ツクデ》と、三体のアタッカーが並んでおり、除去トリガーの一枚や二枚では止められない。
「んぅ……S・トリガー発動、《スパイラル・ゲート》だよ」
《ガイアール・アクセル》のブレイクした一枚目のシールドが、トリガーに引っかかった。
しかし、たった一体のクリーチャーを除去する《スパイラル・ゲート》では暁は止まらない。
姫乃はどのクリーチャーを除去するか悩んでいるようだった。そして、やがて一体のクリーチャーに、おずおずと指を向ける。
「……《ドラゴ大王》を手札に戻すよ」
「《ドラゴ大王》? まあ、いいですけど……攻撃できるクリーチャーを減らさなくていいんですか?」
「うん、いいよ。一体だけ戻しても効果は薄そうだし、ドラゴン以外が召喚できない方が困っちゃうし……」
それでも神様頼みになっちゃうけど、と姫乃ははにかむような、困ったようでありながらも微笑むような表情を見せる。
まるでこの危機的状況を楽しんでいるかのように。
いや、この対戦そのものを、喜んでいるかのようだった。
「……まあいいか。最後のシールドもブレイクですよ!」
《ガイアール・アクセル》が最後のシールドを砕く。これで、本当に姫乃のシールドはなくなった。
あとは、残ったクリーチャーでとどめを刺すだけ——
「……来たよ」
——と、思った刹那。
姫乃のシールドから、一枚のカードが飛び出す。
「S・トリガー——《ヘブンズ・ゲート》」
「え?」
「手札から、《勝利の女神ジャンヌ・ダルク》と《天国の女帝 テレジア》をバトルゾーンに出すよ」
勝利の女神ジャンヌ・ダルク 光文明 (7)
クリーチャー:メカ・デル・ソル/ハンター 7500
ブロッカー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、または、このクリーチャーが攻撃あるいはブロックした時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを2体まで選び、タップしてもよい。
W・ブレイカー
火の呪文または火のクリーチャーの能力によって、相手がバトルゾーンにあるクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。
天国の女帝 テレジア 光文明 (8)
クリーチャー:メカ・デル・ソル/ハンター 8000
ブロッカー
自分のターンのはじめに、「ブロッカー」を持つ光のクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー
天国の門扉より現れたのは、勝利を確約する救世主と、麗しき美貌を持つ女帝。光に導く二体の女神だった。
まずは、戦乙女の女神が、その光を放つ。
「《ジャンヌ・ダルク》の能力で、《バクアドルガン》と《タイマンド・ツクデ》をタップするよ」
「っ、止められちゃった……!」
これで暁の攻撃可能なクリーチャーは《コッコ・ルピア》のみ。しかし、新たに現れたブロッカー二体の前に、小さな火の鳥が攻められるわけもなく、暁の攻撃はここまでだった。
「ふぅ、危なかった……じゃあ、わたしのターンだね。カードをドローする前に、《テレジア》の能力を発動するね」
次に、愛慕の女神が輝きを放つ。
「手札から光のブロッカー、《知識の精霊ロードリエス》をバトルゾーンに出すよ。《ロードリエス》の能力でカードをドロー」
「さらに、もう一体《ロードリエス》を召喚。二体の《ロードリエス》の能力で、カードを二枚引いて……《光器ユリアーナ》を召喚。《ロードリエス》二体の能力で、カードを二枚引くね」
ドローを重ねる姫乃。その行為になにか嫌なものを感じる暁だが、まだ自分の勝ち目は十分あると言い聞かせる。
事実、現実的に考えて、暁はまだ十分勝てる状況にあるのだ。姫乃のアタッカーは《ジャンヌ・ダルク》と《テレジア》だけなので、このターンではとどめは刺されない。返しのターンに《ドラゴ大王》でブロッカーを薙ぎ払いつつ、シノビなどもロックすれば、いくらブロッカーを並べようと、姫乃はジリ貧になるだけ。
なので暁は自分の勝利をまだ信じていた——この瞬間までは。
「あ……引けた」
《ロードリエス》で度重なるドローを続けていた姫乃の顔が、パァっと明るくなる。
しかし彼女のマナは既にゼロ。すべて使い切ってしまった。なにかキーカードを引いたとしても、このターンには使えないはず。
そんな暁の考えを否定するようなカードが、姫乃の手札から飛び出す。
「G・ゼロ——《光器の裏技ディーヴァ・ライブ》」
光器の裏技ディーヴァ・ライブ 光文明 (5)
呪文
G・ゼロ—バトルゾーンに自分のメカ・デル・ソルがあれば、この呪文をコストを支払わずに唱えてもよい。
このターン、自分のクリーチャーの、攻撃できない能力はすべて無効になる。(ただし、召喚酔いは無効にならない)
ターンの終わりに、バトルゾーンにある自分のクリーチャーをすべてアンタップする。
「わたしの場にメカ・デル・ソルがいるから、G・ゼロ発動。タダでこの呪文、《ディーヴァ・ライブ》を唱えるよ」
「な、なにそれ……?」
「《ディーヴァ・ライブ》はね、このターンに限り、わたしの攻撃できないクリーチャーすべてを、攻撃できるようにするの」
召喚酔いは解けないけどね、と付け足すように姫乃は言うが、そんなことはどうでもよかった。いや、召喚酔いまで解けないだけましではあるが、どちらにせよ暁の危機は変わらなかった。
姫乃のアタッカーは《ジャンヌ・ダルク》と《テレジア》に加え、二体の《パーフェクト・マドンナ》も追加されることとなる。
つまり、このターンに暁にとどめを刺すだけの戦力が揃ってしまったのだ。
「やっば……!」
「《テレジア》でシールドをWブレイクだよ」
まずは《テレジア》の攻撃が、暁のシールドを吹っ飛ばす。どうにかして姫乃の攻撃を止めなければ、暁の負けだ。
そう、暁が思った瞬間、
「っ! S・トリガー! 《天守閣 龍王武陣》!」
《テレジア》が割ったシールドから、S・トリガーが飛び出す。
《龍王武陣》の能力で、暁は山札を捲る。一枚ずつ、ゆっくりと捲っていく。
《コッコ・ルピア》《メテオ・チャージャー》《撃英雄 ガイゲンスイ》《爆竜 バトラッシュ・ナックル》——
「——これだ! 《爆竜勝利 バトライオウ》! 《ジャンヌ・ダルク》を破壊!」
五枚目に捲れた《バトライオウ》を掴み取り、暁は《龍王武陣》の火力を放つ。
《バトライオウ》のパワーは8000、《ジャンヌ・ダルク》のパワーは7500。
ギリギリだが破壊することのできる圏内だ。《龍王武陣》の砲撃によって《ジャンヌ・ダルク》は破壊され、姫乃の攻撃は止められる。
——と、暁は思っていたが、
「あ……ごめんね、それはできないの」
「え? な、なんで!?」
「《ジャンヌ・ダルク》は火のクリーチャーの効果や呪文では選ばれないから……だから、《龍王武陣》では、《ジャンヌ・ダルク》は選べないの」
その火力は、《ジャンヌ・ダルク》には向かわなかった。
「うっそ……じゃ、じゃあ、《パーフェクト・マドンナ》を……」
「《パーフェクト・マドンナ》はパワーがゼロにならないと場を離れないよ?」
「あー、そうだった! てことは、どれを破壊すればいいの……!?」
「他のクリーチャー……?」
というわけで《テレジア》を破壊した暁だが、この時点で絶望感が一気に襲ってくる。
火のカードでは選ばれない《ジャンヌ・ダルク》とパワー低下以外では場を離れない《パーフェクト・マドンナ》。
この二体が攻撃してくるとなれば、火単色デッキの暁では、どう考えても止めようがなかった。
《ディーヴァ・ライブ》を唱えられた瞬間に、勝ち筋は完全に潰されていたのだ。
「えっと、それじゃあ《ジャンヌ・ダルク》でWブレイク。それから、《パーフェクト・マドンナ》でシールドをブレイク」
「……トリガー、ないです……」
たとえあっても、《ジャンヌ・ダルク》も《パーフェクト・マドンナ》も止めようがない。いや、実際は《熱血龍 バトクロス・バトル》や《めった切り・スクラッパー》をトリガーしているのだが、出す意義を見出せず、そのまま手札に加えた。
不可能という壁によって押し潰された暁は、諦念のまま、手札を置いた。
「《光器パーフェクト・マドンナ》で、ダイレクトアタックだよ」