二次創作小説(紙ほか)
- 61話 「確立途中」 ( No.223 )
- 日時: 2015/08/19 06:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
《エビデンス》は龍解し、《龍素王 Q.E.D.》へと成る。
呪文では選ばれないので、場から退かすには、バトルで破壊するかクリーチャーの能力に頼るしかない。しかし、ほとんど小〜中型クリーチャーで占められている黒村のデッキでは、クリーチャーで《Q.E.D.》を除去することは非常に困難だろう。
場に留まらせておけば、《Q.E.D.》は多大な恩恵をもたらす。少し間を置いて莫大なアドバンテージを得てから、物量で一気に攻め込もうと、浬は考える。
「……俺のターン。《ジオ・ナスオ》を召喚。山札の上から一枚をマナへ置き、マナから《ザビ・クロー》を墓地へ送り、この《ザビ・クロー》を進化元に《デスマーチ》を召喚。さらに、俺の場にデスパペットが二体。シンパシーでコストを2軽減し、《無双恐皇ガラムタ》を召喚だ」
「《ガラムタ》……」
無双恐皇ガラムタ 闇/自然文明 (6)
クリーチャー:ダークロード/アース・ドラゴン 5000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
シンパシー:デスパペットおよびビーストフォーク
このクリーチャーが攻撃する時、このターンの終わりまで、誰も「S・トリガー」を使うことはできない。
ようやく、浬は謎が解けた。
黒村が速攻ではなく中速気味なビートダウンにしている理由は、ひとえにこのクリーチャーにあったのだ。
《ガラムタ》は攻撃すると、そのターンに限りS・トリガーを一切合切封殺するクリーチャー。相手の逆転を許さない、詰めの一手になる。
シンパシーがあるとはいえコスト6。速攻に入ろうはずのないクリーチャーを採用するため、そしてシンパシーを生かすため、速攻では敬遠しがちな3〜4コストのデスパペットやビーストフォークを採用していたのだろう。
「ですが、《Q.E.D.》が出たからには、安易に攻めさせませんよ。《Q.E.D.》の能力で、俺は各ターン一度ずつ、コストを支払わずに水のクリーチャーの召喚と、水の呪文を唱えられます。その能力で、タダで《龍素記号IQ サイクロペディア》を召喚! カードを三枚ドロー! 続けて《Q.E.D.》の能力発動! タダで《龍素解析》を唱えます!」
手札をすべて山札に戻し、浬は新たにカードを四枚引く。
そして、その中からコスト7以下のコマンド・ドラゴンを呼び出す。
「《理英雄 デカルトQ》をバトルゾーンへ! カードを五枚引き、手札とシールドを一枚ずつ入れ替えます。」
立て続けに大型のクリスタル・コマンド・ドラゴンを展開する浬。これほど巨大なクリーチャーを並べられれば、黒村の小型クリーチャーは押し潰されてしまうことだろう。
「《ジャバ・キッド》を進化! 《超閃機 ジャバジャック》! カードを四枚引き、二枚を山札下に! さらにシンパシーでコストを下げ、1マナで呪文《スパイラル・フォーメーション》! 《ガラムタ》をバウンス!」
今度は通常のマナを支払い、《ジャバジャック》、《スパイラル・フォーメーション》とカードを使用する。
「ターン終了です」
しかしこのターンはまだ攻めない。まだ攻め時ではない。
ビートダウン相手に、下手に手札を増やすのは危険だ。特に黒村は、場のクリーチャー以外から進化する進化クリーチャーをふんだんに使用した、闇と自然の速攻を雛型にしたデッキだ。いつ、どのように奇襲されるかわかったものではない。
ゆえに、戦力を整えてから、確実に決める。展開したクリーチャーの召喚酔いが解ける次のターンまで待つのだ。
「……《ジオ・ナスオ》を召喚。マナを追加し、マナゾーンから《ガラムタ》を墓地へ。さらに《父なる大地》を発動し、《デカルトQ》をマナゾーンの《アクア超人 コスモ》と入れ替える」
対する黒村は、特にすることもなさそうに、とりあえず手札にあるカードを使ったという感じで、クリーチャーを並べる。
《デカルトQ》は除去されたが、ブロッカーはいない。
攻めるなら今だ。
「俺のターン! 《Q.E.D.》の能力で《龍覇 メタルアベンジャー》を召喚! 《龍波動空母 エビデゴラス》をバトルゾーンへ! 続けて《Q.E.D.》の能力で《龍素解析》を唱えます! 手札をすべて山札に戻し、四枚ドロー……手札から《龍素記号Tb ドロダブルBros.》をバトルゾーンへ!」
またも《Q.E.D.》のコスト踏み倒しでアドバンテージを稼いでいく浬。どれだけ大きなカードでも、一回はタダで使えるので、1ターン内に取れるアドバンテージはかなり大きい。
ターンが進めば進むほど、その得られるアドバンテージはどんどん大きくなっていくので、必然的に流れは浬へと向いていた。
「さらに! このターン、俺はカードを五枚以上引いたので、《エビデゴラス》を龍解! 《最終龍理 Q.E.D.+》!」
このターン中に呼び出したフォートレスなので、このターンにすぐに攻撃はできないが、《エビデゴラス》も龍解し、威圧するように《Q.E.D.+》へと裏返る。
「《龍素記号JJ アヴァルスペーラ》《アクア・ソニックウェーブ》を召喚! 《英雄奥義 スパイラル・ハリケーン》を手札に加え、《デスマーチ》をバウンス!」
通常マナも支払い、クリーチャーを大量展開する浬。
邪魔なブロッカーも退かし、これで完全にとどめまで刺す体勢に入った。
「《ジャバジャック》でシールドをWブレイク! 《サイクロペディア》でWブレイク!」
二体のクリーチャーが、一気に形人のシールドを砕く。
「S・トリガーだ。呪文《インフェルノ・サイン》」
「……っ」
一瞬、焦りが生じた浬だが、すぐに安堵する。
(《インフェルノ・サイン》なら問題ない……墓地の《イルルカ》をリアニメイトしても、俺の攻撃は防ぎきれないはず)
そう考える浬だが、しかし黒村の取った行動は、彼の考えの先を行っていた。
「《インフェルノ・サイン》で墓地の《ガラムタ》をバトルゾーンへ」
「《ガラムタ》……?」
ここで戻すクリーチャーとして、《イルルカ》ではなく《ガラムタ》を選んだ黒村。その選択は、些か不可解だ。
しかし、考えられないわけでもない。ただ、
「トリガー頼りだなんて、らしくないですね、形人さん」
「それしか道はなさそうだからな」
確かに、黒村の言うとおりだ。
《イルルカ》を戻しても勝ち目がないなら、もう一枚のトリガーに賭け、次のターンの反撃に備えるのも分かる。それでも、もう一枚のトリガーが分からないなら、ブロッカーの《イルルカ》を戻す方が無難な気はするが。
しかし浬は、ほとんど勝利を確信して、攻め続ける。場には呪文では選ばれないアタッカーがいるのだ。そう簡単には凌げまい。
「《アクア・サーファー》で最後のシールドをブレイク!」
「…………」
これで、黒村のシールドはなくなった。
この一枚がトリガーでなければ、彼の敗北は確定するが、
「S・トリガーだ。《地獄門デス・ゲート》」
「……っ! でも、俺の場には《Q.E.D.》が……」
「ならば《M・A・S》を選ぶだけだ」
このターンに攻撃できる浬のクリーチャーは、《ジャバジャック》《サイクロペディア》《アクア・サーファー》《Q.E.D.》《M・A・S》の五体だ。このうち、前の三体は既に攻撃した。
そして残るのは、後ろの二体だが、《Q.E.D.》は呪文では選ばれない。
しかし、《M・A・S》は、呪文で選ばれるクリーチャーだ。
「《ジェニー》でドラグナー落とされ、返しのターンで即座にリペアしたのは良かったが……そいつは《メタルアベンジャー》ではない。《デス・ゲート》の生贄となってもらうぞ」
「ぐ……!」
《デス・ゲート》に飲み込まれる《M・A・S》。これで浬のアタッカーが一体減り、
「墓地からコスト6未満のクリーチャー……《変身人形イルルカ》をバトルゾーンへ」
黒村にブロッカーができてしまった。
これでは、形人のシールドがゼロとはいえ、《Q.E.D.》のダイレクトアタックが届かない。
「蛇足だが、俺は《ダンディ・ナスオ》で事前に山札を見ていた。ゆえに、シールドの中身も把握している。お前がこのターンにシールドを割りに来たからこそ、俺は反撃準備を整えることができた」
「くっ……《Q.E.D.》で攻撃! ダイレクトアタック!」
「《イルルカ》でブロック」
ダメ元でダイレクトアタックを仕掛ける浬だが、その一撃は防がれてしまう。
これで浬のアタック可能なクリーチャーはいなくなった。このターン、浬はこれ以上のことはできず、ターンを終えるしかない。
そして、来たる黒村のターン。
「《密林の総督ハックル・キリンソーヤ》二体をマナ進化で、《死神術士デスマーチ》を墓地進化でそれぞれ召喚」
黒村はダメ押しのように、一気に進化クリーチャーを並べて来る。
浬のブロッカーはたった一体。十体近く並んだ黒村の大量のクリーチャーを防ぎきることはできない。
《デカルトQ》でS・トリガーこそ仕込んだが、それも、《ガラムタ》の前では意味をなさない。
「《ガラムタ》で攻撃、このターンのトリガーを封じるぞ」
「く……っ! 《アヴァルスペーラ》でブロック!」
しかし、結果的にそのブロックは無意味だった。
《ジェニー》《青銅の鎧》《ハックル・キリンソーヤ》と、黒村のクリーチャーが連続で浬のシールドを打ち砕く。
その中には、浬が仕込んだ《終末の時計 ザ・クロック》や元々シールドにあった《英雄奥義 スパイラル・ハリケーン》などもあったが、今は《ガラムタ》によってすべてのS・トリガーが封殺されている。どれだけ強力なトリガーが出ようと、それはすべて闇に潜ってしまう。
そして、シールドがすべて割られた浬は、最後の一撃を喰らうだけだ。
「《死神術士デスマーチ》で、ダイレクトアタックだ」