二次創作小説(紙ほか)
- 62話 「合同合宿会議」 ( No.227 )
- 日時: 2015/08/23 07:15
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
沙弓とミシェルのデュエル。
沙弓の場にはなにもない。《ボーンおどり・チャージャー》でマナを伸ばしつつ、墓地を肥やすだけだ。
一方ミシェルの場には《フェイト・カーペンター》が一体。事前に《エマージェンシー・タイフーン》も使いつつ、沙弓以上に墓地を増やしている。
「四天寺さんは墓地を活用するデッキだったわね。だったら、こういうのがお好みかしら?」
そう言って、沙弓は手札からカードを一枚引き抜いた。
「呪文《超次元ミカド・ホール》。《フェイト・カーペンター》のパワーを2000下げて、パワー0以下になった《フェイト・カーペンター》を破壊。さらに、超次元ゾーンから《時空の封殺ディアス Ζ》をバトルゾーンへ」
「げ……厄介なのが来やがった……」
時空の封殺ディアス Ζ(ゼータ) 闇文明 (8)
サイキック・クリーチャー:デーモン・コマンド/ドラゴン・ゾンビ 7000
E・ソウル
殲滅返霊4
返霊—相手は、バトルゾーンまたは手札から自身のカードを1枚選び、山札の一番下に置く。
W・ブレイカー
覚醒—自分のターンの終わりに、そのターン、相手のクリーチャーが3体以上バトルゾーンを離れていた場合、このクリーチャーをコストの大きい方に裏返す。
ミシェルのデッキは、いわゆる墓地ソースと呼ばれる、大量に墓地を増やしてフィニッシャーを呼ぶデッキだ。
そのデッキの弱点は単純明快。増やした墓地を失くしてしまえばいい。それだけで、相手は一気に減速するのだ。
そしてそれを為すのが、沙弓の呼び出したサイキック・クリーチャー、《ディアボロス Ζ》。殲滅返霊によって、自分と相手の墓地を山札に戻しつつ、相手のクリーチャーや手札を奪うことができる。
このクリーチャーの登場によって、状況は沙弓に傾いたことであろう。
「こんな奴、お呼びじゃねぇんだがな……あたしのターン。除去はないし、やれることをやるしかないか。《日曜日よりの使者 メーテル》を召喚。ターン終了だ」
「なら、私のターンね。《墓標の悪魔龍 グレイブモット》を召喚。山札の上から二枚を墓地に送って、《ディアス Ζ》で攻撃。その時、殲滅返霊4を発動するわ。対象は両プレイヤー」
《ディアス Ζ》の攻撃と同時に、沙弓、ミシェル双方の墓地からカードが四枚、山札へと戻される。
これにより《ディアス Ζ》の返霊条件が満たされた。発動する返霊回数は二回。つまり、ミシェルは場か手札のカードを山札に戻さなければいけないことになる。
「さ、選んで。クリーチャーを取るか、手札を取るか」
「チッ……手札二枚を山札の下へ戻す」
舌打ちしつつ、手札を二枚選んで山札の下へと戻すミシェル。まだここで《メーテル》は失えない。
二枚のシールドブレイクを喰らいつつ、ミシェルはシールドを確認するも、S・トリガーはなし。
「あたしのターン。《メーテル》の能力で二枚ドローし、手札一枚を墓地へ捨てる」
《メーテル》の能力で、ミシェルはドローに反応して墓地を肥やせるのだ。《ディアス Ζ》の返霊の種にされるとはいえ、一度に戻せる枚数は4枚が限度。それを超える数の墓地肥やしをすれば、まだ活路が見えるかもしれない。
そう思いながら、手札を見つめる。どの手がこの状況から勝ち筋を拾えるのか、思索を巡らせる。
「……これっきゃないか」
そして、ミシェルは手札からカードを一枚抜き取った。
マナチャージをして、そのマナをすべてタップする。
「呪文《スクランブル・タイフーン》だ!」
「おっと……そう来るのね……!」
《スクランブル・タイフーン》は、カードを五枚引き、手札を三枚捨てる、大型の手札交換呪文。
しかしミシェルは、実際の《スクランブル・タイフーン》以上に、一気に墓地を増やすつもりなのだ。
《メーテル》によって。
「《メーテル》の能力発動。あたしがカードを引くたびに、《メーテル》の能力で一枚余剰に引き、カードを捨てる。これを5セット繰り返してから、《スクランブル・タイフーン》の能力で、手札を三枚捨てるぞ」
カードを大量に引き、その最中で手札を捨て、一気に墓地を肥やすミシェル。この1ターンだけで、ターン初めのドローで1枚、《スクランブル・タイフーン》で5枚+3枚。合計で9枚ものカードを墓地に落としたことになる。
「これで墓地は十分だ。G・ゼロ発動! 《百万超邪 クロスファイア》を召喚! 《クロスファイア》で《ディアス Ζ》を攻撃! パワーアタッカーは+100万だ!」
「《グレイブモット》でブロック! この時、私のドラゴンが破壊されたから《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を墓地から回収するわ」
《ディアス Ζ》だけはなんとしてでも守り通す沙弓。相手の墓地をできるだけ取り除き、妨害したい。これ以上大型のフィニッシャーが出て来られては、沙弓としても困るのだ。
「《ボーンおどり・チャージャー》を唱えて、《黒神龍アバヨ・シャバヨ》を召喚。私は《アバヨ・シャバヨ》を破壊するわ」
「ならあたしは《メーテル》を破壊だ」
「《ディアス Ζ》で《クロスファイア》を攻撃、殲滅返霊4を発動!」
互いの墓地のカードを四枚、墓地へと戻す。
これでまた、ミシェルの墓地は減らされ、そして場のクリーチャーか手札を選択することとなってしまった。
しかも今回はさらに複雑な選択だ。《ディアス Ζ》が《クロスファイア》を攻撃してきたので、《クロスファイア》を失うことは確定事項。ただし、《ディアス Ζ》と道連れになるか、手札を取って一方的にやられるかを選ばなくてはならない。
しかしこの時、ミシェルの選択は既に決まっていた。
沙弓がそう来ることを、見通して。
「《クロスファイア》と手札一枚を山札に戻す」
そう宣言して、ミシェルは手札を一枚選び、攻撃対象にされた《クロスファイア》と一緒に山札へ送還。攻撃対象を見失った《ディアス Ζ》の攻撃は中止となる。
「ここで相打ちを狙わないということは……嫌な予感がするわね……」
だが沙弓はこのターンにできることは、もうない。ターンを終えることしかできなかった。
そして、ミシェルのターン。
彼女の切り札が、降臨する。
「暴走せし無法の龍よ、すべての弱者を焼き尽くせ——《暴走龍 5000GT》!」
無法者の雄叫びが轟き、大地を踏み締め、戦場へと降り立つ。
「あたしの墓地にクリーチャーは六体。よってコストを6軽減し、ちょうどピッタリ6マナ支払い、こいつを召喚だ。そして、こいつの登場時能力で、パワー5000以下のクリーチャーと——」
数多の屍を乗り越え、暴走する《5000GT》。多くの死者の声によって、より速く戦場を駆け、そして、弱者を滅する。
だが、彼の定義する弱者は、異世界の者も含まれるのだった。
「——サイキック・クリーチャーを破壊する」
刹那、《ディアス Ζ》が吹き飛んだ。
「これはまずいかしら……」
場のクリーチャーを一掃され、大型クリーチャーを出されてしまった。沙弓が最も恐れていた展開だ。
「こっからガンガン攻める! 《5000GT》でTブレイク!」
「……S・トリガー発動、マナ武装5でトリガーになった《惨事の悪魔龍 ザンジデス》を召喚」
《5000GT》が砕いたシールドから、クリーチャーが飛び出す。《5000GT》によってパワー5000以下のクリーチャーは召喚できないが、《ザンジデス》のパワーは6000のため、その制約には引っかからない。
だが同時に、《ザンジデス》の能力だけでは《5000GT》は止められない。ちょっとやそっとのパワー低下では、パワー12000の《5000GT》を止めることなどできはしない。
「なかなかに、まずいことになっちゃったわね。でも……」
まだ、終わらない。
まだまだ、足掻くことはできる。
この程度ならば。
「さぁ、抗いましょう。この逆境に」
相手の場には《暴走龍 5000GT》。こちらの場には《惨事の悪魔龍 ザンジデス》。シールド枚数は、こちらが二枚、相手が三枚。
一見すれば沙弓劣勢のこの状況。しかし、彼女は抗う。
闇の流星が、戦場へと降り立つ——
「抗いましょう——《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》」