二次創作小説(紙ほか)
- 66話 「浬vsヘルメス」 ( No.238 )
- 日時: 2015/09/28 12:17
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
浬とヘルメスのデュエル。
お互いのデッキは水単色。そして、どちらも呪文を活用するデッキのようであった。
浬の場には《アクア少年 ジャバ・キッド》《アクア鳥人 ロココ》《アクア大尉 ガリレオ・ガリレイ》。さらに《ブレイン・チャージャー》でマナを伸ばしている。
対するヘルメスの場には《クゥリャン》が二体。こちらも《ブレイン・チャージャー》で浬の加速に追いつきつつ、序盤には《エマージェンシー・タイフーン》を唱えていた。
「俺のターン。《ガリレオ・ガリレイ》のマナ武装5により、次に唱える呪文のコストを3軽減。コスト1で、呪文《スペルブック・チャージャー》を唱える」
《ライフプラン・チャージャー》の呪文版とも言える、呪文をサーチしつつ、チャージャーでマナを伸ばす呪文《スペルブック・チャージャー》。
浬は目の前に開かれた魔導書(スペルブック)から、必要な呪文を選択する。
「……《スパイラル・ゲート》を手札に加え、チャージャーでマナへ。さらに《龍覇 M・A・S》を召喚! 《クゥリャン》をバウンス!」
《M・A・S》の放つ水流により、《クゥリャン》がヘルメスの手札へと押し戻されるが、《M・A・S》が為すべきことは、それだけではない。
「《M・A・S》のもう一つの能力で、超次元ゾーンからコスト4以下の水のドラグハート——《龍波動空母 エビデゴラス》をバトルゾーンへ!」
「ふぅん……なかなかやるじゃないか」
クリーチャーを展開しつつ、ドラグハート・フォートレスを呼び出す浬。そんな彼を、ヘルメスは値踏みするように見つめている。
「だけど、それじゃあまだ足りないな。神話の力っていうのは、もっと強大で途方もないものだ」
君の理解を越えるくらいにね、とヘルメスは軽い口振りで言う。
しかし上っ面が軽くても、いやさ軽く言うが故に、その裏の重みは計り知れない。そもそもこの世界を統治していたクリーチャーの一柱、弱いわけがない。
だがしかし、浬はヘルメスの言葉を、一笑に付してみせた。
「ふん、口ではいくらでも言えることだな。俺を脅すつもりなのか、はたまた負け惜しみかは知らんが、根拠と証拠のない証明に価値はない」
そうだ。いくらヘルメスが口で強い強いと言っても、神話と呼ばれたクリーチャーはもう、この世界には存在していない。
存在しないものの強さを誇示されたところで、そんなものはただのおとぎ話で、本当の意味での神話にすぎない。戦いの中でその神話が、どれほどの意味を持てるというのか。
「へぇ、あっそう……そういうこと言うんだ。なら、見せてあげようか?」
「なに……?」
だがヘルメスは、薄ら笑いを浮かべて、そんなことを言った。
「いやいや、君が根拠と証拠がないとか、価値がないとか、ただのおとぎ話だとか、散々なことを言うもんだから、ちょーっとだけ、プライドに障ったかも」
「絶対ちょっとどころじゃないですよ……ブチギレてますよ、きっと……」
「今の言葉は聞き流してあげよう。こう見えても僕は自分の力に自信があるし、プライドも高いつもりだ」
ヘルメスはさらに饒舌になり、続ける。
「僕の力は、ともすれば十二神話最強さ。僕の前ではネプトゥーヌスもアポロンも、マルスもプロセルピナもヴィーナスもアルテミスもハーデスもアテナもケレスも、国王ユピテルとその王妃ユノ、十二神話筆頭の二人だって封殺してみせるさ。僕の力は、そういうものだ」
「御託ばかり並べて説得力を持たせているつもりか? お前のそれはただの自己陶酔だ。さっさとターンを進めろ」
「せっかちだねぇ……まあ、しかし君の言うことももっともだ。君に証明するならばやはり、論より証拠が効果的だろう。というわけで、見ててごらん。ほら、《サイバー・G・ホーガン》を召喚だ」
サイバー・G・ホーガン 水文明 (8)
クリーチャー:サイバー・コマンド 8000
M・ソウル
W・ブレイカー
激流連鎖
ヘルメスが召喚したのは、機械のような身体を持つ巨人。荒れ狂う水流を散らしながら、がっしりとその手で巨大な砲丸を握りしめている。
「その能力、激流連鎖で、山札の上から二枚をめくるよ。一枚目は《アクア工作員 シャミセン》。三枚引いて、手札三枚を墓地へ」
《サイバー・G・ホーガン》の能力は、連鎖。その中でも上位に位置する激流連鎖だ。
激流連鎖は山札を二枚めくり、《ホーガン》自身よりコストの小さいクリーチャーをすべてバトルゾーンに呼び出す。つまり、最大で二体のクリーチャーが場に並ぶのだ。
その一体目が、《シャミセン》。能力で浬も手札を入れ替えさせてもらった。
「そしてもう一枚——」
だが、その程度の手札交換は微々たるものだ。
激流連鎖の効果適用範囲は広い。コスト8未満というだけでなく、踏み倒せるクリーチャーのタイプまでも、限定しない。
それはつまり、進化クリーチャーをも呼び出せるということ。
「——賢者の英知はこの手にあり、愚者の無知は我が行いにあり。禁忌を厭わず愚かさを受け入れよ、賢人たりえるすべての知識を、我が者とするために」
ザクッ、ザクッ、ザクッ、とヘルメスの場のクリーチャー——《クゥリャン》《サイバー・G・ホーガン》《アクア工作員 シャミセン》の三体が水晶に閉じこめられる。
さらに水流が逆巻き、水晶を包み始めた。
遙か遠くにあるはずの、神話の力を呼び覚ますために。
「神々よ、調和せよ! 進化MV!」
三つの水晶が水流の中で一つとなり、その中で賢しき愚者、愚かな賢者が誕生する。
「——《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》!」