二次創作小説(紙ほか)

69話 「強欲街道(グリードストリート)」 ( No.247 )
日時: 2015/10/04 13:52
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)

「貴様、何者だ。誰の許可を得てこの街道を通っている。関税は払ったのか?」
「…………」
「答えないか、まあいい。貴様がなにを考えているかは知らんが、貴様を処分した後、貴様のすべてを奪い尽くしてやろう」
 それが私の存在理由だ、と言って、アワルティアは長い長い舌を出す。
 現在、少女とアワルティアのデュエルは、どちらも攻めを見せず、準備を進める形となっている。
 少女の場には《絶叫の影 ガナル・スクリーム》が一体。墓地を肥やしつつ、《特攻人形ジェニー》で手札を削っている。
 対するアワルティアの場には《オタカラ・アッタカラ》《コッコ・ドッコ》の二体。序盤から積極的にカードを使用し、手札破壊も受けた影響で息切れしているが、《ブラッディ・クロス》《ボーンおどり・チャージャー》《プライマル・スクリーム》と、墓地を肥やす呪文を連打しており、墓地が非常に多い。
「私のターン……《龍覇 ウルボロフ》を召喚」
 少女が繰り出すのは、闇のドラグナー、《ウルボロフ》。
 ぬいぐるみのような姿をしているものの、両手にはめた赤いグローブと、飢えた狼のようにギラギラと輝く獰猛な眼差しが、ただのぬいぐるいみではない狂気を感じさせる。
「《ウルボロフ》がバトルゾーンに出た時、超次元ゾーンより、コスト4以下の闇のドラグハートを呼び出せます。地獄より、罪の凶器をここに——《獄龍刃 ディアボロス》」



龍覇 ウルボロフ 闇文明 (6)
クリーチャー:ファンキー・ナイトメア/ドラグナー 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト2以下のドラグハート1枚、または、コスト4以下の闇のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
スレイヤー



獄龍刃 ディアボロス ≡V≡ 闇文明 (4)
ドラグハート・ウエポン
このドラグハートをバトルゾーンに出した時、クリーチャーを1体、自分の墓地から手札に戻す。
龍解:自分のターンのはじめに、クリーチャーを2体、自分の手札から捨ててもよい。そうした場合、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。



 地底に封じられし、龍の魂を秘めた破壊の刃《ディアボロス》。
 呪符によって封印されていたその刃は、龍と心通わせる者の雄叫びを聞き、今、目覚める。
 すべての束縛を引きちぎり、その刃は戦場へと赴いた。
「《ディアボロス》を《ウルボロフ》に装備。能力で墓地の《特攻人形ジェニー》を回収。ターン終了」
 《ウルボロフ》は地中より飛び出した《ディアボロス》を掴み取り、そして《ディアボロス》が引き連れる死者の魂を取り込む。
「また手札を破壊する作戦か? だが、もう遅いぞ」
 アワルティアは少女を見透かしたように言うと、手札を切った。
「《コッコ・ドッコ》により、私のコマンド・ドラゴンを召喚するコストは3軽減される。コストを引き下げ、4マナを支払う」
 悪夢のぬいぐるみによって、マナの消費を抑えるアワルティア。
 そしての己の罪を顕現させる。

「出でよ、我が罪の証にして、私自身——《強欲の悪魔龍 アワルティア》!」

 現れたのは、七体存在すると言われる大罪の一角、《アワルティア》。
 その罪は、強欲。
 すべてを手に入れ、すべてを奪い、すべてを我が物とするために、どのような罪をも犯す、貪欲なるもの。
 彼は価値のあるものならば、どんなものでも求める。それはたとえば財宝という富であり、それはたとえば支配者という名声であり、それはたとえば——死者という魂である。
『私の能力で、私の墓地に存在するファンキー・ナイトメアをすべて手札に!』



強欲の悪魔龍 アワルティア 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、ファンキー・ナイトメアをすべて、自分の墓地から手札に戻す。
W・ブレイカー



 《アワルティア》は長大な舌を伸ばして、墓地に落とされたすべてのファンキー・ナイトメアをすくい取ってしまう。
 そして、その命を、彼の手中に収めた。
「…………」
 少女は、そんな彼を、無感動に見つめていた。黒く深い、その瞳で。
 《アワルティア》は序盤からかなり墓地肥やしに力を入れており、墓地に落ちていたファンキー・ナイトメアの数は相当多い。ゆえに、その能力で手に入った手札の量も膨大だ。
 これでは《ジェニー》で一枚一枚ちまちま手札を落としていてはキリがない。それよりも早く、《アワルティア》が物量で押してくるに決まっている。
『さらに余ったマナで《強襲のボンスラー》を召喚! ターン終了だ』
「……私のターンの初めに、手札のクリーチャーを二枚、墓地へ」
 少女は手札にある、先ほど回収した《特攻人形ジェニー》と、元々手札にあったらしい《ガナル・スクリーム》を墓地へ置いた。
『自ら手札を……一体なにをするつもりだ?』
「《ディアボロス》の龍解条件は、ターン初めに手札のクリーチャーを二体、生贄に捧げること……さぁ、始めましょう」
 断罪を、と少女は宣告する。
 そして、巨大な大鎌を振り上げた。
 それが、断罪の合図だった。
「貴方の罪を、数えましょう」
 まるで歌うように、彼女は罪状を述べる。
「私の罪と、比べましょう」
 そして——
「——二人一緒に、罰しましょう」
 時が来た。
 断罪の時が。
「強欲の罪に、地獄の罰を——龍解」
 《ディアボロス》に秘められた、破滅の魂が、解放される——

「——《破滅の悪魔龍 ディアジゴク》」



破滅の悪魔龍 ディアジゴク ≡V≡ 闇文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 8000
このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。このターン、そのクリーチャーのパワーは、自分の墓地にある闇のカード1枚につき−1000される。
W・ブレイカー



 地獄の刃は瘴気を放ち、龍の力と共にその姿を現す。
 煌びやかな黄金の装飾が施された刃は、魔眼が開かれ、大鎌の如く反り返り、その異質さを誇示している。
 全身をうねる鎖。蝙蝠のように広げられた深い青の翼。禍々しさを放つも、均一に整えられた装備は一種の美を備えており、高貴さすら感じさせる。
 とても地獄の魂の姿とは思えない。しかしそれでも、こうして存在している。そんな豪奢な異常さを備えた龍こそが、《破滅の悪魔龍 ディアジゴク》だった。
 そしてこの瞬間から、地獄の使者による、破滅へと向かう道は完成していた。
「《ディアジゴク》で攻撃……そして、能力発動」
 突如、少女の墓地のカードが、暗い光を放つ。
「私の墓地に闇のカードは十四枚。よって、《アワルティア》のパワーを−14000……破壊します」
『な……っ!?』
 《ディアジゴク》が鎌を一振りすると、黒い瘴気が放たれる。
 瘴気は《アワルティア》を包み込むと、その身を蝕んでいった。
 《アワルティア》の身体が変色していく。黒ずんでいく肉体は朽ちていき、やがて泥のように崩れ落ちていく。
『ぐ、お、あ、あぁぁぁ……!』
 そして、やがて《アワルティア》の全身を侵食し、罪によって穢された身体は完全に朽ち果てた。
「……W・ブレイク」
「ぅぐぁぁ……《ボンスラー》でブロック!」
 アワルティアのパワーを極限まで落として墓地に送り込んだ後、《ディアジゴク》の鎌はアワルティアのシールドに向く。
 その攻撃は《ボンスラー》が決死で止めたものの、しかし《ディアジゴク》は、少女の場で重苦しい威圧感を発している。
 まるで、アワルティアに破滅の種を撒いているかのような、徐々に迫りよる重圧を。
「ぐぬぬ……! 《オタカラ・アッタカラ》を二体と《爆弾魔 タイガマイト》を召喚!」
「呪文《リバース・チャージャー》。墓地から《タイガニトロ》を回収。そして、そのまま《爆霊魔 タイガニトロ》を召喚。《ディアジゴク》で攻撃、能力で《タイガマイト》のパワーを−13000し、破壊。シールドをWブレイク」
「ぬぅ……!」
「続けて《ウルボロフ》でもシールドをブレイク」
 《ディアジゴク》の鎌が二枚の盾を切り裂き、《ウルボロフ》の拳が一枚のシールドを砕く。
 一気に三枚のシールドを削り取られたアワルティア。しかし手札は多いため、なんとか攻撃を凌ぐことができれば、どこかで活路を見いだせるかもしれない。
 だが、しかし。
「ターン終了……その時、《タイガニトロ》のマナ武装5、発動」
 少女はそんな希望をいとも容易く、そして躊躇いなく、刈り取るのだった。



爆霊魔 タイガニトロ 闇文明 (4)
クリーチャー:ファンキー・ナイトメア 4000
マナ武装 5:自分のターンの終わりに、自分のマナゾーンに闇のカードが5枚以上あれば、相手は自身の手札から1枚選び、残りを捨てる。



「手札を一枚選んでください……それ以外をすべて、墓地に落とします」
「なに……!?」
 アワルティアの手札は、自身の能力によって大量に増えている。息切れはまずありえないほどの量だ。もとより後半から物量で巻き返す作戦だったのだろう。
 しかし、少女はそれを許さない。《タイガニトロ》はマナ武装によって、相手の手札を一枚残してすべて爆破する。シールドブレイクで増えた手札も関係ない。残るカードはたった一枚だけ。
 死霊を炸薬に、マナを火種に、《タイガニトロ》はアワルティアの手札に爆弾を設置する。
 そして、次の瞬間。
 彼の手札が、爆散した。
 ただ一枚のカードを残して。
「よくも……よくも私が掻き集めた魂を……! 許さん……許さんぞ! 小娘!」
「私はただ、貴方の強欲の罪を裁くだけです」
「抜かせ! 《ポーク・ビーフ》と《ハサミ怪人 チョキラビ》を召喚!」
 アワルティアは、強欲という衝動のままに収集した数多の魂をほぼすべて消し炭にされ、激昂する。
 しかしいくら睨みを利かせようとも、アワルティアの手札はこのターンのドローを含めて二枚しかない。彼が取れる行動は限られている。
「二体の《オタカラ・アッタカラ》でシールドを攻撃だ!」
 二体のクリーチャーを並べつつ、先に並べていた二体のクリーチャーでシールドを割るが、しかしだからといって大勢は変わらない。
「《白骨の守護者ホネンビー》を召喚。そして《爆弾団 ボンバク・タイガ》を続けて召喚。《チョキラビ》のパワーを−3000、破壊」
「ぐ……だが、《チョキラビ》の能力でドローだ!」
「《ディアジゴク》で攻撃……《ポーク・ビーフ》のパワーを−15000、破壊」
 黒い瘴気がブロッカーを根絶し、鋭利な刃がアワルティアの残った二枚のシールドをすべて刈る。
 だが、彼もやられてばかりではなかった。
「っ、来た、S・トリガーだ! 《地獄門デス・ゲート》! 《ウルボロフ》を破壊し、墓地から《墓標の悪魔龍 グレイブモット》をバトルゾーンへ!」
「…………」
「さらにもう一枚! 《インフェルノ・サイン》で《雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ》をバトルゾーンに!」
 最後に割られた二枚のトリガーで、巻き返しを図るアワルティア。
 少女は《グレイブモット》が睨みを利かせているため、《タイガニトロ》では攻撃せず、ターンを終える。
「ターン終了……《タイガニトロ》のマナ武装5、発動」
「癪な能力だ……だが、今はもういい。私のターン! 《ボンスラー》を二体召喚! そして、《トラトウルフ》で攻撃し、能力発動! 今度は貴様の手札を奪わせてもらうぞ!」



雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 8000
このクリーチャーが攻撃する時、相手の手札を見ないで1枚選び、捨てさせる。その後、その捨てたカードよりコストが小さい闇のクリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー



 雷鳴が轟き、少女の手札が貫かれる。
 貫かれたカードは、コスト7の《惨事の悪魔龍 ザンジデス》。
 《トラトウルフ》が放つ稲妻は、敵の命を知識ごと奪い、それを糧に死者を蘇らせる。
「墓地から《ボンバク・タイガ》をバトルゾーンに! マナ武装3で貴様の《ボンバク・タイガ》を破壊! どうだ、なにかを奪われるという気分は!?」
 手札を奪われ、それによりアワルティアの場数を増やされてしまった。
 《トラトウルフ》の攻撃を《ホネンビー》でブロックしながら、少女は囁く。
「……最悪です」
 少女は小さな声で、しかし確かな嫌悪を見せた。
 だが、アワルティアに向けられた悪意は、まだぬるい。
「しかし、最も罪深く、悪であるのは、私自身……」
「なにを訳の分からんことを。《オタカラ・アッタカラ》二体でシールドをブレイク!」
 連続で砕かれるシールド。だが少女は、傷つく身には目もくれず、さらなる闇を、強欲の化身に見せつける。
「呪文……《魔狼月下城の咆哮》」
「な……っ!」
 血に飢えた狼が咆哮する。月の下に集う、悪魔的な力を得たその雄叫びは、殺意と悪意によって弱者を食い殺す。
 二体の《ボンスラー》は、少女が発する闇の瘴気に耐え切れず、消し飛んだ。
「……終わりにしましょう」
 そう彼女が宣告した刹那、《ディアジゴク》が動く。
 《グレイブモット》を闇の瘴気に包み込み、存在を消した。
「《破滅の悪魔龍 ディアジゴク》で——ダイレクトアタック」
 そして、少女と共に、命を刈り取るようにその鎌を、振るう——

「強欲の罪、断罪しました——」