二次創作小説(紙ほか)
- 71話 「暴食横町」 ( No.250 )
- 日時: 2015/10/05 00:01
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
「……《爆弾魔 タイガマイト》を召喚。マナ武装3発動。手札を一枚墓地へ」
「ウゥー、グァー……食イデエェ……《ポーク・ビーフ》召喚……」
「《プライマル・スクリーム》を発動。カードを四枚、墓地へ送り、墓地より《ガナル・スクリーム》を手札へ」
食欲を垂れ流しにしているグラトニーのことなど意にも介した様子も見せず、ライは淡々とクリーチャーを並べていく。
だが、突如、グラトニーがけたたましい雄叫びをあげる。
「アアァァァァッ! 腹ガ、減ッタアァァァァァッ!」
暴食の悪魔龍 グラトニー 闇文明 (6)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 6000
このクリーチャーが攻撃する時、自分のクリーチャーを好きな数破壊してもよい。こうして破壊したクリーチャー1体につき2枚、カードを引く。
W・ブレイカー
本能のままに食欲をまき散らす、大罪の一角、暴食の悪魔龍が姿を現した。
しかしライは、食欲を剥き出した《グラトニー》にも、まったく物怖じすることがない。
「……《絶叫の影 ガナル・スクリーム》を召喚」
《ガナル・スクリーム》の絶叫は、死者すらも目を覚ますほどにおぞましい。
山札から四枚のカードが墓地へ落ちると、少女はその中から一枚をすくい取った。
「《ウルボロフ》を手札に……ターン終了」
『ウ、ガ、ア、ガガ、ガアァァァァァァァッ! ハラアァァァァァァッ』
《ポーク・ビーフ》がもう一体現れるが、《グラトニー》はもう我慢が利かなかった。
すぐさま巨大な大口を開くと、二つの肉塊を貪る。
食欲という本能のみに突き動かされ、ぐちゃぐちゃと下品な音を立て、二つの肉の塊は、肉片をまき散らす。
「……やはり、醜いものですね、暴食の罪というものは……」
ライは《グラトリー》が肉塊を一心不乱に貪る姿を見て、嘆くように、懺悔でもするかのように、痛ましい表情で呟く。
《グラトニー》は意地汚く二体の《ポーク・ビーフ》を喰らったが、勿論ただ喰っただけではない。
暴食の罪は、喰ったものから、新たな知識を得るのだ。
「グルルゥゥ……カードを四枚、ドロー。さらに、《ポーク・ビーフ》二体が破壊され、二枚ドロー。そして、《グラトニー》で、Wブレイク!」
《グラトニー》は食物から知識を喰らう。さらに《ポーク・ビーフ》そのものが持つ能力も併せて、一気に六枚もの手札を補充した。
そして腹を満たしたい欲求だけで叫び散らしていた《グラトニー》は落ち着きを取り戻し、そのままライのシールドを喰い破る。
破片が舞い、ライの身体を刻むが、彼女は動じた素振りをまったく見せない。
「……暴食の罪……罪には罰を……」
そう言って、少女はクリーチャーを呼び込む。
《ガナル・スクリーム》の絶叫で目を覚ました、悪夢の死者を。
「……《龍覇 ウルボロフ》を召喚」
現れたのは、赤いグローブをはめた人狼のようなクリーチャー。
どことなくコミカルさはあるものの、その眼差しは《グラトニー》に負けず劣らず飢えており、ギラギラと黒く輝いている。
「《ウルボロフ》の能力により、超次元ゾーンからコスト4以下の闇のドラグハートをバトルゾーンへ呼び出します。魔界より、罪の凶器をここへ——《滅殺刃 ゴー・トゥ・ヘル》」
超次元の彼方より、地獄の闇の中に封じられた刃が呼び起こされる。
それは、禍々しい狂気を放つ、鎌のような刃物。それ自体の纏うおぞましい障気が、見るものを恐怖させる。
《ウルボロフ》はその鎌を握ると、鋭い眼光をさらに光らせた。
「《ゴー・トゥ・ヘル》を《ウルボロフ》に装備……そして、能力発動」
滅殺刃 ゴー・トゥ・ヘル ≡V≡ 闇文明 (4)
ドラグハート・ウエポン
このドラグハートをバトルゾーンに出した時、または、これを装備したクリーチャーが攻撃する時、コスト5以下のファンキー・ナイトメアを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
龍解:自分のターンの終わりに、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップして置いてもよい。そうした場合、自分のクリーチャーを4体破壊する。
《ウルボロフ》は鎌を振るう。すると、地獄の底より、亡者の嘆く声が聞こえてくる。
やがてその声は、本物の死者として——蘇る。
「墓地からコスト5以下のファンキー・ナイトメアをバトルゾーンへ……《タイガマイト》を復活」
地獄への呼びかけが、死者を蘇らせる。《ゴー・トゥ・ヘル》は《タイガマイト》の魂を目覚めさせ、死した身を戦場へと再び駆り出した。
少女のマナが黒く光り、《タイガイマイト》はその光で武装する。そうして着火したダイナマイトを《グラトニー》に投げつけ、手札を爆破した。
《グラトニー》は大量にカードを引いているため、今更一枚や二枚の手札破壊では動じないだろう。
しかしここで《タイガマイト》を復活させたのは、単純に手札を破壊したいからではない。
それ以上に、“クリーチャーを増やすこと”が、ライにとっては必要だったのだ。
「……ターン終了」
する時に。
《ゴー・トゥ・ヘル》の刃が、黒く光る。
そして、ライは断罪を宣告する。
「貴方の罪を、数えましょう」
まるで、歌うように。
「私の罪と、比べましょう」
そして——
「——二人一緒に、罰しましょう」
時が来た。
断罪の時が。
「暴食の罪に、魔界の罰を——龍解」
《ゴー・トゥ・ヘル》に秘められた、龍の魂が、解放される——
「——《魔壊王 デスシラズ》」
魔壊王 デスシラズ ≡V≡ 闇文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 12000
このクリーチャーが龍解した時、相手のクリーチャーを1体破壊する。
このクリーチャーが攻撃する時、進化ではない闇のクリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
T・ブレイカー
おぞましく、地の底から這い寄るような唸り声が響き渡る。
黒い瘴気が包み込み、生を忘れさせるような、闇の力が充満する。
悪魔龍の頭を半身とし、赤き呪印が刻み込まれた黒い大鎌を携える。
命という概念すらをも壊し、死を知ることのない、死なない死神。
《魔壊王 デスシラズ》が——降臨した。
「龍解……完了……そして」
《デスシラズ》は鎌を振るう。
そして——命を刈り取った。
二体の《タイガマイト》《ガナル・スクリーム》そして《ウルボロフ》——四体ものクリーチャーが、破壊された。
『アァァ……?』
《デスシラズ》が振るう鎌は、すべてライのクリーチャーに向けられる。
「《ゴー・トゥ・ヘル》は龍解した後、自分のクリーチャーを四体……破壊します」
《滅殺刃 ゴー・トゥ・ヘル》自体は、龍解するための条件がない。無条件で龍解することが可能だ。
しかし龍解した後に、《デスシラズ》のための生贄を捧げなければならない。
クリーチャーの命という、生贄を。
「……そして、《デスシラズ》が龍解したことで、《グラトニー》を破壊」
『アァァ!?』
一度は降臨するための生贄を求め、ライのクリーチャーに振るった《デスシラズ》の鎌。
しかし、二度目は大罪へ罰を科すために、振るわれる。
《デスシラズ》の鎌が、《グラトニー》を切り裂いた。
『グアァ、アァァァァァァァァァッ!』
だがそれは、ただの破壊ではない。
あくまで悪魔龍が、《デスシラズ》が下すのは、断罪だ。
大罪には、それ相応の罰を与えなければならない。
そして《グラトニー》には、暴食の罰が科される。
『アァァァ! オデノグイモンガアァァァァァッ!』
《グラトニー》は、その腹を、切り裂かれた。
赤黒い血と共に、彼が今まで暴食してきたものがすべて、腹から流れ出る。
肉塊、骨、繊維——あらゆるものが、血と胃液に塗れたまま、グラトニーの中から流出する。そのすべてが原形をとどめないほどにぐちゃぐちゃになっていた。
それは見るに耐えないほどにグロテスクで、そして暴食を求めるグラトニーには凄惨な罰だった。
「アァ、アァ、ハラガアァァァァッ!」
ザックリと開かれた腹をそのまま、《ステーキ・バーグ》と《ダンゴ・スポポン》を並べるグラトニー。
「……《爆霊魔 タイガニトロ》《爆弾団 ボンバク・タイガ》を召喚。《ボンバク・タイガ》のマナ武装3で、《ステーキ・バーグ》のパワーを−3000」
だが、既に断罪は始まっている。
大罪に罰が下されることは、決しているのだ。
その罰から逃れることはできない。
「《デスシラズ》で攻撃……その時、墓地から《惨事の悪魔龍 ザンジデス》をバトルゾーンへ……そして、その能力で、相手クリーチャーのパワーをすべて、−2000」
《ザンジデス》が現れたことで、グラトニーのクリーチャーのパワーがすべて2000下げられる。
よってパワー2000の《ダンゴ・スポポン》に加え、《ボンバク・タイガ》でパワーを3000下げられた《ステーキ・バーグ》も破壊された。
「T・ブレイク」
魔界の王はグラトニーのシールドを三枚、まとめて薙ぎ払う。
さらに、それだけでは終わらない。
「ターン終了……その時、《タイガニトロ》のマナ武装5が発動」
グラトニーの手札が爆発する。
そして、頭が、脳が、爆破される。
暴食の罪が喰らってきたあらゆる知識が、爆散した。
「ウ、ウ、ウ、ア、アァァァァァ……!」
その叫びは、呻きへと変化しつつある。腹を裂かれ、頭を潰され、もはや正常に思考し、行動できるような状態ではない。
グラトニーはガチガチと歯を鳴らす。まるで、なにかを食べるように。
飢え、求めるように。
「アァァァ! アァ! ァァァァァァッ……!」
「……醜いものですね。死の際までも、暴食を求めますか」
そんな様子のグラトニーを、ライは侮蔑する。
いや、そもそも断罪する者である彼女にとっては、あらゆる罪は、罰を与えられるべき存在でしかない。
そこに、同情や酌量の余地はないのだ。
「……《ザンジデス》でWブレイク」
残ったシールドを、《ザンジデス》で砕く。
これで、グラトニーを守るものはなくなった。
最後の断罪が、下される。
「《魔壊王 デスシラズ》……貴方の刃で、罪を裁きましょう」
《デスシラズ》は振るう。暴食を司る悪魔龍へと、断罪の刃を。
腹を裂かれ、頭を潰された暴食は、その大罪を——裁かれた。
「暴食の罪、断罪しました——」