二次創作小説(紙ほか)

73話 「憤怒紛争地帯」 ( No.256 )
日時: 2015/10/05 00:08
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)

 ライとガナルドナルのデュエル。
 ライの場には既に《オタカラ・アッタカラ》が存在しており、対するガナルドナルの場にはなにもない。
「《リバース・チャージャー》発動だ。墓地の《コッコ・ドッコ》を手札に加えてターン終了」
「私のターン。《絶叫の影ガナル・スクリーム》を召喚」
 互いに墓地回収を絡めて手を伸ばしていくが、墓地の多さではライが有利だ。
 《ガナル・スクリーム》の絶叫でさらに墓地を肥やし、眠れる死者を叩き起こす。
「……《龍覇 ウルボロフ》を手札に加えます。ターン終了」
「《コッコ・ドッコ》、《時空の守護者ジル・ワーカ》を召喚だ」
 ガナルドナルは前のターンに回収した《コッコ・ドッコ》に加え、光文明のカード《ジル・ワーカ》を見せる。
 マナゾーンを見る限り、どうやら闇文明をメインとし、光文明をタッチで少量加えたデッキのようだ。
「…………」
 ライはガナルドナルの動きにほんの少しだけ眉根を寄せたが、すぐに自分のターンに入る。
 ここで召喚するなら、先ほど回収したばかりの《ウルボロフ》だ。
 しかしライは、このターンに引いたカードを見て、考えを変えた。

「屍を葬りし英雄、龍の力をその身に宿し、死者の怨嗟で武装せよ——《葬英雄 ゲンセトライセ》」

 闇文明の英雄の一角、《ゲンセトライセ》。
 その力は、英雄の名が示すように、現世と来世を永遠に行き来し、生き続け、死に続け、生かし続け、死なせ続けるものだ。
 《ウルボロフ》から呼び出すドラグハートの龍解ならば、まだ急ぐことはない。先に《ゲンセトライセ》を呼び出しておき、龍解のための生贄を並べておくのも一つの手だ。
 だが、その1ターンの隙が、致命的だった。
「あんまり舐めた真似してんじゃねぇぞ、クソアマ……俺のターン」
 ガナルドナルは、怒気を含ませた声を発する。
 このターン、ライは《ウルボロフ》を召喚し、《ゴー・トゥ・ヘル》から生贄を蘇生させ、《デスシラズ》に龍解させることができた。
 ガナルドナルはそれをしなかったことが、自分が甘く見られている、自分が低く評価されていると思い込み、怒っていた。
 憤怒だ。
 その憤怒が、彼に力を与える。
「ざけんなよ、そんなぬるい手ぇ打って、俺を倒せるなんて思ってんじゃねぇ……! 呪文《邪魂転生》! 《ジル・ワーカ》を破壊!」
 邪悪な魂から知識を抽出する魔術によって、《ジル・ワーカ》の魂を犠牲に、ガナルドナルは知識を得る。
 さらに、破壊された《ジル・ワーカ》から、二つの閃光が迸った。
「《ジル・ワーカ》が破壊されたことで、お前の《ガナル・スクリーム》と《ゲンセトライセ》をタップだ! そして!」
 今度は、《コッコ・ドッコ》が破壊される。
 だがそれは、外的要因によるものではない。《コッコ・ドッコ》そのものが持つ、罪に呼応した罰だ。
 巨大な悪魔龍の力を感知し、その命が尽きたのだ。それはつまり、彼が悪魔龍を呼び寄せたということ。
 そして、大罪の力が、ここに顕現する。

「どいつもこいつも、全員ぶっ殺してやる——《憤怒の悪魔龍 ガナルドナル》を召喚ッ!」



憤怒の悪魔龍 ガナルドナル 闇文明 (8)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、タップされているクリーチャーをすべて破壊する。
W・ブレイカー



『俺の能力で、バトルゾーンのタップされているクリーチャーをすべて破壊だ! 死にやがれ、クソザコどもがあぁぁぁぁぁぁッ!』
 憤激する《ガナルドナル》は、その怒りの衝動のままに怒鳴り散らす。
 空気は震え上がり、神話空間ごと吹き飛ばす錯覚に陥りそうなほどしまいそうなほどに、その衝撃は凄まじい。
 ライはそんな《ガナルドナル》を、なんとも思った様子もなく見つめていたが、彼女のクリーチャーは、そうはいかない。
 《ガナルドナル》の怒りを肌で感じたクリーチャーたち——タップされている《ガナル・スクリーム》と《ゲンセトライセ》——は、その罪からなる罰によって、死滅した。
 元より身が竦んでいたクリーチャーたちだ。彼の憤怒に、耐えきれるわけもなかった。
「……私のターン。《龍覇 ウルボロフ》を召喚」
 場のクリーチャーがほとんど消し飛ばされたライだが、動じた素振りはまったく見せない。
 あくまで淡々と、彼女は己の為すべきことを為す。
 贖罪のための、罰を科すために。
「煉獄より、罪の凶器をここへ——《煉獄刃 ヘルフエズ》」
 超次元の彼方から、地の底に封じられた凶気の刃の一つが、目覚める。
 煉獄の力と龍の魂が秘められた、諸刃の大鎌、《ヘルフエズ》
 《ウルボロフ》はその柄の真中を握り、狂気に満ちた眼差しを向け、構えた。
『俺のターン! 《ポーク・ビーフ》と《パックポック・ピッグ》を召喚! そして、俺でWブレイクだ!』
「……私のターン」
 二枚のシールドを先んじて砕かれたライ。だが、彼女もこのターンから、動き始める。
「《爆弾団 ボンバク・タイガ》をニ体召喚。《ポーク・ビーフ》のパワーを合計6000マイナスし、破壊。そして、《ウルボロフ》で《ガナルドナル》に攻撃……する時、《ヘルフエズ》の能力発動」
 刹那、《ヘルフエズ》が怪しく光る。
 その光は、《ガナルドナル》へと照射されていた。
「《ガナルドナル》のパワーを−6000……」
『なっ、てめぇ……また舐めた真似を……!』
 《ガナルドナル》のパワーは《ヘルフエズ》によって減衰され、パワー1000に。
 そこまでパワーが落とされたクリーチャーを討ち取ることは非常に簡単だ。《ガナルドナル》はパワー4000の《ウルボロフ》に、あっけなく切り裂かれる。
「畜生が……!」
 自分自身がやられたことで、ガナルドナルはさらに怒りを重ねる。
 憤怒の眼で、射殺さんばかりの眼で、ライを睨みつける。
「これで、私はターン終了……そしてこの時」
「あぁ!? まだなんかあんのかよ!」
 いちゃもんをつけるように怒鳴るガナルドナルをよそに、《ウルボロフ》は手中に収められた《ヘルフエズ》を、地面に突き刺す。
「まずは、このターンの終わりに、墓地の《ゲンセトライセ》のマナ武装5、発動……私の場の《オタカラ・アッタカラ》を破壊し、墓地の《ゲンセトライセ》をバトルゾーンに」
 ライのマナが黒く光った。
 そして、ライの場にいた《オタカラ・アッタカラ》の命と引き換えに、墓地より《ゲンセトライセ》が蘇る。
 さらに、
「相手クリーチャーがターン中に破壊されているので、《ヘルフエズ》の龍解条件成立」
 そして《ヘルフエズ》は、死した者の魂を吸い取り、新たな姿へと移り変わる。
「《煉獄刃 ヘルフエズ》……2D龍解」
 《ヘルフエズ》は鳴動し、そのうちに秘められた姿を現す。
 そして禍々しき宮殿が、そびえ立った。

「罪の魔宮をここに——《煉獄宮殿 ヘルクライム》」