二次創作小説(紙ほか)
- 75話 「ラストダンジョン」 ( No.261 )
- 日時: 2015/10/06 23:03
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
「な……っ!」
《ドライゼ》の身体が、爆散する。
信じれらないと言うように目を見開き、彼は今の主へと、視線を彷徨わせる。
だが彼女は、爆ぜたクリーチャーのことなど見てはいなかった。
「《特攻人形ジェニー》を二体召喚。そして、《ジェニー》二体と《ドライゼ》を破壊。それをコストに、《煉獄の悪魔龍 フォーエバー・オカルト》を召喚!」
沙弓は自壊能力持ちのクリーチャーを破壊せず場に残し、場に出た三体を破壊した。
そして、リュウセイの新たな姿、《フォーエバー・オカルト》を召喚するが、ドライゼはそのプレイングを非難する。
「なぜだ沙弓! お前の手札には《リバイヴ・ホール》がある! それで《ブラック・ガンヴィート》を出せば、《ロックダウン》を破壊できたはずだ!」
「うるさいわね、死んだ奴は黙ってなさい」
ドライゼの抗議も、沙弓は聞く耳持たず、一蹴する。
しかしドライゼの言い分ももっともだ。ここでわざわざドライゼと手札の《ジェニー》二体を捨てて《フォーエバー・オカルト》を出す必要性は薄い。それならば、《ドライゼ》を残しつつ《ブラック・ガンヴィート》を呼んで、《ロックダウン》を破壊する方がよっぽどアドバンテージを取れる。
だが、沙弓はそうはしなかった。
それは打算的な戦術ではなく、どこか感情的なプレイングに見えた。
「さあ、リュウセイ。あの死にたがりの代わりに頼むわよ」
『っ、あ、あぁ……』
さしものリュウセイも、ドライゼを切り捨てた沙弓の行動は理解できないようで、戸惑っている。
「俺のターン! 《ブラッディ・メアリー》と《ハサミ怪人 チョキラビ》を召喚! 《ロックダウン》でWブレイク!」
「っ、くぅ……!」
再び、《ロックダウン》が沙弓のシールドを砕く。飛び散る破片は邪淫の刃となり、沙弓の身体を刻んでいく。
「いいぞ、お前のその姿……ズタズタに裂かれた衣! 露わになった肌! そこから流れ出る紅の血! 欲情をそそられるぞ……!」
「う……」
アスモシスはギラギラとした情欲の眼差しを沙弓に向ける。そのあまりに下劣な眼光に、沙弓も一歩後ずさった。
しかし今の沙弓は、確かに服もボロボロでかなり肌が露出しており、扇状的な格好ではある。
だがそれと同様にいたるところから血が流れているため、猟奇趣味でもない限り、とても欲情できそうな姿をしているとは言い難いだろう。
「……私のターン。《崩壊の悪魔龍 クラクランプ》を召喚。《フォーエバー・オカルト》で《ロックダウン》を攻撃!」
《フォーエバー・オカルト》が吠え、《ロックダウン》へと肉薄する。
同時のその咆哮が、死者の眠りを妨げる。
「《フォーエバー・オカルト》は攻撃する時、墓地からクリーチャーを一体、手札に戻せる……《ホネンビー》を手札に加えるわ」
『死者よ、戻ってこい! カムバック!』
煉獄の悪魔龍 フォーエバー・オカルト 闇文明 (8)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 9000
コストを支払うかわりに自分のクリーチャーを3体破壊して、このクリーチャーを召喚してもよい。
このクリーチャーが攻撃する時、クリーチャーを1体、自分の墓地から手札に戻す。
W・ブレイカー
死者を呼び戻す《フォーエバー・オカルト》。墓地に沈んだクリーチャーをサルベージする能力は、本人のもう一つの召喚コストとも相まって、強力な能力だ。
しかし、彼もまた、沙弓の指示に従うしかない。本来ならば共に戦う盟友を、自らの糧となった戦友を呼び戻したいが、主がそれを許さなかった。
「《ブラッディ・メアリー》でブロック! そして、俺のファンキー・ナイトメアが破壊されたことで、《チョキラビ》の能力発動。カードをドローだ」
墓地からクリーチャーは回収できたが、《ロックダウン》は破壊し損ねてしまった。
しかし沙弓はスレイヤーかつブロッカーの《クラクランプ》で牽制している。相手も、そう易々と殴っては来れないだろう。
「《旧知との遭遇》を唱える。墓地から《ブラッディ・メアリー》二体を回収し、そのまま召喚。ターンエンドだ」
「私のターン」
カードを引き、手札を眺め、沙弓は考える。
(こっちはシールド残り一枚で、守りが薄い……でも、相手は手札が切れてるから、このまま凌げればジリ貧にできる。ここは、守りを固めましょうか)
そう考え、沙弓は手札のカードを切る。
「《白骨の守護者ホネンビー》を召喚。能力で山札の上から三枚を墓地に送って、墓地の《ホネンビー》を回収。そして、回収した《ホネンビー》を召喚。さらに墓地から三体目の《ホネンビー》を回収して、ターン終了」
ブロッカーで守備を固める沙弓。相手の手札は枯れており、こちらはシールドブレイクでそれなりに増えている。ハンドアドバンテージでは差を広げられているので、取れる選択肢も、カードプレイの質も、こちらが上だ。
防戦気味になってしまったが、ここを乗り切れば増えたカードで除去を放ち、クリーチャーを並べ、少しずつこちらが優勢になっていくはず。ここが正念場、ここさえ乗り切れれば、巻き返しを図ることができるはずだ。
そう、沙弓は算段を立てていたが。
その計画は、果てしない渇望の罪によって、容易に崩れ去った。
「……さぁ、いよいよだ。奮い立つぞ、そそり立つぞ……我が身が、我が心が! 邪悪で淫靡な、色香と肉体への欲望! ここはまだ絶頂に至る道程、慌てる時ではない。しかし、果てしない渇望が、この身と心の内で暴れ回るのだ!」
そして、邪淫を司り、渇望する悪魔龍は、衝動のままに突き動かされる。
「俺の渇望を解き放て——《渇望の悪魔龍 アスモシス》!」