二次創作小説(紙ほか)
- 81話「対局開始」 ( No.274 )
- 日時: 2015/11/03 02:15
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
「《アクア鳥人 ロココ》を召喚! ターンエンドだよっ」
「呪文《連唱 ハルカス・ドロー》。カードを一枚引き、ターン終了だ」
「《スペルブック・チャージャー》発動! 《龍素知新》を手札に加えて、チャージャーをマナに!」
「《ブレイン・チャージャー》を唱え、カードをドロー。チャージャーをマナへ」
浬と風水のデュエル。
浬からすれば、負ければこの少女とつきあうこととなり、ふざけるなと言って突っぱねたい対戦ではある。
だが、相手は語り手のカードを所持しており、このまま無視するわけにもいかない。なんとしてでも、なにかしらの情報は掴まなければならない。
ならばどうすればいいか。答えは簡単だ。勝てばいい。
浬は己が勝利を証明すべく、一つずつ方程式の解を導き出していく。
しかし、最初に動き出したのは風水の方だった。
「ふふっ、いい風来てるね。さぁいくよっ! 《龍覇 トンプウ》を召喚!」
陰陽師のような意匠の、閃くリキッド・ピープルが現れる。
龍素に眠る隠された神秘の力、龍脈術を解明したドラグナー、《トンプウ》。
浬の使役するリキッド・ピープル閃とは異なる力を持つ《トンプウ》能力は、コスト3以下のドラグハートを呼び出すというものだ。
「さあ来てっ、《龍芭扇 ファンパイ》! 《トンプウ》に装備だよっ!」
龍覇 トンプウ 水文明 (5)
クリーチャー:リキッド・ピープル閃/ドラグナー 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト3以下のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
龍芭扇 ファンパイ 水文明 (3)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーが攻撃する時、相手は自身の山札の上から1枚目を墓地に置く。それが呪文であれば、自分がコストを支払わずに唱えてもよい。そうした場合、その後、その呪文を相手の墓地に戻す。
龍解:自分のターンの終わりに、相手の墓地にカードが5枚以上あれば、このドラグハートをフォートレス側に裏返してもよい。
超次元の彼方より、青いドラグハート・ウエポンが飛来する。
それは、透き通る海のように美しい扇だった。羽は鮮やかな水の色をしており、派手な装飾によって彩られている。
《トンプウ》は、その扇を掴み取った。
「ドラグナーか……だが、ドラグハートを使うのはお前だけじゃない」
そう言って浬は、風水に対抗するかのように、そのカードを繰り出す。
自分にとっての、武器を。
「《龍覇 メタルアベンジャー》を召喚!」
浬のドラグナー、《メタルアベンジャー》。
龍素を科学として扱う一派の中核を担うリキッド・ピープル閃。
その能力で、水文明に限り《トンプウ》よりも高いコスト——コスト4以下のドラグハートを呼び出せるのだが、
「…………」
浬は思案する。
《メタルアベンジャー》で呼び出せるドラグハートの候補は、《エビデンス》《エビデゴラス》《エウクレイデス》辺りだが、この状況ではなにを出すべきか。
手札をしばらく眺め、浬は結論を出した。
「……《龍波動空母 エビデゴラス》をバトルゾーンへ!」
浬がこの場面で選んだのは、置きドローとなる《エビデゴラス》。
現在の手札の状況からして、《エビデンス》の龍解はすぐには達成できない。なので今はまだ出さないでおく。同様の理由で《エウクレイデス》もだ。
ゆえにここでは、長期的にアドバンテージを取れる、汎用性の高い《エビデゴラス》を選択した。
「ターン終了だ」
「じゃあ、あたしのターンっ! 《アクア工作員 シャミセン》を召喚! お互いにカードを三枚まで引いて、三枚捨てられるよ」
《シャミセン》の能力は、お互い引くかどうかを決められる。引くならばカードを三枚捨てなければならないが、引かないとう選択肢もある。
だが、先ほど《エビデンス》の龍解を諦めてたように、今の浬の手札はお世辞にも良いとはいえない。ここで三枚もカードを引けば、良い手になる可能性は十分にある。
なので、浬はカードを引いたのだが、
「……くっ」
引いたのは、《ブレイン・チャージャー》二枚と《龍素開放》。引いたカードもあまり良くない。
これならばまだ手札のカードを握っていた方が良いと判断し、浬はその三枚をそのまま墓地へ投げ捨てた。
「いいねいいね、いい風向きだよ」
風水は、そんな浬を見つつ、楽しそうな表情を見せる。
そして、場の《トンプウ》に手をかけた。
「《トンプウ》で攻撃するよ! でもそのとき、《ファンパイ》の能力が発動!」
《トンプウ》は《ファンパイ》を大きく振るう。すると、水飛沫とともに一陣の風が吹き抜けた。
その風が、浬の山札を飛ばす。
「《ファンパイ》の能力で、浬くんの山札の一番上を墓地に置くよ。そして、それが呪文なら、あたしがタダで唱えられる!」
「なにかと思えば、相手依存の呪文詠唱か。そんな運に任せたプレイング、そう上手くいくはずが——」
と言って、浬の飛ばされた山札が舞い落ちてくる。
落ちてきたカードは、《龍素遊戯》。
「っ!」
「チー! 喰い取るよっ! 呪文《龍素遊戯》!」
浬から奪い取ったスロットが回る。
《龍素遊戯》は、山札の上から三枚をめくり、その中からドラゴン、ドラゴン以外のクリーチャー、呪文をそれぞれ一枚ずつ手に入れる呪文だ。
「だが、《龍素遊戯》にしても、手に入れられるカード枚数は不安定。それも運任せだ」
「そうだね。でも、今のあたしにはいい風が来てるから、最高の結果になるよっ!」
高らかに豪語して、風水はスロットを止めた。
めくられた三枚は、《術英雄 チュレンテンホウ》《アクア鳥人 ロココ》《龍脈術 水霊の計》。
ドラゴン、非ドラゴン、呪文の三枚だ。
「な……っ」
「三連続で有効牌をツモれたね。この三枚を手札に加えるよっ」
風水はその三枚のカードを手札に入れつつ、得意げな表情を見せる。
「だから言ったでしょ? いい風来てるって」
「なにをわけのわからないことを……ただの偶然だ」
負け惜しみのようなことを言いながら、浬はシールドをめくるが、S・トリガーはなかった。
「さて、それじゃあ、これであたしのターンは終わりだけど……」
どこかもったいぶるように微笑みを浮かべる風水。まだなにかを隠しているのか、と浬は身構える。
だが、その姿はすぐに明らかになる。
「浬くんの墓地にカードが五枚以上あるからー……《ファンパイ》を龍解させるよっ!」
《トンプウ》は《ファンパイ》を振るう。水飛沫が飛び散り、風が吹き荒れ、やがて《ファンパイ》は空を舞う。
そして、その姿を変えた。
「2D龍解っ! 《龍脈空船 トンナンシャーペ》!」
現れたのは、龍脈術の粋を結集して生み出された、龍の魂を宿す空船。
しかも、2Dで現れたドラグハート・フォートレスだ。
さらにこの時、浬は悟った。
「……嵌められたか」
《ファンパイ》の龍解条件は、相手の墓地にカードが五枚以上ある時と言っていた。
つまり、浬が《シャミセン》で手札を交換しなければ、龍解はまだ達成されなかった。
あの《シャミセン》は誘いだったのだ。そして浬は、迂闊にその誘いに乗ってしまい、こうして相手の龍解に貢献してしまった。
「……いや、まだだ。まだ立て直せる。俺のターン、《龍素記号Og アマテ・ラジアル》を召喚! その能力で、山札から《英雄奥義 スパイラル・ハリケーン》を唱える!」
刹那、渦巻く水流が、嵐のようにバトルゾーンに吹き荒れた。
その風はすべてのものを吹き飛ばす。さらに、浬のマナが青色の光を帯び、そこからさらなる力を供給している。
「《スパイラル・ハリケーン》のマナ武装7発動。おまえのクリーチャーをすべて手札に戻す!」
「うわ……っ!」
嵐が収まる頃には、風水の場にはなにもいなくなったいた。
「たった1ターンでクリーチャーを全部手札に戻されちゃった……でも、まだ風はあたしに吹いてるっ! あたしのターン!」
場のクリーチャーをすべて除去され、少しは驚いたような表情を見せるが、風水はすぐに気を取り直して、次なる一打を打つ。
それは、彼女の英雄を呼び起こす一手だった。
「天衣無縫の英雄、龍の力をその身に宿し、連なる龍脈で武装せよ——《術英雄 チュレンテンホウ》!」