二次創作小説(紙ほか)

84話「大四喜」 ( No.277 )
日時: 2015/11/06 02:16
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)

亜空艦 ダイスーシドラ 水文明 (8)
ドラグハート・クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 11000
W・ブレイカー
このクリーチャーが攻撃する時、いずれかのプレイヤーの墓地から呪文を1枚、コストを支払わずに唱えてもよい。そうした場合、その後、その呪文を持ち主の墓地に置く。



 龍脈術のすべてが注ぎ込まれた結晶龍、《ダイスーシドラ》。
 その神秘の力は亜空間さえも歪ませ、あらゆる術法を意のままに操る。
 そう、時として失われた魔術さえも蘇らせ、禁忌とされる呪術にすらも触れるほど、強大な力を持つのだ。
 《ダイスーシドラ》は、水流を巻き起こし、結晶を輝かせ、静かに戦場に鎮座する。
「3D龍解、かんりょーうっ! そんでもって、とりあえず《チュレンテンホウ》を召喚! さらに《アクア・ソニックウェーブ》を召喚だよ! 《M・A・S》を手札に!」
 バウンスした《チュレンテンホウ》が、《アクア・ソニックウェーブ》を引き連れて戻ってきた。
 だが、そんなことが些事に思えるほどに、次の一撃は強烈だ。
 空間を歪ませ、《ダイスーシドラ》は咆哮した。
「いくよっ! 《ダイスーシドラ》で攻撃! そのとき、《ダイスーシドラ》の能力発動だよっ!」
 《ダイスーシドラ》が咆える。その怒号が、再び空間を歪ませ、その歪から亜空間を生み出す。
 そして、その雄叫びに呼応するかのように、お互いの墓地が水色に光った。
「《ダイスーシドラ》が攻撃するとき、自分か相手の墓地から、好きな呪文をタダで唱えられるんだよ! すごいでしょ!」
「っ、なんだと……っ!?」
 流石は3D龍解したドラグハート・クリーチャーと言わざるを得ない派手な能力だ。下準備が必要とはいえ、無条件で使い終わった呪文を再利用、あわよくば相手の呪文すらも逆利用してしまうその力は、強力無比である。この歪んだ空間だからこそできる芸当であり、その破壊力はドラ爆のドラゴンロード級。
 この状況で唱える呪文となると、浬の《スパイラル・ハリケーン》で一斉除去か、《龍素解析》で援軍を呼ぶといったことが考えられる。この能力で唱えた呪文は山札などには戻らず、墓地に置かれたままなので、どれだけ強力な呪文でも使いたい放題だ。
 だがこの時、風水が唱える呪文は《スパイラル・ハリケーン》でも《龍素解析》でもない。
 再び、墓地が水色に光る。
 光ったのは——浬の墓地だ。
「浬くんの墓地から呪文を唱えるよっ! 呪文《ホーガン・ブラスター》!」
「《ホーガン・ブラスター》だと……?」
 ここで風水が唱えるのは、《ホーガン・ブラスター》。
 増援を呼ぶという意味では《龍素解析》と同じだが、しかしかなり運任せな一枚である。
 ゆえに、浬はこのカードチョイスには、多大なる疑念を抱く。
 だが風水にとっては、この選択が当然だった。
 偶然に身を委ねることは、今の彼女にとっては必然なのだ。
「どうするのか、どうやるのか……なーんて、そんなのどーでもいいよ。大切なのは、最後に勝つこと。オカもウマも関係ない。プラマイゼロなんて面白くない。ラス落ち論外、三チャは嫌だ、二チャもまだまだ、目指すはトップの一人浮き! 聴牌崩してフリテンリーチしても、役なし裏ドラ期待しかなくても、最後にアガってまくれれば、それでいいんだよっ!」
 風水のデッキがシャッフルされる。その勢いたるや、海流の中の渦潮の如く、彼女の山札がかき混ぜられた。
「……出番ね」
 そして、
「進化——」
 渦中に眠る人魚姫が、目を覚ます——

「——メソロギィ・ゼロ!」












 大渦が止まる。
 そこにあるのは、三叉の槍。
 しなやかな流線型。
 そして、義を重んじる、受け継がれた神話の力。
 かの者は《海洋神話》の継承者。
 かつての神話の如く大儀を抱き、全てを飲み込む海洋となりて、新時代の荒波を巻き起こす。
 そう、かの者こそは——

『——《海洋神槍 トリアイナ》!』