二次創作小説(紙ほか)
- Another Mythology 9話「月影の語り手」 ( No.30 )
- 日時: 2014/05/03 17:56
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
悪魔神ドルバロム 闇文明 (10)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド 13000
進化—自分のデーモン・コマンド1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、闇以外のクリーチャーをすべて破壊する。その後、各プレイヤーは闇以外のカードをすべて、自身のマナゾーンから持ち主の墓地に置く。
T・ブレイカー
《ヤタイズナ》の力を得て蘇ったのは、かの《悪魔神バロム》よりも強大な魔神《悪魔神ドルバロム》だ。
《バロム》が闇以外のすべてのクリーチャーを根絶やしにするのに対し、《ドルバロム》の破壊行為はそんな甘いものではない。《ドルバロム》は、マナすらも根絶やしにする。
「さあ消えるのだ! 闇以外のクリーチャーとマナをすべて墓地へ!」
ブラックルシファーは闇単のデッキなので被害はない。沙弓も闇文明のカードをメインに使用しているので被害はあまりない。少なくともバトルゾーンは無事だ。
しかし、マナゾーンはそうはいかない。
「火のマナが……!」
沙弓のマナから、火文明のカードが消し飛ばされる。純粋にマナが減らされただけでなく、《マイキーのペンチ》を召喚するためのほのマナが確保できなくなってしまった。
(これじゃあ《マイキーのペンチ》が召喚できない……)
次のターンに火のカードを引ければ召喚できるが、沙弓のデッキはあまり火のカードは多くないので、望み薄だ。
(……仕方ない、スピードアタッカーは諦めましょう。どの道《ロマノフ》が破壊されれば《グール》は戻って来るし、《ロマノフ》で《ドルバロム》は対処できるし)
一撃は貰ってしまうが、それは仕方ないと割り切る。
だが、ブラックルシファーの行動は、沙弓の算段を大きく崩すのだった。
「貴様の思惑など見え透いているのだ。《悪臭怪人ゴキーン》を二体召喚し、貴様の墓地の《黒神龍グールジェネレイド》二体をデッキの一番下へ!」
「っ……!」
目を見開き、歯噛みする。これで墓地戦略を潰されてしまった。
「さらに呪文《邪魂転生》で二体の《ゴキーン》を破壊し、四枚ドロー。さらにさらに、呪文《デッドリー・ラブ》で、俺の《ヤタイズナ》と貴様の《ロマノフ》を破壊! 《ドルバロム》でTブレイク!」
「くぅ……!」
激しい衝撃が身体を突き抜ける。同時に割れたシールドの破片が襲い掛かってくる。
「いったー……結構くるわね、これ……!」
痛みに堪えるように、無理に笑う沙弓。
このままではまずい。経験と本能がそう告げている。今の手札では、この状況を打開するのは厳しそうだ。
「今のままじゃどうしようもない……どうしたらいいのかしらね、これ……」
「諦めなければいい」
「え?」
何気なく呟くと、隣でドライゼが言う。
「諦めるということは、すべてを失っても構わないということだ。未来も過去も、仲間も自分自身さえも、なにかも捨てるということだ」
「…………」
「諦めたら、それはただの思考停止に過ぎない。俺の見込んだ女は、この程度の逆境ですべてを投げ出すようなことはしない。そうだろう?」
フッと微笑みかけるドライゼ。それを見て、沙弓の表情もほころぶ。
「……あなたに見込まれた覚えなんてないんだけどね。っていうか、まだ私、諦めるなんて言ってないんだけど」
反発するように言うものの、沙弓の表情は明るかった。
そして沙弓のターンが来る。
「確かにこの程度のピンチじゃ、諦めるには早すぎるわね。もっとスリリングじゃないと、面白くないわ」
このターン沙弓が引いたのは《黒神龍アバヨ・シャバヨ》。これを出せば、《ドルバロム》を破壊することができる。だが、
「呪文《ボーンおどり・チャージャー》! さらに《復讐のバイス・カイザーΖ》を召喚!」
沙弓が繰り出す一手は、《バイス・カイザーΖ》。登場時の能力で、ブラックルシファーの手札にある呪文をすべて叩き落す。
だがそれだけだ。《ドルバロム》はまだ残っている。
「ここでそのカードを選ぶか」
「まあ見てなさいって。ターン終了よ」
自分で自分の首を絞めるような選択。しかしこの一手には、れっきとした意味がある。
それが証明されるのは、次のターンだ。
「ふん、その程度か。ならば俺は《砕骨の刺客ゾルバス》と《悪臭怪人ゴキーン》二体を召喚。《ゴキーン》の能力で、貴様の墓地の《グールジェネレイド》を山札の底へ、俺の墓地の《インフェルノ・サイン》を山札の一番上へ戻す。そして《ドルバロム》で攻撃、これで貴様のシールドはゼロだ!」
確かに沙弓のシールドはもう存在しない。ブロッカーもいない。次のターンには、とどめを刺されてもおかしくないような状況だ。
だが、そんな状況だからこそ、
「いいわね、これ……燃えてくる」
口元を綻ばせて、沙弓はゆっくりとカードを引く。
「……来たわ」
そして、その引いたばかりのカードを、《バイス・カイザーΖ》に重ねる。
「《復讐のバイス・カイザーΖ》進化」
月影神話によって蘇った、暗黒の悪魔龍の唸りが、響き渡る——
「孤独なる死に逆らい、抗え——《悪魔龍王 デストロンリー》!」
悪魔龍王 デストロンリー 闇文明 (8)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 9000+
進化—自分の闇のコマンド1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、他のクリーチャーをすべて破壊する。
W・ブレイカー
バトルゾーンに自分の他のクリーチャーが1体もない場合、このクリーチャーのパワーは+5000され、「T・ブレイカー」を得る。
現れたのは、死を撒き散らす孤独な悪魔の龍王、その名も《デストロンリー》。
《デストロンリー》はおぞましい唸り声をあげると、その眼光を光らせる。
「さあ、この逆境に抗いましょうか……《デストロンリー》の能力、発動!」
刹那、バトルゾーンが吹き飛んだ。
「なに!?」
一瞬で場のクリーチャーが消し飛んだことに、ブラックルシファーは驚愕している。
いや、全滅ではない。たった一体だけ、生き残っているクリーチャーがいた。そう、《デストロンリー》だ。
「《デストロンリー》がバトルゾーンに出た時、バトルゾーンの他のクリーチャーをすべて破壊する」
「なんだと……!」
つまり結果として、《ドルバロム》だけを破壊するよりも大きなアドバンテージを得られたということだ。《ドルバロム》だけを破壊していたら、《ゾルバス》に攻撃を防がれ、二体の《ゴキーン》が襲ってくる。しかし《デストロンリー》が出たことで、それらのクリーチャーをまとめて消し去り、なおかつ《デストロンリー》を残すことができた。
とはいえそのためにシールドをすべて失ってしまったうえに、《バイス・カイザーΖ》が除去される可能性、そもそも《デストロンリー》を引けない可能性も考慮すれば、分の悪い賭けであり、素直に《アバヨ・ジャバヨ》を出す選択が普通だが。
だが沙弓は、その普通の一手を拒否した。その結果が、今なのだ。
「俺のクリーチャーが全滅……なんということだ……!」
「それだけじゃないわ。《デストロンリー》は他に自分のクリーチャーがいない時、パワーが5000プラスされて、Tブレイカーになるの」
口元に笑みが浮かんだまま、沙弓の目つきがほんの少し鋭くなる。得物に狙いを定めたような、そんな目だ。
「《デストロンリー》で攻撃、Tブレイク」
次の瞬間、《デストロンリー》の雄叫びと共に闇の波動が放たれる。そして、ブラックルシファーの残りシールドをすべて粉砕した。
「さ、これでイーブンよ?」
白々しくそんなことを言う沙弓に対し、ブラックルシファーは苦しそうに唸る。
「ぐぬぬ……だが、まだ終わってはいない。俺のターン! 《インフェルノ・サイン》で墓地の《ゾルバス》をバトルゾーンに! さらに《ブラックルシファー》も召喚! これなら、《ゾルバス》で攻撃を防ぎ、次のターンにはとどめを——」
「刺すのは、私だけどね」
《ブラックルシファー》に最後まで言わせず、沙弓のターンがやって来た。恐らくは、このデュエルのラストターンだ。
「《アバヨ・シャバヨ》と《マイキーのペンチ》を召喚。《マイキーのペンチ》がいるから、《アバヨ・シャバヨ》はスピードアタッカーになるわ。《アバヨ・シャバヨ》で攻撃」
「っ、《ゾルバス》でブロック!」
なんとか《アバヨ・シャバヨ》の攻撃は防ぐが、しかしこれでもう、《ブラックルシファー》を守るものはない。
闇の悪魔龍王が、終わりを告げるかのように咆哮する。
「《悪魔龍王 デストロンリー》で、ダイレクトアタック——!」