二次創作小説(紙ほか)
- 98話「ボルメテウス・リターンズ」 ( No.304 )
- 日時: 2016/02/01 12:52
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 9Mczrpye)
暁とデウス・エクス・マキナのデュエル。
互いにシールドは五枚。暁の場には《コッコ・ルピア》が一体。対するデウスの場には、まだなにもいない。
ゆっくりとした立ち上がりのデウスだが、ここでようやく動きを見せる。
「私のターン。《禁術のカルマ カレイコ》を召喚。ターン終了だ」
返しにクリーチャーを召喚。それでも、まだその動きは小さい。
「そんなちまちまやってたら、速攻で終わっちゃうよ。私のターン! 《ボルシャック・NEX》召喚!」
《コッコ・ルピア》の力を得て、僅か4マナで現れる《ボルシャック・NEX》。ファイアー・バードとの絆が特に強いこの龍は、次なる仲間を呼び出す力を行使する。
「山札から、二体目の《コッコ・ルピア》をバトルゾーンに——」
「させぬよ」
が、しかし。
その時、《カレイコ》の杖が妖しく光る。
「《禁術のカルマ カレイコ》の能力。如何なる者も、山札から手札以外にカードを移動させることを禁ずる」
《カレイコ》は、封殺の力を持つカルマの階級のオラクル。その力は、禁術によってカードの移動を制限するというもの。《カレイコ》が存在する限り、互いのプレイヤーは山札から手札以外にカードを移動できなくなる。つまり、山札からのマナ加速や墓地肥やし、シールド追加、そして山札からの踏み倒し——リクルートもすべて禁止されてしまう。
その禁を破ったものは、容赦なく元の場所に戻される。《ボルシャック・NEX》に導かれた《コッコ・ルピア》は、《カレイコ》の禁術によって山札へと送り返されてしまう。
「そんな……ターン終了」
「《墓守の鐘ベルリン》《制御の翼 オリオティス》を召喚」
守りを固めつつ、さらに呼び出すクリーチャーを制限してくるデウス。《オリオティス》が出てしまったせいで、暁はコスト踏み倒しどころか、コスト軽減でクリーチャーを早期召喚することすらできなくなってしまった。
「マナチャージして5マナ……だったら、《熱血龍 バクアドルガン》召喚! そのまま攻撃だよ!」
《バクアドルガン》の攻撃と同時に、暁は山札をめくる。《バクアドルガン》は攻めるたびに援軍を呼び寄せる戦闘龍、増援を率いて攻め込む切り込み隊長だ。
めくれたのは、同族の《バクアドルガン》。ドラゴンなので、手札に入る。
「シールドブレイク!」
「……ふむ。S・トリガーだ。《モエル 鬼スナイパー》を召喚。能力でパワー4000以下のクリーチャー、《コッコ・ルピア》を破壊」
《鬼スナイパー》の狙撃が、《コッコ・ルピア》を撃ち抜く。猟師に撃ち落とされる鳥の如く、《コッコ・ルピア》は地に落ち、そして燃え尽きた。
「でも、今はとにかく攻める! 《ボルシャック・NEX》でも攻撃!」
「《墓守の鐘ベルリン》でブロック」
《ボルシャック・NEX》の炎爪が、進路を阻む《ベルリン》を引き裂く。
《コッコ・ルピア》こそ破壊されたが、既に暁のエンジンはかかっている。《バクアドルガン》《ボルシャック・NEX》らによって、攻撃の手は緩まない。
しかし、それとは関係なく、デウスは盤面を支配する。
そのために、一つの伝説が返り咲く。
「私のターン……お見せしようか、かつての伝説を。この世に呼び戻された、偉大なる存在を」
「伝説……? なんのこと?」
「見れば分かる。君も、かの龍の力はよく知るところではないだろうか」
刹那、デウスの手に二つの光が宿る。
希望に満ちた青い光と、勝利に導く赤い光。
二つの光が彼に力を与える。
「詠唱——《希望と勝利の伝説》」
デウスの手に宿った二つの光は、やがてカードの形となった。
「《希望と勝利の伝説》の能力。カードを二枚ドロー」
「ドロー? それだけ?」
「そうだな。知識を得る。この呪文は、ただそれだけで終わることもある」
だが、そうではない時もある。
それが今だ。
「《希望と勝利の伝説》は、一つの伝説を蘇らせる。白く美しく、そして猛々しい、灼熱の龍の伝説を」
そのための儀式のように、デウスは呪詛を唱える。
「白き装甲の偉大なる龍よ。希望を抱き、勝利を求め、伝説をここに呼び覚ませ」
そして、その名を呼ぶ。
伝説として受け継がれる、大いなる龍の名を。
「かの龍は伝説として蘇る——《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》」