二次創作小説(紙ほか)
- 100話「侵略」 ( No.310 )
- 日時: 2016/02/07 02:04
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 9Mczrpye)
かくして始まった——否、今から始まる、恋と赤い侵略者のデュエル。
3ターンキルを宣言した相手は、対戦直前に、恋へと言った。
「先攻はくれてやる。いかにもトロそうなてめーへのハンディキャップだ」
「……その舐めプ、あとで後悔させるから……」
デッキがシャッフルされ、右横にセットされる。
山札の上から五枚がシールドとして展開され、さらに五枚が手札になった。
そして、二人の対戦は始まった。
「私のターン……」
先攻ゆえにカードは引かず、恋は手札を眺める。
《マスター・スパーク》《ヘブンズ・ゲート》《龍覇 エバーローズ》《聖龍の翼 コッコルア》《聖歌の聖堂ゾディアック》。
そしてその中から、《マスター・スパーク》を抜き取り、マナゾーンに落とした。
「……マナチャージ、ターン終了……」
先攻1ターン目にできることはないため、恋は手札に残す意義が薄い《マスター・スパーク》をマナに置き、ターンを終了する。
「ドロー——一周目」
恋がターンを終えた直後。
相手が、走り出した。
「《凶戦士ブレイズ・クロー》を召喚!」
1ターン目はなにもアクションを起こせない恋とは対照的に、こちらは1ターン目から仕掛けてくる。
だがその行動を見て、恋は、
「3ターンキルとかいってたから、予想してたけど……ただの赤単速攻……そんなの、私相手じゃつきにぃの下位互換……ただの雑魚……」
「うるせーな、ぺちゃくちゃくっちゃべってねーで、とっととてめーのターンを進めやがれ、ノロマ」
トラッシュトークにしても酷い、罵詈雑言の応酬だが、恋はそんなことなど微塵も気にせず、カードを引く。
「ドロー……マナチャージして、ターン終了……」
このターン引いたのは、《ヘブンズ・ゲート》。手札でダブったため、今は不要と判断し、マナへ。
2ターン目にも出せるカードがなかった恋は、このターンもなにもせずに終える。
「ドロー——二周目」
二度目の風が、吹き抜けた。
「《一撃奪取 トップギア》を召喚! 《ブレイズ・クロー》でシールドをブレイク!」
「……S・トリガー《マスター・スパーク》……一応、相手クリーチャーを全タップ……一枚ドロー」
「はんっ、なにが出たかと思えば、スカか」
早速一枚、恋のシールドが砕かれる。トリガーは出たものの、実質手札を一枚交換したようなものだ。
だが、まだ一枚だ。彼女のシールドはまだ四枚も残っている。それに恋の防御力は、シールドがゼロ枚でも強固なものである。
それは誰もがよく知ること。ただ単調に攻めていくだけでは、恋は倒せない。
それでも、相手は不敵に微笑む。
「私のターン……《聖龍の翼 コッコルア》を召喚」
恋の3ターン目。遂にクリーチャーを召喚することができた。
それもブロッカーだ。これで次のターンの攻撃が通りにくくなった。
(私の手札には《エメラルーダ》もある……次のターンで《コッコルア》のコスト軽減から出せば、シールドが増やせる……赤単速攻みたいな脳筋デッキじゃ、私は倒せない……)
次が相手の宣言した3ターン目。宣言通りなら、次のターンがファイナルターンになるはず。
ブロッカーを考慮しなくても、打点はまったく足りていない。2ターン目に《斬斬人形コダマンマ》から《デュアルショック・ドラゴン》が出てくればまだ分からなかったが、それすらない。この盤面では、3ターン目に恋のシールドを割り切ってとどめを刺すことはできないはずだ。《ラッキー・ダーツ》などを利用したコンボで仕留めるならともかく、相手の場とマナには赤いカードしか見えていない。コンボ性は皆無だ。殴り切って勝つしか道はないだろう。
どう考えても、次の3ターン目では決着はつけられない。
そして、仮に泣きついて対戦が延長されたとしても、恋は負けるつもりはなかった。
スピードに大きな差があるとはいえ、相手のデッキは、防御力に重きを置いている恋のデッキとは相性最悪だ。戦う前から、恋に有利が付いている。
そのため、この調子でいけば、恋が負ける要素はない。はずなのだ。
そして、相手のターン。
「ドロー——三周目」
来たる、宣言された3ターン目。
風がより強く吹き荒れる。
「さぁ、ファイナルラップだ!」
そして、爆走する。
轟音の響かせ、音速を超え、突き進む。
「点火(イグニッション)——!」
カードを引き、マナチャージ、マナをタップ。
赤い風が、カードを操る。
「ハンドルを握れ! クラッチを回せ! エンジンに火を点けろ!」
そのカードは一陣の風を切り裂き、音速を超えた轟速の彼方より、やって来る。
「行け——《轟速 ザ・レッド》、発進!」
轟速 ザ・レッド 火文明 (4)
クリーチャー:ソニック・コマンド/侵略者 4000
スピードアタッカー
轟くような爆音を響かせ、地平線の彼方より、音速ならざる轟速の侵略者がやって来た。
燃える炎のように真っ赤に染まったバイクを乗り回す、欲望と衝動に駆られた侵略者が。
《ザ・レッド》は急ブレーキをかけ、ドリフト気味に停止する。それを見た恋は、冷たく吐き捨てた。
「……なにかと思えば、ただの準バニラのスピードアタッカー……その程度じゃ、打点は足りない……」
「ノロマの癖に焦んなよ、まだ終わりじゃねーからな」
と言うものの、相手にはもうマナがない。
マナがないがゆえに、場のクリーチャーに手をかけた。
その刹那。
「加速(アクセラレーション)——!」
風は、加速する。
「《轟速 ザ・レッド》で攻撃——そして、侵略発動!」
「侵略……?」
恋が小首を傾げる。しかし風は、彼女を待たない。
己のスピードで、爆走を続ける。
危険域に達しても、何者にも囚われず、スピードだけを追い求め、突き抜ける。
「メーターを振り切れ! 限界を超えろ! 赤き領域よ、轟け! そして——侵略せよ!」
《ザ・レッド》は音速を超え、駆け抜ける。
赤い領域を、轟く速さで。
そして——
「突入——」
——侵略が、成し遂げられた。
「——《轟く侵略 レッドゾーン》!」