二次創作小説(紙ほか)
- 108話「萌芽神花」 ( No.321 )
- 日時: 2016/03/31 23:56
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)
萌芽神花 メイプル 自然文明 (7)
進化クリーチャー:スノーフェアリー/アース・ドラゴン 7000
進化—自分の《萌芽の語り手 プル》1体の上に置く。
メソロギィ・ゼロ—バトルゾーンに自分の《萌芽の語り手 プル》または《メイプル》と名のつくクリーチャーがおらず、自分のスノーフェアリーまたはコマンド・ドラゴンを含む自然のカードのコストの合計が12以上なら、進化元なしでこのクリーチャーをバトルゾーンに出してもよい。
このクリーチャーはバトルゾーン以外のゾーンにある時、進化でないクリーチャーとしても扱う。
このクリーチャーが攻撃する時、自分の墓地またはバトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置いてもよい。こうして相手のクリーチャーがマナゾーンに置かれていなければ、自分のマナゾーンにあるカードの枚数以下のコストを持つ自然のクリーチャーを1体、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出してもよい。
自分の自然のクリーチャーはすべて「セイバー:自然のドラゴン」を得る。
自分のバトルゾーン、またはマナゾーンから自然のクリーチャーが離れた時、そのターン、自分の自然のドラゴンは攻撃中に破壊されず、攻撃されない。
W・ブレイカー
獰猛な大地が割れ、そこから一輪の花が咲く。
細くしなやかで、瑞々しい肢体。背には花弁のような羽が伸びる。
妖精のような彼女は蕾のようにその身を閉じていたが、やがて、花開くように顔をあげる。
『Loo——』
小さく息を吐くと、彼女は柚を見据えて、言葉を紡ぐ。
『——柚、私もあなたの意に賛成だ』
凛とした声。
朝露のようにその声は透き通り、心に溜まる。すると、今度は陽光に照らされたような明るさと暖かさが染み渡る。
『仲間とは、友とは、独占されるべきものではない。仲間と仲間、友と友。数多の繋がりが、数多の輪となり、命の和を生み出す。それが共に生きるものたちの在り方……あの光の娘は、それが分かっていない』
「え、えっと……?」
言葉に詰まる柚。いつもの彼女とは違う雰囲気に、戸惑いを隠せない。
いつもなら、彼女の意思は心で伝わってくる。しかし今、彼女の意思は言葉で伝えられる。
彼女の声が、言葉が、そして立ち振る舞いが、これまでとの差異を生み出すが、
『分からないかな。ふふっ、柚は自分の気持ちを言葉にするのが下手だな。私が代わりに、言葉にしてあげよう。要するに、友達と仲良くする方法を間違えている子供には、躾てやらなければいけない、ということだ。ルピナちゃんのようにな』
「ル、ルピナちゃん……?」
『おっと、私としたことが失言だったな。体面的には、プロセルピナ様、と言うべきか。ふふっ、今のは忘れてくれ』
「は、はぁ……」
子供のように微笑む彼女。
そこに、柚はプルと呼んでいた彼女の面影を見た。
姿形が変わっても、本質はなにも変わらない。
今までの彼女が、そこにいた。
そして、自分の傍に、寄り添ってくれている。
『なんにせよ、だ。友の意味を履き違えている彼女のためにも、私たちの手で教えてやろう、柚。仲間とは、友とは、どうあるべきかを』
「は、はひっ! お願いします……っ!」
『お願い? 違うだろ』
彼女は柔和に微笑むと、間違いを正すように言う。
『一緒に、だ』
「……はいっ! 《メイプル》さんっ!」
『いい返事だ』
二人は、柚と《メイプル》は、恋へと向き直る。
友のため、仲間のため、そして彼女のために、立ち向かう。
「《獰猛なる大地》の効果をつづけます。ひゅうがさんのマナから《ティグヌス》をバトルゾーンに出して、わたしのバトルゾーンの《ジャスミン》と、ひゅうがさんのバトルゾーンの《オリオティス》をそれぞれマナヘ!」
『《ジャスミン》、ありがとう。あなたの育む小さな命の発芽が、私たちの糧となる。あなたのその生き様に敬意を表して、あなたを大地に送り届けよう』
《メイプル》はゆっくりと目を閉じ、祈るように手を組んだ。
残ったもう一体の《ジャスミン》が、蠢動する大地に飲み込まれ、消えていく。
《メイプル》は、己を呼び出すための糧となった小さな妖精を見届けると、再び恋の方を向く。
『さぁ、行こうか』
「はいっ! 《メイプル》さんで攻撃、その時、能力発動ですっ」
花弁のような羽を震わして、《メイプル》は飛翔する。
そして多くの仲間が眠る墓場へと、種を落とした。
『私の能力で、自分の墓地のクリーチャーを一体、マナに還すぞ』
《メイプル》が落とした種は発芽し、墓地に眠る《ケロスケ》を多い、マナゾーンへと送る。彼が亡くした命は、一度大地に取り込まれた。
そして、
「わたしのマナゾーンにあるカードの数以下のコストの自然クリーチャーを一体、マナゾーンからバトルゾーンに!」
その命を糧に、新たな命が芽生える。
「連鎖します、覇王様! 《連鎖類覇王目 ティラノヴェノム》!」
《メイプル》の蒔いた種が芽吹き、成長し、大きな命として実る。
覇王となる連鎖類目の古代龍が、大地より這い出てきた。《ティラノヴェノム》はその力で、さらに大地を叩き割る。
そして、さらなる仲間を呼び寄せるのだ。
「《ティラノヴェノム》の能力で、《龍覇 サソリス》をバトルゾーンにっ! きてください——《始原塊 ジュダイナ》!」
今度は《サソリス》が、超次元の彼方より、己が武器を呼び寄せる。
龍の頭部を模した原始的な大槌。《サソリス》はその槌を掴み取った。
『《サソリス》、後のことは任せた。私がみんなを守るから、あなたは柚を守ってくれ』
『任せておいてよ。君たちがいれば《ジュダイナ》も本来の姿を取り戻せる。絶対に守り抜いてみせるよ』
『あぁ、頼んだぞ』
そう《サソリス》と言葉を交わし、《メイプル》は空を翔ける。恋の盾へと、真っ直ぐに突き進んでいく。
だがその間には、巨大で強大な光の壁が立ち塞がる。
「少しクリーチャーを展開したくらいで、いい気にならないでほしい……いくら神話継承しても、そのクリーチャーは、しょせんパワー7000……私のクリーチャーたちの敵じゃない……《エバーラスト》でブロック」
舞うように飛ぶ《メイプル》に、《エバーラスト》が迫る。
鋭い槍の一突き。それを避けても、薙ぎ払い、降り下ろし、その槍撃は止むことがない。
弾くことはできない。触れてしまえば、浄化の光で身を消し飛ばされるのは目に見えていた。ゆえにその槍から逃げ続ける《メイプル》だが、それもじき終わる。
「——とった」
やがて、《エバーラスト》の不滅の槍が、《メイプル》の身を貫いた——
「……?」
胸を穿たれた《メイプル》。そのまま破壊され、墓地へと落ちる。それが普通であり、当然の結末だ。
しかし、《メイプル》の身は、綻び始める。桜の花びらが散るように、その身が崩れていく。
一陣の風が吹くと、花弁の身体は舞い散らされ、そこに《メイプル》の姿はなくなっていた。
「なに……どこに……? 破壊したはずなのに……」
『ふふっ、驚いているか?』
気づけば、《エバーラスト》の後ろに、《メイプル》がいた。
『残念だが、私の力を使わせてもらった。このターン、私たちを破壊することはできないぞ』
「どういう……」
「《メイプル》さんの能力です。バトルゾーンやマナゾーンからクリーチャーがはなれたターン、わたしの自然のドラゴンは、攻撃中に破壊されません……っ!」
このターン、柚は《獰猛なる大地》でバトルゾーンとマナゾーンのカードを入れ替えている。なので、《メイプル》の能力を発動させることができるのだった。
仲間との死別、離別、大地の摩耗、消耗。それらの悲しみの連鎖を、《メイプル》は断ち切る。
仲間を守る力。友を思う心。それが、《萌芽神話》を語る語り手の、在り方だ。
「これで、わたしのターンは終了です。ですがこのとき、わたしのバトルゾーンにドラゴンが三体いますっ」
柚の場には、《オトマ=クット》《ティラノヴェノム》そして《メイプル》。三体のドラゴンがいる。
そのため、
「《ジュダイナ》の龍解条件成立ですっ!」
《サソリス》が手にした大槌を、《ジュダイナ》を大地に叩きつける。
「古代の王様、大地を揺るがし、原始の命を蘇らせます……」
その一撃が、力によって恐怖を放つ、強大で偉大な龍を呼び覚ます。
「龍解——」
大地が割れる。
大槌が、原始の力を取り込む。
太古の王者が、再び古の栄光を取り戻す。
そして、目覚める——
「——《古代王 ザウルピオ》!」