二次創作小説(紙ほか)
- 114話「欲望——愛欲」 ( No.335 )
- 日時: 2016/03/12 04:41
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)
恋と柚のデュエル。
互いにシールドは五枚。恋の場には《聖龍の翼 コッコルア》《閃光の精霊龍 ヴァルハラ・マスター》。柚の場には《青銅の面 ナム=ダエッド》《ベニジシ・スパイダー》。
「私のターン」
恋はカードを引く。そして、相手を——柚を見遣った。
(やっぱり、いつものゆずとちがう……)
そんなことは今更確認するまでもないことだが、実際にこうして対面すると、どう違うのかが分かる。
静かすぎるのだ。彼女本来の気質を抑え込んで、違う彼女が演じられているかのような、そんな違和感。
(さゆみも言ってた……あんまりゆっくりしてると、展開されて押し負ける……なら)
恋はカードを操る。
いつもと違うと言えば、自分もそうだ。この戦い方は、自分が今まで積み上げて、作り上げてきたものとは、少し違う。だが、暁たちと共にいない間も、烏ヶ森で学んだ、もう一つの自分としての力が、恋にはあった。
それを、彼女にぶつけるのだ。
「まずは……呪文《グローリー・スノー》……私のマナが相手より少ないから、2マナ加速」
「自然文明を使うわたしを追ってきますか……追い抜かれちゃいました」
「さらに、《ヴァルハラ・マスター》で攻撃……その時、能力発動」
閃光の精霊龍 ヴァルハラ・マスター VR 光文明 (5)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 5500+
このクリーチャーが攻撃する時、名前に《スパーク》とある呪文を1枚、自分の手札からコストを支払わずに唱えてもよい。
バトルゾーンに相手のアンタップされているクリーチャーがなければ、このクリーチャーのパワーは+5500され、「W・ブレイカー」を得る。
「手札から、《スパーク》呪文をタダで唱える……呪文《マスター・スパーク》……相手クリーチャーをすべてタップ」
恋の手札から光球がこぼれる。それを拾い上げ、《ヴァルハラ・マスター》はその力を取り込んで、眩い閃光を放つ。
その光によって、柚のクリーチャーはすべて、地に伏した。
「そして、相手クリーチャーがすべてタップされている時、《ヴァルハラ・マスター》は強化される……パワーは11000。そして、Wブレイク」
《ヴァルハラ・マスター》は二度目の閃光を放つと、今度はそれが雷撃となり、柚のシールドを貫いた。
「さらに《コッコルア》で、《ナム=ダエッド》を破壊……」
「……攻めますね、こいちゃん。こいちゃんらしくないかんじです」
「それは、お互いさま……」
「そんなことないですよ。わたしはわたしです。これが、わたしなんですよ、こいちゃん」
割られた二枚のシールドを弄びながら、柚はカードを引く。
そして、原始的な欲望に駆られたシャーマンが、姿を現す。
「《龍覇 イメン=ブーゴ》を召喚です。能力で、超次元ゾーンから《邪帝斧 ボアロアックス》をバトルゾーンにだして、《イメン=ブーゴ》に装備です」
ザクリ、と。
超次元の彼方から落下した戦斧が地面に食い込み、それを《イメン=ブーゴ》が引き抜く。
そして《イメン=ブーゴ》は、《ボアロアックス》を振りかぶった。
「《ボアロアックス》の能力で、マナゾーンから《ベニジシ・スパイダー》をバトルゾーンにだします。マナを一枚追加です」
振りかぶり、振り降ろし、叩き割った地面から、《ベニジシ・スパイダー》が這い出て、マナを肥やす。
「コスト合計は……20になってませんね。ターン終了です」
柚はこれだけでターンを終えた。
この時点で、柚の場のクリーチャーのコスト合計は、5+7+5、合計17。まだ《ボアロアックス》の龍解条件が不成立だ。
《コッコルア》でクリーチャーをタップキルした甲斐があった。《ナム=ダエッド》を破壊したお陰で、ギリギリ龍解には至らない。
この隙に、恋はさらに攻める。
「《慈悲の精霊龍 イヴローラン》を召喚……《ヴァルハラ・マスター》で攻撃する時に、呪文《マスター・スパーク》」
「またですか。ということは」
「そう……Wブレイク」
《ヴァルハラ・マスター》の閃光によって、柚のクリーチャーは倒れる。そして、敵がすべて伏せているこの状態が、《ヴァルハラ・マスター》の力が発揮される時。無防備になった柚へと、力を発揮した《ヴァルハラ・マスター》の電撃が迸り、シールドをさらに二枚、粉砕する。
「……《鳴動するギガ・ホーン》を召喚です。山札から《ナム=ダエッド》を手札に加えて、そのまま召喚です」
残りシールド一枚と追いつめられた柚だが、焦る素振りも、不安がる様子も、一切見せない。
どころか、今のこの状況を愉しんでいるかのように、彼女の表情は蕩けている。
「いきますよ、こいちゃん。《イメン=ブーゴ》攻撃です。そのとき、《ボアロアックス》の能力も発動します」
「攻撃時に、発動……」
「そうですよ。すごいですよね。《ボアロアックス》は、装備したクリーチャーが攻撃するときにも、マナゾーンからクリーチャーを呼べるんです」
《イメン=ブーゴ》は《ボアロアックス》を振るって駆ける。同時に、再び地面を叩き割り、新たなクリーチャーを呼び出した。
「でてきてください。マナゾーンから二体目の《ギガ・ホーン》をバトルゾーンに。そして、能力で山札から《天真妖精オチャッピィ》を手札にくわえます。そして、《ヴァルハラ・マスター》を攻撃です」
「……《コッコルア》でブロック」
《ボアロアックス》の刃が《ヴァルハラ・マスター》に襲いかかるが、《コッコルア》が代わりにその刃を受け止める。
なんとか《ヴァルハラ・マスター》の破壊は免れた。だが、このターン、柚は三体のクリーチャーを並べている。
「ターン終了……するときに、わたしのバトルゾーンにいるクリーチャーのコスト合計が20以上なので、《ボアロアックス》は龍解します」
柚の場にいるクリーチャーのコスト合計は、5+7+5+5+3+5=30。
このターンで13コスト分のクリーチャーを並べることで、《ボアロアックス》の龍解条件を満たしてしまった。
「2D龍解——《邪帝遺跡 ボアロパゴス》」
《ボアロアックス》はその姿を変える。
多くのクリーチャーの力を取り込み、《ボアロアックス》は邪悪な龍の遺跡——《ボアロパゴス》へと、龍解した。
「……呪文《ジャスティス・プラン》」
2D龍解されても、恋にはそれに対抗したり、除去する手段はない。
なので、今できることを、こなすだけだ。
山札からめ捲られたのは《殉教の翼 アンドロ・セイバ》《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》《聖龍の翼 コッコルア》。
「三枚とも対応カード……ぜんぶ手札に加えて、《コッコルア》を召喚。そして、《イヴローラン》で攻撃……するときに、能力発動」
慈悲の精霊龍 イヴローラン VR 光文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 6500
ブロッカー
このクリーチャーが攻撃する時、進化ではない光の「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー
《イヴローラン》が吠えると、恋の墓地が白い光を発する。
その光は死した守り手に、再び命を吹き込んだ。
「墓地の光のブロッカー、《コッコルア》をバトルゾーンに……シールドブレイク」
「S・バック発動です。《ドクゲーター》を捨てて、《天真妖精オチャッピィ》を召喚します。そして《オチャッピィ》を召喚したことで、《ボアロパゴス》の能力発動。マナゾーンから《次元流の豪力》をバトルゾーンに」
《イヴローラン》がブロッカーを蘇らせつつ、シールドを砕くが、そのシールドを糧に、《オチャッピィ》が飛び出す。
そして、その《オチャッピィ》の登場を引き金に、今度は《ボアロパゴス》が動き出した。
邪悪なる遺跡の中から、次元を操る獣人が、大地の中から呼び覚まされ、超次元の扉が開かれる。
「《次元流の豪力》の能力で、超次元ゾーンから《舞姫の覚醒者ユリア・マティーナ》をバトルゾーンに」
「……《ヴァルハラ・マスター》でダイレクトアタック……呪文は唱えない」
「もう手札にスパーク呪文はないんですね。安心しました。では、《ユリア・マティーナ》でブロックです。強化されていなくても、《ユリア・マティーナ》が負けちゃいますが、《ユリア・マティーナ》の能力でシールドを追加します」
ブロッカーは破壊されたものの、代わりにシールドを追加し、守りを固める柚。
だが彼女は守り以上に、次のターンで驚異的な攻撃力を、欲望を最大限に解き放つ破壊力を、見せつける。
「では、わたしのターン……《ボアロパゴス》の龍解条件成立です」
《オチャッピィ》《次元流の豪力》の二体を加え、柚の場にいるクリーチャー合計は、38。
悠々と《ボアロパゴス》の龍解条件を満たしている。
「わたしの欲望がうずまいて……わたしの牙にひれ伏して……邪悪なわたしはここにいます……3D龍解」
すべてのクリーチャーの生命力を糧として、《ボアロパゴス》は、姿を変える。
「あなたのすべてを、わたしにください——《我臥牙 ヴェロキボアロス》」