二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編 28話「暴龍事変」 ( No.339 )
日時: 2016/03/17 21:22
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)

「ウオォォォォッ! 《龍覇 アイラ・フィズ》を召喚! マナ武装3で、超次元ゾーンからコスト2以下の火のドラグハート・ウエポンを呼び出し装備するッ! 来い! 《熱血爪 メリケン・バルク》! 《アイラ・フィズ》に装備だッ!」
 一騎とバリキレのデュエル。互いにシールドは五枚ずつ。
 一騎の場には《一撃奪取 トップギア》。
 バリキレの場には、先ほど召喚した《龍覇 アイラ・フィズ》と、《アイラ・フィズ》に装備された《熱血爪 メリケン・バルク》。



龍覇 アイラ・フィズ UC 火文明 (3)
クリーチャー:ヒューマノイド爆/ドラグナー 1000
マナ武装 3:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンに火のカードが3枚以上あれば、火のコスト2以下のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。



熱龍爪 メリケン・バルク 火文明 (2)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーが攻撃する時、相手のパワー2000以下のクリーチャーを1体破壊する。
龍解:自分のターンの終わりに、これを装備したクリーチャーがタップされていれば、このドラグハートをフォートレス側に裏返してもよい。




「呪文《ネクスト・チャージャー》を唱えるよ。手札をすべて山札に戻して、戻した枚数分ドロー。さらに《トップギア》でコストが下がった《爆山伏 リンクウッド》を召喚! 《トップギア》でシールドをブレイクして、ターン終了だ」
「《爆連撃 マッケンナ》を召喚ッ! 《アイラ・フィズ》で攻撃するとき、《メリケン・バルク》の能力発動! パワー2000以下の《トップギア》を破壊だッ!」
 《アイラ・フィズ》がお返しと言うように一騎のシールドを砕く。同時に、彼女の手甲に装着された爪から迸る熱線が、《トップギア》を焼き払った。
 さらに、
「ターン終了時、《メリケン・バルク》を装備した《アイラ・フィズ》がタップされているので、龍解条件成立だッ! 2D龍解! 《熱決闘場 バルク・アリーナ》!」



熱決闘場 バルク・アリーナ 火文明 (4)
ドラグハート・フォートレス
自分の火のクリーチャーが攻撃する時、相手のパワー3000以下のクリーチャーを1体破壊する。
龍解:自分のターンのはじめに、バトルゾーンにある自分のクリーチャーの数が相手のより多ければ、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップしてもよい。



 3D龍解カード。そのの二段階目、2D龍解を許してしまった一騎。
 これだけでも厄介だが、3D龍解されるとさらに大変なことになる。
 そうならないように、事前に龍解を止めるよう動くか、先んじて勝負を決めたいところだが、
「俺のターン……呪文《ネクスト・チャージャー》で手札を入れ替えるよ」
 如何せん、あまり手札が良くない。なので、二枚の手札を山札に戻す一騎。
 そして、再びカードを引くが、
(《メテオ・チャージャー》に《ネクスト・チャージャー》か……相手は火単色デッキ。《メテオ・チャージャー》は腐っちゃうな)
 使えないカードを握っていても意味はない。ならば、と一騎はまた引いてきた《ネクスト・チャージャー》を引き抜く。
「もう一度《ネクスト・チャージャー》だ。手札を入れ替えるよ。そして《リンクウッド》で《アイラ・フィズ》を攻撃! マナ武装3で山札を捲って、ヒューマノイドの《龍覇 グレンモルト》だったから手札に加えるよ!」
 二度目の《ネクスト・チャージャー》で手札を入れ替えつつ、《リンクウッド》で殴り返す。キーカードも手に入り、悪くない動きだが、
「《勇気伝承 ゲット Jr.》と《アイラ・フィズ》を召喚ッ! 《アイラ・フィズ》に《熱血剣 グリージー・ホーン》を装備し、《マッケンナ》で攻撃ッ! 《マッケンナ》で攻撃するとき、《バルク・アリーナ》の能力発動だッ! パワー4000以下の《リンクウッド》を破壊!」
「っ……!」
 二枚目のシールドを割られると同時に、《バルク・アリーナ》から放たれる炎が、《リンクウッド》を焼き焦がす。
 じわじわとシールドを削られながら、クリーチャーも削られていく。一騎のクリーチャーは全体的に小〜中型が多く、火力の射程圏内に入ってしまっている。
 なので、決定的ではないとはいえ、今の対戦の流れの主導権は、相手に握られていると言っていいだろう。
「どうにかして、流れを引き寄せないと……《龍覇 グレンモルト》を召喚! 《将龍剣 ガイアール》を装備して、《ゲット Jr.》と強制バトル!」
 超次元の彼方より飛来する金色の刀、《ガイアール》。
 《グレンモルト》はそれを掴み取ると跳躍し、《ゲット Jr.》へと斬りかかった。
「マナ武装で《ゲット Jr.》は攻撃されないけど、無理やりバトルに持ち込めば、関係ないよね」
 《ゲット Jr.》はマナ武装3で、コスト4以下のクリーチャーから攻撃されなくなる。さらにマナ武装5で、パワーアタッカー+4000とWブレイカーも得て、コスト2とは思えないスペックのクリーチャーに化ける。
 この状況でWブレイカーに攻められたくはないので、一騎は先んじて《グレンモルト》で《ガイアール》を呼び、破壊した。
「さらにG・ゼロで、呪文《暴龍警報》! 《グレンモルト》にスピードアタッカーとガイアール・コマンド・ドラゴンを与えるよ。そして、《グレンモルト》で攻撃! その時!」
 《グレンモルト》は《暴龍警報》の効果でガイアール・コマンド・ドラゴンとなっている。つまり、《グレンモルト》の攻撃と同時に、《ガイアール》の龍解条件が満たされるのだ。
「戦場の爆炎、熱き闘志を燃え上がらせ、勝利の鼓動を解放せよ!」
 《グレンモルト》から迸る熱血の意志が握る刀にも伝わり、それが龍解を呼び起こす。

「龍解——《猛烈将龍 ガイバーン》!」

 《ガイアール》を振り抜き、地面に突き立てた《グレンモルト》。
 戦場を包み込む爆炎が刀を包み込むと、その中で龍の魂が解放され、《ガイバーン》が姿を現す。
「龍解完了! 《グレンモルト》でシールドをブレイクだ!」
 龍解により、剣を手放した《グレンモルト》は、手刀でシールドを叩き割った。
 しかしその割ったシールドから、光が放たれる。
「S・トリガー発動ッ! 《天守閣 龍王武陣》!」
「っ!?」
「山札から《超熱血 レッド・ブルマッスル》を選択ッ! そのパワーは9000! 《ガイバーン》を破壊だッ!」
 《龍王武陣》から放たれる炎が、《ガイバーン》を焼き尽くす。
「《ガイバーン》が……!」
「まだだッ! 俺様のターンッ! このターンの初めに、俺様のクリーチャーの数が、お前のクリーチャーの数を上回っているので、《バルク・アリーナ》の龍解条件成立!」
 《バルク・アリーナ》が、炎に包まれる。轟々と燃え盛る炎。パチパチと弾ける音を声援として、龍の魂が解放される。

『3D龍解——《熱血龍 バリキレ・メガマッチョ》!』



熱血龍 バリキレ・メガマッチョ 火文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン 7000
自分のクリーチャーが攻撃する時、相手のパワー4000以下のクリーチャーを1体、破壊する。
W・ブレイカー



 《バルク・アリーナ》が変形し、鍛え上げられた筋肉に包まれた、熱血の龍が現れる。
 両手の甲には、灼熱の鉄爪。強靱な筋肉の下には、マグマのように熱く、血脈が脈打ち、心臓が高鳴る。
 《熱血龍 バリキレ・メガマッチョ》。戦闘と勝利を求める、熱血龍の中の熱血龍。誰よりも熱き血潮と、誰よりも熱き闘魂を持つドラゴンだ。
『ウオォォォォォォッ! 燃えてきた、熱くなってきやがったぜ! 《爆壁 ヒビキ18y》と《爆旗持ち ラガブーリン》を召喚ッ! そして俺様で攻撃! 俺様が場にいる限り、俺様のクリーチャーが攻撃するとき、相手のパワー4000以下のクリーチャーを破壊するッ! 《グレンモルト》を破壊だッ!』
「《グレンモルト》……!」
 《バリキレ・メガマッチョ》は駆ける。その進路を阻む《グレンモルト》を、熱された鉄爪で切り裂き、あっさりと破壊して、そのままもう片方の爪で一騎のシールドを二枚、焼き切る。
「S・トリガー発動! 《爆流剣術 紅蓮の太刀》! まずはパワー3000以下の《アイラ・フィズ》を破壊! さらにマナ武装5発動! パワー6000以下の《マッケンナ》も破壊!」
『チィ……ならば! スピードアタッカーの《ヒビキ18y》で、最後のシールドをブレイクだッ!』
 《ヒビキ18y》の刃が、一騎の最後のシールドを切り裂く。そのシールドからは、もうS・トリガーは出なかった。
 一騎の場にクリーチャーはいない。シールドもすべて割られてしまった。
 中途半端なクリーチャーを出しても、《バリキレ・メガマッチョ》の能力で破壊されてしまう。かといって、一騎のデッキのクリーチャーでは、相手クリーチャーをすべて破壊しきることは困難だ。
 ならば、どうすればいいか。答えは決まりきっている。至極単純だ。
 このターンに決めてしまえばいい。ただそれだけだった。
「《鬼切丸》と《龍覇 グレンモルト》を召喚! 《グレンモルト》の能力で、コスト4以下の火のドラグハート・ウエポンを呼び出すよ。さぁ、来てくれ! 《銀河大剣 ガイハート》!」
 再び現れる《グレンモルト》。超次元の彼方より、次なる剣を呼ぶ。
 今度は《ガイアール》ではない。二重に勝利を重ねる銀河の大剣、《ガイハート》だ。
 次元を切り裂き、貫いて、地面に突き刺さる《ガイハート》。《グレンモルト》はそれを引き抜き、構えた。
「《鬼切丸》でシールドブレイク! 続けて《グレンモルト》でもシールドをブレイク!」
  《バリキレ・メガマッチョ》のシールドを、スピードアタッカーの《鬼切丸》と、《ガイハート》によってスピードアタッカーを得た《グレンモルト》が切り裂き、砕く。
 これで《バリキレ・メガマッチョ》のシールドもゼロとなったが、最後の一撃が必要だ。
 その準備も、とうにできている。
 《グレンモルト》は、《ガイハート》を銀河の果てまで投げ飛ばす。
「ターン中、二回目の攻撃に成功! よって、《ガイハート》の龍解条件成立!」
 一騎は指を二本突き立て、《ガイハート》の行く末を見つめる。
 銀河の中で、燃え盛る炎に包まれる大剣。その内から、龍の魂が、鼓動として産声をあげる。
「行くよ、《グレンモルト》。そして——《ガイハート》!」
 ドクン、ドクンと、炎が弾けるたびに、魂が脈打つ。熱い闘志が、焼け付くような鼓動を刻む。
 一騎はその鼓動に身を委ね、《ガイハート》に手をかける。これを裏返し、龍の力を解放させるだけで、決着がつく。
 ぐっ、と。指に力を込める。カードからも、大剣に秘められた熱さが伝わってくる。
 そして今。
 勝利を司る、銀河の龍が、解き放たれる。
 龍解が、成されるのだ——



「龍か——ッ!?」



 ——ドクンッ!

 脈打つ鼓動が、激しくなる。
 弾け飛びそうなほどに、張り裂けそうなほどに、はちきれそうなほどに、強く、激しく、そして熱く、魂が叫んでいる。
 なんの魂か。
 《ガイハート》に秘められた、龍の魂だ。
 なんの叫びか。
 《ガイハート》の心からの、叫びだ。
 暴力的なまでの脈動が、一騎の身体を走り抜け、疾走を続けている。
(なんだ、これ……! 身体が、熱い……!)
 わけがわからず、頭は混乱し、身体は猛烈な熱と痛みに襲われる。
 なにが起こっているのか。
 《ガイハート》が叫んでいる。
 いや、《ガイハート》ではない。その奥にいる、もっと本質的な存在——《ガイギンガ》だ。
「ぐ、ぐぅ……!」
 《ガイギンガ》が咆哮する。その雄叫びが一騎の脈動となって、血を、肉を、骨を、身体を、すべてを燃やし尽くし、支配する。
 内から沸き上がる炎に、飲み込まれる。
 自分だけではない。
 その先に、もう一人、誰かがいる。
(え……なんで……?)
 なぜ、彼がそこにいるのか。
 暴れるような紅蓮の炎に包まれ、侵食される。取り込まれる。
 いつもは、彼らは共に戦い、共存し、互いが互いのために、互いの存在があってこその、相棒ではなかったのか。
 理解できなかった。なんで、こんなにも一方的に、荒々しい炎が生まれるのか。
 これではまるで、暴走ではないか。
 すべてが、暴走する龍に、支配されてしまう。飲み込まれ、取り込まれ、吸収されてしまう。
 場も、マナも、彼も、そして自分も。
 ふと、彼に手を伸ばす。彼の名を呼ぶ。
「ぐ、が……グレン……グレン、グレン……グレン、グレングレングレングレン……ッ!」
 違う。
 彼はもう、その名では呼べない。
 彼はグレンであり、グレンではない。
 暴走した龍が、彼を飲み込んだ姿が、そこにはあった。
 《ガイギンガ》《グレンモルト》。二体が一体として、そこにある。
 そう、その姿は、《ガイギンガ》であり、《グレンモルト》である存在。
「……ガイ——」
 力の限り、一騎は叫んだ
 “それ”の、名を——



「——《ガイグレン》ッ!」



 一人の戦士は、炎に包まれる。
 勝利の龍は、怒りを炎と化す。
 怒り狂う炎に取り囲まれた彼は、怒りの代償を受ける。
 身体も、心も、魂までも、龍たちの怒りに飲み込まれる。
 龍たちの怒りは、大きかった。
 そのあまりの激憤は、一人の少年すらも巻き込むほど、膨れ上がる。
 一人の戦士と、一人の少年が、暴龍に飲み込まれた。
 この、荒唐無稽で空前絶後、波瀾万丈にして破天荒な事象は、後にこう呼ばれる。

 ——“暴龍事変”と。