二次創作小説(紙ほか)
- 烏ヶ森編 28話「暴龍事変」 ( No.352 )
- 日時: 2016/04/03 23:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)
「俺のターン! 《龍覇 ストラス・アイラ》を召喚! 《熱血爪 メリケン・バルク》を呼び出して、《ストラス・アイラ》に装備!」
一騎とガイグレンのデュエル。
互いにシールドは五枚、クリーチャーは一体ずつ。一騎の場には《メリケン・バルク》を装備した《龍覇 ストラス・アイラ》。ガイグレンの場には《爆熱血 ロイヤル・アイラ》。
『ガァ……!』
ガイグレンのマナが赤く発光し、クリーチャーが飛び出した。
「《ロイヤル・アイラ》……」
出て来たのは、ニ体目の《ロイヤル・アイラ》。
マナ武装3の力で残りの手札を捨てた暴龍は、新たに二枚のカードを引き、三体目の《ロイヤル・アイラ》を呼び出して、さらに手札を補充する。
「クリーチャーは三体。そして、もう8マナか……でも、俺に《ガイグレン》を止める手立てはない……」
一騎の彼に飲まれ、一時的とはいえ同じ身体を共有していたから分かる。《ガイグレン》はマナの力を大量に吸収することで、無限に攻撃が可能だ。加えて、相手のカードによって選ばれた時に、自分よりも弱い相手クリーチャーを全滅させる能力も持っている。
後者の能力も強力だが、前者の能力が特に凶悪だ。大型ブロッカーでもいない限り、止めることはできない。火単色の一騎では、出されたらまず負けると思っていいだろう。
つまり、一騎がするべきことは、《ガイグレン》を出させないこと。または、その間に勝つこと。この二つだけだ。
「……呪文《勝負だ!チャージャー》。《ストラス・アイラ》を選択して、このターン、タップされていないクリーチャーを攻撃可能にするよ。続けて《爆炎シューター マッカラン》を召喚! マナ武装3発動、《ロイヤル・アイラ》とバトル!」
一騎のマナが三枚、赤色に輝く。
刹那、手札から飛び出した《マッカラン》が戦場を駆け、《ロイヤル・アイラ》を切り裂いて破壊する。
「まだだよ! 《ストラス・アイラ》でも《ロイヤル・アイラ》攻撃! その時《メリケン・バルク》の効果で、パワー2000以下のクリーチャーを一体破壊する! もう一体の《ロイヤル・アイラ》を破壊だ!」
《メリケン・バルク》から放たれる火球が《ロイヤル・アイラ》を焼き尽くし、《ストラス・アイラ》の鉄爪による裂撃が最後の《ロイヤル・アイラ》を引き裂く。
僅か1ターンで、アンタップ状態の三体のクリーチャーを全滅させる一騎。さらにこのターンの終わりに、《メリケン・バルク》が龍解条件を満たす。
「ターン終了時に、《メリケン・バルク》を装備した《ストラス・アイラ》がタップされているから、《メリケン・バルク》の龍解条件成立! 2D龍解! 《熱決闘場 バルク・アリーナ!》」
《ストラス・アイラ》の手に装着された《メリケン・バルク》が外れ、地に落ち、膨張する。
地に強く食い込み、空に突き上げるように伸び、大きく広がった。
そして、熱き魂の決闘場、《バルク・アリーナ》が完成する。
が、しかし、
『グゥ、ガアァイ……ッ!』
「!」
四枚目の《ロイヤル・アイラ》が現れるが、それだけではない。
手札を入れ替えたガイグレンの手札が、火を吹く。
呪文《天守閣 龍王武陣》。
山札の上から五枚が捲られ、ガイグレンはその中の一枚を、砲撃として放つ。
放たれたのは、彼自身。
《ガイグレン》のカードだった。
「っ、《ストラス・アイラ》が……!」
さらに五枚のマナが、さらに強く、赤く、発光する。
砲撃の弾とされたカードは、ガイグレンの元へと引き寄せられ、取り込まれる。
「遂に《ガイグレン》が……どうする……!?」
考えても、対策は出てこない。焦燥と不安、威圧、そして恐怖が、正常な思考を狂わせる。
「《龍覇 スコッチ・フィディック》を召喚……超次元ゾーンから《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》をバトルゾーンに」
一騎は、さらにドラグナー、そしてドラグハート・フォートレスを呼び出すが、遅すぎた。
それだけでは、なにも変わらない、変えられない。
暴龍の暴走は——暴龍事変は、止められない。
混乱と混沌を纏い、すべてを破壊すべく、怒り狂った暴龍が戦場へと現れた。
『ガアァァァァァァァァァァァァァァァイッ!』
暴龍事変 ガイグレン ≡V≡ 火文明 (9)
クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン/ヒューマノイド爆/ドラグナー 11000+
スピードアタッカー
マナ武装 9:このクリーチャーが攻撃する時、自分のマナゾーンに火のカードが9枚以上あれば、そのターン、このクリーチャーをアンタップしてパワー+3000する。
W・ブレイカー
相手がこのクリーチャーを選んだ時、このクリーチャーのパワー以下のパワーを持つ相手のクリーチャーをすべて破壊する。
その存在は事変である。
生きているものにも、そうでないものにも、多くのものに多大な影響を及ぼす、暴走した龍。
紅蓮に染まる身体は、彼の怒りを示す。
左腕の剣は、彼の憤怒だ。右腕の楯は、彼の激憤だ。
弱さは認めない。敗北は許さない。それらを為してしまったがゆえに、爆ぜるような怒りを燃え上がらせ、すべてを飲み込む暴龍が、現れた。
「……! な、なんだ……っ!?」
急に、苦しくなる。
息が苦しい。身体の力が抜けたかのように重い。肌を焼くようなひりつく痛みが、とにかく熱い。
見れば、マナゾーンの火がなびいている。
そしてそれらは、《ガイグレン》の身へと、取り込まれていた。
「マナの力を、吸収しているのか……それも、こんな無差別に……」
「このまま彼を野放しにはできないよ、一騎。これ以上《ガイグレン》を暴れさせたら、火文明の力が衰退して、最悪、火文明のクリーチャーが絶滅しかねない」
矢継ぎ早に言うテイン。深刻な顔をしているのは、見るまでもない。焦りに駆られている。それだけ、目の前の存在は強大で凶悪。そしてなによりも、危険なのだ。
火文明だけではない。もしかしたら、他の文明のマナすらも吸い付くし、すべてを果てさせてしまうかもしれない。
「でも、どうしたら……」
もはや打つ手はない。どうしようもないのだ。
《ガイグレン》は雄叫びを上げ、空気を震わせる。
そして、駆けた。
「来るよ、一騎!」
「っ……!」
大剣が、振り降ろされる。
「ぐぁ……っ!」
一撃で二枚のシールドが砕け散った。木っ端微塵になり、破片が一騎の皮を裂き、肉を抉り、身を焼き焦がす。
「ぐ、うぅ……!」
熱い。
痛い、ではない。とにかく熱い。焼きゴテというレベルではない。めらめらと燃える松明を、そのまま押しつけられているかのような熱さが、裂傷すらも焼いていく。
肉が焦げた異臭が鼻を突く。絶叫してしまいそうになるが、歯を食いしばる。
残りシールドは三枚。一撃は耐えることができた。
しかし耐えたところで、意味はない。こんなものは、彼の攻撃を耐えたことにはならない。
力尽きるまで、命尽きるまで、燃え尽きるまで、暴龍は止まらない。《ガイグレン》は、銀河の大剣を振るい続ける。
乱暴に、斬るのではなく砕くように、押し潰し、叩き潰すように。破壊的な衝動に任せて、《ガイグレン》は横薙ぎの一閃を放つ。その刃の前では、どんな盾でも、紙のようにたやすく焼き斬れてしまう。
このままでは、終わりだ。
焦燥が頂点に達する。早くなんとかしなくてはいけない。そんな焦りが、最高速度で駆け抜ける。
だから、だろうか。
焦燥と不安が募ったために、《ガイグレン》から滲み出る威圧と恐怖が、抜けていた。
両断された三枚目のシールドを見る。
それは、光の束となって収束していった。
「S・トリガー! 《イフリート・ハンド》! 相手のコスト9以下のクリーチャーを破壊するよ!」
光の束は灼熱の魔手となる。
業火の魔人の力が具現化した手は、あらゆる命を燃やし尽くす。それは暴龍であっても例外ではない。ゆえに、
「《ガイグレン》を破壊!」
魔手に握られた《ガイグレン》はその身を焼かれ、そして潰される。それによって、暴走した刃の連撃は止まった。
だが、しかし、
「!?」
《ガイグレン》が消滅した場所に、光が集まっている。弾け飛んだ暴龍の残滓が、少しずつ、少しずつ集合し、大きな光を形成する。
やがて光は、銀河となる。
巨大で、果てしない、破壊という概念のみを内包した、銀河が。
「これは……!」
それは、《ガイグレン》の置き土産とも言うべきものだった。
その身が朽ちようとも、彼の激情は止まらない。暴龍は死しても暴走を続ける。
右腕の楯が膨張していく。
その楯は、身を守るための楯ではない。楯すらも、彼にとってはすべてを破壊するための凶器だった。
彼の激情が銀河となり、一騎の場を支配する。
そして——爆ぜた。