二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編 29話「焦土神剣」 ( No.354 )
日時: 2016/04/04 02:40
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)

焦土神剣 レーヴァテイン 火文明 (7)
進化クリーチャー:ヒューマノイド/ボルケーノ・ドラゴン 8000
進化—自分の《焦土の語り手 テイン》1体の上に置く。
メソロギィ・ゼロ—バトルゾーンに自分の《焦土の語り手 テイン》または《レーヴァテイン》と名のつくクリーチャーがおらず、自分のヒューマノイドまたはコマンド・ドラゴンを含む火のカードのコストの合計が12以上なら、進化元なしでこのクリーチャーをバトルゾーンに出してもよい。
このクリーチャーはバトルゾーン以外のゾーンにある時、進化でないクリーチャーとしても扱う
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、または攻撃する時、このクリーチャーにウエポンが1枚も装備されていなければ、コスト5以下の火のウエポンを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出してこのクリーチャーに装備してもよい。または、コスト4以下の火のドラグハート・フォートレスを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出してもよい。
このクリーチャーが攻撃する時、相手のパワー4000以下のクリーチャーを1体選び破壊し、相手のマナゾーンにあるカード1枚を選び持ち主の墓地に置く。
各ターン、このクリーチャーが初めて相手のシールドをブレイクする時、相手が手札に加える1枚目のカードは、手札に加えられる代わりに持ち主の墓地に置く。
W・ブレイカー



 硝煙と爆炎の中から、一人の戦士が姿を現す。
 羽織っているベージュの軍服をなびかせ、腰に差した軍刀を抜いた。その刃は光を反射し、白く煌めく。
 彼は穏やかで、理知的な相貌をしているが、二つの眼には確かな意志の炎が燃え盛っていた。
 血気盛んで熱血の魂を持つ、火の戦士としての炎が。
「テイン……」
『一騎。ありがとう』
 彼は、半身で振り向くと、礼を言った。
『君のお陰で、俺は本来の力を取り戻し、そして、隊長の意志も受け継ぐことができた……今なら分かる。隊長が目指した“戦争”が、どのようなものなのか』
 傷つけ、奪うだけではない。自分の意志を伝えるための手段としての、戦争。
 戦いは凄惨なだけではない。時として、なにかを救うこともある。
 それは、二人とも分かっていた。
『やろう、一騎。僕が君の剣だ。僕たち二人、そして皆の力で、モルトを、ギンガを——ガイグレンを。救うんだ』
「……あぁ、分かってる。俺も、同じ気持ちだ」
 一騎も彼と同じだった。
 目指すはただ一つ。
 暴龍に取り込まれた、二つの魂を解き放つこと。
 即ち、仲間を助けること。
 ただ、それだけだ。
「戦地は任せたよ、《レーヴァテイン》!」
『指揮は君に頼む、一騎!』
 戦士は《レーヴァテイン》、軍師は一騎。
 二人はそれぞれの役割を確認し合い、“戦争”を、再開する。
「行くよ! 《レーヴァテイン》の効果発動! 《レーヴァテイン》がバトルゾーンに出た時、超次元ゾーンからコスト5以下の火のドラグハート・ウエポンを装備できる! 《銀河剣 プロトハート》を装備!」
『モルト、アイラ、フィディック……君たち龍覇の力も、使わせてもらうよ! さあ来るんだ! 《プロトハート》!』
 超次元の彼方より飛来する一振りの剣。龍の力が込められたドラグハート・ウエポン、《銀河剣 プロトハート》。
 ガイギンガの仮の魂が込められたその剣は、《レーヴァテイン》の左手の収まる。《レーヴァテイン》は《プロトハート》を握ると、右手の軍刀と共に構える。
「攻撃開始! 《レーヴァテイン》で攻撃! その時、相手のマナゾーンのカードを一枚墓地へ!」
『ふっ!』
 軍刀を薙ぎ払う《レーヴァテイン》。その一振りで、地面を炎が這いまわる。
 地を這う炎は暴龍のマナまで達し、一枚のカードを焼き落した。
「さらに《レーヴァテイン》は、攻撃時にも超次元ゾーンからドラグハートを呼べる! 今度はコスト4以下の火のドラグハート・フォートレスをバトルゾーンに出すよ! 出すのは《最前線 XX幕府》!」
『拠点設置だ! 速やかに築城開始! 急げ!』
 疾駆しながら叫ぶ《レーヴァテイン》。
 彼と一騎、二人の声に応え、戦場の最前線に《XX幕府》が立った。
 武器を持ち、拠点を整え、遂に《レーヴァテイン》が暴龍を守る城壁へと達する。
「《レーヴァテイン》でシールドをブレイク——する時に!」
『君の仕掛けた罠は——焼き払う!』
 《レーヴァテイン》の振るう刃が炎上し、炎の軌跡を描きながら、暴龍のシールドを斬る。
 その一太刀目は、シールドを砕くことなく、焼き払った。
「《レーヴァテイン》が初めてブレイクするシールドは、その一枚目が墓地に送られる! 残るシールドはブレイクだ!」
 焼け落ちる《天守閣 龍王武人》。その残滓を見送りながら、《レーヴァテイン》は白刃による二の太刀を繰り出す。
『グゥ……!』
「攻撃後、《プロトハート》を装備した《レーヴァテイン》はアンタップする! もう一度攻撃して、効果発動! マナゾーンのカードを一枚墓地に置いて、《大いなる銀河 巨星城》をバトルゾーンに! さらにターン中、二度目の火のクリーチャーの攻撃だから、《XX幕府》の龍解条件も成立! 《最前線 XX幕府》を、《熱血龍 GENJI「天」》に龍解!」
 マナを攻め、新たな拠点を設け、戦士を増やす。
 戦争は一人で行うものではない。仲間の数だけ強力な布陣を敷くことができる。
 一騎当千とでも言わんばかりに単騎で戦う《ガイグレン》とは、違う戦い方だ。
「《レーヴァテイン》でWブレイク!」
 続く三度目の太刀は、《プロトハート》が斬る。
 三枚目、四枚目と暴龍のシールドが切り裂かれ、彼を守る城壁が崩れ去っていく。
 しかし崩れた城壁のうちの一つが、光を放った。
『グガアァァァァァァァァァァァァァイッ!』
 暴龍が、またしても咆える。
『一騎……来るよ!』
 ガイグレンの雄叫びが、法螺貝の音と共に轟く。
 《天守閣 龍王武陣》。
 山札の上から五枚が捲られ、その中のクリーチャーが、射出される。
 放たれるのは——《暴龍事変 ガイグレン》。
「くっ……! 《バリキレ》!」
 《ガイグレン》の大剣が《バリキレ・メガマッチョ》を一刀両断する。
 《レーヴァテイン》はこれ以上の攻撃ができない。《アイラ・ホップ》は残っているが、ダイレクトアタックまでは届かない。
「……ターン終了だ。でも、ターン終了時に《プロトハート》を装備した《レーヴァテイン》は、二回攻撃してタップ状態。龍解条件成立で、龍解するよ! 《星龍解 ガイギンガ・ソウル》!」
 《ガイギンガ・ソウル》を龍解させつつ、ターンを終える一騎。
 一騎の場には切り札となり得るだけのクリーチャーが並んだ。しかし暴龍の手札には《天守閣 龍王武陣》によって加えられた《ガイグレン》がいる。
 今度こそ、《ガイグレン》が現れたら一騎に防ぐ術はない。
 しかしそれは、あくまで現れたらの話である。そもそも出て来ないのであれば、問題ない。
 そのための手は、既に打ってある。
『ガァ……!』
「無駄だよ。君が暴れることは、もう叶わない」
 暴龍は身動きが取れなかった。
 《ガイグレン》自身は手札にある。しかし、彼はもう、出て来れない。
 理由は酷く単純だ。
 彼が存在するだけのマナが、彼にはないのだ。
「マナが足りなければ、クリーチャーは出せない……コスト9の《ガイグレン》を呼び出すだけのマナが、今の君にはないよ」
 マナ。クリーチャーを呼び出すためのエネルギー。
 それが足りないだけ。実にシンプルで、しかしどうしようもないことだった。
 《ガイグレン》の存在は、それだけで莫大なマナを消費する。逆に言えば、マナからの供給を絶ってしまえば、《ガイグレン》は存在できず、暴走することもない。
 《レーヴァテイン》はシールドやクリーチャーだけでなく、マナをも攻める。クリーチャーが存在するための命の源泉を断ち切ってしまう。
 それは戦争が凄惨たる由縁の一つで、悍ましさの一側面であったが、彼らが“戦争”を肯定するためには受け入れなければいけない事実だ。
『グウゥ……ガアァァ……!』
 《ガイグレン》が出せない暴龍は、《神光の龍槍 ウルオヴェリア》を装備した《龍覇 ストラス・アイラ》を二体を召喚し、ターンを終える。
「俺のターン! 俺のバトルゾーンに火のクリーチャーが二体以上いるから、《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》と《大いなる銀河 巨星城》の龍解条件成立! 《熱血龍 ガイシュカク》! 《星城龍解 ダイギンガ》!」
 戦場に立つ他の仲間たちに呼応して、《天守閣 龍王武陣》と《巨星城》が龍解する。
「ダメ押しだ! 《爆轟 マッカラン・ファイン》《爆山伏 リンクウッド》を召喚!」
 さらに仲間を呼び、一騎の場にはドラグハート・クリーチャーが四体、普通のクリーチャーが三体、そして進化クリーチャーである《レーヴァテイン》が一体。合計八体のクリーチャーが並び、それらすべてがスピードアタッカーだ。
 もはやブロッカーで守りを固めようと、関係ない。
「君の性格で守りに入ったら、その時点で負けだよ、ガイグレン! 俺の妹分に比べれば、そのくらいの守り、なんでもない。力ずくでこじ開ける!」
 いつになく強気な一騎。手が付けられないほど暴力的で攻撃的な暴龍が、守りに入っているという事実が、彼に攻めの姿勢を与えているのか。
 いや、それだけではない。それ以上に、彼を取り囲む戦友たちの勇姿が、彼を奮い立たせているのだ。
「《レーヴァテイン》で攻撃する時、《バルク・アリーナ》を設置!」
 これもダメ押しだ。さらに拠点を作り、《レーヴァテイン》は《GENJI「天」》と共に戦場を駆ける。
 立ちふさがるのは、似合わない槍を携えた《ストラス・アイラ》二体。
「頼んだ《レーヴァテイン》《GENJI「天」》! 君らの力で、あの守りを崩すんだ!」
『了解!』
「まずは《レーヴァテイン》の効果発動! 相手のパワー4000以下のクリーチャーを一体破壊! 一体目の《ストラス・アイラ》を破壊して、マナも一枚墓地へ!」
 《レーヴァテイン》の白刃が《ストラス・アイラ》を切りつける。同時に炎を放ち、マナを焼く。
「続けて《GENJI「天」》の効果発動! 自分のクリーチャーが攻撃する時、相手ブロッカーを破壊する! もう一体の《ストラス・アイラ》を破壊!」
 《レーヴァテイン》の攻撃に合わせて、《GENJI「天」》も刀を振るい、《ストラス・アイラ》を切り捨てる。
 ブロッカーはいなくなった。暴龍を守っているものは、残るは一枚のシールドだけ。
「最後のシールドをブレイク! その時、《レーヴァテイン》の効果で、ブレイクしたシールドを墓地へ!」
『はあぁぁぁっ!』
 しかしその守りも、焼き払われ、燃え尽きる。
 もう、暴龍に続く道を妨げる者はいない。
 戦場は焦土と化した。思いを伝えるべき相手は、すぐそこにいる。
『道は開いた。あとは——伝えるだけだ』
 軍刀を鞘に納め、《レーヴァテイン》は仲間を導く。
 仲間のいない戦場で、ただ一人立ち尽くす暴龍。
 なにも邪魔は入らない。今のすべての思いを、ぶつけるだけだ。
「待ってて、二人とも。今——助けに行く」
 そう言って、一騎は最後の指示を出す。
 彼らの魂を救うための一撃を放つために。
 束縛された暴龍の魂を——斬る。

「《星龍解 ガイギンガ・ソウル》で、ダイレクトアタック——!」