二次創作小説(紙ほか)
- 烏ヶ森編 30話「事変終結」 ( No.355 )
- 日時: 2016/04/11 22:57
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)
ガラガラッと部室の扉が開く。この少し乱暴な開け方は、ミシェルだ。
ミシェルはこちらの姿を認識すると、少しばかり目を見開く。
「今日は早いな」
「まあ、ね。ちょっとやりたいこともあったから」
「やりたいこと?」
「……なに……?」
「うおっ、お前か。急に出て来るなよ……」
ミシェルに続き、恋も入って来る。
——暴龍の一件から数日が経った。生徒会に押し付けられた雑務も、部活としての業務も、向こうの世界でのことも終わっておらず、まだまだやるべきことは多いが、ひとまずの日常だけは、戻って来たのかもしれない。
「つきにぃ……なにしてるの……?」
「デッキを組もうと思ってるんだ」
「デッキ? なんで今更」
「これだよ」
そう言って一騎は、一枚のカードを机の上に置く。
「これは……お前」
「つきにぃ……」
ミシェルと恋が、疑心に満ちた目で、一騎を見つめる。
それはそうだろう。一騎が見せたカードは、《暴龍事変 ガイグレン》。
昨日の騒動の元凶であるクリーチャーなのだから。
「つーかこいつ、まだこうして残ってたんだな……」
「なんでだろうね」
「知るか。それよりも、大丈夫なのか?」
「たぶん大丈夫じゃない?」
「たぶんっておい……」
「あれから一度も暴れたりしてないし、変な気も感じない。今はただのカードだよ」
「そうかぁ……?」
疑り深いミシェルだった。
もっとも、彼女が疑うのも、無理はないが。それだけこのクリーチャーは、大きな傷を、一騎たちにつけているのだから。
「二人の言いたいことは分かるけど、でも、《ガイグレン》は《グレンモルト》であり《ガイギンガ》なんだ。姿形が違っても、俺たちの仲間だよ」
だから、あの時のことをなかったことにはしたくない。
少なくとも、あの事変があったから、自分たちは強くなれたのだから。
その事実だけは揺るがない。そして、忘れてはいけない。
「俺は、もっとずっと、彼らと一緒に戦っていたい。だから、そのことを伝えるために、多少の無茶もした」
「多少ってレベルじゃないけどな」
「それに、《グレンモルト》や《ガイアール》も、新しい力を得たしね」
そう言って一騎は、《ガイグレン》の横に、さらに三枚のカードを並べる。
「なに? 《次元龍覇 グレンモルト「覇」》……? こいつもドラグナーか」
「《覇闘将龍剣 ガイオウバーン》……新しいドラグハート……」
「あとは、《斬英雄 マカラン・ボナパルト》。《マッカラン》は《グレンモルト》の親友だったみたいだけど、彼のために英雄になるなんてね」
一騎やテインだけではない。《グレンモルト》や《ガイバーン》も、一騎たちの意志に応え、共に強くなろうとしている。
そう思うと、仲間に支えられている感覚が、共に歩んでいく実感が、湧き上がってくる。
そしてそれは、そのまま自分たちの力となるのだ。
「みんなこうして変わってきているんだ。俺自身も、強くなるために、少しは変わろうかなって。だからまずは、デッキから」
「……私も、手伝う……ミシェルも……」
「は? あたしも?」
「うん……」
「仕方ねぇな……少しだけだぞ」
「ありがとう、二人とも」
穏やかに微笑んで、一騎は作りかけのデッキを出す。
作りかけと言っても、一度デッキを完全に崩した状態のままで、ほぼゼロの状態だ。
「今までのデッキは中速ビート気味だったけど、《グレンモルト「覇」》や《ガイグレン》を生かそうとすると、マナ武装の達成が難しいんだよね」
「……マナ武装9……あきらでも、そんなにマナ溜めない……」
「ガイグレンがやってたみたいに、火のチャージャーをいっぱい積んでみるとか?」
「そんな半端なことしないで、自然文明を足せばいいんじゃないか? 《ジョニーウォーカー》とか多色のマナ加速を使えば、マナ武装の邪魔にもならないし。ほら、黒月も似たようなデッキ使ってるだろ、準黒単。その要領で、準赤単にすれば」
「その手があった……ミシェル、おてがら……」
「なるほど。そうなると、《フェアリーの火の子祭》とかもよさそうかな。あ、《テイン》も神話継承できるようになったし、クリーチャーも多めにしたいな。《マッカラン》《アイラ》《フィディック》も入れて、ドラグハートは今まで通り使えるようにしよう……そうだ、防御が薄いから、トリガーも考えないと。入れるとしたら、《シュトルム》とかかな?」
「マナ武装使うなら、《天守閣 龍王武陣》とか、《バーニング・銀河》とか……あきらも使ってる……」
「クリーチャーでマナ加速するなら《ウインドアックス》なんかもいいな」
「そういえば、《焦土と開拓の天変》ってカードがあったっけ。あれもテンポアド取れるし良さそうかもしれない」
「超次元はどうするんだ?」
「……これ、ドラグハート以外も出せる……」
「え? あ、本当だ。でも《レーヴァテイン》はドラグハートしか出せないし……悩むなぁ」
「カードパワー的にはドラグハートの方が強いし、とりあえずそっち優先させたらどうだ?」
「じゃあそうしようかな。えーっと、とりあえず入れるのは、《ガイハート》に《ガイオウバーン》に——」
そうして、三人はデッキを組んでいく。
かつての反省と、これからの期待を込めて。
どんな事変にも負けないような、新たな力を宿したデッキを——