二次創作小説(紙ほか)
- 116話「2人の3D」 ( No.361 )
- 日時: 2016/04/16 00:52
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)
勝利を刻む龍の天守がそびえる城が、揺れ動く。
ひたすらに熱い闘志を滾らせ、戦場の集う数多の戦友の思いを背負い、その城は姿を変える。
武器から要塞へ。要塞から龍へ。
暁を始めとする、数多くの仲間たちの声を聴き、《バトライ武神》は戦場へと降り立った。
「3D龍解……されて、しまいました……」
今まで余裕を見せていた柚だが、彼女の表情が途端に険しくなる。
《爆熱DX バトライ武神》。柚の《ヴェロキボアロス》と同じ、3D龍解、最終形態のドラゴン。
《バトライオウ》の魂を《グレンモルト》が引き継ぎ、仲間たちの支えを受けて初めてその姿を現す、火文明最高位のドラグハートの一体。
戦場で向かい合う《バトライ武神》と《ヴェロキボアロス》。どちらも格は同じクリーチャーだ。ならば、柚の《ヴェロキボアロス》が場を蹂躙したように、暁の《バトライ武神》も、それと同等の力を解き放つ。
「まずは行って! 《フォーエバー・プリンセス》! 《ベニジシ・スパイダー》を破壊!」
柚のクリーチャーを破壊したが、この程度は些細なことだ。柚が展開したクリーチャーの大群から、一匹を取り除いたに過ぎない。
しかし、
「こっからが本番だよ、ゆず! 私の攻撃、凌げるものなら凌いでみなよ!」
「あきらちゃん……」
暁の炎は爆ぜる。
轟々と燃え盛る、太陽のように。
「《バトライ武神》で攻撃!」
その時、《バトライ武神》の力が解放された。
山札の上から三枚が吹き飛ばされ、その中からすべてのヒューマノイドとドラゴンが呼び出される。
「暁の先に、龍の歴史を——《龍世界 ドラゴ大王》! 《勝利天帝 Gメビウス》! そして——」
龍にのみ生存権が与えられる世界の王。歴史に名を残す勝利の天帝。
二体の大型ドラゴンが呼び出される。だが、これだけでは終わらない。
「進化——メソロギィ・ゼロ!」
《ドラゴ大王》と《Gメビウス》に続き、黒翼の太陽が、黒羽を散らして、大空を翔け抜ける。
「——《太陽神翼 コーヴァス》!」
黒き翼に抱かれた、継承せし太陽が、天に席巻する。
暁の場には、アーマード・ドラゴンの《バトライオウ》がいる。その上で、場の火のカードのコスト合計は12以上。仲間の助けを受け、メソロギィ・ゼロの条件を満たした《コーヴァス》は、《コルル》を介さずに存在することができる。。
加えて《コーヴァス》はバトルゾーン以外のゾーンにいる時は、進化でないクリーチャーとしても扱われる。《バトライ武神》は非進化クリーチャーのみを呼び出すが、《コーヴァス》は自身の能力によってその制約を掻い潜り、戦場へと駆けつけたのだった。
《コーヴァス》は黒羽を舞い落として羽ばたく。その瞳の先には、柚がいた。
『柚の嬢ちゃん、やっぱ変だが……暁、いいのか?』
「いいよ。分からず屋のゆずなんかに容赦はしない。《コーヴァス》! 思いっきりぶん殴れ!」
『……あぁ! 行くぜ!』
主の言葉に従い、《コーヴァス》は空を舞う。
「《コーヴァス》の効果発動! 《コーヴァス》がバトルゾーンに出た時、あいてクリーチャー一体とバトルする! 《シール・ド・レイユ》とバトル!」
超高速で突貫し、《シール・ド・レイユ》へと迫る《コーヴァス》。同じく空を領域とする光文明の《シール・ド・レイユ》でも、彼のスピードにはついてこれない。
瞬く間に、《コーヴァス》の接近を許してしまう。
『はぁっ! 散れっ!』
燃え盛る拳の一突きで、《シール・ド・レイユ》の身は木端微塵に爆散した。
「まずは恋のクリーチャーから!」
「ブロッカーが……!」
「まだまだ! これで終わりじゃないからね! 《コーヴァス》がバトルに勝ったから、山札の上から三枚をめくって、ファイアー・バードかドラゴンを出せる! 《バトラッシュ・ナックル》をバトルゾーンに!」
《コーヴァス》の翼の羽ばたきが追い風となり、新たな仲間を呼ぶ新風となる。
その風に誘われて、《バトラッシュ・ナックル》が現れた。
「次は部長のクリーチャーだよ! 《バトラッシュ・ナックル》の効果で、《ツミトバツ》とバトル!」
「パワーは《ツミトバツ》のほうが上ですよっ!」
「そんなこと知るか! 《バトライオウ》!」
『おうよ!』
《バトラッシュ・ナックル》に代わり、《バトライオウ》が《ツミトバツ》へと刃を向ける。
数多の凶刃を放つ《ツミトバツ》でも、数多の戦場を駆ける《バトライオウ》を殺すことはできず、彼の刃によって切り裂かれた。
「また……」
「どんどん行くよ! 最後は浬! 《ドラゴ大王》の効果で、《コーヴァス》と《デカルトQ》をバトル!」
『王権を行使する! カラクリの龍は破棄だ! 《コーヴァス》、貴様にその命を課す!』
『オーケー! 了解したぜ、《大王》!』
《シール・ド・レイユ》を殴り倒した《コーヴァス》は、《ドラゴ大王》の命令を受け、すぐさま滑空し、《デカルトQ》へと肉薄する。
龍素を充填し、その真理に近づいた結晶龍でさえも、彼の拳の前にはただの機械と水の集合体でしかない。
側面に現れた《コーヴァス》の熱源を感知し、《デカルトQ》は身体をグインと捻ろうとするが、
『遅いっ! ぶっ壊れな!』
彼の動きを捉えることもままならず、一瞬にして《デカルトQ》のボディも粉々に吹き飛んだ。
直後、黒い羽を伴う大風が吹き、《コーヴァス》の効果で《爆竜 GENJI・XX》が現れる。
《バーニング・銀河》に続き、《コーヴァス》の力によって、暁、恋、沙弓、浬——皆の英雄は、柚の下から消えていった。
「みんなのクリーチャー……返してもらうよ!」
「…………」
「それと、本当のゆずもね! 《バトライ武神》でTブレイク!」
最後に、《バトライ武神》の刃が、柚へと向けられる。
彼女の場にブロッカーはいない。三枚の盾のみが、彼女を守る術だ。
叩き潰すような斬撃。一撃ですべてのシールドが砕け散る。
だが、砕かれたシールドは、罠となり、暁に牙を剥く。
一枚目と二枚目のシールドが、光った。
「っ……S・トリガー! 《古龍遺跡 エウル=ブッカ》です! 《フォーエバー・プリンセス》と《ドラゴ大王》をマナゾーンへ! さらにマナ武装5でS・トリガーを得た《緑罠類有毒目 トラップトプス》も召喚! S・トリガーも手札からの召喚なので、《ヴェロキボアロス》の効果発動! マナゾーンから、わたしも《悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス》をバトルゾーンに! もうクリーチャーは出させませんよ!」
「関係ないね! 残りのシールドもブレイク!」
《ドラゴ大王》の支配を潜り抜け、柚の場に《トラップトプス》と《フォーエバー・プリンセス》が並ぶが、暁の場には《トラップトプス》で除去されるクリーチャーはおらず、今更《フォーエバー・プリンセス》で踏み倒しを規制しても、展開した後なので遅い。
そのまま、《バトライ武神》の刃が、最後のシールドまで叩き割る。
「……!」
「覚悟しなよ、ゆず! このまま《コーヴァス》でとどめまで——」
「まってください、あきらちゃん。S・トリガー……発動です」
最後に砕かれたシールド。それは、収束する光の束となる。
しかし、収束した光は、すぐさま解き放たれた。
滅亡と、終焉の、光となって——
「——《アポカリプス・デイ》!」
——光が、瞬いた。
「すべてのクリーチャーを——破壊ですっ!」
次の瞬間には、戦場は荒野と化していた。
生きとし生きる者はすべては根絶やしにされた。空にも、大地にも、なにも残っていない。
《ヴェロキボアロス》によって展開した柚のクリーチャーだけではない。《バトライ武神》と《コーヴァス》の連携によって呼び出された、暁のドラゴンもだ。
すべてが滅され、虚無の世界だけが広がっている。
「みんな、いなくなりましたよ……あきらちゃん」
「……そうだね」
互いにシールドはゼロ。ハンドアドバンテージにも、マナアドバンテージにも、大差はない。
だが、暁には、一つだけ大きな優位があった。
「でもね、ゆず」
柚にはなくて、暁にはあるもの。
それは、すべてを失っても、決して絶えない、不屈の闘志だ。
「《バトライ武神》は、龍回避でフォートレス側に戻るよ!」
滅亡の光の中で、崩れ落ちる《ヴェロキボアロス》と《バトライ武神》。肉体すべてが消滅した《ヴェロキボアロス》に対し、《バトライ武神》は、その身を再構築する。
《バトライ武神》は完全に落城することなく、《バトライ閣》として再び築城され、フォートレスとしてその身を保っていた。
お互いに場がリセットされたが、暁は《バトライ閣》を残したことで、再び龍解のチャンスを得た。《ヴェロキボアロス》に龍回避はない。これは、暁だけの優位だった。
「っ……! いえ……でも、これで、終わらせます……っ」
柚のターン。
すべての命が消えても、荒野に敵の城だけが立っていても。
それでも彼女は、欲望によって得た力を、手放さなかった。
「支配します、邪龍様——《邪帝類五龍目 ドミティウス》!」