二次創作小説(紙ほか)

125話「time reverse」 ( No.379 )
日時: 2016/05/01 19:35
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: uB4no500)

 《ラ・クルスタ》が進化して現れたのは、天馬の如き龍だった。
 純白のしなやかな肉体。強靭でありながらも芸術的な美しさを持つ脚と胴。力を象徴する雄々しき角、清廉を示す神々しき翼。
 これが革命軍の王と呼ばれるクリーチャーの一角——《革命天王 ミラクルスター》。
 ルミスの持つ力の大きな一欠片であり、彼女の相棒の一体だ。
 ルミスは進化した《ミラクルスター》を軽く撫でてやると、戦場へと送り出し、その力を発動させる。
「《ミラクルスター》がバトルゾーンに出た時、私はカードを一枚引き、手札からコスト6以下の光のクリーチャーをバトルゾーンに出します。《指令の精霊龍 コマンデュオ》をバトルゾーンに!」
 再び、《ミラクルスター》が嘶く。その呼び声によって引き寄せられたカードを、ルミスはそのまま放つ。それは一体の龍となった。
「そしてこの《コマンデュオ》の効果で、再びカードをドロー。そして手札から、コスト5以下の光のクリーチャーをバトルゾーンに出します。《真紅の精霊龍 レッドローズ》をバトルゾーンに!」
 《ミラクルスター》によって呼び出された《コマンデュオ》もまた、指令を飛ばす。山札から新たなカードが引き寄せられ、これもまた一体の龍となる。
「今度は《レッドローズ》の効果で、ドローです。そしてマナ武装3で、手札からコスト4以下の光のクリーチャーをバトルゾーンに出します。《超過の翼 デネブモンゴ》をバトルゾーンに!」
 深紅の花弁を舞い散らして、《レッドローズ》は仲間を呼ぶ。赤い薔薇の香りに導かれて、新たなクリーチャーが姿を現した。
「《デネブモンゴ》の効果で、またまたカードをドローしますよ。そして手札からコスト3以下の光のクリーチャーをバトルゾーンに出します。《牛歩の玉 モーギュ》をバトルゾーンに!」
 最後に《デネブモンゴ》の能力でカードを引き、《モーギュ》が出現する。



指令の精霊龍 コマンデュオ R 光文明 (6)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 6000
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、カードを1枚引く。その後、自分の光のコスト5以下の進化ではないクリーチャーを1体、手札からバトルゾーンに出してもよい。



真紅の精霊龍 レッドローズ C 光文明 (5)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 4000
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、カードを1枚引く。
マナ武装3:このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分のマナゾーンに光のカードが3枚以上あれば、進化ではない光のコスト4以下のクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。



 《ミラクルスター》から始まり、《コマンデュオ》《レッドローズ》《デネブモンゴ》《モーギュ》と連鎖し、たった一体のクリーチャーから、四体ものクリーチャーが展開された。
 流石にこの数のクリーチャーには、復讐者も気圧されたように言葉を詰まらせる。
「クリーチャーが……ぐ……復讐、する……!」
「そんなに復讐したければご自由に。しかし、私の革命は、まだ終わっていませんよ」
 明らかな焦りを見せる復讐者に対し、ルミスは余裕綽々だ。冷静と平静を保っている。
 いくらクリーチャーが五体並んだとはいえ、登場時の能力を使ってしまえば準バニラだ。ルミスのシールドは残り一枚、ブロッカーは《デネブモンゴ》のみで、復讐者のクリーチャーだって五体もいる。
 このターン攻撃できるのも《ミラクルスター》だけなので、いくら数を並べても、このまま数で押し切られてしまうのはルミスの方だ。
 しかし、それをさせないのが、彼女の革命だ。
「遂にお披露目ですよ。私の奇跡の魔法、時の逆流(time reverse)——とくとご覧あれ!」
 《ミラクルスター》が再三嘶く。
 ルミスたちの、革命を成し遂げるために。
「——革命発動!」
 奇跡の光が、侵略に侵された世界を浄化する。
 《ミラクルスター》《コマンデュオ》《レッドローズ》が、翼を羽ばたかせ、天空へと飛び立った。
「《革命天王 ミラクルスター》の革命2! 《ミラクルスター》がバトルゾーンに出た時、私のシールドが二枚以下であれば——」
 飛び立った三体の龍は、輝かしい、奇跡の光を観に纏う。
 それが、彼女の革命の合図だった。
「——私のバトルゾーンにある光のコマンドの数だけ、私のシールドが追加されます!」



革命天王 ミラクルスター SR 光文明 (7)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン/革命軍 9500
進化—自分の光のクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、カードを1枚引く。その後、進化ではない光の、コスト6以下のクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
革命2—このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分のシールドが2つ以下なら、バトルゾーンにある自分の光のコマンド1体につき、山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに置いてもよい。
W・ブレイカー



 ルミスの場にいる光のコマンドは、《ミラクルスター》《コマンデュオ》《レッドローズ》の三体。
 大空に飛び立った三体は、天を翔け、奇跡の光を放ち、時を逆流させる。
 完全に再現することは不可能だが、ルミスの砦は始まりへと遡る。
 三枚のシールドが増え、シールドは四枚。ルミスのシールド枚数は、冒頭へと戻ったのだ。
 それはつまり、時が巻き戻されたのと、ほぼ同義だ。
 再生した盾越しに、ルミスは余裕の笑みを復讐者に向ける。
「これで私の時間は巻き戻りました。さて、私の死期はいつやって来るのでしょうね?」
「ぬぅ……復讐する……復讐する……!」
「その復讐は時間的に間に合うのでしょうかね! 《ミラクルスター》で《ブラックサイコ》を攻撃! 破壊します!」
 《コマンデュオ》と《レッドローズ》はルミスの下に戻り、《ミラクルスター》はそのまま空を駆け抜けて《ブラックサイコ》へと迫る。
 そして《ブラックサイコ》の身を、甲冑ごと踏み砕いた。
 《ローズ・キャッスル》が二枚要塞化されていても、《ミラクルスター》のパワーは7500、《ブラックサイコ》は7000なので、ギリギリ打ち勝つことができる。
「ターン終了です。さ、あなたのターンですよ」
「……《フワシロ》と《ヴェイダー》を召喚……《ブラックサイコ》で攻撃……!」
「《デネブモンゴ》でブロック!」
「《オタカラ・アッタカラ》《ドルゲドス》でシールドブレイク……!」
 《ブラックサイコ》の攻撃はWブレイクなので《デネブモンゴ》で防ぐが、残る二体のクリーチャーからは、シールドを粉砕される。残るシールドは二枚。
「《ギズムリン》で攻撃する時、侵略モード発動……!」
 二体に続き《ギズムリン》も攻撃に参加するが、様子が違った。
 目を赤く光らせ、ルミスの手札を凝視している。
「《ギズムリン》の侵略モード……相手のシールドが二枚以下で《ギズムリン》が攻撃する時……相手は自身の手札を二枚捨てる……」
「この期に及んでまだ手札を破壊しますか。捨てる手札は先ほどブレイクされた二枚。ブレイクされたシールドにトリガーはないです」
「……ターン終了」
 あくまで攻める姿勢を崩さない復讐者。時を巻き戻しても、すぐに追いついてくる。
 しかし一気にクリーチャーを並べられ、打点増量でとどめを刺されかねないので、復讐者としても今の状況は厳しいはずだ。
「呪文《DNA・スパーク》! 相手クリーチャーをすべてタップ! ついでにシールドも追加します!」
 二重螺旋の光る鎖が二体の《ヴェイダー》に加えて《ギズムリン》も縛り付け、すべてタップされる。さらに一筋の光は盾となった。
 復讐者のシールドは四枚。《ミラクルスター》と《コマンデュオ》がWブレイカーなので、このターンにとどめを刺すことは可能だが、
「……まだ、攻め時ではありませんかね。《ミラクルスター》で《ブラックサイコ》を攻撃!」
 攻撃目標はクリーチャー。《ミラクルスター》は二体目の《ブラックサイコ》も踏み砕いた。
 S・トリガーで逆転される恐れを考慮し、まだプレイヤーへは攻撃せず、殲滅を続けるつもりのようだ。
 しかし、
「《コマンデュオ》でWブレイクです! 決めるつもりはありませんが、目障りなので、いい加減その陰気くさい薔薇のお城には落城していただきます!」
 続く《コマンデュオ》はシールドを砕く。
 復讐者のシールドには《ローズ・キャッスル》が二枚も張られている。そのせいで、ルミスのクリーチャーは大きくパワーが下がっていた。《ミラクルスター》が《ブラックサイコ》を殴り返すだけでもギリギリなのだ、他のクリーチャーが殴り返すには、パワーが不足してしまっている。
 なので、トリガーを使われるリスクを背負いながら、ルミスは先に《ローズ・キャッスル》が張り付いたシールドを二枚、打ち砕いた。
 黒い瘴気を放つ薔薇の古城は、音もなく崩れ去った。
 その跡から罠が発動される気配はない。
「では、《レッドローズ》で《ギズムリン》を、《モーギュ》で《オタカラ・アッタカラ》を攻撃です!」
 トリガーがないことを確認して、パワーが戻った二体で、さらに二体のクリーチャーを殴り返す。
 残るは《ドルゲドス》《フワシロ》二体の《ヴェイダー》だ。
 ルミスのシールドも二枚あるので、ギリギリ耐えきれるはず、だが。
「《ギズムリン》召喚……墓地の《フワシロ》を進化元に《ドルゲドス》を墓地進化……《フワシロ》で攻撃する時に侵略発動……《復讐 ブラックサイコ》へ侵略……!」
「!」
 追撃の《ドルゲドス》。さらに《フワシロ》が《ブラックサイコ》へと侵略する。
 ルミスの場にブロッカーはいない。加えて、追加打点が二つに増えてしまった。
 《ブラックサイコ》のWブレイクを受け、二体の《ドルゲドス》が襲い掛かる。ルミスはトリガーを引かなければ、負けが確定だが、
「……トリガーはありません」
 砕かれたシールドは、どちらも光を放たない。
 それはつまり、ルミスの敗北を意味していた。
「……復讐完了」
 そう呟いて、復讐者は執行する。
 侵略に飲まれた、復讐を。

「《死神竜凰ドルゲドス》で、ダイレクトアタック——」