二次創作小説(紙ほか)

Another Mythology 12話「幻想妖精」 ( No.38 )
日時: 2014/05/05 17:23
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「——できましたっ」
 柚は自室にて、晴れやかな表情で言った。
 彼女の目の前には、大量のデュエマのカード。誰がどう見ても、デッキを組んでいる風景だった。
 いや、もう組み終わったようだが。
「今回はいい感じにできた気がします……!」
 誰に言うでもなく一人自慢げに胸を張る。だがすぐにその表情も曇る。
「でも、このデッキも使うことはないんですよね……」
 彼女はとある事情によりデュエマができないのだが、しかしデュエマそのものは嫌いではない。むしろ好きだ。長年、彼女は親友である暁のデュエルを一番近いところで見続けてきたのだから、それも当然である。
 だがそれでも、彼女がそのデッキを使うことはできなかった。
「……お兄さんに見つかったら、怒られちゃいますね。もう寝ましょう」
 柚はカードを片付け、押し入れの奥へと仕舞い込む。
「明日の部活、みなさんがデュエマするところを、わたしはずっと見てるんですね……」
 布団に入り眠りにつこうとする最中、明日のことを思う。
 明日も自分は、ただ“見ている”だけなのだろうと——



「また新しい《語り手》が見つかったよ」
 いつもいつも唐突に現れるリュン。今回もいつのまにか部室に現れ、そんなことを言うのだった。
 新しい《語り手》が見つかったとなれば、暁が黙っているはずもなく、前回不発だった反動もあってか、喜び勇んでいた。
 (主に浬が)ドタバタしながらの更衣も終え、五人が部室に集まる。
「うわー、部長の服、格好いいですね!」
「そうかしら? ふふ、ありがとう」
 ウルカに頼んでいた、沙弓の衣装が届いたため、今回から沙弓もその衣装に着替えていた。
 肩口を切り落とした黒いブラウスとロングスカート。腰に巻いている二本のベルトとネクタイだけが白く際立っている。
 カラーリング的にはいつもの制服とそれほど変わらないのでは? と思う浬だったが、彼女たちにとってはそんな単純な話ではないのだろう。
「準備ができたなら転送してもいいかな?」
「あ、うん。オッケー」
「じゃあ転送するね」
 やっと操作に慣れた手つきで、リュンは携帯にアドレスを入力し、送信する。
 そして五人は、クリーチャー世界へと飛んで行った。



「……森?」
「そう、森。自然文明の統括地、スプリング・フォレストだよ」
 転送された先は、森だった。木々の生い茂る森。右も左も前も後も木か草ばかり。
「スプリングっていうわりには、普通の森っぽいけど」
「《萌芽神話》がいた頃には、所々が桜模様になってたみたいだけどね。今は統治するものがいなくなって、クリーチャーたちも森も野生化し、ただの森さ」
 その森の中に、《語り手》が封印された祠があるという。
「よーし、じゃあ早く封印されてる《語り手》を見つけ——」
「暁!」
 コルルが叫ぶ。
「な、なに? どうしたのコルル?」
「なにか来るぞ!」
 次の瞬間、木々が揺れ、その奥からなにかが飛び出す。
「っ! あ、あれなに……!?」
「《緑神龍バルガザルムス》だ!」
 バルガザルムスはこちらを睨みつけながら唸っており、明らかに敵意を剥き出している。
「な、なんか怒ってる……?」
「おい、こっちにもいるぞ」
 浬の声と同時に、地揺れが起こる。何事かと見上げてみると、木々を薙ぎ倒しながら、またも巨大な龍が姿を現した。
「《緑神龍ミルドガルムス》ね……それと、こっちにもいるっぽい?」
「あれは確か……《緑神龍ドラピ》!」
「アース・ドラゴン三体が揃い踏みか……」
 三方向からそれぞれ姿を現したバルガザルムス、ミルドガルムス、そしてドラピは、いずれも敵意を剥き出しており、今にも襲いかかって来そうな勢いだ。
「流石にこれは、逃げるってわけにはいかなさそうね」
「ですね。だとすれば」
「やるしかない! コルル!」
「おう!」
 暁の呼びかけに応じて、コルルが神話空間を展開する。
「エリアス、頼む」
「了解しました、ご主人様!」
「あなたもお願いね、ドライゼ」
「ハニーの頼みとあらば、喜んで応じよう」
 同時にエリアス、ドライゼもそれぞれ神話空間を作り出し、三体のドラゴンが飲み込まれる。
「み、みなさん……がんばってください……」
 そして取り残された柚は、ただ三人が戻るのを、待つしかなかった。



『グルガアァ!』
 《バルガザルムス》が吠え、暁のシールドが砕かれる。同時に山札が捲られ、それが《バルガザルムス》の手札へと入っていった。


緑神龍バルガザルムス 自然文明 (5)
クリーチャー:アース・ドラゴン 5000
自分のドラゴンが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目を表向きにしてもよい。そうした場合、そのカードがドラゴンであれば手札に加え、ドラゴンでなければマナゾーンに置く。


「攻撃するたびに手札かマナが増えるなんて凄いじゃん。でも、このターンで決めるよ!」
 《バルガザルムス》の場には《母なる緑鬼龍ダイチノカイザー》がおり、下手に攻撃すれば殴り返されてしまうが、このターンに勝負がつくのであれば、関係ない。
「行くよ! 《爆竜 GENJI・XX》を召喚! そんでもって《ライラ・ラッタ》で《青銅の鎧》を攻撃!」
 《ライラ・ラッタ》が《青銅の鎧》をバトルで破壊し、
「おいでっ、コルル!」
「おうよ! 任せとけ!」
「さらにスピードタッカーの《GENJI》でWブレイク! 続けて、私の場にドラゴンがいるから《霊峰竜騎フジサンダー》も攻撃可能になるよ! Wブレイクだ!」
 次々とシールドをブレイクし、あっという間に《バルガザルムス》のシールドはなくなってしまった。
「《コルル》でダイレクトアタック!」



『ルルルルル……』
「ちぃ、出たか……!」


緑神龍ミルドガルムス 自然文明 (7)
クリーチャー:アース・ドラゴン 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のマナゾーンからカードを1枚選び、持ち主の墓地に置く。その後、自分の山札の上から1枚目を自分のマナゾーンに置く。


 僅か4ターン目で《ミルドガルムス》が現れ、浬のマナを削りながら自分はマナを加速する。
「たった一枚とはいえ、この順目でランデスはきついな……俺のターン《アクア・ハルカス》を召喚し、ターン終了」
『ルルルルル……!』
「っ、《王龍ショパン》……!」
 強制バトルで《アクア・ティーチャー》が破壊されてしまった。
 続けて《ミルドガルムス》と《エコ・アイニー》による攻撃が炸裂する。
「S・トリガー発動《アクア・サーファー》!」
 最後の一枚でS・トリガーが発動し、《アクア・サーファー》を召喚。クリーチャーを一体手札に戻せるが、浬がバウンスするのは相手クリーチャーではなかった。
「俺の《アクア・ハルカス》を手札に戻す。そして出て来い、エリアス!」
「承りました、ご主人様! 私の能力発動です!」
「山札の上から四枚を見て……こいつだ。残りは山札の上へ」
 浬はあえて自身のクリーチャーを手札に戻し、《エリアス》を呼び出す。
「俺のターン、まずは《アクア・ビークル》を召喚。そして《エリアス》によって手札に加えたこいつも召喚だ。G・ゼロ、《アクア・ビークル》《アクア戦闘員 ゾロル》《蒼狼アクア・ブレイド》の三体から進化! 《零次龍程式 トライグラマ》!」
 G・ゼロで《トライグラマ》が現れる。
「《トライグラマ》でTブレイク! さらに《アクア・サーファー》でシールドをブレイク!」
 一気に大量のシールドを削り、《ミルドガルムス》のシールドはゼロに。
「《エリアス》でダイレクトアタック!」



『ピギャアァ!』
 刹那、沙弓のシールドが一気に三枚砕け散った。
「っ、流石に強烈ねぇ……!」


緑神龍ドラピ 自然文明 (1)
クリーチャー:アース・ドラゴン 15000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンにカードが9枚以上なければ、このクリーチャーを破壊する。
T・ブレイカー


 序盤からマナを加速しまくり、早期にデメリットを打ち消して現れた《ドラピ》。特殊な能力があるわけではないが、純粋に打点とパワーが強力だ。
「でも、S・トリガー発動よ。《地獄門デス・ゲート》で《オーバーブースト》を破壊! 墓地から《月影の語り手 ドライゼ》を呼び戻すわ」
「俺を呼んでくれたのか。嬉しいな」
「いや、単に呼べるのがあなただけだったから」
「ふっ、それは言ってくれない方が嬉しかったな……」
 それはさておき。
 ここで沙弓は攻めに転じることにした。
「《魔刻の斬将オルゼキア》を召喚。《ブラックルシファー》を破壊して、《ドラピ》と《ジャスミン》を破壊よ。さらに《ブラックルシファー》が破壊される代わりに、墓地の《デストロンリー》を回収」
 そして、
「《ブラックルシファー》と《ドライゼ》でシールドブレイク!」
『ピルルル……ピギャアァ!』
 返しのターンに《ナチュラル・トラップ》で《ブラックルシファー》を除去し、《ドラピ》を呼び出すが、無意味だ。
「《オルゼキア》でWブレイク!」
 《オルゼキア》の斬撃で、《ドラピ》はシールドをすべて失った。
「《ドライゼ》でダイレクトアタック!」