二次創作小説(紙ほか)

128話「円筒の龍」 ( No.392 )
日時: 2016/05/21 14:51
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

 ミリンと奇々姫のデュエル。
 シールドは、ミリンが四枚、奇々姫が五枚。
 ミリンの場には《マリン・フラワー》《一撃奪取 マイパッド》がそれぞれ一体ずつ。
 奇々姫の場には《侵略者 BJ》と《奇天烈 ディーラー》。
「私のターン、《K・マノーミ》を召喚。マナ武装3発動で《ディーラー》を手札に戻してもらおうか」
「むむ、嫌なことしますね。使ったお金の返金はいいですけど、クリーチャーを返品されるのは困ります」
「そんな事情は知らないね。残ったマナで二体目の《マリン・フラワー》を召喚、ターン終了だ」
「それではわたしのターン! ルーレットチャンスです! 《奇天烈 ベガス》を召喚!」
 奇々姫は足元のトランクを蹴り開けながらクリーチャーを呼び、回転盤ホイールを盤上に投げ出した。
「本日の数字は5、配当金は手札三枚! 種も仕掛けもございません。ルーレット・スタート!」
 ホイールが回り、ボールが投げ入れられる。カンカンと乾いた音を立てて、縁を跳ねる。
 そして、ボールがポケットへと入った瞬間、ミリンは山札を捲った。
 捲られたカードは、《アクア・サーファー》。
 コスト6のカードだった。
「大当たりです! 今日はついてますね、カードを三枚ドローしますよ! 続けて《BJ》でシールドをブレイク!」
 その攻撃をミリンはブロックせず、これでミリンのシールドは残り三枚に。
「比較的コストの低いカードの多いこのデッキ相手に、コスト5以上を引き当てたか……確かに、君は運がいいのかもしれないな。だがしかし、そんなものは所詮は確率論でしかない。それに、ここで運が良くても、大勢に影響は与えない。私のターン、呪文《ブレイン・チャージャー》でカードを引き、チャージャーをマナへ。ターン終了」
 カードを引き、マナを伸ばすだけで終わるミリン。
 対して奇々姫は、常に攻める姿勢を忘れない。
 どれだけ子供っぽい声で言葉を話そうと、幼い姿を見せようと、彼女は侵略者。
 いつだって、相手を侵略することに力を注いでいる。
「お、それでは、次はこれで行ってみましょうか。《奇天烈 サイコロン》を召喚です!」



奇天烈 サイコロン 水文明 (3)
クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 4000
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、カードを2枚引く。その後、自分の手札を相手に2枚見ないで選ばせ、好きな順序で山札の一番下に置く。



 次に現れたのは、シルクハットにスーツを着たかのような姿のロボット。手には短めのステッキと、掌サイズのサイコロが握られている。
「ルーレットもそろそろ飽きたでしょうし、お次はダイスゲームはいかがですか?」
「別になんでもいいよ。早くしたまえ」
「つれないですねぇ……《サイコロン》の能力でカードを二枚引きます。そして!」
 バッ、と奇々姫は自分の手札を、裏向きのまま、ミリンに見せつけるように前に突き出した。
「これでわたしの手札は六枚に増えましたが、この増えた手札から、カードを二枚山札の下に戻さなければなりません。どのカードを山札に戻すのかは、これで決めます」
 そう言って取り出したのは、一つのサイコロ。
 奇々姫はそれをミリンに投げ渡す。
「サイコロか……」
「ご安心ください。爆発しないタイプの、普通のサイコロですよ? 種も仕掛けもございません」
 ポーカーフェイスで言う奇々姫。信用できる言葉ではないが、確認する手段がないので、なにも仕掛けられていないと思うことにする。
 触った感じ、重量や重心におかしなところはなさそうだ。
「そのサイコロ——あなたの出した目の数に応じて、わたしの手札の内容が決まります。どうです? ゾクゾクするでしょう?」
「ふぅむ。まあ、侵略は手札ありきのギミックだし、これで手札に侵略カードが残るかどうかと考えると、確かにゾクゾクするかもしれないな。もっとも、私には君の手札の内容も、どのカードが山札に戻されるのかも分からない。あまり気負わず、賽を投げるとしようか——」
 ミリンは手にした二つのサイコロを、放るように投げた。
 カランカラン、と音を立てて、ミリンの賽は地面を転がる。
「……6、か」
 ミリンが出した目は6。
 その時、奇姫の手札が二枚、青く光った。
「では、この二枚を山札に戻しますよ。さーて、なにが残りましたかね?」
 と楽しげに言いながら残った手札を見ると、奇々姫は小さな悲鳴のような声を上げた。
「って、え!? ちょっと! なんでよりにもよってあのカードがないんですか!?」
「……知らないよ。《サイコロン》で山札に戻ったんじゃないのかい?」
「そ、そんなぁ……」
 若干涙目でガックリと肩を落とす奇々姫。今回の賭けは、どうやら彼女の負けらしい。
「……いえ、ここで挫けてはいられません。まだ手札に侵略のカードは残っていますし、まだ行けます! わたしの侵略は《ベガスダラー》だけではないんですよ! 《ベガス》で攻撃! 《ベガス》で攻撃する時に、侵略発動です!」
 《サイコロン》で目当てのカードが残らなくとも、奇々姫の手にはまだ、侵略者が存在している。
 《ベガス》が攻撃する時、彼女の手中から、奇天烈を超えた奇天烈の侵略者が、侵略する。
「このゲームにわたしのすべてを賭けて、最高に狂ったゲームを始めましょう! そして——侵略です!」
 攻撃途中の《ベガス》に重ねられる、次なる侵略者。
 熱狂的に侵略するギャンブラーたちの、新たなゲームが始まる時だった。

「オールイン——《超奇天烈 ギャンブル》!」



超奇天烈 ギャブル 水文明 (5)
進化クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 7000
進化—自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
侵略—水のコマンド
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の山札の上から5枚を表向きにする。その中から呪文を1枚選び、その後相手は残りを好きな順序で自身の山札の一番下に置く。選んだ呪文を自分がコストを支払わずに唱え、相手の墓地に置く。



 《ベガス》が侵略して現れたのは、腕が四つある、建造物の如きロボット。手や肩が眩しいくらいに発光しており、体のあらゆるパーツがルーレットやスロットなどを彷彿とさせ、まるでカジノのような雰囲気を漂わせている。
 《超奇天烈 ギャンブル》。浬との対戦では見せなかった、奇々姫の侵略者。
 場に出るや否や、《ギャンブル》はミリンのデッキを掴んだ。
「む、人のデッキになにをする気だ」
「変なことはしませんよ。ただ、新しいゲームを始めるだけです。《ギャンブル》の能力であなたの山札を上から五枚、見せていただきます」
「一気に五枚を捲るのか。それで一体なにをするというのだね?」
「なんとですね、《ギャンブル》はその捲った中にある呪文を、わたしが使えてしまうのです。もちろんコストはタダ! お金を払う必要はなし。必要経費ゼロのノーコストですよ! さあ、山札を捲ってください」
 そして、ミリンの山札が五枚、公開される。
 捲った五枚は、《終末の時計 ザ・クロック》《アクア・サーファー》《K・マノーミ》《一撃奪取 マイパッド》《ストリーミング・シェイパー》。
 ほとんどクリーチャーだが、ただ一枚、呪文があった。
「ビンゴ! それいただきです! 呪文《ストリーミング・シェイパー》で、山札の上から四枚を捲りますよ!」
 《ギャンブル》が、ミリンの捲ったカードの中から呪文を選び抜き、その力を吸収し、解き放つ。
 放たれた力が奇々姫の山札に降り注ぎ、上から四枚のカードを晒す。奇々姫も水単色のデッキを使用しているので、当然すべて奇々姫の手札に入った。
「さぁ、ガッポリ儲けましたよ! そのままWブレイクです!」
「《マリン・フラワー》でブロックだ」
「なら《BJ》でも攻撃!」
「もう一度《マリン・フラワー》でブロック」
 攻め手を緩めない奇々姫の猛攻を、ミリンはジッと耐え凌ぐことしかできない。
 幼くとも【鳳】の一隊長。彼女の秘めたる攻撃性は、侵略者の姿そのものだった。
「《アクア・スーパーエメラル》を召喚。手札を一枚シールドと入れ替えさせてもらおう。さらに《ブレイン・チャージャー》を唱え、ターン終了」
「《アクア・ベララー》と《BJ》を召喚です! 《アクア・ベララー》の能力でわたしの山札を捲って……おや? ふふふ、これはこのままです」
 奇々姫は《アクア・ベララー》で山札を動かす。
 含みありげな笑みを零して、山札の操作。なにか、嫌な予感がする。
「では、参りましょう! 《奇天烈 サイコロン》で攻撃する時に、侵略発動です!」
 奇々姫はさらに攻撃し、侵略する。
 確率を超えた熱狂を求め、ひたすらに攻め続けて来る。
「この賽にわたしのすべてを賭けて、最高に狂ったゲームを始めましょう! そして——侵略です!」
 《サイコロン》が攻撃するその時、さらなる侵略者が姿を現した。
 カランカラン、と賽を転がす音を鳴らして、賭博に狂った奇天烈の侵略者がすべての賭けベットを支払い、次のゲームを始める。

「オールイン——《超奇天烈 ダイスダイス》!」