二次創作小説(紙ほか)
- 128話「円筒の龍」 ( No.394 )
- 日時: 2016/05/22 14:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
龍程式を解き明かし、円筒の中で生まれた革命軍の結晶龍、その名は《革命龍程式 シリンダ》。
後にノミリンクゥアの最高傑作の一つとして数えられることとなる、革命の力を持つクリスタル・コマンド・ドラゴンだ。
「《シリンダ》の能力発動。まずは、私の水のクリーチャーの数だけカードを引かせてもらおうか。二体いるから、二枚ドローだ」
ミリンの場には《シリンダ》と《クロック》、二体の水のクリーチャーがいる。《シリンダ》は仲間の数に呼応して、知識を増やしていく。
曇った結晶の身体を鈍く光らせ、《シリンダ》は増大した知識をミリンへと分け与える。
「ふむ、いい引きだな」
「革命軍のクリーチャー……!」
奇々姫は、ミリンの呼び出したクリーチャーに戦慄を覚えていた。
感覚で伝わってくる、逆転の気配。いつだって不確定な賭博においては、大番狂わせが起こりうる。ある時は奇跡的な豪運で、ある時は神がかり的な技能で、敗北寸前の窮地を切り抜けるギャンブラーは存在する。
それと同じものを、今のミリン——そして《革命龍程式シリンダ》から感じる。
「で、でも、そんな上手い話がそう何度もあるわけではないですからね! どのみち、あなたはこのターンには勝てません! 次のわたしのターンで、ゲームセットですよ! お金を払っていただけるのなら、話は別ですが!」
「それをさせないのが、革命なのさ。金など払うまでもない。見たまえ。これが、これこそが、君たちの侵略に対抗すべく、私が研究を重ねて生み出した、革命の力だ!」
突如、《シリンダ》の動きが止まる。
まだ《シリンダ》は完全ではない。すべてのデータがインストールされ切っていない状態なのだ。
あと少し。もう目前。残り僅かな時を経ることで、《シリンダ》は勘全体となる。
ミリンは、その最後の仕上げを為す。
「プログラム発信。浸透率、10%……50%……80%……100%! 全領域凍結!」
すべてのデータのインストールが完了した。
曇った結晶の身体は透き通り、光を反射するほどに輝きを放つ。
それが、反旗を翻す合図だ。
「革命発動!」
革命龍程式 シリンダ VR 水文明 (5)
進化クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン/革命軍 6000
進化−自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、バトルゾーンにある自分の水のクリーチャー1体につき、カードを1枚引いてもよい。
革命2—このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分のシールドが2つ以下なら、次の自分のターンのはじめまで、相手のクリーチャーはすべて、攻撃もブロックもできない。
W・ブレイカー
刹那、《シリンダ》が咆哮する。
それと同時に、《シリンダ》の両腕から放たれる光線が不規則に折れ曲がり、旋回し、奇々姫のクリーチャーを取り囲む。
光線を浴びたクリーチャーはみな、一様にして動かなくなってしまった。まるで、身体が凍てついてしまったかのように。
いや、実際に凍っている。
一瞬にして奇々姫のクリーチャーたちは、《シリンダ》の力で凍結してしまったのだ。
「《革命龍程式 シリンダ》の革命2によって、君のクリーチャーはすべて凍結だ。もう動くことはできない」
「え、えぇ!? う、動けないって、それって……」
「攻撃、及びブロックができないということだ。まあ、1ターンしか凍結効果はもたないが、1ターンもあれば十分だ」
革命の合図は、反旗を翻す報せ。
今のこの瞬間から、革命軍は侵略者への反撃を開始する。
「《革命龍程式 シリンダ》で、シールドをWブレイク!」
《シリンダ》が空を翔け、そのまま急降下。奇々姫のシールドを二枚、打ち砕く。
「続けて《クロック》でシールドをブレイクだ!」
さらに《クロック》も連撃を叩き込み、一気に三枚のシールドを割る。これで、奇々姫のシールドはミリンと同じ、残り二枚だ。
しかしその砕かれたシールドが、光の束となって収束した。
「! き、きましたっ! S・トリガー《機術士 ゾローメ》!」
シールドから、侵略者に侵されていないマジック・コマンドのギャンブラー、《ゾローメ》が現れる。
「《ゾローメ》の能力は意味ないですけど、一応《シリンダ》を選んどきますね! なんでもいいですけど、とにかく! これで次のターン、まだわたしの勝ちは見えますね!」
このターンのクリーチャーの攻撃はすべて停止されている。だが《シリンダ》が出た瞬間にはバトルゾーンにはおらず、S・トリガーで出た《ゾローメ》だけは、その縛りから外れている。
「《ギャンブル》や《ダイスダイス》のおかげで手札はたくさん、進化クリーチャーもたくさんいます! 単調に侵略するだけが【鳳】ではありませんっ! 宣言通り、このターンがゲームセットです!」
再び宣言し直して、奇々姫は手札のクリーチャーを並べていく。
《シリンダ》の能力は、攻撃的な奇々姫には効果的ではあったが、しかしその効果適用範囲は既に場にいるクリーチャーのみ。《シリンダ》が出た時点でバトルゾーンにいるクリーチャーしか、凍結範囲は及ばない。
つまり、S・トリガーで出た《ゾローメ》もそうだが、奇々姫がこのターンに召喚するクリーチャーも、《シリンダ》の能力の影響を受けないのだ。
「まずは《アクア・ベララー》と《マリン・フラワー》を召喚! 《アクア・ベララー》の能力で、あなたの山札の一番上を見て……山札下へ。さらに《アクア・ベララー》を進化! 《奇天烈 コイコイ》!」
「アタッカー二体か……まだ打点は足りていないが」
「足りない打点は、侵略すれば大体解決します! 《ゾローメ》で攻撃する時、侵略発動!」
奇々姫は《ギャンブル》で唱えたミリンの《ストリーミング・シェイパー》に、《ギャンブル》の能力、加えて先ほどのシールドブレイクで手に入った潤沢な手札がある。
大量の手札によって、手札消費の激しい侵略には困らない奇々姫は、最後の一押しを決める。
ミリンのシールドは残り二枚。奇々姫の攻撃できるクリーチャーは二体。まだ一打点だけ足りていないが、その足りない一打点を、侵略が叩き込む。
滝のようにコインが降り注ぎ、《ゾローメ》はその中で、己の姿を変える。否——侵略される。
「オールイン——《超奇天烈 ベガスダラー》!」
《ゾローメ》が侵略し、二体目の《ベガスダラー》が姿を現す。
同時に《アクア・ベララー》の能力も発動し、奇々姫はミリンの山札の上を見るが、それは山札の下へ。
「ではでは、ラストゲームです! 種も仕掛けもございません! ルーレット・スタート!」
トランクを蹴り開けて、回転盤が戦場にて回る。《ベガスダラー》は、そこに一球を投げ入れた。カンカン、とボールが跳ねる。
直前に《アクア・ベララー》でトップを確認してはいるものの、まだ固定されていない。確率的には奇々姫が自身の勝率を上げるようにはしているが、確定ではない。
ミリンは静かに山札の一番上を捲った。
捲られたのは、《一撃奪取 マイパッド》。
コスト2のカードだった。
「むー、ここでの賭けには負けましたが……しかーし! これで終わりですよ! カードを二枚引いて、《ベガスダラー》で最後のシールドをWブレイク!」
《ベガスダラー》がミリンの最後のシールドをすべて粉砕する。
もしここでS・トリガーを引けば、ミリンはこのターンを耐え凌げるだろう。
しかし、
「……トリガーはない」
ニタァ、と奇々姫は微笑む。
「こいこい! 攻撃続行です!」
いつも都合よくトリガーを引けるわけではない。
ミリンは最後の二枚のシールドから、トリガーを引くことができなかった。
シールドのなくなったミリンに、《コイコイ》がとどめの一撃を繰り出す。
「《奇天烈 コイコイ》で、ダイレクトアタック——」