二次創作小説(紙ほか)
- 129話「奇襲」 ( No.398 )
- 日時: 2016/05/25 11:45
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
筋骨隆々で屈強な肉体。鬣のように逆立った髪。右手で担いだミサイルランチャーが鈍い煌めきを放ち、左手に握った征服を示す軍旗がなびく。
威風堂々とした立ち振る舞い、全身の傷、出で立ち——その風格は、戦場を渡り歩いた戦士そのものだ。
「《ランボンバー》を、《ゲリランチャー》へと侵略進化であります」
《ランキー》が《ランボンバー》に、《ランボンバー》が《ゲリランチャー》に、マナから進化し、手札から侵略し、様々な場所から目まぐるしく進化を繰り返す獣軍隊の侵略者。その前線に立つのは《超獣軍隊 ゲリランチャー》。
自分に有利な戦場で戦うように仕向ける、獣軍隊のリーダーだ。
「侵略完了……で、ありますが、このままだと侵略の意味もなく終わるでありますよ。《ゲリランチャー》でWブレイク!」
「く……っ!」
《ゲリランチャー》は担いだミサイルランチャーから何発ものミサイルを撃ち出し、一騎の残ったシールドをすべて爆撃する。
硝煙のにおい、噴き出す黒煙、熱風、飛び散るシールドの破片を肌で感じながら、その中身を確認していく。
「これでとどめであります。《ザンヴァッカ》でダイレクトアタック!」
「ま、待った! S・トリガー発動だよ!」
《ザンヴァッカ》が一騎に向かって突貫していく。しかし一騎の最後のシールドから、灼熱の魔手が伸びた。
「S・トリガー《イフリート・ハンド》! 相手のコスト9以下のクリーチャーを破壊する! 《ザンヴァッカ》を破壊だ!」
「凌がれたでありますか……まあ、手は打ってあるので、問題ないでありますが。ターン終了であります」
《イフリート・ハンド》は《ザンヴァッカ》の身体を焼き、握り潰して破壊する。
一騎のシールドはゼロ。紙一重の防御だ。
「あ、危なかった……」
「もう盾は残ってない。ここで決めないと後がないよ、一騎!」
「分かってる。俺のターン」
ドローして、一騎は考え込む。
いまいち手札が良くない。《ガイグレン》がいれば話は早かったのだが、それは既にマナに落ちている。
手札には《テイン》と《レーヴァテイン》も揃っているが、
「マナはチャージすれば11マナあるけど、《テイン》と《レーヴァテイン》は同時には出せないな。バトルを起こせるクリーチャーもいないし……」
そうなると、賭けてみるしかない。
「とりあえず、これかな。マナチャージして、3マナタップ! 《爆熱血 ロイヤル・アイラ》を召喚だ。マナ武装3発動、手札の《焦土と開拓の天変》を捨てて二枚ドロー!」
一騎は、《ロイヤル・アイラ》に賭ける。
これで引いたカード次第では、このターンに決着をつけることも可能なはずだ。
逆転のための一手を願い、カードを引く。
一枚目は、《龍覇 グレンモルト》。
二枚目は——
「——! 来たよ! 7マナで《次元龍覇 グレンモルト「覇」》を召喚!」
次元龍覇 グレンモルト「覇(ヘッド)」 火文明 (7)
クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン/ヒューマノイド爆/ドラグナー 7000
スピードアタッカー
W・ブレイカー
マナ武装 7:このクリーチャーが攻撃する時、自分のマナゾーンに火のカードが7枚以上あれば、次のうちいずれかひとつを選ぶ。
▼コスト6以下のウエポンではないカードを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
▼このクリーチャーにウエポンが1枚も装備されていなければ、コスト6以下のウエポンを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。(それをこのクリーチャーに装備して出す)
《ガイギンガ》の雄叫びが轟くき、二重に勝利を重ねた龍に騎乗した《グレンモルト》が現れる。
それは修行を重ね、成長し、ドラグナーとしてだけでなく、あらゆる次元へとアクセスすることが可能となった《グレンモルト》——《次元龍覇 グレンモルト「覇」》だ。
「このターンで決めるよ!《グレンモルト「覇」》で攻撃! マナ武装7発動!」
《ガイギンガ》の咆哮が次元を歪ませ、《グレンモルト「覇」》は歪んだ次元から魂を引き寄せる。
《グレンモルト「覇」》はサイキック・クリーチャーも呼び出せるが、一騎の超次元ゾーンにはドラグハートしか置いていない。
そのため、呼び寄せる魂は、龍の魂。そしてそれが封印された刃だ。
「超次元ゾーンから《銀河大剣 ガイハート》を呼び出して、《グレンモルト「覇」》に装備!」
呼び出されたのは《ガイハート》。《グレンモルト「覇」》が騎乗していた《ガイギンガ》は大剣の中に自らの魂を封じ、《グレンモルト「覇」》に右手に握られる。
これで準備は整った。あとは、攻めるだけだ。
「《ガイハート》の龍解条件は、ターン中に二回攻撃すること……《グレンモルト「覇」》と《マッカラン・ボナパルト》でシールドを割り切って、そのまま《ガイギンガ》に龍解するよ!」
現時点で考えられる突破方法はこれしかない。S・トリガーで邪魔される可能性は十分考えられるが、最後のシールドから《ザンヴァッカ》が出てくるくらいであれば、《ガイギンガ》の龍解時能力で焼き払えるため問題ない。とはいえ男のマナには《エウル=ブッカ》なども見えるため、安心はできない。それに、この攻撃でS・トリガーが出てしまえば、なにが来ようと同じだ。
だから祈るしかない。この二回の攻撃で、S・トリガーが出ないことを。
まずはこの一撃に賭ける。
「行くよ! 《グレンモルト「覇」》で、シールドをWブレイク——」
《ガイハート》を携えた《グレンモルト「覇」》が、男のシールドを切り裂く——
「——させないでありますよ。《ゲリランチャー》!」
——ことは、できなかった。
「な……っ、《グレンモルト「覇」》!?」
《グレンモルト「覇」》は、《ゲリランチャー》へと向かっていた。手にする大剣は、兵器を手にした軍人へと振り下ろされる。
当然、それに対して《ゲリランチャー》も、己の得物を手に迎え撃つ。
大剣を振るう《グレンモルト「覇」》。ミサイルランチャーを連射する《ゲリランチャー》。両者の戦いが始まった。
それは、一騎の望まない戦だ。
「どういうこと……なんで……!?」
確かにシールドを狙ったはずだ。なのに、気付けば目の前に《ゲリランチャー》がいた。プレイヤーを攻撃するつもりだったのに、いつの間にか違う方向へと攻撃していた。
それはまるで、攻撃先を誘導されたかのような気持ち悪さがあった。。
「言ったはずでありますよ。ここは我らの戦場だと」
ぴしゃりと、男の声が冷たく響く。
「あなたは、自分たちの戦場に誘い込まれたのでありますよ。敵地で戦うということは、こちらの掌の上にいるも同然であります。あなたたちの動きは見えている。ゆえにその誘導も容易い」
掌の上で踊らされていた。
そんな言葉が、一騎の脳裏によぎる。
その瞬間、《ゲリランチャー》が咆えた。
「《ゲリランチャー》の能力発動! 相手の攻撃は《ゲリランチャー》へと誘導されるでありますよ!」
超獣軍隊 ゲリランチャー SR 自然文明 (6)
進化クリーチャー:ゲリラ・コマンド/侵略者 11000
進化—自分の自然のクリーチャー1体の上に置く。
侵略—自然のコマンド
W・ブレイカー
このクリーチャーが、相手のターン中にタップしていて、そのターンまだ攻撃されていなければ、相手のクリーチャーは可能ならこのクリーチャーを攻撃する。
攻撃の誘導。それが《ゲリランチャー》の能力。
自分にとって有利な戦場で戦うことを、《ゲリランチャー》は強要する。否、仕向ける。
如何なる理由があろうとも、一度《ゲリランチャー》が攻めれば、相手は彼の戦場へと誘き出されてしまう。
そして、そこで迎撃するのだ。
それが《ゲリランチャー》の得意とする作戦だ。
「攻撃強制か……! ということは、《グレンモルト「覇」》は……」
「《ゲリランチャー》とバトルであります。こちらのパワーは11000。勝てると申すならば、証明して見せればよろしいかと!」
無論、勝てるわけがない。《グレンモルト「覇」》のパワーは7000だ。
《ガイハート》の斬撃は《ゲリランチャー》に掠りもせず、むしろミサイルの乱射によって近づくことすらできない。
やがて向こうから接近してくる。振り下ろした大剣の一撃を軍旗で受け止められ、払われる。さらに押し倒され、ミサイルランチャーを向けられた。終わりだ。
《グレンモルト「覇」》は倒れたまま、ミサイルランチャーの爆撃を間近で受け、あえなく破壊されてしまう。
「パワー差4000じゃ《ガイオウバーン》でも対処できない、一回だけの攻撃誘導なら、《グレンモルト》の方を出すべきだったかな……くっ、ターン、終了……!」
このターン、これ以上できることはない。
《マッカラン・ボナパルト》で攻撃しても、とどめまでは刺せない。《ゲリランチャー》を破壊することも不可能だ。
一騎はもう、為す術がなくなったのだ。
「……これで終わりでありますな」
《ゲリランチャー》はミサイルランチャーの発射口を、一騎へと向ける。
その一撃が、終戦の一撃となった。
「《超獣軍隊 ゲリランチャー》で、ダイレクトアタック——」