二次創作小説(紙ほか)

130話「死の意志」 ( No.404 )
日時: 2016/06/07 23:48
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

 《キラード・アイ》が進化して現れたのは、邪悪な龍だった。
 刺々しい鱗、禍々しい魔眼。悪魔であり天使である巨大な翼。
 これが革命軍の王と呼ばれるクリーチャーの一角——《革命魔王 キラー・ザ・キル》。
 ラーザキダルクの正面に、正に魔王として鎮座した。
 殺意に満ちた巨大な魔眼を見開き、絶叫のような咆哮をあげ、《キラー・ザ・キル》は己の力を行使する。
「まずはてめぇらに、絶望的で破壊的で、この上なくデカい“死”を贈呈してやる」
 そう言い放ってから、ラーザキダルクは鋭い歯を剥き出しにして、悪魔のように笑う。
 他者を突き落とし、その愉悦に浸るかのような、邪悪な笑みだ。
「《キラー・ザ・キル》の能力発動! 《キラー・ザ・キル》がバトルゾーンに出た時、バトルゾーンから闇以外のクリーチャーをすべて消し飛ばす!」
「な……っ!?」
 《キラー・ザ・キル》は一度目の咆哮を放つ。その咆哮は、深い闇夜にさらなる暗がりをもたらす。
 漆黒の波動が戦場を支配する。異質な存在は、すべて排除される。
 異質とは、即ち同質でないもの。
 闇の力を持たないものだ。
 戦場に並ぶ獣軍隊のクリーチャーたちは皆、《キラー・ザ・キル》の咆哮の前に、消滅した。
 今ここに、大量の“死”がもたらされたのだった。
「…………」
 展開したクリーチャーを一瞬で消し飛ばされ、さしもの隠兵王も声を失っている。
 吃驚を司るはずの獣軍隊が、逆に驚愕を与えられた。これ以上の屈辱はない。
 ゆえに隠兵王は、すぐさま平静を取り戻そうとする。クリーチャーは全滅したが、それでもラーザキダルクのシールドはゼロ。一撃でも叩き込めば勝ちだ。
 一からクリーチャーを並べ直すか。いや、奇襲を仕掛け続け、ブロッカーが切れるまで攻め手を緩めないことの方が重要だ。
 隠兵王はそんな思索を巡らせるが、しかし、それらはすべて無意味となる。
「さぁ第二幕だ。次は、俺たちの“生”を見せつけてやる」
「生……?」
 そう言った直後、《キラー・ザ・キル》は再び咆哮する。
 二度目の咆哮だ。
 それが、彼らの革命を巻き起こす。
「てめぇらの生を死を味わい尽くせ。見ろ——これが亡き同胞たちの骸だ」
 咆哮が、深い闇夜に明るい標を並べる。
 その標は、亡者たちの行き先を示した。
「——革命発動!」
 漆黒の闇が、侵略に侵された世界を飲み込む。
 刹那、地獄の底から悍ましい絶叫が、戦場に響き渡った。
「《革命魔王 キラー・ザ・キル》の革命2……こいつがバトルゾーンに出た時、俺のシールドが二枚以下であれば——」
 暗く照らされた地獄の道を、亡者たちが呻き声をあげながら行進する。
 それが、彼の革命の証左だった。

「——俺の墓地から、闇のクリーチャーをすべて復活させる!」



革命魔王 キラー・ザ・キル SR 闇文明 (8)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン/革命軍 11000
進化—自分の闇のクリーチャー1体の上に置く。
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、闇以外のクリーチャーをすべて破壊する。
革命2—このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分のシールドが2つ以下なら、自分の墓地にある進化以外の闇のクリーチャーをすべてバトルゾーンに出す。



 死した骸は魔眼による生を与えられ、再び戦場に復帰した。その軍勢に、隠兵王も目を剥く。
「墓地から、クリーチャーをすべて……!?」
「多少の制限はあるが、ほとんど全員戻って来るぜぇ……さぁ、てめぇが、てめぇらが殺してきた亡者たちの怨恨! その身で味わいやがれ!」
 ラーザキダルクの墓地に眠る闇のクリーチャーがこぞって戦場に立つ。
 呼び戻されたのは、《一撃奪取 ブラッドレイン》が二体、《革命の悪魔龍 ガビュート》が二体、《凶殺皇 デス・ハンズ》が二体、《白骨の守護者ホネンビー》《葬送の守護者 ドルルン》《暗黒鎧 ヴェイダー》《殺意の悪魔龍 マガンド》がそれぞれ一体ずつ。
 計九体のクリーチャーたちだ。
 さしもの隠兵王でも、この数相手では、軍略も策略もない。しかも、隠兵王の場は壊滅しているのだ。軍力0に対して、膨大な数の屍の兵士。その圧倒的な戦力差は、歴然としている。
 人海戦術、などという生易しいものでもない。墓場に眠り続けていた数多の亡者たちが一斉に蘇ったのだ。単純な物量で押し殺される。
「おら! 墓地から復活した二体の《ガビュート》の能力で、てめぇのシールドを二枚、直接墓地に叩き込む!」
 蘇った二体の《ガビュート》が、隠兵王のシールドを二枚、焼き払う。一瞬でシールドの枚数も三枚まで減らされた。どんどんアドバンテージが削られ、差をつけられていく。
 ここからは、ラーザキダルクの一転攻勢だ。群体の数で圧倒したところで、畳み掛ける。
「《キラー・ザ・キル》でWブレイク! さらに《ブラッドレイン》でシールドブレイクだ!」
「ぐ……S・トリガー《瞬撃の大地 ザンヴァッカ》を召喚であります! 召喚時、《ザンヴァッカ》をタップ!」
 一枚二枚、三枚と、あっという間に隠兵王のシールドが失われる。最後のシールドから、悪足掻きのように《ザンヴァッカ》が飛び出した。
 隠兵王のターン。彼は、足掻き続けた。
「呪文《古龍遺跡エウル=ブッカ》! マナ武装5と合わせ、《ガビュート》二体をマナゾーンへ! 続けて《ナム=ダエッド》召喚! マナを増やし、マナゾーンから《ランキー》も召喚であります!」
 まずは邪魔な二体の《ガビュート》を退かし、ガードマンも持つ《ナム=ダエッド》を召喚、ついでに《ランキー》も並べ、手遅れがちに展開し直す。
「《ザンヴァッカ》でダイレクトアタックであります!」
「《ドルルン》でブロックだ」
 一撃でも叩き込めば勝てる。しかし、その一撃を叩き込むには、ラーザキダルクの場にはブロッカーが多すぎる。《ザンヴァッカ》の突進も、《ドルルン》が捨て身で受け止め、ラーザキダルクには届かない。
 しかし隠兵王も、《ザンヴァッカ》と《ナム=ダエッド》で守りを見せる。《ゲリランチャー》の誘導作戦及び迎撃の応用だ。ラーザキダルクの場には、《ザンヴァッカ》を超えるパワーのアタッカーが《キラー・ザ・キル》しかいない。なので、《ザンヴァッカ》を場に維持することさえできれば、《キラー・ザ・キル》以外の攻撃はすべてシャットアウトできるのだ。その《キラー・ザ・キル》の攻撃も、ガードマンである《ナム=ダエッド》が防護するため、次のターンは凌げる。
 上手くこの防御戦線を維持できれば、反撃のチャンスは訪れるはずだ。
 そんな、甘い考えに縋ってしまっていた。
 その弱さが、彼を絶望に叩き落す。
「雑魚をいくら並べても無駄なんだよ。呪文《魔狼月下城の咆哮》」
 返しのターン。ラーザキダルクは無慈悲に呪文を詠唱する。
 狼の遠吠えが聞こえると、《ナム=ダエッド》と《ザンヴァッカ》は、瞬く間に喉笛を食いちぎられていた。
「《ナム=ダエッド》のパワーを−3000、マナ武装5で《ザンヴァッカ》を指定、両方破壊だ」
「な……ぐ……!」
  決死の思いで築いた守りも、一瞬で突き崩される。
 隠兵王もシールドゼロ。ラーザキダルクのように、革命0トリガーなどというものがあるはずもない。
 ゆえに、
「これで終いだ」
 死の宣告を言い渡される。
 殺意の魔眼を胸に秘めた革命軍の魔王が、軍隊を失った指揮官に引導を渡す。
 殺すと決めた時。魔眼に込められた殺意が死の意志となり、それが巨大な闇を構築する。
 すべてを死に追いやる、殺戮の闇が放たれた。

「《革命魔王 キラー・ザ・キル》で、ダイレクトアタック——!」