二次創作小説(紙ほか)

132話「煩悩欲界」 ( No.409 )
日時: 2016/07/05 07:12
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

 ウッディと佛迦王の対戦。
 互いにシールドは五枚。
 ウッディの場には《雪精 ジャーベル》が一体。前のターンには《ジャスミン》でマナも伸ばしている。
 対する佛迦王の場には《侵略者 クマウス》と《三界 ザゼンダ》が一体ずつ。盤面的には佛迦王がやや先んじているが、総合的なアドバンテージでは、ウッディも負けてはいない。
「おれのターン……よし。いくぞ」
 ウッディはカードを引くなり、ニヤリと口の端を釣り上げた。
「まずは《ジャーベル》をしょうかんだ! マナ武装3はつどう! やまふだのうえから、4まいをみるぞ。そのなかから、《ジャスミン》をてふだに!」
 《ジャーベル》は巨大なシャベルで山札を掘り進み、眠っている仲間を引き起こす。
 さらにウッディは2マナをタップし、
「《霞みジャスミン》をしょうかんだ! はかいはしない。ばにのこす」
「ほぅ? この序盤で霞みの妖精を破壊しないか。なにを策謀している?」
「じきにわかる。まっていろ」
 《ジャスミン》は《フェアリー・ライフ》を始めとする、2コスト1加速の基本的なマナ加速カード。かなり使いやすいので《フェアリー・ライフ》と合わせて八枚体制で使われる場合が多く、大抵の場合は破壊してマナを伸ばす。
 マナが溜まる後半になっても殴り手として場に残るす選択ができるため、比較的腐りにくいのが利点だが、ウッディのマナは5マナ。特別マナが多いというわけでもなく、殴ったとしても今の場では殴り返されてしまう。今このタイミングで場に残す意義は薄いはず。
 それでも、ウッディが《ジャスミン》を残したことには、大きな意味がある。
「おれのばには、《ジャーベル》が2たい、《ジャスミン》が1たい、スノーフェアリーのかずは、ごうけい3たいだ!」
 ウッディの場に並んだ三体のスノーフェアリーが淡く発光する。
 そして、武士もののふを呼ぶ鐘の音が鳴り響いた。

「G・ゼロ、はつどう! でばんだ! 《武家類武士目 ステージュラ》!」



武家類武士目 ステージュラ 自然文明 (7)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン/革命軍 11000
G・ゼロ—バトルゾーンに自分のスノーフェアリーが3体以上あれば、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、スノーフェアリーを好きな数、自分の墓地またはマナゾーンから手札に戻してもよい。
自分のスノーフェアリーが相手のクリーチャーとバトルする時、かわりにこのクリーチャーにバトルさせてもよい。



 三体のスノーフェアリーの呼び声によって、《ステージュラ》が姿を現す。
 舞台と一体化した古代龍。しかし、獰猛で凶暴な従来までの龍と違い、《ステージュラ》は雪の妖精と寄り添い、共に戦う龍だ。
 まずは、そのための仲間を呼び寄せる。
「《ステージュラ》がばにでたとき、スノーフェアリーをすきなかず、ぼちかマナからてふだにもどせる。ぼちの《ジャスミン》、マナの《オチャッピィ》をてふだに!」
 《ステージュラ》が咆哮すると、墓地とマナに眠るスノーフェアリーがそれぞれ呼び戻され、ウッディの手札となる。
 攻撃の手は揃った。追撃の準備もできている。
 ここが攻め時だ。
「《ジャーベル》でこうげき! シールドをブレイクだ!」
「トリガーはない」
 《ジャーベル》がシャベルを振りかぶり、佛迦王のシールドを一枚砕く。
「儂のターン。《ガガ・ピカリャン》を召喚し、一枚ドロー」
 佛迦王の場に《ガガ・ピカリャン》が現れる。《ガガ・ピカリャン》は光を知識に変え、それを佛迦王に受け渡すが、それだけでは終わらない。
 《ザゼンダ》の身体が光に包まれ、背中から天使のような翼が生えた。
「? なんだ?」
「これで儂の場にクリーチャーは三体。よって《ザゼンダ》の能力発動! 《ザゼンダ》のパワーは+2000され、種族にエンジェル・コマンドを得る!」
 《ザゼンダ》は場にいるクリーチャーの数が一定数以上になると強化される能力を持つ。その数は、自身を含め三体。
 佛迦王の場には《クマウス》《ガガ・ピカリャン》、そして《ザゼンダ》の三体。
 《ザゼンダ》の能力発動の条件を満たしている。
「だが、パワー4000くらいなら、こわくはないぞ」
「ほぅ。そうか。だったら4000よりも大きなパワーを見せてやろう。そして、《ザゼンダ》の能力で肝要なのはパワーではなく、“種族”だということを、貴様に教え込んでやる。《ザゼンダ》で《ジャーベル》を攻撃——する時に、侵略発動!」
 《ザゼンダ》は《ジャーベル》へと突貫する。その時。
 《ザゼンダ》の身体を、神々しき光が照らし、包み込んだ。

「煩悩を絶ち、欲界を超え、修羅道にて廻れ——《三界 ブッディ》!」

 光の中で、《ザゼンダ》が姿を変える。
 それは、灰色の身体を持つ神仏。金色の台座で足を組み、全身を黄金に装飾し、六本の腕は阿修羅の如く。
 天使とは程遠いクリーチャーではあったが、しかしその姿は神々しい。
 神か仏か。三界を統べる侵略者の存在が如何なるものかは、彼らにしか分からない。
「こうげきちゅうに、しんかしたのか……!」
「《ブッディ》の侵略条件は、儂のエンジェル・コマンドが攻撃すること。《ザゼンダ》は普段はジャスティス・ウイングだが、先の条件を満たせばエンジェル・コマンドの種族も得る。ゆえに、《ブッディ》の侵略条件を満たす」
 《ザゼンダ》から侵略した《ブッディ》は、六本の腕のうち一本が握る短剣を振るい、《ジャーベル》へと突きつける。
「さぁ行け! 《ブッディ》と《ジャーベル》でバトル!」
「させないぞ! 《ステージュラ》のこうか、はつどうだ!」
 短剣の切っ先が《ジャーベル》を切り裂こうとした刹那。
 《ジャーベル》自身が《ステージュラ》に引き寄せられ、《ステージュラ》の舞台となった背に乗せられる。《ジャスミン》ともう一体の《ジャーベル》も同じように、背に乗せられていた。
 《ブッディ》の攻撃先は《ジャーベル》だ。しかし《ジャーベル》と《ステージュラ》は、ほぼ一体化してしまっている。どころか目の前に立ちふさがるのは、《ステージュラ》だ。
「《ステージュラ》のこうか! おれのスノーフェアリーがバトルするとき、かわりに《ステージュラ》がバトルする! 《ジャーベル》のかわりに、《ステージュラ》がバトルだ!」
「パワーは《ブッディ》が9500、《ステージュラ》が11000……」
「パワーはこっちがうえだ! 《ブッディ》をかえりうちにしろ!」
 《ステージュラ》が咆えると、《ブッディ》へと突撃する。ただの体当たりだが、その巨体による攻撃は、ただの体当たりでも凄まじい。
 一瞬で《ブッディ》の身体は爆散し、吹き飛んだ。
 しかし、
「成程な。ならば儂も《ブッディ》の能力を発動させる。《ブッディ》は破壊される代わりに、手札のクリーチャーを自身の下に置くことが可能だ。手札の《トリガブリエ》を《ブッディ》の下に置き、破壊を無力化させる」
 佛迦王の手札から《トリガブリエ》が供物として捧げられる。
 すると、粉々に飛び散った《ブッディ》の肉片が集まり、再構築され、そのの躯体が再生した。
「ふっかつ、したのか」
「《ブッディ》は不滅の僧兵だ。そして、じきに完全体となる。楽しみにしていろ」
「そんなこと、しるか。おれのターン! いっきにきめるぞ! 《ジャスミン》と《オチャッピィ》をしょうかん! マナを2まい、ふやすぞ! そして《ステージュラ》でこうげき、シールドをWブレイクだ!」
 再び《ステージュラ》が突進する。
 《ブッディ》は破壊を免れるために手札を消費する。スノーフェアリーのバトルはすべて《ステージュラ》に置換されるため、手札が切れるまで《ブッディ》を殴り続けるという手もあったが、ウッディはプレイヤーへの攻撃を選択した。
 現時点で佛迦王のシールドは四枚。ウッディの場にはWブレイカーの《ステージュラ》が一体、《ジャスミン》一体と《ジャーベル》が二体。打点が五つ揃っており、とどめまで刺せる状態だ。
 ゆえに、《ステージュラ》で佛迦王のシールドを砕きに行ったのだが、
「S・トリガーだ」
 粉砕したシールドの一枚目から、S・トリガーが放たれた。
 そしてその一枚が、ウッディの現状を大きく揺るがすこととなる。

「呪文——《パニック・ルーム》」