二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿1日目 「花園へ至る道の防衛線4」 ( No.425 )
日時: 2016/08/16 15:37
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

 先んじて《スペルビー》を出し、男子側のターンは終了。女子のターンへと渡る。
「先を越されちゃったわね」
「もたもたしてるからだ」
「しょうがないじゃないの。でも、やっとこっちも動けるわ。《ツミトバツ》をチャージして、4マナ。《白骨の守護者ホネンビー》召喚よ」
 流石に相手も動き出してきた。《スペルビー》のクリーチャー版——登場時期的には、《スペルビー》が呪文版の《ホネンビー》だが——とも言える《ホネンビー》。
「山札の上から三枚を落として、その中の《ホネンビー》を回収するわ」
 落とされたのは《煉獄と魔弾の印》《爆砕面 ジョニーウォーカー》《白骨の守護者ホネンビー》だった。
「あたしのカードも固まってるな……」
「わたしのカード、全然出て来ません……」
「これでターン終了よ」
「よし、こっちのターン。《フェアリー・ライフ》をチャージして、3マナで《フェアリーの火の子祭》だ。山札の上から二枚を見て……《ハチ公》をマナに置くよ。残りは山札の下に置いて、《火の子祭》を回収。ターン終了だ」
 捲れた二枚は《若頭の忠剣ハチ公》と《斬込の哲》だった。火の割合が半分以下なので、回収はあまり期待していなかったが、運が良かった。
「バリバリ動いてるわね、相手」
「先に大型を出されたらまずいね」
「でも、こっちの手札もよくないです……」
「そうね。だから、今できることをするしかないわ。とりあえず、《ジョニーウォーカー》をチャージ。4マナで《ホネンビー》を召喚よ」
 山札の上から三枚が墓地に落ちる。落ちたのは、《邪眼皇ロマノフⅠ世》《死神城 XENOM》《仁義類鬼流目 ブラキオヤイバ》。
「……《ジョニーウォーカー》を回収するわ。ターン終了」
 墓地を整えつつ、場を固めていく沙弓たち。
 相手のデッキは、闇単色の沙弓に、墓地利用をメイン戦術に据えているミシェル、水をタッチした隼闇単色の美琴と、墓地を絡めた戦術が取りやすい。そのうえ、各々のカードも闇に寄っているので、色事故も起きにくいと思われる。
 あまり墓地を増やされると、まずいかもしれない。
 しかし、先んじているのはこちらだ。そのアドバンテージを有効活用するしかない。
「《ヤッタレ・ピッピー》をマナチャージ。6マナで《龍覇 メタルアベンジャー》を召喚!」
「……厄介なのが出て来たぞ」
「《龍波動空母 エビデゴラス》をバトルゾーンに出すね。ターン終了だよ」
 これで毎ターン、手札が二枚増える。マナも溜まってきたので、取れる戦術の幅も広がるはずだ。
「……《ラグマトックス》をチャージ。2マナで《ジョニーウォーカー》を召喚。即座に破壊するわ。能力でマナ加速を選択」
 マナに置かれたのは、《陰謀と計略の手》。タップイン。
「さらに5マナで《墓標の悪魔龍 グレイブモット》を召喚。山札の上から二枚を墓地に置いて、ターン終了」
 墓地に行ったのは《ボーンおどり・チャージャー》と《魔刻の斬将オルゼキア》だった。
 ここまでで沙弓たちの行動は、ブロッカーの召喚と、それに伴う墓地肥やしや回収、そして先ほどのマナ加速程度。大きな動きは見せていない。
「女子の皆さん、動きが鈍いっすね」
「墓地を肥やしてるのが怖いですけど、先に倒せれば問題はない……ですかねー」
「そうだね。長引くとこっちが不利そうだし、一気に攻めるよ! 《アクア・ジェット》をチャージ。2マナで《ヤッタレ・ピッピー》を召喚。さらに6マナで《龍覇 グレンモルト》も召喚だ!」
 ここで召喚するのは、手札に温存しておいた《グレンモルト》。
 それを見た瞬間、相手に動揺が走る。
「あ、まずいやつねこれ。負けたかも」
「ぶちょーさん!?」
「いやしかし、これは……」
「トリガーないと敗北の道を歩むだけだな」
 場には《グレンモルト》と《メタルアベンジャー》、アタッカーが二体。
 ということは、
「《グレンモルト》に《銀河大剣 ガイハート》を装備!」
 当然、《ガイハート》が超次元ゾーンからやって来る。
 沙弓たちの場に、《グレンモルト》を超えるパワーのブロッカーはいない。つまり、《ガイハート》を残した状態で、二回の攻撃を許してしまう場となっている。
「行くよ、《グレンモルト》でシールドをブレイクだ!」
「トリガーで返せないとまずいわね……とりえず受けるわ。シールドチェック、っと」
 場で防げないなら、トリガーに賭けるしかない。しかし、《メタルアベンジャー》は呪文では選ばれないため、《デス・ゲート》や《エウル=ブッカ》では凌げない。
 それ以外にもトリガーはあるので、なにかしらのトリガーが出て来ることを信じて、沙弓はブレイクされたシールドを捲る。
「お、S・トリガー……だけど、よりにもよってこれかぁ……」
「なんだ? 《ライフ》でも引いたか?」
「まあ、似たようなものよ」
 捲られたカードを見て、あまり芳しくない表情を見せる沙弓。トリガーは引いたが、盤面をひっくり返す類のものではないということだろう。
「でもこの場面なら《ライフ》よりマシでしょうし、一応使うわ……《死神スクリーム》」
「……《死神スクリーム》?」
 あまり見ないカードに、疑問符を浮かべる。
 効果自体はそれほど複雑ではないので、沙弓は口で説明しながら、その呪文の効果内容を処理していく。
「《死神スクリーム》の効果。山札の上から六枚を墓地に置いて、墓地から闇のクリーチャーと進化クリーチャーを一体ずつ回収するわ」
「……それで返せるの?」
「さぁ? でも返せないとほぼ負けよ。やるしかないじゃない」
 あっけらかんとした態度で返す沙弓。
 出て来たのは確かにトリガーだが、除去ではなく墓地肥やしと回収。やや重い呪文なので、トリガーで出た時のお得感はなかなかだが、この場面では《フェアリー・ライフ》をトリガーしたのとあまり変わらない。
 とはいえ、これで残りの攻撃を防げる可能性も、ないわけではないのだが。
 沙弓は山札の上から六枚を墓地に落とす。墓地に落ちるのは、《死神ギガアニマ》《永遠の悪魔龍 デッド・リュウセイ》《古龍遺跡エウル=ブッカ》《ダーク・ライフ》《霞み妖精ジャスミン》《威牙の幻ハンゾウ》。
 その中から沙弓は、すかさず一枚のカードをすくい取った。
「ラッキー、《ハンゾウ》を回収するわ。進化クリーチャーはいないから、そっちは回収できずね」
「よりもよって、そいつか……!」
 浬は憎々しげに沙弓たちのマナを見る。マナゾーンにはカードが七枚。ニンジャ・ストライクの条件は満たしている。
「《ハンゾウ》を握られてしまったら、このまま殴っても《メタルアベンジャ−》と《グレンモルト》を失うだけですねー」
「そうだね。攻撃はせずにターン終了だ」
「な、なんとか耐えられましたね……」
「間一髪だったわね。《ハンゾウ》を入れておいてよかった……」
「《死神スクリーム》と合わせて、黒月さんには感謝ね。そして、こっちも攻め返すわよ。《デスゲート》をチャージして、7マナで《邪眼教皇ロマノフⅡ世》を召喚よ。《ロマノフⅡ世》の能力で、山札の上から五枚を墓地へ!」
「《ロマノフⅡ世》……普段のミシェルのデッキなら、高確率でアレが落ちるけど……」
 160枚のあのデッキでは、最高でも四枚しかないだろうあのカードが落ちる確率は、それほど高くないはず。
 しかしそれは、あくまで確率。
 確率は、0でなければ起こり得るのだ。
 墓地に送られたのは、《インフェルノ・サイン》《霞み妖精ジャスミン》《煉獄と魔弾の印》《死神戦鬼ベル・ヘル・デ・バラン》《龍鳥の面 ピーア》。
 落ちたカードを見て、沙弓はニヤリと笑う。
「またまたラッキー、唱えるのは《煉獄と魔弾の印》!」
「来たか……!」
 最も捲れて欲しくないカードが、捲れてしまった。
 《ロマノフⅡ世》から唱えられたのは、《煉獄と魔弾の印》。
 墓地からクリーチャーを蘇生させる呪文で、その制約や付加される能力など、考慮すべき要素は多々あるが、とりあえず。
 この状況は出されるクリーチャーは、一体しかいないだろう。

「さぁ、墓地から蘇りなさい——《邪眼皇ロマノフⅠ世》、復活!」