二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿1日目 「花園へ至る道の防衛線5」 ( No.426 )
日時: 2016/08/16 21:47
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

 墓地から蘇ったのは、《邪眼皇ロマノフⅠ世》。
 《ロマノフⅡ世》から《煉獄と魔弾の印》を唱え、そこから《ロマノフⅠ世》が蘇る。そして、既に墓地には《ロマノフⅠ世》と《煉獄と魔弾の印》が揃っている。綺麗すぎる流れだ。
「まずは《ロマノフⅠ世》の能力で、山札を見るわ……落とすのは《ロマノフⅠ世》!」
 これで墓地の《ロマノフⅠ世》が二体、《煉獄と魔弾の印》も二枚。《ロマノフⅡ世》で唱えた呪文は墓地に置かれたままになるため、次弾装填済み。
 今度は沙弓たちの反撃だ。
「攻撃開始! 《煉獄と魔弾の印》でスピードアタッカーを得た《ロマノフⅠ世》で、《グレンモルト》を攻撃よ! その時、墓地からコスト6以下の闇の呪文——《煉獄と魔弾の印》を唱えるわ。二体目の《ロマノフⅠ世》を、スピードアタッカー付きで復活! 唱えた《煉獄と魔弾の印》は山札の下に戻して、《ロマノフⅠ世》の登場時能力! 山札から、四体目の《ロマノフⅠ世》を墓地へ落とす!」
 この一連の流れで、墓地の《ロマノフⅠ世》は二体、《煉獄と魔弾の印》は一枚だ。
 トリガーの可能性も考慮して、残しておいたら確実に危険な《グレンモルト》の処理にかかる沙弓たち。
 《スペルビー》でブロックすることも考えたが、ブロックしても、結局は破壊されてさらに展開されるだけ。素直に倒されることにした。
「バトルよ。《ロマノフⅠ世》のパワーは8000!」
「《グレンモルト》のバトル中のパワーは7000……こっちの負けだね」
「続けて二体目の《ロマノフ》で攻撃! 墓地の《煉獄と魔弾の印》を唱えて、三体目の《ロマノフ》を復活よ。山札から《煉獄と魔弾の印》を落とすわ」
 これで墓地には、《ロマノフⅠ世》と《煉獄と魔弾の印》が一枚ずつ。最後の弾が込められた。
 そして、続けざまにシールドへの攻撃を放つ。
「シールドをWブレイク!」
「……S・トリガー! 《ドンドン吸い込むナウ》! 山札を五枚見て、その中から《ボルシャック・ホール》を手札に加えて、三体目の《ロマノフⅠ世》を手札に!」
「早速トリガーか。これでロマノフサインが止まったな」
 とりあえずこれで、ロマノフサインの連鎖は止めることができた。
 とはいえまだ《クロスファイア》も残っているので、物量に任せて押し込まれたらまずいが、
「もう一枚S・トリガー! 《イフリート・ハンド》! コスト9以下の《クロスファイア》を破壊だ!」
「あぅ、こっちもやられちゃましたね……」
「もう攻撃できるクリーチャーはいないわね。ターン終了よ」
 なんとかロマノフサインの猛攻を食い止め、一騎たちのターン。
 場はまだボロボロというほどではない。《ロマノフⅠ世》が二体、《ロマノフⅡ世》が一体、その他ブロッカーが並んでいるが、まだ持ち直せる盤面だ。
「俺たちのターン。《エビデゴラス》の効果でドロー、そして通常ドローするよ」
 カードを余分に引き、手札を眺める。
 盤面はまだ立て直せるとはいえ、相手の場に大型クリーチャーが三体並んでしまっているのは確かだ。うち二体は後続を射出したり、除去を撃ちかねない《ロマノフⅠ世》。最低限この二体は、なんとかしなければならないだろう。
「一騎さん、このカードは……」
「これ? このデッキだと、なにが出る?」
「俺なら《サイクリカ》か《アマテ・ラジアル》あたりでしょうか。《デカルトQ》の可能性もありますが」
「……俺のデッキ、《グレンモルト「覇」》積んでるんだけど、大丈夫?」
「自分のデッキにも《クシャルダオラ》が……あと、《ベア子姫》もいるっす」
「……分の悪い賭けになりますねー」
「しかし、他に方法が……」
「部長、どうするっすか?」
「うーん……」
 手札を握っているのは一騎だ。最終的には彼に決めてもらう。
 一騎はしばし考え込み、そして、
「まあ、この盤面だ。多少の運には味方してもらわないとね。ちょっと賭けになるのは仕方ない。《火の子祭》をチャージして、3マナで《ヒラメキ・プログラム》を唱えるよ。《メタルアベンジャー》を破壊して、コスト7のクリーチャーが出るまで山札を捲る」
 一騎は浬の賭けに乗ることにして、《ヒラメキ・プログラム》を撃つ。
 いつもなら使いたいカードを絞って使えるのだが、今は他人のデッキと同居している状態。踏み倒したいクリーチャーが都合よく出てくるとは限らない。
 しかしそれでも、活路を見出すにはこのカードしかない。この場を乗り切れるカードが来ることを信じて、山札を捲っていく。
 《ミラー怪人 ドテラバラ》《魔光ヴィルジニア卿》《若頭の忠剣ハチ公》《モエル 鬼スナイパー》《爆熱血 ロイヤル・アイラ》《斬英雄 マッカラン・ボナパルト》《超次元エナジー・ホール》——
「——来た」
 そして遂に、指定されたカードが捲れる。
 それを見て一騎は、なんとも表現しがたい、喜ばしいのかどうかすら微妙な表情を見せた。
「比較的当たりだけど、こっちか。まあ、仕方ないね。《龍素記号Og アマテ・ラジアル》をバトルゾーンに。山札を見て、その中からコスト4以下の呪文《スパイラル・ハリケーン》を唱えるよ。《ロマノフⅠ世》を手札に戻す」
 捲られたのは《アマテ・ラジアル》。《グレンモルト「覇」》や《ベア子姫》よりはマシだが、ここは《スペルサイクリカ》が欲しかった場面。
 しかしそんなことを言っても仕方ない。クリーチャーが除去できただけで儲けものと思考を切り替えて、次のカードを使う。
「次に《超次元ミカド・ホール》を唱えるよ。一応、《グレイブモット》のパワーを下げて、《時空の凶兵ブラック・ガンヴィート》をバトルゾーンに。タップ状態の《ロマノフⅠ世》を破壊だ」
「《グレイブモット》の能力で、相手のサイキック・クリーチャーのパワーは5000下がり続けるから、その《ガンヴィート》は破壊よ」
「ターン終了だ」
 ひとまず、アタックトリガーで場を荒らしてくる《ロマノフⅠ世》は除去できた。
 しかしマナは溜っているので、次のターンに素出しされるだけだろう。時間稼ぎでしかない。
「1ターンで随分と巻き返されたな」
「そうねぇ。でも、結構押してるし、なんとかなるんじゃない? 《ロマノフⅠ世》をチャージして、《ロマノフⅠ世》を召喚。ここは……ささやかながら、山札を圧縮しましょうか。《死神明王バロム・モナーク》を墓地へ」
 墓地は十分。呪文もクリーチャーも揃えられているので、沙弓は山札で比較的重要度が低いと思われるカードを墓地に落とす。この場合の重要度は、ハンドゼロでトップから引いて来た時に使えるかどうか。場の状況を選ばず使えるかどうかを基準にしている。その点では、進化クリーチャーの《バロム・モナーク》は腐る恐れがそれなりにあるので、墓地に落としておく。
「……今、私のカードが邪魔扱いされた気がするんだけど」
「そういうつもりじゃないんだけど……」
 美琴からの視線が痛い。
 正直、そういうつもりを感じさせる意図はあったのだが。
「えぇっと、じゃあ、終了で」
「俺たちのターンだね。《エビデゴラス》の効果を合わせて二枚引くよ……うーん、これ、かな?」
「そこが最善だと思いますけど」
「ですねー」
 少し悩んで、一騎は手札のカードを引き抜く。
「じゃあ、まずは《ハチ公》をチャージ。2マナで呪文《連唱 ハルカス・ドロー》。カードを一枚引くよ。次に《超次元ボルシャック・ホール》を唱えるね。《ホネンビー》を破壊して、《勝利のプリンプリン》をバトルゾーンに。《プリンプリン》の登場時能力で、《ロマノフⅠ世》を拘束するよ」
「《グレイブモット》の能力、《プリンプリン》のパワーも落として破壊するわ」
「いつもは空気な《グレイブモット》が地味に機能してるな……」
「私もビックリよ」
 出したそばから破壊される一騎たちのサイキック・クリーチャー。沙弓としても、比較的軽量なデーモン・コマンド・ドラゴンで、墓地肥やしができて、ブロッカーであるという理由で《グレイブモット》採用している。サイキックメタなど度外視しての運用なので、この活躍は意外だった。
「しかし、膠着してるわね。こっちのターン……おっと? 面白いカードが引けたわ」
「なに?」
 面白いカード、というのが、どういう意味を指すのか。この膠着した場を抜け出せるという意味か。なんにせよ、場が動きそうな予感がする。
「《ザマル》をチャージ。まずは4マナで《パイレーツ・チャージャー》! 山札の上から二枚を見て……《死神盗掘男》を墓地へ置いて、もう一枚は手札へ。チャージャーはマナに置かれるわ」
 多色チャージャーで墓地、手札、マナの三つを同時に増やす。
 しかし、これはただのおまけでしかない。
 本命は、次に現れる。
「6マナタップ! 可愛い後輩の可愛い切り札よ、《龍覇 サソリス》を召喚!」
 現れたのは、《サソリス》。柚のカードだ。
 このタイミングで現れたドラグナーに、男子陣に戦慄が走る。
「ここで《サソリス》か……!」
「自然のドラグハートですねー。えっと、ここで出るとしたら……」
 《サソリス》は登場時、コスト4以下のドラグハートを呼ぶことができる。
 沙弓が手にしたドラグハートは、武器だった。

「《サソリス》に、《始原塊 ジュダイナ》を——装備」