二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿1日目 「花園へ至る道の防衛線6」 ( No.427 )
- 日時: 2016/08/17 20:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
思った以上に場は動かなかったが、しかし、とんでもない爆弾が設置されてしまった。
《サソリス》——否、《ジュダイナ》だ。
あのウエポンがある限り、沙弓たちは1ターンに一度、マナから好きなドラゴンが呼べる。
今、相手の場には数体のドラゴン。マナは10枚以上。そして、マナゾーンには《ドルバロムD》。
この三つの事実が、一騎たちを敗北の道へと叩き落す材料になる。
「《ジュダイナ》はまずい……マナから《ドルバロムD》が出て来ますよ!」
場もマナも一掃する化け物が出て来てしまえば、一瞬でゲームセットだ。相手も被害を受けるとはいえ、デッキ内の闇のカードの比率が50%以上の女子陣と、25パーセント以下の男子陣。被害の差は歴然としている。
先ほどまでは《ロマノフ》の処理に追われていたが、今度は《ジュダイナ》をどうにかしなくてはならない。
しかし、
「分かってる。でも手札に対処法はないし、このドローに賭けるしか……なにか、引け!」
ここまでの《ロマノフ》の対処で、除去札等はかなり使ってしまっている。ゆえに、このドローに賭けるしかない。
幸いにして、《エビデゴラス》のお陰で手札のアドバンテージはそれなりに約束されている。除去カードが引ける確率も、それなりだろう。
「よし、引いたよ! 《焦土と開拓の天変》をチャージ。6マナで《地獄門デス・ゲート》!」
「あちゃー、引かれちゃったか……」
「まあ、仕方ないわね。長引けば長引くほど、《エビデゴラス》のアドバンテージが効いてくる」
「本当だよ。浬君のお陰だ」
「いえ、そんな……別に……」
「カイ、照れてるの? うわぁ、珍しい……」
「……うるせぇよ」
「……なんでもいいが、その《デスゲ》はなにを破壊するんだ?」
「あぁ、ごめんよ。対象は《ロマノフⅠ世》だよ。破壊して、それよりコストの小さい《龍覇 グレンモルト》をバトルゾーンに出すね」
《デス・ゲート》の対象は《ロマノフⅠ世》。《ジュダイナ》の方が脅威だが、こちらのアタックトリガーも無視できない。
《ロマノフ》を破壊した後は、墓地から《グレンモルト》が帰ってくる。当然、ドラグハートを携えて。
「《ガイハート》もいいけど、相手はまだ《ハンゾウ》を握ってるし、ここは《将龍剣 ガイアール》を装備だ。《サソリス》とバトルだよ!」
《ガイギンガ》の龍解狙いで、攻めつつ除去という考えも一瞬よぎったが、同時に沙弓がまだ《ハンゾウ》を手札に抱えていることを思い出し、強制バトルで安全に場を処理する方へと手を打つ。
「《サソリス》は破壊されても、墓地の代わりにマナへ行くわ」
「あぅ、《サソリス》さんが……」
「3マナ残ってるから、一応、リサイクルで墓地の《ハルカス・ドロー》を唱えておくよ。ターン終了」
なんとか厄介な《ロマノフ》を墓地に落としつつ、《ジュダイナ》も処理できた。一騎たちに、ひとまずの安息が訪れた——かに思われたが。
「こっちのターン。ドローよ」
沙弓がカードを引く。そして、引いたカードを見て、目を細めた。
「……ここは、決めに行く場面よね?」
「この盤面だと、《グレンモルト》で奇襲されかねないしな……トリガーが怖いところではあるが」
「でもこのまま長引かせると、ハンドアドにおいてはあちらが有利よ。やっぱり、《エビデゴラス》が厄介だわ」
「そうよねぇ。まったく、カイは面倒なものを置いて行ったわね。あ、置いたのは剣埼さんか」
「そんなことはどうでもいいが、あたしは攻めに賛成だ」
「わ、わたしも……さっきからこちらの出すクリーチャーは全部やられちゃってますし、攻撃できるときにしたほうが、いいんじゃないかと思います……」
どうも女子陣は、なにかのキーカードを引いたのか、押し引きについて相談している。
元々はロマノフサインで攻めに入ったところで、《ロマノフⅠ世》のアタックトリガー警戒からずっと防戦に回っていたので、まだ一騎たちが防御に徹しているうちに攻めた方がいいのではないか、ということなのだろう。
「ふむ……黒月さんは?」
「私も攻撃でいいわ。さっきの汚名も晴らせるしね」
「あ、気にしてたんだ……ごめん」
「今はいいわ。せっかく二枚目を引いたんだから、しっかり頑張ってもらわないと」
「了解よ。じゃあ、行ってもらおうかしらね!」
満場一致。沙弓たちは、攻める。
「マナチャージなし。7マナで《グレイブモット》を進化!」
マナを溜めずにそのまま、手札のカーをお《グレイブモット》の上に重ねる。
守りを捨てて、攻めてくる。
「さぁ、一騎当千の死神が斬り込むわよ! 《死神明王バロム・モナーク》!」
《グレイブモット》から進化したのは、《バロム・モナーク》。
進化元は死神ではなく、“デーモン・コマンド”・ドラゴンの《グレイブモット》が選ばれた。バトルに勝つことをトリガーとして、墓地の死神、もしくはデーモン・コマンドを復活させる、その名の通り死神の明王。
一騎たちの表情が、吃驚と戦慄に染まる。
「ここで《バロム・モナーク》……!?」
「まずいですねー……三打点の脅威に加え、ブロックしても墓地から増援が戻って来るだけですし……」
「ブロック? そんな選択肢はないわよ。続けて4マナ、呪文《陰謀と計略の手》……《スペルビー》をバウンスして、一枚ハンデス」
「うぐ……!」
唯一のブロッカーが消し飛ばされた。沙弓の言う通り、これで選択肢はなくなった。
防御の選択が消えたということは、残っているのは、無抵抗のまま、ただ攻撃を喰らうのみ。
「守りは消えたわ。一気に突っ込むわよ! 《バロム・モナーク》で攻撃、Tブレイク!」
「これはまずい……トリガーを引かないと……」
一撃で三枚のシールドが叩き割られる。一枚、二枚と、シールドを捲っていくが、トリガーの姿はない。
「……トリガーなしだ」
「ならとどめね。一番風呂はいただきよ。《ロマノフⅡ世》でダイレクトアタック!」
「させない! トリガーは引けなかったけど、こっちがあるよ! ニンジャ・ストライク7! 《斬隠オロチ》!」
残り三枚のシールドから、トリガーの代わりに手に入れた防御札、ニンジャ・ストライク。
出てくるカード次第では、攻撃を止められずにとどめを刺されたり、よしんば防げても、大きく不利になったりする可能性のある博打的な要素を含むカードだが、今はこれに縋るしかない。
「《オロチ》の能力で《ロマノフⅡ世》を山札の下に戻すよ。そして、非進化クリーチャーが出るまで山札を捲ってもらう」
「止められたけど……チャンスでもあるわね」
「そうね。さーて、なにが出るかしら?」
沙弓は楽しそうにカードを捲っていく。《フェアリー・ライフ》《インフェルノ・サイン》《地獄門デス・ゲート》《ボーンおどり・チャージャー》——
「——《死神の邪蹄ベル・ヘル・デ・ガウル》! バトルゾーンに!」
「……面倒くさいのが出てきたな」
「こちらのクリーチャーが破壊されるたびに、デーモン・コマンドが出るか、手札補充がされますねー。まあ、黒月さんのデッキはそれほどデーモン・コマンドが詰め込まれているわけではないので、大丈夫そうですが」
「部長のデッキも呪文を多く絡めているから、比率的にはそこまでだな。しかし……」
シールドがゼロのこの状況で、手札を増やされるとまずい。
ブロッカーもいないので、《クロスファイア》や《5000GT》でも引かれようものなら、一瞬で勝負を決められてしまう。
「とにかく、早めに処理しないとね。《エビデゴラス》で2ドロー、《ギャラクシー・ファルコン》をチャージ」
先ほどのシールドブレイクもあり、手札は豊潤だ。マナも溜まってきているので、大抵のことはできる。
「……《超次元ミカド・ホール》! 《ベル・ヘル・デ・ガウル》のパワーを2000下げて、《ブラック・ガンヴィート》をバトルゾーンに! その能力で、まずは《バロム・モナーク》を破壊!」
「あらら、すぐにやられちゃったわね。でもまあ、打点で相手を追いつめられたし、活躍はしたわよね?」
「次は《超次元ボルシャック・ホール》! 破壊できるクリーチャーはいないけど、《勝利のガイアール・カイザー》をバトルゾーンに出すよ!」
ここで呼び出されるのは《勝利のガイアール・カイザー》。《ミカド・ホール》でパワーの下がった《ベル・ヘル・デ・ガウル》を狙い撃ちするつもりなのだ。
まだ沙弓が、《ハンゾウ》を握っているにもかかわらず。
「《勝利のガイアール・カイザー》で《ベル・ヘル・デ・ガウル》を攻撃——」
「させないわ、ニンジャ——」
「待て、そいつはまだ使うな」
「シェリー……?」
「あいつの場を見ろ」
「剣埼先輩のドラグハート……龍解するわ」
ミシェルと美琴に制止され、沙弓はハッと気づく。
一騎が《勝利のガイアール・カイザー》を出した理由に。
「——する時に、名前に《ガイアール》と名のつくクリーチャーの攻撃だから、《将龍剣 ガイアール》の龍解条件成立だよ!」
一騎がここで《勝利のガイアール・カイザー》を呼び出した理由は二つ。
一つは、《ベル・ヘル・デ・ガウル》を討ち取るため。
そしてもう一つは、《ガイアール》の龍解条件を満たすためだ。
「龍解! 《猛烈将龍 ガイバーン》!」