二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿1日目 「花園へ至る道の防衛線8」 ( No.429 )
日時: 2016/08/18 13:40
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

 7マナをタップして、現れたのは《クシャルダオラ》。
 元々はデュエマのクリーチャーではなく、とあるゲームのコラボカードで、それゆえに個性的かつエキセントリックな能力を持っている。
「《クシャルダオラ》……なんでそんなカードが……」
「相性いいと思ってい入れたっす」
「アタックトリガーの起動の遅さに目を瞑れば、結構強い能力だしね。アンタッチャブルの方は条件がちょっとあれだけど……ちなみに今日は、注意報や警報は出てないね」
「合宿どころじゃなくなるものね……」
 なんにせよ、ここで《クシャルダオラ》は大きな意味を持つ。
 対戦を長引かせるより、決められるときに決めてしまう方がいいに決まっている。そしてその決める時は、今だ。
「ついでに《ポーク・ビーフ》も召喚して……行くよ」
 一騎たちは、決めに行く。
「《クシャルダオラ》はハンターだから、《ギャラクシー・ファルコン》でスピードアタッカー! そのまま攻撃して、能力発動!」
 攻撃時、《クシャルダオラ》の能力が起動した。
「《クシャルダオラ》が攻撃する時、相手クリーチャーを一体フリースするよ! 対象は《ホネンビー》だ!」
 《ギャラクシー・ファルコン》によるスピードアタッカー付与、それによるアタックトリガーの即時起動で、ブロッカーを無力化。
 シールドのなくなったところに、とどめを刺す、はずだったが、
「ダイレクトアタック!」
「ここは奥の手……ニンジャ・ストライク4! 《光牙忍ハヤブサマル》よ! 自身をブロッカーにしてブロック!」
「防がれたか……ターン終了」
 互いにシールドはゼロ。僅かなブロッカーと、いつ飛び出すか分からないスピードアタッカーをデッキに抱えている状況。
「ここからは凌ぎ合いね。一撃決めた方が勝つ……」
「攻防共に意識しないと、一瞬で持って行かれるね……」
 攻めるなら、ニンジャ・ストライクなどの防御札を警戒しつつ、トリガーも考慮しなくてはならない。
 守るなら、相手のアタッカーから潰す方が確実だが、スピードアタッカーの存在がブロッカーに重要性を与える。
 お互い、攻防両方の面でギリギリの戦線だ。攻めでも守りでも、気を抜けない。
「こっちのアタッカーは《クロスファイア》と《ガンヴィート》。相手の場にはブロッカー一体とシールド一枚ね」
 沙弓は一度、場を見る。現状を分析し、打点を計算する。
「このまま攻めきるのは無理っぽいし、ここは……《電脳封魔マクスヴァル》と《龍神ヘヴィ》も召喚よ。こっちは《ヘヴィ》を破壊」
「うぅ、ブロッカーは残さないといけないし、仕方ない。《クシャルダオラ》を破壊するよ」
 ここで一騎たちはアタッカーが潰された。
 さらに沙弓はカードを引く。ここで除去カードやスピードアタッカーが引ければいいのだが。
「ん……二体目の《マクスヴァル》を召喚よ。さらに4マナで《壊滅の悪魔龍 カナシミドミノ》を召喚」
「たくさん出て来たっすねぇ……」
「並んだのは《マクスヴァル》二体に《カナシミドミノ》か……厄介だな」
 単純にブロッカーが二体、アタッカーが一体。しかも《カナシミドミノ》は、こちらのパワーラインを下げてくる。パワー1000以下のクリーチャーは生き残れない上に、まだ手札に握っている《ハンゾウ》が除去できる範囲も広がるので、厄介なクリーチャーだ。
「このターンにとどめは無理そうだけど……最低限、あのお城は引っぺがさないとね」
「そうね。単純にスピードアタッカーを増やされるのも困るし」
「……1ターン待った方がいい気もするけどなぁ。《ハンゾウ》に《カナシミドミ》、ブロッカー二枚だぞ? 耐えられるだろ」
「でも、スピードアタッカーは怖いですよね……」
「そうよ。ハンターは面倒くさいの多いから、《ギャラクシー・ファルコン》は放っておけない。トリガーが怖いけど、ここは攻撃よ」
 ミシェルが少し渋ってはいるが、沙弓は攻撃する方向で進んでいく。
「《ブラック・ガンヴィート》でシールドを攻撃!」
「……ブロックはしないよ」
 一騎は攻撃をそのまま通す。
 そして、このシールドブレイクは、沙弓と一騎の選択は、残り短いこの対戦の行く末を、大きく左右するものだった。
「! S・トリガーだよ!」
 追加された最後のシールドが、S・トリガーとして捲られる。
「《天守閣 龍王武陣》!」
「ここでトリガーだなんて、ついてない……しかも《龍王武陣》って」
「除去としては不確定だから、不発の可能性もあるけど……当たったら手札補充までされる」
「だから1ターン待てと言ったんだ。今更、後の祭だがな」
 こうなってしまえば沙弓たちは、不発の可能性を信じて見守るしかない。
 一騎たちとしても、デッキに占める火文明の割合が25%程度、その中のクリーチャー比率はさらに下がる。五枚捲れるとはいえ、そんな低確率の除去呪文がどこまで信用できるものか。固唾を飲んで見守る。
 一枚目——《龍覇 M・A・S》。
 二枚目——《龍覇 スコチ・フィディック》。
 三枚目——《龍覇 ドクロスカル》
 四枚目——《爆砕面 ジョニーウォーカー》
 五枚目——《暗黒皇グレイテスト・シーザー》。
「……さぁ、来たよ! 選ぶのは《グレイテスト・シーザー》! 効果で《クロスファイア》を破壊!」
 一騎が選び取ったのは《グレイテスト・シーザー》。パワーは13000。その火力で《クロスファイア》を焼き払う。
「ブロッカーじゃなくて、《クロスファイア》を狙った……」
「おいおい、ここでそいつはまずいぞ……!」
 女子陣がざわめき立つ。
 このタイミングで《グレイテスト・シーザー》が来る。その意味を、彼女たちは知っている。特に、烏ヶ森の面々は。
「マナ武装5で《シーザー》は手札に加えるよ。そして、俺たちのターン!」
 《龍王武陣》のマナ武装は達成している。そのまま《グレイテスト・シーザー》は手札へと入る。
 そして、《エビデゴラス》で加算されたドローを経て、一騎たちのターンが訪れる。
「《氷牙フランツⅠ世》を召喚。1マナで《ハルカス・ドロー》を唱えてドロー、さらに2マナでリサイクル。もう一度《ハルカス・ドロー》だよ」
 ここでドローを連打する一騎。しかし、二回のドローで、彼は呻く。
「念のために《エビデゴラス》も龍解させたかったけど、無理っぽいな……まあいいや」
 あと一枚、追加のドローができない。もう一枚引ければ《エビデゴラス》が龍解するのだが、その一枚が足りない。
 しかし、それはあくまで保険だ。ないならないで、問題はない。
 既に勝負を決める切り札は、手中に収められている。
「これで俺の場には、ナイトの《フランツ》と、ファンキー・“ナイト”メアを持つ《ポーク・ビーフ》がいる。この二体のナイトを進化元にして、進化V!」
 種族には、種族カテゴリという概念がある。
 アウトレイジMAXもアウトレイジと、ゴッド・ノヴァもゴッドと、リキッド・ピープル閃もリキッド・ピープルと扱われるように、種族の種族名が、他の種族の中に含まれていれば、同一の種族という扱いになるのだ。
 つまり、ジャイアント・インセクトもジャイアントであり、ゲル・フィッシュもフィッシュになり——ファンキー・“ナイト”メアも、ナイトとなる。
 ナイトの《フランツ》と“ナイト”メアの《ポーク・ビーフ》。種族カテゴリにおいてナイトとして扱われる二体のクリーチャーを種にして、最凶最悪のナイトが姿を現した。

「これで決めるよ——《暗黒皇グレイテスト・シーザー》!」

「あー……終わり、かしらね。流石に」
「シールドなしであいつを止められると思うか?」
「無理ね」
「あきらめちゃいますかっ!?」
「いやまあ、仕方ないでしょう、これは……」
 アタッカーは《グレイテスト・シーザー》一体だが、一騎たちの墓地と、自分たちの場を見れば、なにが起こるのかは明白だ。
 期待できるのは、精々プレミ程度だ。
「ゲームセットだよ! 《グレイテスト・シーザー》で攻撃する時、能力発動! 墓地から《超次元ボルシャック・ホール》を唱えるよ!」
 墓地から放たれたのは、超次元の扉を開く火の呪文。《ボルシャック・ホール》。
 呪文選びにミスはない。プレミがあるとすれば、ここからだが、
「まずはパワー3000以下の《マクスヴァル》を破壊! 続けて超次元ゾーンから《勝利のプリンプリン》をバトルゾーンに! 能力でもう一体の《マクスヴァル》を拘束!」
「……生姜だったら、《ハンゾウ》ですりおろしてたんだけどねぇ」
 残念ながら、もうプレミはなかった。
 《ボルシャック・ホール》の火力で一体目の《マクスヴァル》を仕留め、超次元ゾーンから出て来た《プリンプリン》で二体目の《マクスヴァル》の行動を封じる。
 これで、少なくともこのターンにおいては、二体のブロッカーを処理されたことと同義。つまり、シールドのないプレイヤーへの道が開けているのだ。
「……《ハンゾウ》がいても止まらないわね、これじゃ」
 沙弓は諦めて目を閉じる。
 そして、とどめの一撃が、放たれた——

「《暗黒皇グレイテスト・シーザー》で、ダイレクトアタックだ——!」