二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿1日目 「花園へ至る道の防衛線13」 ( No.434 )
日時: 2016/08/24 12:51
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

「私のターン! 呪文《ネクスト・チャージャー》だよ! 手札の入れ替えはしないで、ターン終了!」
「俺のターン。呪文《フェアリーの火の子祭》を唱えるよ。山札の上から二枚を見て、《イフリート・ハンド》をマナに置く。火のカードがマナに置かれたから、《火の子祭》を手札に戻すよ。ターン終了だ」
 暁と一騎の対戦。
 お互いにシールドは五枚。まだ準備段階の二人は、動き始めたばかりで、場にはなにもない。どちらもマナを伸ばすだけだ。
「マナチャージ! そして5マナ! 《熱血龍 バクアドルガン》を召喚だよ!」
 先んじたのは、先攻を取った暁だった。火文明が多く抱える3コストのチャージャー呪文から、5コストの《バクアドルガン》へと繋ぐ流れ。暁の常套パターンだ。
「よーし、先手必勝! 《バクアドルガン》はスピードアタッカーだから、すぐに攻撃するよ! その時、《バクアドルガン》の能力発動! 山札の一番上をめくって、ドラゴンなら手札に!」
 攻めつつ手札補充ができる《バクアドルガン》は本当に便利だ。火文明の弱点である手札の枯渇しやすさを解消でき、スピードアタッカーを持つため速効性もある。前半のビートダウンから後半の一押しまで、地味ながらも暁のデッキを支えるクリーチャーだ。
 その能力で、山札の一番上を公開する暁。捲られたのは、《爆竜 バトラッシュ・ナックル》だった。
「めくれたのは《バトラッシュ・ナックル》! ドラゴンだから手札に加えるよ! そして、シールドをブレイク!」
「トリガーは……ないよ」
「じゃあターン終了!」
 早速シールドを割られた一騎。互いに殴るデッキなため、先手を取られるということが持つ意味は決して小さくない。
 しかし、一騎にはカードパワーがずば抜けたドラグハートがある。マナさえ溜まれば、手札次第ではいくらでも巻き返しを図れるため、一枚や二枚くらいなら、シールドをブレイクされても手札補充感覚でいることができる。
 問題は、一枚や二枚程度のブレイクが、いつまで続くか、だが。
「俺のターン……うーん」
 手札を見て、唸る一騎。
 このターンは、マナチャージして5マナ。しかし手札には、5コストで使えるカードがない。いや、あるにはある。このターン引いた《爆熱血 ロイヤル・アイラ》や、前のターンに引いた《勇愛の天秤》が。
(手札は決していいとは言えないけど、マナが溜まれば強いからなぁ。残しておきたい気はあるけど、どうかな……)
 一騎が取れる選択肢は、《ロイヤル・アイラ》を出して手札を交換するか、《フェアリーの火の子祭》でマナを伸ばすかだ。
(《勇愛の天秤》もあるし、《ロイヤル・アイラ》よりも《火の子祭》で加速を優先させた方がいいかな……あ、でも)
 ふと、一騎は思った。
 相手は暁だ。彼女のデッキについては、一騎も知っている。
(暁さんは《コッコ・ルピア》みたいなファイアー・バードでドラゴンをサポートしてくる。チャージャーで伸ばしてるから、出て来る可能性は低い気がするけど、場に残してドラゴンを連打されるときつい……一応除去札になるし、《勇愛の天秤》は持っとこうかな。それで、《勇愛の天秤》をキープするなら、余ったマナで使うことになるだろうから……)
 暁の行動を予測しつつ、そこから逆算して、一騎はこのターンの手を決める。
「3マナでもう一度、《フェアリーの火の子祭》を唱えるよ!」
 一騎が選んだのは加速。このターンは動きづらいとはいえ、《ロイヤル・アイラ》で入れ替えるほど手札は悪くない。除去札として《勇愛に天秤》を唱えることを考慮しキープするなら、マナが余りやすいように増やしておく必要もあったので、《火の子祭》を唱える。
 山札の上から二枚を見る。捲られたのは、《次元龍覇 グレンモルト「覇」》と《焦土と開拓の天変》。
「《焦土と開拓の天変》をマナに置くよ。火のカードがマナに置かれたから、《火の子祭》を手札に戻す」
「その連続ブースト、やっぱり強いなぁ……」
「俺はターン終了だよ」
 結局、一騎がこのターンにしたのはマナを伸ばすことだけだが、この後のターンのことも考えると、この一手にも大きな意味がある。手札に《火の子祭》がある限り、一騎のマナはいくらでも伸びる余地があるのだ。大量のマナがあれば、ドラグナーを筆頭に、一騎の強力なクリーチャーが大群となって襲い掛かってくる。そうなれば勝ち目は薄いだろう。
 しかしそれは、マナを多く溜めるために、相応の時間を費やさなければいけないということだ。暁のクリーチャーを無視して、悠長にマナを溜める余裕が、果たして一騎にあるのだろうか。
「んー、まあでも、《スコッチ・フィディック》とか出されなくてよかったかな。殴り返されやすくなる《龍王武陣 —闘魂モード—》がちょっと面倒だしね」
 暁の思考は完全に攻撃一本に絞られており、攻めの姿勢を崩さない。マナを溜められて辛いのなら、その隙を与えなければいいだけ。そのためには、とにかく攻め続けるのだ。
「クリーチャーも生き残ったし、このまま攻めるよ!」



 恋と浬の対戦。
 互いにシールドは五枚。
 恋の場にはなにもなく、空撃ちした《エンジェル・フェザー》と《ジャスティス・プラン》で手札補充をしている。
 一方、浬の場には《龍覇 メタルアベンジャー》と《龍波動空母 エビデゴラス》が並んでいる。序盤の《連唱 ハルカス・ドロー》で手札を整え、《ブレイン・チャージャー》から上手く6マナ域へと繋いでいる。
「この流れ、デジャヴ……あの人と同じことしても、メガネじゃ私には勝てない……」
「別に意識してるわけじゃねえよ。ただ、お前にはこれが効くだろうと思っているだけだ」
「ふぅん……あっそ」
 自分から振ったわりに、素っ気なく返す恋。この勝手さには神経を逆なでされる。
「私のターン……《音感の精霊龍 エメラルーダ》を召喚……手札とシールドを、交換……ターン終了」
 恋はまだ動かない。序盤で手札補充をしていたので、このシールドへの仕込みを含め、次のターンが怖いところだが、
「俺のターン……さて、攻めるか」
 浬はここで。攻めに出る。
「《理英雄 デカルトQ》を召喚! マナ武装7で、カードを五枚ドロー! さらに手札を一枚、シールドと入れ替える」
 前のターンの恋と同じように、手札とシールドのカードを入れ替える浬。しかしこの《デカルトQ》の目的は防御ではなく、攻撃だ。
「このドローで、俺はこのターン、カードを五枚以上引いたため、《エビデゴラス》の龍解条件成立! 龍解! 《最終龍理 Q.E.D.+》!」
「出た……理数系龍型置きドロソ……厄介……」
 《Q.E.D.+》はドローを加速させる《エビデゴラス》の上位能力を持つ。山札の上から五枚をサーチしたうえで追加ドローが可能なので、狙ったカードを引き入れやすいのだ。
 それだけなく、味方の水ドラゴンにアンブロッカブルも付与するため、恋の固めた守りもすり抜けられてしまう。
 そしてとどめのように龍回避の能力を持ち、除去耐性が異常に高いため、除去の弱い光では倒すことが困難だ。
 以上の理由から、恋にとっては非常に辛いクリーチャーであると言えるだろう。
「《Q.E.D.+》でWブレイクだ!」
「ここで殴る……? トリガー……なし」
 浬のデッキは水単色のコントロール。いつもなら盤面を制圧し、打点を揃えてから殴るところだが、今回は龍解してすぐに殴ってきた。
 トリガー警戒で、先に潰しておく魂胆かとも思ったが、狙ったのは《エメラルーダ》で入れ替えていないシールド。狙いが読めない。
「……まあ、いいか。私は、私のデュエマをするだけ……6マナ、呪文……」
 浬の考えが読めないが、恋は恋で、自分のやりかたを貫く。
 このターンでやっと6マナ溜まったので、遂にあの呪文を唱えられる。
「呪文……《ヘブンズ・ゲート》」
「来るか……!」
 遂に唱えられた、恋のキーカード。天国の門が開かれ、手札から二体のブロッカーが場に現れる。
「一体目……《蒼華の精霊龍 ラ・ローゼ・ブルエ》……そして二体目……《龍覇 エバーローズ》をバトルゾーンに……」
「《ラ・ローゼ・ブルエ》……それに、《エバーローズ》。ドラグナーが来るってことは……!」
「《エバーローズ》の能力発動……コスト4以下の光のドラグハートを呼び出す……来て」
 天国の門から現れた二体のブロッカー。《ラ・ローゼ・ブルエ》は厄介だが、それ以上に浬にとって辛いのは、《エバーローズ》だった。
 より正確に言うならば、《エバーローズ》が呼び出すだろう、光の武器だ。
 浬の予想を裏切ることなく、恋は一本の完璧な槍を、《エバーローズ》に持たせた。

「——《不滅槍 パーフェクト》……《エバーローズ》に装備」