二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿1日目 「花園へ至る道の防衛線15」 ( No.436 )
- 日時: 2016/08/24 20:50
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
《怒英雄 ガイムソウ》の能力で《撃英雄 ガイゲンスイ》が現れた。二体の英雄が並ぶ様は見事だが、それどころではない。
このタイミングで《ガイゲンスイ》の登場は、非常にまずい。
「《ガイゲンスイ》もマナ武装7を発動! 私のクリーチャー全部のパワーは+7000! シールドブレイクの数も一枚増えるよ! そして、《ガイゲンスイ》はスピードアタッカー!」
「即座に三打点生成で、ダイレクトアタックの圏内か……トリガーに賭けるしかないね」
《ドラゴ大王》や《Gメビウス》よりもマシではあるが、それでもキルルートに入っている。トリガーが来ることを祈らなければいけないという状況は、辛いものがあった。
「さぁ、決めるよ! 《ガイゲンスイ》でTブレイク!」
まずはじめに、《ガイゲンスイ》がシールドを三枚叩き割る。
一枚、二枚とシールドが割られていき、三枚目を捲る一騎。
「S・トリガー! 《天守閣 龍王武陣》!」
なんとかS・トリガーを引くことはできた。
一騎のデッキは、マナ加速からドラグナーを投げて、ドラグハートやマナ武装のカードパワーを叩きつけるデッキなので、基本的に防御はトリガーしか考えていない。それでも重要なカードは案外少なく設定されたデッキなので、あまり気味な枠の多くをトリガーに費やし、防御力を向上させている。《テイン》や《レーヴァテイン》を入れている時なら、それに合わせたデッキの調整が必要で、いつも以上にトリガーが減るのだが、今はそれらのカードはない。なので、その枠をトリガーやメタカードに費やすことができていることも大きい。
ともあれトリガーを引くことができた一騎だが、出て来たトリガーは、あまり都合の良いものではない。
「不確定火力の《龍王武陣》かぁ……不安だな」
《天守閣 龍王武陣》は、マナ武装を達成すれば、火力に加え、火文明では貴重な手札補充もできるため、除去とサーチを同時にこなす器用なトリガー呪文になる。その挙動はさしずめ、赤単の《ドンドン吸い込むナウ》と言ったところか。
しかし、火文明である特色が、ここでは足を引っ張る。
「とりあえず、山札を五枚捲るよ。その中の火のクリーチャー以下のパワーの相手クリーチャーを破壊するけど……」
火力が不安定だ。
元々火文明は、闇文明と比べると除去が弱い。破壊という点では共通するが、闇が条件なしの確定除去を放つのに対し、火文明はパワーやコストの制限があり、破壊できる範囲が決まっている。強制バトルも、そのクリーチャーのパワー以下のクリーチャーしか破壊できないので、火力の一種と言えるだろう。
ただでさえ破壊できるラインが決まっているというのに、《龍王武陣》はその範囲が不安定だ。とりあえず巨大なクリーチャーを入れれば、確定除去に近い火力をぶち込むことは可能だが、そんな大型ばかりをデッキに入れないだろう。そもそも、デュエマはパワーよりも能力重視だ。この呪文のために、能力を捨てた《グラディアン・レッド・ドラゴン》や、打点まで放棄した《激竜王》を入れることなんてあり得ない。
要するに、捲れるカードで生死が決まってしまうので、不安なのだ。
《バクアドルガン》のパワーは4000。《ロイヤル・アイラ》や《マッカラン・ボナパルト》では倒せないが、《スコッチ・フィディック》や《グレンモルト》の除去圏内に入っている。そう考えると、わりと簡単に当たりそうではあるが、残念ながらそうはいかない。
「《ガイゲンスイ》のマナ武装7で、私のクリーチャーはすべて、パワーが7000プラスされてますからね! だから《バクアドルガン》のパワーも11000に跳ね上がってる! そう簡単には破壊できませんよっ!」
そうなのだ。
ここで暁が、《ドラゴ大王》などではなく、《ガイゲンスイ》を出してきたことが効いてくる。
《ガイゲンスイ》のマナ武装7は、1ターン限りの強化だが、それは味方全体に効果が及ぶ。そのため、ドラゴンにしては貧弱な《バクアドルガン》も、今ではパワー11000のWブレイカーに早変わり。このパワーを超えるクリーチャーは、一騎のメインデッキでは一体しかいない。それを引かなくては、《バクアドルガン》は止められない。
「信じるしかないよなぁ……とりあえず、引くよ」
恐る恐る、一騎はカードを捲っていく。
龍の刻印によって、光龍の扉が開かれる。
《ヘブンズ・ゲート》ではなかったが、数が二体ではなく一体というだけで、ブロッカーを展開される事実は変わらなかった。
「正直、天門の方がよかった……抜こうかな、これ……」
「活躍できる時に、カードに対してそんなこと言うのはやめろよ……」
「……とりあえず、効果……コスト7以下の光のドラゴン……《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》をバトルゾーンへ……」
現れたのは、恋の相棒的精霊龍、《ヴァルハラナイツ》。
非難されたトリガーから出て来るクリーチャーとしては、十分すぎる。
「くっ、面倒な奴が……!」
「《デコイ》はいない、《ソウルガルド》は仕事した……《ヴァルハラナイツ》の能力で、《Q.E.D.+》をフリーズ……」
《ヴァルハラナイツ》のフリーズ能力が、《Q.E.D.+》を封じ込める。《デコイ》がいればそちらに誘導できたのだが、直前の《ソウルガルド》にキッチリと始末されてしまっている。
これで浬の攻撃は終了。《Q.E.D.+》は長い眠りにつかされ、相手には大型クリーチャーも並んだ。《デカルトQ》の攻撃は余計だったと反省しなければならないが、
「ターン終了時、俺はこのターンに水のカードを三枚使用したので、《エビデンス》の龍解条件成立! 龍解! 《龍素王 Q.E.D.》!」
このターンの終わりに《エビデンス》が龍解し、《Q.E.D.》が現れる。盤面では、まだ負けていない。
とはいえ、大型が数体程度では、恋は止められない。なによりもここは、《ヴァルハラナイツ》の登場を許してしまったことが、痛手となっている。
「止める……《聖龍の翼 コッコルア》と、《制御の翼 オリオティス》二体を召喚……《ヴァルハラナイツ》の能力で、《デカルトQ》と《Q.E.D.》、ついでに《メタルアベンジャー》をフリーズ……」
「ちぃ、やはり《ヴァルハラナイツ》は厄介だな……!」
小型を並べ、恋は浬の大型ドラゴンの動きを封じていく。
これでメインアタッカーの動きはほぼ封じられた。しかし、完全に止められたわけではない。
《Q.E.D.+》は一度場から離せば、龍回避でフォートレスに戻り、再龍解することでフリーズを解くことができる。
《Q.E.D.》も、身動きは取れずとも、ノーコストで水のカードを使う能力は行使できる。
これらの能力を駆使した逆転が、恋にとっては懸念材料だった。
しばし考え込む恋。
やがて、彼女は決断する——
「……決める」
——ここで、攻撃に転じることを。
「《ヴァルハラナイツ》でWブレイク……」
「っ、来るか……!」
浬が攻めている場面であったが、恋も《ヘブンズ・ゲート》やトリガーでクリーチャーをかなり展開しており、アタッカーが多く並んでいる。
《エメラルーダ》《エバーローズ》《ラ・ローゼ・ブルエ》《ソウルガルド》《バルハラナイツ》と、五体のアタッカーのうち、Wブレイカーが三体、除去耐性持ちが一体と、勝負をつけられるだけの戦力は揃っている。
浬のシールドは《ソウルガルド》で増やされて六枚だが、問題ない。打点は十分に足りている。
「次……《ソウルガルド》でWブレイク……」
「トリガーはなし、だな」
加えて恋は、この攻撃で同時に防御も行っていた。
《ラ・ローゼ・ブルエ》の能力で、恋のドラゴンが攻撃するたびにシールドが増える。よって、攻撃しながらも守りを固めることで、仮に《クロック》などで防がれても、次のターンを耐えられるようになるのだ。
「これでシールドはなくなる……《ラ・ローゼ・ブルエ》でWブレイク……」
ここまでで、浬のトリガーはゼロ。《ラ・ローゼ・ブルエ》のブレイクで、シールドがすべて砕かれる。
しかし、最後に破ったシールドは、浬が《デカルトQ》で入れ替えたシールドだ。
つまり——
「S・トリガー! 《幾何学艦隊ピタゴラス》!」
——S・トリガーが仕込まれている。
《デカルトQ》は五枚のドローの後にシールド交換ができるため、かなり高い確率で、引き入れたトリガーをシールドに埋めることができる。自身もブロッカーなので、何気に防御力の高いクリーチャーなのだ。
本当なら《スパイラル・ハリケーン》が欲しかったところだが、この場合は仕方ない。とりあえず、マナ武装で強化された《ピタゴラス》を放つ。
「《エバーローズ》は《パーフェクト》のせいで除去できないな……《エメラルーダ》と《コッコルア》をバウンスだ」
しかしこの場合、どんなトリガーを引いてもあまり意味はない。
というのも、《エバーローズ》の存在があるからだ。《パーフェクト》を装備した《エバーローズ》は、破壊以外の除去を受け付けない。バウンスも効かないので、《ピタゴラス》だろうと《スパイラル・ハリケーン》だろうと、止まらないのだ。
「……なら、これで終わり」
恋が《エバーローズ》に手をかける。
「《龍覇 エバーローズ》で、ダイレクトアタック……」