二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿1日目 「花園へ至る道の防衛線16」 ( No.437 )
日時: 2016/08/24 23:11
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

 山札を一枚ずつ捲っていく一騎。そして、捲れたのは、

 一枚目《焦土と開拓の天変》
 二枚目《イフリート・ハンド》
 三枚目《爆砕面 ジョニーウォーカー》
 四枚目《英雄奥義 バーニング・銀河》
 五枚目《暴龍事変 ガイグレン》

「あ……よかった、来た……! 《ガイグレン》を選択! 《ガイグレン》のパワーは11000だから、それ以下のパワーを持つ《バクアドルガン》を破壊だ!」
「う……と、止められちゃった……」
「さらにマナ武装5で《ガイグレン》は手札に加えるよ」
 暁としても、火力で焼かれるとは思っていなかったのだろう。悔しそうに口をつぐんでいる。
「でも、一騎さんのマナは次のターンでも8マナだから、《ガイグレン》は出せないよね。ターン終了時に、《ガイムソウ》の能力で出た《ガイゲンスイ》は手札に戻るよ」
 ここでまた問題が発生する。
 ターン終了時《ガイムソウ》の能力で踏み倒された《ガイゲンスイ》は手札に戻るのだ。
 一騎のシールドはゼロなので、これで次のターン、暁はスピードアタッカーの《ガイゲンスイ》でとどめを刺せるようになってしまった。
「覚悟してください、一騎さん! 一騎さんを倒して、私は女風呂を覗きに行く!」
「くっ……君に、そんなことをさせるわけにはいかない……! 俺のターン!」
 勝利を宣言する暁に対し、気丈な一騎だが、状況は厳しい。
 《ガイムソウ》を処理しても《ガイゲンスイ》が手札にある。一騎の手札にブロッカーはいない、ハンデスも積んでいない。ランデスしても《ガイゲンスイ》の召喚は止められない。
 つまり、一騎は次のターンの《ガイゲンスイ》を止める手立てがない。
(……それなら、俺が取れる行動は一つだけか)
 このターンに殴り切る。一騎の勝ち筋は、これ一つだろう。
 場には《マッカラン・ボナパルト》と《ロイヤル・アイラ》。三打点あるため、あと三打点でギリギリ暁のシールドを割り切り、とどめを刺せる打点が揃う。
 トリガーはこの際考慮しない。そうなると問題は、どうやってその打点を揃えるかだ。
(手札に《グレンモルト「覇」》がいれば、《ガイハート》を装備して《ガイギンガ》への龍解を狙えたんだけど……)
 残念ながら今は手札にない。
 そこで一騎は再び逆算する。自分のこのデッキで、即座に三打点を確保することのできるカードはないか。
 しばし思案して、結論を出した。
「……あれしかないよね」
 幸いにも盤面は揃ってる。なので、あとは引けるかどうかだ。
 一縷の望みを託して、2マナをタップした。
「呪文《勇愛の天秤》! 手札を一枚捨てて、二枚ドロー!」
 ここで、温存しておいた《勇愛の天秤》が役に立つ。手札にないキーカードを引くためのドローソースが今は必要なのだが、もう一枚の《ロイヤル・アイラ》では繋がらない。
 どちらも手札交換カードだが、《ロイヤル・アイラ》は3マナ、《勇愛の天秤》は2マナ。一騎はこのターン2マナ使い、6マナ残った。
 一騎のデッキにおいて、6マナで出せるクリーチャーと言えば——
「あ……まさか!」
「そのまさかだよ! これを待ってた!」
 引いた二枚から目的のカードを抜き、6マナタップ。そして、
「《龍覇 グレンモルト》を召喚!」
 ドラグナーが現れた。
「《グレンモルト》に《銀河大剣 ガイハート》を装備だ!」
「う……ヤバいかも……」
 前のターンは一騎がトリガーを祈ったが、今度は暁がトリガーに頼る番だ。
 この時点で《ガイハート》を装備した《グレンモルト》、龍解前提の《ガイギンガ》、《マッカラン・ボナパルト》に《ロイヤル・アイラ》。合わせれば六打点。龍解できれば、一騎は押し切ることができる。
 龍解できれば、だが。
「行くよ! 《グレンモルト》でシールドをブレイク!」
「一枚目は、トリガーないです……」
「次だ! 《マッカラン・ボナパルト》でWブレイク!」
「うー……トリガー出ない……!」
 ここまでは順調だ。一騎のクリーチャーの二度目の攻撃が通り、《ガイハート》を装備した《グレンモルト》は生きている。
 龍解条件成立だ。
「《銀河大剣 ガイハート》、龍解!」
 ここが、最大の山場となる。

「——《熱血星龍 ガイギンガ》!」



「ニンジャ・ストライク7! 《斬隠オロチ》を召喚!」
 《エバーローズ》のダイレクトアタックが宣言された瞬間。このタイミングで、浬は手札のカードを場に繰り出した。
「《オロチ》……でも、それじゃ《エバーローズ》は処理できない……」
 《オロチ》は攻撃中のクリーチャーを山札に戻し、攻撃をキャンセルすることで相手の攻撃を止められる。しかし破壊以外では除去できない《エバーローズ》に、その方法は効かない。
 そのため浬は、もう一つの防御手段を取るしかない。
「ここからは、かなりの賭けだな……来てくれよ」
 今まで堀り進んだ山札の枚数。このデッキの非進化クリーチャーと呪文の割合。諸々を計算しても、捲れる確率は低い。しかし、低確率でも、当たらないわけではない。シールドはゼロなので、盾落ちの可能性はゼロ。ならば、ここで引ける可能性は存在している。
 可能性があれば、出て来るのだ。
「俺の《メタルアベンジャー》を山札に送還。そして、山札を捲るぞ……」
 浬は一枚一枚、慎重に山札を捲っていく。
 そして、
「《アクア呪文師 スペルビー》をバトルゾーンに! 《エバーローズ》の攻撃をブロックだ!」
 間一髪、《エバーローズ》の攻撃を《スペルビー》で防ぎ、九死に一生を得る浬。
 《オロチ》を使ったもう一つの防御方法。それはブロッカーを出すこと。自分の他のクリーチャーを山札のブロッカーに変換することで、攻撃を止める方法だ。
 しかし、この方法はあまりに運任せで、都合よくブロッカーが出るとは限らないので、相手に使うことが多いのだが。また、ブロッカーでなくとも、登場時の能力で除去を放ったり、《クロック》のようにターンをスキップするようなクリーチャーを出しても、攻撃は止められる。やはり運任せだが。
 このターンで攻めきるつもりだった恋だが、攻撃を止められてしまった。しかし、それでも彼女の有利は変わらない。
「……まあ、いい。ターン終了時、私のバトルゾーンにクリーチャーが五体以上……《パーフェクト》の龍解条件成立」
 ターン終了時、場に展開されたクリーチャーの数を数えるまでもなく、《パーフェクト》が龍解する。

「龍解……《天命王 エバーラスト》」

 《エバーラスト》が現れた。大型ブロッカーが増えただけなく、攻撃できないブロッカーはアタッカーになり、恋のドラゴンは破壊以外の方法で除去できない。しかも、《ヴァルハラナイツ》が軒並みクリーチャーを寝かせ、《ラ・ローゼ・ブルエ》がシールドを三枚まで回復させている。
 こうなってしまっては、浬の反撃はかなり困難だ。
「俺のターン……まずは《Q.E.D.+》の能力で、山札を五枚見るぞ」
 浬はひとまず《Q.E.D.+》の能力で山札を操作する。五枚のカードをジッと見つめる浬。やがて、その中から一枚を抜き取ってトップへ、残りをボトムへと戻した。
「追加ドロー、そして通常ドローだ」
 カードを二枚引くと、浬は静かに目を閉じた。
「山札の中身はああなってるはず、それなら外れは起きない。問題はそこからだが、残りの山札と手札状況からして、確率的には……」
 そして、ぶつぶつと呟きながら考え込む。
 浬の山札は度重なるドローで大きく減り、そこに《Q.E.D.+》の疑似サーチで山札が掘り進められ、すべてのカードが浬の目に触れている。つまり、今の浬は、どのカードがどのゾーンにあるかを、把握できる状態にあるのだ。
 自分のデッキ内容は勿論、今まで捲ってきたカードの種類、順番などを記憶していなければ無理な話だが、最初から山札が一周する前提で思考を巡らせておけば、不可能ではない。
 記憶を引き出すのに少々時間がかかったようだが、思考が終わったようで、浬は目を開いて顔を上げる。そして、宣言した。
「よし、このターンに決める」
「……できるものなら」
「やってやるさ。《Q.E.D.》の能力発動。各ターン一体目の水のクリーチャーをノーコストで召喚できる。《龍素記号IQ サイクロペディア》を召喚!」
 浬はQ.E.D.》の能力で《サイクロペディア》を踏み倒す。
「《サイクロペディア》の能力で二枚だけドロー。そして、続けてノーコストで水の呪文、《ヒラメキ・プログラム》を起動!」
 踏み倒された《サイクロペディア》のドローは任意、ドロー枚数も選択可能だが、引くのは二枚だけ。
 その直後、今度は呪文が《Q.E.D.》の力で唱えられる。唱えられるのは、《ヒラメキ・プログラム》。
「《ヒラメキ・プログラム》はサイキックをコストにできないが、ドラグハートは問題なく破壊できる。破壊するのは《Q.E.D.+》! 《Q.E.D.+》は龍回避でフォートレスに戻るが、《ヒラメキ・プログラム》の効果は続行。山札を捲り……来い!」
 《Q.E.D.+》はコスト7のクリーチャー。それをコストにヒラメくのは、コスト8のクリーチャー。
 浬のデッキで、コスト8のクリーチャー。それは——

「——《甲型龍帝式 キリコ3》!」