二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「月夜に二人は冥府を語る5」 ( No.443 )
日時: 2016/08/27 22:49
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

「《ガイラオウ》で攻撃はしないよ。ターン終了」
 沙弓に余計な手札を与えたくないからか、一騎は盤面を処理しただけでターンを終える。
「私のターン……マナチャージして、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を召喚! 《ガイハート》が怖いし、とりあえず後続のクリーチャーは止めさせてもらうわ」
 《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》がスレイヤーを付与するのは、闇のクリーチャーのみ。場にアタッカーが《アンタッチャブル》しかいないので、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を出しても《グレンモルト「覇」》が処理できない。場のクリーチャーを潰されたことがかなり響いている。
 手札に除去カードもない。一騎が《ガイラオウ》で殴らなかったのも、正解だったのかもしれなかった。
 結局、沙弓は後続のクリーチャーを止めることしかできず、《グレンモルト「覇」》と《ガイラオウ》を放置したまま、ターンを終える。
「《龍覇 グレンモルト》《龍覇 スコッチ・フィディック》を召喚! 《グレンモルト》に《ガイハート》を装備、《フィディック》の能力で《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》を設置!」
 一騎は前のターンのシールドブレイクで増えた手札から、一気にドラグナーを展開してくる。どちらも《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》でタップされるので、このターンの打点は増えないが、
「《グレンモルト「覇」》で攻撃! その時、《将龍剣 ガイアール》を装備! 《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》とバトルだ!」
「《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》の能力で、私の闇のクリーチャーはすべてスレイヤーだから、相打ちよ! ドラゴンが破壊されたから、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を墓地から回収!」
「まだだ! 《ガイラオウ》でシールドをWブレイク!」
 ここで、前のターンは殴らなかった《ガイラオウ》が攻撃してくる。その理由は明白だ。《ガイハート》を龍解させるためだろう。
 《ガイハート》の龍解条件は、自分のクリーチャーが二回攻撃することなので、《ガイハート》を装備した《グレンモルト》が動かなくても関係ない。一度目の攻撃は《グレンモルト「覇」》、そしてこの《ガイラオウ》が、二度目の攻撃を仕掛ける、龍解のためのトリガー。
 龍解されてもとどめを刺すための打点は揃わないが、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》が場にいない状況で《ガイギンガ》が現れるのは非常にまずい。こちらの速効性のなさが仇となり、対処しきれずに押し切られてしまうことは目に見えていた。
「くぅ、まだ……S・トリガー発動! 《魔狼月下城の咆哮》!」
「っ!」
「龍解はさせないわ! マナ武装5で《グレンモルト》を破壊!」
「……ターン終了」
 ギリギリのところでS・トリガーが出た。なんとか龍解直前で《ガイハート》を超次元ゾーンに送り返すことができたため、《ガイギンガ》に暴れられるという最悪の事態は防げた。
 しかし、問題はここからだ
「私のターン……」
 カードを引く沙弓。引いたのは、《デッド・リュウセイ》。
 沙弓は一騎の場と、自分の手札を交互に見ながら、思考を巡らせる。
(相手の場には《ガイラオウ》と《スコッチ・フィディック》。このターンに一体でも破壊しないと、《龍王武陣》が龍解して、打点を揃えられてしまうわね)
 《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》は、ターン初めに火のクリーチャーが二体以上いれば龍解する。龍解後の《ガイシュカク》はブロッカーを一度だけ貫通し、Wブレイカーと打点も十分あるので、こちらも脅威となり得るだろう。龍解されれば、残りシールド三枚の沙弓はトリガーに頼るしかなくなる。
(私の場には覚醒できない《アンタッチャブル》のみ。相手のシールドは二枚。《アンタッチャブル》を残したまま、二打点以上を残せれば、ほぼ私の勝ち……)
 問題は、二打点残すクリーチャーをなににするか。
 候補となり得るのは、常に手札にキープされる《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》と、先ほど引いた《デッド・リュウセイ》。
 《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を出せば、一騎の後続のクリーチャーが完全に止まる。今の盤面さえどうにかできれば、今度こそ完全に一騎を詰ませることができるだろう。次は、ロックを崩す隙も暇も与えず、とどめを刺せる。
 しかし問題は、今の盤面だ。完全にフィールドアドバンテージでは逆転されてしまっている。とにかく一騎のクリーチャーを一体でも処理しなければ、沙弓はとどめを刺されるだけの打点を揃えられてしまうので、次のターンの生存率を上げるためには《デッド・リュウセイ》で除去を撃つべきだろう。《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を出したら、S・トリガーが出ることを祈る必要が出て来る。
 どうするべきかと、沙弓はちらりと一騎の手札の枚数を見る。
(手札は一枚か……なにを握ってるのか分からないけど、マナを見る限り、《ガイグレン》や《グレンモルト》はたぶんない。次のターン、残り二枚の手札でどこまで巻き返されるかが問題ね。でも、場にいるのが《スコッチ・フィディック》だけなら、大抵のカードは大丈夫なはず……)
 一騎の手札が残り少ないこと、なにを引かれるなども考慮して、沙弓は考え、そして結論を出した。
(……決めた。《デッド・リュウセイ》を出しましょう。《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》で博打を打つより、ここは確実に盤面を処理して、時間を稼いでから、隙を見て《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》でロックをかけるのが最善手なはずよ。《デッド・リュウセイ》がいれば手札も増えて、それだけ対応しやすくなるしね)
 沙弓は安全な道を選んだ。《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》でロックをかける前に《グレンモルト》などを引かれると厳しいが、残り手札枚数からして、場の掃除に時間はかからない。すぐに《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を出す見込みがあるのなら、より確実な方を選ぶ。
 《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》の役割を考えても、それが最善なはずだ。
「8マナをタップ。《永遠の悪魔龍 デッド・リュウセイ》を召喚よ!」
「っ、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》じゃない……!?」
「《デッド・リュウセイ》の能力で《ガイラオウ》を破壊! そして一枚ドロー。ターン終了よ」
 これで、少なくともこのターンは《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》は龍解できない。場に残っているのも、《スコッチ・フィディック》のみ。
 このターンを上手く乗り切れれば、沙弓は《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》で一騎を詰みに近い形まで持っていくことができる。なのでこのターンの一騎のドロー、そして手札に残っているカードが、この勝負を決するだろう。
 ここが、分水嶺だ。
「マナチャージはなし。3マナで《爆熱血 ロイヤル・アイラ》を召喚するよ! マナ武装3で、手札を一枚墓地へ」
 手札から捨てられたのは、《フォーエバー・プリンセス》。墓地に置かれたので、《ロイヤル・アイラ》の能力に割り込んで、墓地のカードがすべて山札に戻っていった。
 そして、一騎はカードを二枚引く。
 ここでのドローは、沙弓にとってはあまり良くない。マナが多い一騎は、手札を確保できれば、1ターンにできることが多い。その手札が補給されてしまったので、盤面の処理により時間がかかってしまいそうだった。
 それに、それ以上に。
 この勝負を決めるカードを引きかねないのだ。
「——《次元龍覇 グレンモルト「覇」》を召喚!」
「また、いいタイミングで……!」
 ここで《グレンモルト「覇」》はこの上ない正解だ。攻撃時にマナ武装で《ガイハート》を装備すれば、《スコッチ・フィディック》の攻撃で龍解する。
 《グレンモルト「覇」》と《スコッチ・フィディック》だけで残りのシールドをすべて持って行かれるので、そこに《ガイギンガ》が出てくれば、もう対処できない。
 散々考えて《デッド・リュウセイ》を選択したが、結局、沙弓はS・トリガーに頼る結果になってしまった。
「《グレンモルト「覇」》で攻撃する時に、マナ武装7発動! コスト6以下のドラグハート・ウエポンを呼ぶよ!」
 一騎は迷いなく超次元ゾーンから一枚のカードを手に取った。
「呼ぶのは《銀河大剣 ガイハート》! 《グレンモルト「覇」》に装備だ! スピードアタッカーの付与は意味ないけど、Wブレイクだよ!」
 二枚のシールドがブレイクされる。一枚一枚シールドを捲っていくが、どちらにもトリガーはない。
「トリガーはないわ……」
 これで一回。
 もう一回の攻撃で龍解する。沙弓が止めるチャンスも、あと一回だ。
「続けて《フィディック》でもシールドブレイクだ!」
「! S・トリガー!」
「っ、まずい……!」
 最後のシールドから、トリガーが飛び出す。
 これで《グレンモルト「覇」》を破壊すれば、《ガイハート》の龍解は止められ、返しの沙弓のターンで殴り切れる。
 この対戦は、沙弓の勝ちで終わる——

「……《地獄門デス・ゲート》よ」

 ——と、いうわけにはいかなかった。
「タップされていないのは《ロイヤル・アイラ》だけね……一応、破壊するわ。墓地からコスト3未満の《ジェニー》を復活させるけど……」
 これでは、龍解は止められない。
 攻撃済みの《グレンモルト「覇」》を破壊できなければ、《ガイハート》を場から離さなければ、《ガイギンガ》の登場を許してしまう。しかし、《デス・ゲート》はタップされていないクリーチャーしか破壊できない。どうしたって、《グレンモルト「覇」》は破壊できないし、《ロイヤル・アイラ》しか破壊できないので、復活できるクリーチャーも限られる。復活させたクリーチャーで凌ぐこともできなかった。
「じゃあ……これで決まり、だね」
 一騎は、《グレンモルト「覇」》に装備した《ガイハート》を、ひっくり返した。
「龍解——《熱血星龍 ガイギンガ》!」
 沙弓のシールドはゼロ。ブロッカーもいない。
 この一撃を止める手立ては、持っていなかった。

「《熱血星龍 ガイギンガ》で、ダイレクトアタック!」