二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て6」 ( No.450 )
日時: 2016/08/30 14:21
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

「まともな運用方法じゃなかったが、やっぱエクストラターンは強烈だな」
 対戦が終わり、カードを一旦片付けてモノポリーへと戻るミシェルと沙弓。軽く雑談しながらゲームを進める中で、今の話題は先の対戦のことだった。
「そうねぇ、結局トリガー二枚でも押し切られちゃった。《バルガゲイザー》からの《ボルバルザーク》に、《刃隠・ドラゴン》からの《フレミングジェット》とは、運がよかったわね、シェリー」
「そのトリガー二枚で保険の《刃隠・ドラゴン》を使わせたうえに、最速じゃないとはいえ先攻6ターン目に一積みのキクチパトロール決めたお前はどうなんだと言いたいんだが」
 結果としてはどちらも運が良かったが、エクストラターンの膨大なアドバンテージが決め手となったか。
 加えて、ミシェルの挿した《グレンマル》も、働きとしては十分に活躍した。
「じゃあ、私が負けたから、シェリーには800万デュ円を贈呈するわ」
「800万をトップから取れたのはデカいな」
 初っ端から二億デュ円の資産を持つ沙弓との差はまだあるが、着実にその差は詰まってきている。現在二位のミシェルが沙弓に追いつくのも、時間の問題かもしれなかった。



「次は……2か。あ、カードショップマスだ」
「ちょっと待ちなさい、暁。その私の土地は通過するだけで徴収よ。100万デュ円」
「えぇー……わかったよ。うぅ、お金少ないのに」
「だったら節約すればいいじゃない」
「対戦で負け続けてるから、節約しても動きづらくなるだけだろ」
「じゃあカードを買えばいいじゃない」
「そのカードを買う金がないんだろ。節制ではないが、ここは土地を購入したり、不動産を買収したりして、地道に金額を上積みしていくのが吉——」
「いいや! 私はデュエリスト、デュエマで稼ぐよ! カードを買う!」
「……こいつは馬鹿か」
「まあまあ。これが暁さんのやり方なんだよ」
「残りデュ円が初期資産の三分の一を切っても、ですか?」
「う、うーん……うん、たぶん……」
 金がないから土地もカードも買えず、土地が買えないから金が増えない、カードが買えないから対戦に勝てず金が増えない。モノポリーならではの悪循環だ。どこかでボーナスマスに止まるなり、残った土地を買うなりして、金を稼がなくては、暁は厳しい状況となっている。
「——『道端で小太りの中年おじさんからお小遣いとして1000万デュ円を貰った』……あ、やりました。お金がふえましたっ」
「あ、いいなー。私もそのマス止まりたい、お金が欲しい……」
「いや、怪しすぎるだろこのマス……犯罪臭がするぞ」
「金額高めなのが、モラルに反してそうですよねー」
「次はこいちゃんですね」
「ん」
 柚に続いて恋がルーレットを回す。指し示す数字は7。
 止まったマスは空護の土地。彼に300万デュ円ほど献上しなければならないが、もう一つ。
「……ん、同じマス、止まった……みこと」
 恋が美琴を見遣る。
 そう、ここには既に彼女が止まっていた。つまり、対戦勃発だ。
「日向さんね。日向さんのデッキって、確か」
「俺のだったよね」
 恋のデッキは、一騎の作った赤単速攻だ。旧式だが、速攻というコンセプトの性質上、デッキの総合力が低いこのゲームにおいて、かなりの強さとなっている。
「あきらのがよかったのに……ミシェルは許さない……」
「なんであたしなんだよ。ランダムに分配されたんだから仕方ないだろ」
「つきにぃの作ったデッキなんていらないのに……しかも速攻なんて、使いにくいし、面白くないし、捻りもない……」
「そこまで言うか……?」
 暁のデッキを引いたミシェルに妬みの視線を向けつつ、一騎のデッキを貶す恋。今日の彼女は非常に荒れていた。
「今の私のデッキで速攻は辛いけど、レギュレーション次第かしらね。えぇと……」
 美琴はレギュレーションが書いてある紙を引く。そこに書かれていたのは、
「『計略デュエル:個人戦』?」
「お、また結構面白いのが引けたわね。ナイスよ、美琴」
「沙弓が面白いというものにロクなものがない気がするんだけど……これは?」
 美琴が訝しむような、それでいて不安げな視線を沙弓に向けるが、沙弓は楽しそうだった。当事者じゃないからか、単純に対戦のレギュレーションそのものが面白いのか。どちらにせよ、嫌な気しかしないが。
 とりあえず、沙弓の口から今回のレギュレーションについて説明を受ける。
「『計略デュエル:個人戦』は、“計略デッキ”を用いたレギュレーションで、一対一の時の対戦方法ね」
「計略デッキ……?」
「ちょっと待っててね……これよ」
 沙弓がバッグから取り出したのは、一つのカードの束。枚数は普通のデッキ——四十枚ほどに見える。
「これが計略デッキ? これをどう使うの?」
「まず、基本ルールの説明をするわ。『計略デュエル』では、基本的に今現在の殿堂レギュレーションを参照する。デッキ枚数も四十枚、超次元ゾーンは八枚までよ」
「普通だな」
「で、対戦自体も普通のルールで進行するんだけど、ただ一つ違うのは、プレイヤーのデッキの他に、互いのプレイヤーが共有する計略デッキ存在すること」
 つまり、盤面に美琴のデッキ、恋のデッキ、そしてもう一つ、計略デッキと、三つのデッキがあるということか。
 しかし計略デッキは実質的に特殊な別ゾーン扱い。干渉は不可能らしい。
「計略デッキの使い方を説明するわ。互いのプレイヤーは自分のターンの始めに、計略デッキからカードを一枚引いて、それを強制的にプレイしなきゃいけないの」
「強制プレイ? クリーチャーなら絶対に召喚、呪文なら絶対に唱えないといけない、ということか?」
「そうなるわね。クロスギアの場合はジェネレートのみ、城は要塞化のみとなるわ」
 次に、計略デッキから捲られたカードについての説明。計略デッキ自体に干渉できないように、計略デッキから捲られるカードの干渉も、限定的になるようだ。
「計略デッキから捲られたカードは、計略デッキのゾーンとバトルゾーン以外から動かない。クリーチャーならバトルゾーンに出て、呪文は計略デッキに戻されるわ。クリーチャーも破壊されり手札に戻ったら、計略デッキ行きね」
「クリーチャーがいるなら、ビートダウンは有利そうだね。単純に頭数が増えるし」
「ところがどっこい、そうは問屋が卸さないわ。計略デッキから捲れるクリーチャーは、攻撃もブロックもできない。ダイヤモンド状態などの攻撃可能効果などは全部無効よ」
「つまり、場に出たらただのシステムクリーチャーとして置物になる……」
「そういうことね。あ、クロスギアはクロスもできないから、注意よ」
 ということは、計略デッキから捲れるカードは、自分の意志では動かせないということになる。
 ただ、クリーチャーや呪文の効果の対象にとって、場から離したり、詠唱を打ち消すことなどはできるようだが。
「さて、それじゃあ順番も一巡したようだし、美琴、れんちゃん、始めてちょうだい」
 沙弓に促されて、対戦準備を整える美琴と恋。
 恋の赤単速攻に対し、美琴のデッキは柚の作った緑単カチュアシュート。
 速度的にも色的にも、美琴は恋に対してはかなり不利だが、計略デッキから捲れるカード次第では、耐え切れる可能性はある。計略デッキから捲られるカードは攻撃もブロックもできないシステムクリーチャーとなれば、耐える動きをする美琴の方がやや有利だと思われる。
 なんにせよこの対戦。
 計略デッキが勝負を左右することになるだろう。