二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て7」 ( No.451 )
- 日時: 2016/08/30 22:10
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
『計略デュエル:個人戦』ルール
・基本的なレギュレーション、ルールは今現在のレギュレーション、ルールに沿う。これらに以下のルールを追加する。
・各プレイヤーのデッキとは別に、両プレイヤー共有の計略デッキ(四十枚)が存在する。計略デッキはカードの効果で干渉できない(ドロー、トップデック参照、山札操作、山札削りなどの対象にできない)。
・各プレイヤーはターンの始め(アンタップステップの直前、ターンの始めに発動するカードの効果よりも優先される)に計略デッキからカードを一枚引かなくてはならない。計略デッキからカードを引いたプレイヤーは、計略デッキから引いたカード(以下、計略カード)を使用(クリーチャーなら召喚、呪文なら詠唱、クロスギアならジェネレート、城なら要塞化)しなければならない。
・計略カードは攻撃、ブロックできない。「攻撃できない効果を無効にする」などの効果も受けない。また、クロスギアはクロスすることもできない。
・計略カードはバトルゾーンと計略デッキ以外に存在できない。これら以外のゾーンに計略カードが移動する時、計略カードは計略デッキの一番下に表向きで戻る。
・計略デッキのカードが一周した時、計略デッキに含まれるカードをすべて裏側にして、シャッフルする。
「先攻……まずは計略デッキからドロー……」
美琴と恋の計略デュエル。先攻を取ったのは恋。速攻なので先手は取らせたくなかったが、こればっかりはじゃんけんに負けた美琴が悪い。
恋は最初に計略デッキからカードを引く。
「……いらない。《真実の名 アカデミー・マスター》……」
恋が捲ったのは、手札から唱えた呪文を二連射する《アカデミー・マスター》。確かに、赤単速攻の恋では恩恵を受けにくいカードだろう。
「《勇気の爪 コルナゴ》をチャージ……《凶戦士ブレイズ・クロー》を召喚……」
「1コスのアタッカー……まあ、そう来るわよね」
赤単速攻の初動と言えば、《凶戦士ブレイズ・クロー》と《螺神兵ボロック》と決まっている。1コストのクリーチャーには《コルナゴ》も採用しているようだった。
デッキが分配された時点で、安定した強さを誇る恋のデッキは、改造する余地があまりない。ここまでカードをあまり購入していないところを見ても、恐らく無改造だろう。
だとすれば動きが読みやすい。なんとか耐え忍ぶことができれば、対応は十分に可能だろう。
「私のターン。最初に計略デッキからドロー……」
問題はその対応だ。いくら動きが読めても、速攻で倒されては意味がない。
緑単のカチュアシュートでは序盤の防御札などたかが知れている。ブロッカーもいないので、計略デッキから引くカードに祈るしかない。
そうして、美琴が引いたのは——
怨念怪人ギャスカ UC 闇文明 (1)
クリーチャー:デビルマスク 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の手札をすべて捨てる。
「……は?」
美琴が引いたのは、《怨念怪人ギャスカ》。
能力は、登場時に自分の手札をすべて捨てること。
「……はぁ!?」
美琴は後攻1ターン目に、手札をすべて失った。
「い、いきなりハンドゼロ……」
「これはついてないわね」
「だが、そうか。強制プレイっていうのは、“こういうことなんだな”」
ミシェルは気づいたようだ。
そう。この計略デッキは、なにもプレイヤーに恩恵を与えるだけではない。むしろ本質は逆だ。
とにかくプレイヤーを困らせる。プレイヤーにディスアドバンテージを負わせることで、場を動かす。良くも、悪くも。
普段なら使わないようなカード。使っても、タイミングを選ばなければ自分の首を絞めるカード。そういったカードが詰め込まれているのが、計略デッキだ。
だからこそ、捲ったカードはすべて、“強制的にプレイさせられる”。
「マナチャージして、ターン終了……」
「ラッキー、余裕かも……計略デッキからは……《ロスト・ソウル》」
「あぁ、どっちにしろ手札は全部落とされてたのね……」
いきなり手札をすべて叩き落とされたが、しかし美琴はそこまで絶望していなかった。
これは相手が良かった。速攻の恋なら、殴ることでこちらに手札を与えてくれる。手札がなくて身動きが取れないという事態は、辛うじて防げるかもしれない。
「意味ないけど、いいや……《JK軍曹チョキパン》召喚……じゃんけん」
「じゃ、じゃーんけーん」
ぽん、という掛け声で、二人は手を出す。
美琴はチョキ、恋はグーだ。
「私が勝ったから、《チョキパン》はスピードアタッカー……《チョキパン》でブレイク、《ブレイズ・クロー》でもブレイク……」
「トリガーはないわ……」
早速二枚のシールドが割られた。2ターン目に二枚のシールドをブレイク。恋は相当順調のようだ。
「計略デッキからドロー……!」
美琴のターン。さっきは絶大なディスアドバンテージを負わされた計略デッキ。次に捲れるカードは、
「! 《漆黒戦鬼デュランザメス》! 墓地のクリーチャーをすべて回収よ!」
自ら捨てたカードを再び手札に戻す、《デュランザメス》だった。
墓地の《フェアリー・ライフ》を除いて、四枚のカードが美琴の手札に帰ってくる。
「なんとか立て直せた……マナチャージして、2マナで《霞み妖精ジャスミン》を召喚! 破壊してマナを追加! ターン終了!」
実質的な1ハンデス。ディスアドであることに変わりはないが、オールハンデスよりよっぽどマシだ。
とりあえず、コンセプトに沿ってマナを増やす。最初から色々あったが、初動はきっちり決められた。
そして恋のターン。
「計略デッキからドロー……ん」
「どうしたの?」
「……《魔天降臨》」
恋が計略デッキから捲ったのは、《魔天降臨》。
互いのプレイヤーは、手札とマナのカードをすべて交換しなければならない。
「私の手札は二枚、マナも2マナ……変動なし……」
「だけど私のマナは5マナに増えたわ。ラッキーね」
3マナしかなかった美琴は、五枚の手札をすべてマナに変換し、一気にマナブーストしたことになる。
「結果的に意味のない挙動もあるが、随分とカードの動きが激しいな……」
「それが計略デッキの面白いところだからね。それに、計略デッキの奥深さはこれだけじゃないし、この対戦だけでもないわ」
「マナチャージして、《鬼切丸》を召喚……《ブレイズ・クロー》《チョキパン》《鬼切丸》でシールドをブレイク……」
恋は計略デッキなんて関係ないと言わんばかりに攻めたてる。3ターン目にはスピードアタッカーの《鬼切丸》。場の三体のクリーチャーで総攻撃を仕掛ける。
「……ラッキーだけど、普通にまずいわね……もうシールドがゼロに……」
序盤の防御は計略デッキに任せるつもりだったが、肝心の序盤はセルフハンデスからのセルフ回収という無意味なことをしていたので、まったく防御になっていない。
まあそもそも、なにが捲れるのか分からない計略デッキに身を委ねたことが悪いのだが。
「計略デッキからドロー……」
幸いなのは、恋の計略ドローも機能していないこと。恋は自らディスアドバンテージを負っていないが、代わりにアドバンテージも取っていない。
しかしこのドローで、なんとか盤面を覆すカードを引かなくては、普通に押し切られてしまう。そう思いつつ、美琴は計略デッキからカードを引く。
「! これは……」
引いたカードを見て、口元を綻ばせる美琴。
そうだ、こういうカードを待っていたんだ、と言わんばかりの微笑を見せ、そのカードを公開する。
「なかなかいいカードを引いたわ。《インビンシブル・オーラ》!」
インビンシブル・オーラ VR 光文明 (13)
呪文
自分の山札のカードを上から3枚まで、自分のシールドに加える。
捲られたのは、《インビンシブル》の名を冠する13マナの超巨大呪文、光文明の《インビンシブル・オーラ》だ。その効果は、シールドを三枚増やすこと。
インビンシブル呪文なだけあって豪快だが、13マナも払ってすることではない。勝利に直結する効果でもないため、今ではまず使われないカードだが、今の美琴の状況では、救世主のようなカードだ。
「《インビンシブル・オーラ》の効果で、シールドを三枚回復! さらに《古龍遺跡エウル=ブッカ》! 《鬼切丸》と《チョキパン》をマナゾーンへ!」
「む……凌がれた……」
シールドを三枚も復活させた上に、場のクリーチャーを二体取り払った。
恋の手札も切れつつあるため、これでもうしばらく時間を稼げるだろう。
「私のターン……計略ドロー」
ここから恋はどう動くのか。決まり切っている。赤単速攻なので、攻撃する以外に道はない。
しかしその道を、閉ざす者がいる。
「……《カビパン男》を召喚」
「そのクリーチャーは、確か……」
美琴が言う前に、恋は静かに場の《ブレイズ・クロー》を墓地に置いた。
「自分のクリーチャーを破壊した? どういうことっすか?」
「《カビパン男》は、バトルゾーンのクリーチャーすべてのパワーを1000マイナスして、クリーチャーが破壊されるたびに相手にさらにマイナスを押し付けるんだ」
この時、マイナスされる対象は相手クリーチャーだけではない。
自分のクリーチャーも含まれる。
「今のれんちゃんの場には《ブレイズ・クロー》のみ。そして、《ブレイズ・クロー》のパワーは1000」
「パワーが0になって、《ブレイズ・クロー》は破壊される……ターン終了……」
手札にあるカードもすべてパワー1000以下なのか、恋はなにも出せないようで、そのままターンを終了した。
これは美琴にとっては好機だ。恋のアタッカーは消え、攻め手も止まった。そしてなにより、このターンで7マナになる。
つまり、
「これで《カチュア》が出せる……!」
切り札たる《カチュア》さえ呼んでしまえば、あとはカードパワーを押し付けて勝てる。《カビパン男》がいい具合に恋の動きを止め、《インビンシブル・オーラ》で回復したシールドもあるため、押し切れるだろう。
「まずは計略デッキからドローね」
だがしかし、忘れてはならない。
序盤の美琴のように、計略デッキは恩恵以外のものももたらす、災厄と混沌の集合体であることを。
「っ! 《エクス・リボルバー・ドラゴン》……!?」
エクス・リボルバー・ドラゴン R 火文明 (9)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 9000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンからカードを3枚選び、それ以外を自分の墓地に置く。その後、相手は自分自身のマナゾーンからカードを3枚選び、それ以外を持ち主の墓地に置く。
W・ブレイカー
捲られた計略カードは、《エクス・リボルバー・ドラゴン》。登場時に互いのマナを3マナにするドラゴンだ。
このタイミングで捲れるカードとしては、美琴にとっては最悪なカードだった。
「マ、マナが……」
マナを3マナに減らされ、美琴は《カチュア》召喚まで遠のいた。
対する恋は速攻なので、3マナでも十分動ける。そもそも速攻デッキというものは、3マナ程度までしかマナを溜めないことも多いのだ。このランデスは、恋にとっては大した影響にはならないだろう。
つまり、美琴だけが一方的に大打撃を受けたようなものだ。
「くっ……《エコ・アイニー》を召喚! マナを追加して、ドラゴンの《ハコオシディーディ》だったからもう一枚追加! ターン終了!」
このターンに出せると思っていた《カチュア》の召喚は延期。仕方なく《エコ・アイニー》でマナ加速を継続する。
幸いにも、このターンに2マナ増やせたため、次のターンには7マナ。次のターンこそ、《カチュア》を出せそうだった。
恋の場には《カビパン男》がいるので、恋もクリーチャーを展開しづらくなっている。まだ、時間は稼げそうだ。
そう思っていたが、
「……ん、これは……」
「今度はなに……!?」
恋のターン。恋は計略ドローによって引いたカードを、不思議そうな目で見つめていた。
良いカードなのか、悪いカードなのか。アドバンテージになるカードなのか、ディスアドバンテージになるかーどなのか。
彼女はなにを引いたのか。今、公開される。
次の瞬間、恋の場が吹き飛んだ。
「——《殺戮の羅刹デス・クルーザー》」