二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て8」 ( No.452 )
- 日時: 2016/08/31 06:20
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
殺戮の羅刹デス・クルーザー SR 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド 13000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の他のクリーチャーをすべて破壊する。
T・ブレイカー
「《デス・クルーザー》能力……私の他のクリーチャーをすべて破壊」
「これは……!」
《殺戮の羅刹デス・クルーザー》。コスト7に対してパワー13000のTブレイカーと、コストパフォーマンス良好な大型デーモン・コマンドだが、この手の闇のクリーチャーには大抵、デメリットがある。
《デス・クルーザー》は登場時、自分の他のクリーチャーをすべて破壊する。それは本来ならば大きなデメリットとなり、展開したところに計略デッキから捲れようものなら、攻める手が止まってしまうだろう。
しかし、逆に。
攻める手を止めるクリーチャーを排除するためにも使えるのだ。
「邪魔なバイキンパンは消えた……《マッカラン》と《コルナゴ》を召喚……マナ武装3で《エコ・アイニー》とバトル、破壊……」
恋の展開を阻害していた《カビパン男》は、《デス・クルーザー》の能力に巻き込まれて破壊された。
自分にデメリットを及ぼすクリーチャーを、本来ならデメリットになる能力で排除する。これもまた、計略デッキの特徴だった。
「《デス・クルーザー》のデメリットを逆利用して、自分の害になるシステムクリーチャーを排除かぁ……運が絡むけど、思った以上に面白いね、計略デッキ」
「でしょう? 要するにタイミングなのよ、デメリットっていうのは。カードは全部、使い方次第」
もっとも、それでもどうしようもないカードも少なくないが。
なんにせよ恋は《カビパン男》を取り払い、《マッカラン》と《コルナゴ》を展開。再び攻めの姿勢を見せる。
「《カビパン男》は散ったけど、まだなんとかなるわ。私のターン……! 計略ドローは……」
このターン、美琴が計略デッキから引いたのは、《困惑の影トラブル・アルケミスト》。
登場時に、マナのカードをすべて手札に戻すクリーチャーだ。
「このタイミングで……! マナのカードをすべて手札に……!」
「黒月さん、かなり計略デッキに振り回されてるね……」
「これはこれで、見てて面白いけどね」
美琴はハンデス、ランデスを繰り返されて、ここまでまともに動けていない。
計略デッキの影響を受けながらも、自分の勝ち筋を通そうとする恋のようにはいかなかった。
「マナチャージだけして、ターン終了……」
「私のターン、計略ドロー……《スカイ・ジェット》をジェネレード」
「ここでスピードアタッカー付与のクロスギア……流石に美琴の負けかしら」
追い打ちをかけるようにジェネレートされた《スカイ・ジェット》。これで互いのプレイヤーのクリーチャーはすべてスピードアタッカーになるが、マナがない美琴はその恩恵をほとんど受けず、小型クリーチャーで殴りまくる恋は最大限の恩恵を受けられる。
「2マナで《斬斬人形コダマンマ》を召喚、シールドを一枚手札に……さらに2マナで《究極兵士ファルゲン》を召喚……」
二体のクリーチャーを追加で並べる恋。これらのクリーチャーはすべて《スカイ・ジェット》でスピードアタッカーなので、これで場には四打点。美琴のシールドは三枚なので、とどめを刺すまでの打点が揃った。
「《コルナゴ》でシールドをブレイク……」
「トリガーは……ないわ」
「《ファルゲン》、《コダマンマ》でブレイク……」
「……S・トリガー《古龍遺跡エウル=ブッカ》、《マッカラン》をマナゾーンへ……」
なんとかS・トリガーで凌ぐ美琴だが、状況は厳しい。
このターンを凌いでも、次のターンには2マナ。2マナで残った三体のアタッカーを処理することなどできないし、仮になんとかできたとしても、《スカイ・ジェット》があり、美琴のシールドはゼロなのだ。恋はなにかしらクリーチャーを引けばまず勝てる。
すべてはこの計略ドロー次第だが、多少シールドを増やそうと、場のクリーチャーを除去しようと、その場凌ぎにしかならない。このままではジリ貧だ。
ほとんど敗北を感じながら、美琴は計略デッキに手をかける。
「計略ドロー……あ」
すると、予想もしていないカードが引けた。
「どうしたの……?」
「……まだ、ワンチャンス……!」
そう小さく呟いてから、美琴は計略ドローの結果を実行する。
すべてのカードの使用を強制される計略デッキ。その影響力は凄まじく、絶えずアドバンテージ、ディスアドバンテージをふりまき、盤上やリソース、あらゆるゾーンに働きかけ、戦況を目まぐるしく移ろわせる。
そう、この対戦は、移ろい続けているのだ。
世界が、変わり続けている。
その変化が、最大となった。
「——《蒼神龍チェンジ・ザ・ワールド》」
蒼神龍チェンジ・ザ・ワールド SR 水文明 (7)
クリーチャー:ポセイディア・ドラゴン 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の手札の枚数を数えてからすべて捨てる。その後、自分のシールドをすべて手札に加える。(ただし、その「S・トリガー」能力は使えない) その後、こうして捨てた手札1枚につき、自分の山札の上から1枚ずつ、裏向きのままシールドに加える。
W・ブレイカー
計略デッキから現れたのは、変化をもたらす青いドラゴン。《蒼神龍チェンジ・ザ・ワールド》。
その登場時、目を見開く者もいた。
「このタイミングで《チェンジ・ザ・ワールド》か……!」
「なに? 《チェンジ・ザ・ワールド》ってなに?」
「えっとね、暁さん。《チェンジ・ザ・ワールド》は凄く複雑な能力を持ったクリーチャーなんだけど……」
「《チェンジ・ザ・ワールド》は、手札をすべて捨てて、シールドをすべて回収した後、捨てた手札の枚数分、シールドを復活できるクリーチャーだ。単純な枚数で言えば、手札の枚数がシールドに、シールドの枚数が手札になる」
「? どういうことっすか? よくわかんないすけど……」
「過程よりも結果だけを見た方が早いかしらね。この場合、重要なのは手札の枚数。その枚数が、そのままシールドの枚数に変換されるわ。今の美琴の手札は十三枚。つまり——」
美琴は、ガバッと、豪快にデッキのカードを掴み取る。
そしてそれらを、ずらりとシールドゾーンに並べた。
「——シールドを十三枚復活!」
《チェンジ・ザ・ワールド》は、結果だけを見れば、手札とシールドを入れ替える能力。手札が多ければシールドが増え、シールドが多ければ手札が増える。
たった一枚のカードでシールドが十三枚。加速したマナを《トラブル・アルケミスト》で回収させられ、手札を大量に抱えてしまった結果だ。
「だが、その代償として、あいつの手札はゼロだ。十三枚のシールドで、どこまで耐えられるか……」
「そもそも、デッキ枚数が危険だな。シールドが増えすぎて、残り四枚だ」
「デッキの残りが少ないから、マナも増やしにくいですね……」
問題は、そこだ。
《チェンジ・ザ・ワールド》は実際に手札とシールドを入れ替えているわけではなく、手札は捨てている。つまり、捨てた枚数が多いほど、デッキも多く消費してしまうのだ。
いくらシールドが多くとも、マナがなく、シールドゼロの状態で出たので、手札も失った。シールドだけで残りデッキが四枚。とても耐えられるような状態ではない。
ゆえにここから美琴が勝つには、やはり計略デッキに頼るしかないのだ。
「マナチャージだけして、ターン終了よ」
「私のターン……」
即座にとどめが刺されなくなったので、美琴はその分、計略デッキに頼るチャンスが増えた。
対して恋は、とどめを刺す機会を失ったが、
(……流石に殴らない方がいいかな……残り3ターン、計略デッキで変なことさえされなければ、LOで勝てるし……)
恋の負け筋はこの場合、計略ドローによる不確定要素。しかしこれは妨害しようがない。そもそも、赤単速攻に相手への妨害ができるわけがない。
計略デッキによる負け筋は常に付きまとうので、考慮しない。となればもう一つの負け筋は、増えた手札からの逆転。
今の美琴は、手札とマナ、両方のリソースが枯渇しており、シールドがあるだけだ。放置していれば、それらのリソースを十分に得ることができず、デッキが尽きる。
シールドを割って手札を増やしたり、変なトリガーを出されると困る。それなら、なにもせずに放置していたほうがいいはずだ。
「計略ドロー……」
そう、思っていたのだが。
恋は引いたカードを見て、ここまでで一番、困ったような呻き声を上げる。
「ん、ぅ……これ、嫌だ……」
はらりと、恋の手から零れ落ちる。
彼女の手を離れたカードが、バトルゾーンへと現れた。
「——《無双竜機ボルバルザーク》」