二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て12」 ( No.456 )
- 日時: 2016/09/05 04:04
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
「……! 《ドルゲドス》……!?」
歯噛みする美琴。ここでの《ドルゲドス》は、美琴としてはまずい。
美琴のシールドは残り一枚で、暁の場には《チェイサー》がいるのだ。即座に殴れる打点が出たということは、トリガーが出なければ押し切られるということ。
「《ドルゲドス》進化元は墓地の《ボーン・アミーゴ》だよ! 《チェイサー》で最後のシールドをブレイクだよ!」
「っ……S・トリガー発動!」
とはいえ、こういう場合も想定して、美琴は大量のトリガーを積んだのだ。
期待値は決して低くない。メタ読みして組んだデッキは、その読みに応えてくれる。
「《インディア・カレッチ》を召喚! 登場時、相手のコスト4以下のクリーチャーを破壊する! 破壊するのはコスト3の《ドルゲドス》よ!」
「うぐ……と、止められた……」
あともう一歩というところで、攻撃を止められてしまった暁。仕方なく、このターンは終了するしかない。
「《蝙蝠の面 トーブ》を召喚。さらに《エコ・アイニー》も召喚よ。マナを増やして、ドラゴンの《ジオブリード》が落ちたからもう一枚追加」
ブロッカーを出しつつ、マナをさらに伸ばしていく美琴。
この局面でブロッカーを出すことは、かなり重要だ。暁は手札がないが、美琴もシールドがない。美琴が怖いのは、スピードアタッカーによる奇襲だ。しかしそれは、ブロッカーが一体いるだけで届かなくなる。
非常に単純な手だが、デッキトップを投げるしかない今の暁には、かなり有効だ。
「《ヴィロプレトス》で《チェイサー》を攻撃よ」
「うぅ、《チェイサー》はバトルに負けて墓地に……」
「さらに《ジオブリード》で《チョイノリ》のシールドをブレイク。シールド・ゴーされたシールドだから、そのまま墓地へ」
タップする以外は損をしないので、ついでのようにシールド・ゴーされたシールドを割る美琴。タップされていても、暁が殴り返しに来るとは思えないが。仮に殴り返しに来ても、特に問題はない。
「……3マナで呪文《メテオ・チャージャー》! ブロッカーの《トーブ》を破壊!」
「《トーブ》は墓地に行く代わりにマナへ行くわ」
ブロッカーは即座に破壊されてしまったが、《トーブ》は破壊されても無駄にはならない。マナとしてリソースに還元される。
そのお陰で、美琴はこのターンで13マナだ。
「6マナで《長鼻類 マンモスドン》を召喚よ。さらに7マナ《龍素記号St フラスコビーカ》も召喚。ターン終了」
「これ、やば……」
美琴の場には、《ジオブリード》《ヴィロプレトス》《インディア・カレッチ》《エコ・アイニー》《マンモスドン》《フラスコビーカ》の六体。うちアタッカーは五体で、その中にWブレイカーが二体。
暁にとどめを刺す打点が揃ってしまった。加えてまたブロッカーが出て来てしまった。
打点は七もあり、打点を削ることは難しい。スピードアタッカーで奇襲もできない。ここで暁は、完全に逆転されてしまった。
「《拳撃と混乱のアシスト》を使うよ。パワー3000以下の《インディア・カレッチ》を破壊……ターン終了」
このターンに引いて来たのは、火力とハンデスを同時に撃てる《拳撃と混乱のアシスト》。しかし、Wブレイカーの二体を倒すことはできず、一打点しか削れなかった。
まだ美琴には、暁にとどめを刺すだけの打点が残っている。
「さぁ、そろそろ攻撃に移るわよ。《ヴィロプレトス》でWブレイク!」
「う……トリガーはないよ」
「《マンモスドン》でWブレイク!」
あっという間に暁のシールドは残り一枚まで削られた。ここまででトリガーはゼロ。
低コストかつ火と闇のアタッカーをつぎ込んだ暁のデッキには、そもそもトリガーが多くない。初期デッキに入っていたトリガーも《デーモン・ハンド》くらいで、それもこのレギュレーションでは入れられなかった。
「《エコ・アイニー》で最後のシールドをブレイク!」
そう、暁は最初からトリガーをあまり積むことができなかったのだ。コントロールがまるで使えなかったということの方が大きいが、その防御の薄さを補う意味もあり、彼女は速攻に近いビートダウンを選んだ。
だが、しかし、
「……!」
だからといって、S・トリガーをまったく積んでいないわけではない。
「S・トリガー《奈落のニャンコ・ハンド》! コスト6以下の《ジオブリード》を破壊!」
「止められた……! くっ、ターン終了よ」
美琴も、暁のデッキにトリガーは少ない、もしくはまったく積んでいないだろうと踏んでいた。初期デッキのトリガー数を美琴は把握していたし、ここまで暁のトリガーも見えていない。速攻気味なビートダウンというデッキの性質から、そのように予想していた。そのため、追加の打点を並べず殴ったが、結果としては止められてしまった。
こうなると、少々まずいかもしれない。手札が増えたことで、スピードアタッカーによる奇襲が怖くなる。場にはブロッカーの《フラスコビーカ》がいるとはいえ、増えた手札でそれも除去してくるかもしれない。
「まだ、行ける……!」
暁はマナにカードを落としつつ、手札を一枚引き抜いた。
「呪文《ブータンの収穫》! 墓地からエグザイルじゃない《チェイサー》を一体回収するよ!」
「ここで墓地回収? ……でも、それだけなら、《フラスコビーカ》で止められるわ。《チェイサー》一体じゃ突破できないわよ」
「…………」
確かに、美琴の言う通りだ。美琴のアタッカーをすべて破壊するなんてことはできない。このターンに決めなければ、暁の負けだ。
しかし《チェイサー》を出せば、残り2マナ。手札にあるカードでは、どうしようもない。
「でも、これに賭けるしかないんだもん。やるしかないんだよ!」
ほとんど敗北に近い状況だが、暁は諦めなかった。負けに近い状況であっても、まだ負けではないから。
(まだチャンスはある……あのカードが来れば……!)
一縷の望みに縋り、暁は2枚のマナをタップする。
「《漆黒の猛虎 チェイサー》を召喚! 能力発動、山札の一番上を墓地へ!」
《チェイサー》を召喚し、山札を捲る。
捲ったカードに視線を向ける。すると彼女は、小さく、告げた。
「……勝った」
そして、そのカードを墓地へと落とす。
「《GENJI・ファイアー》を墓地へ! 火のカードが墓地に行ったから、このターン《チェイサー》はスピードアタッカーになるよ!」
「でも、それだけじゃ《フラスコビーカ》は……」
「だから、その邪魔なブロッカーを倒す! ブロッカー破壊は私の得意技なんだよ!」
暁はさらに、マナのカードを二枚、タップした。
手札のカードでは、美琴の防御を突破できない。
しかし、手札のカードで対応できないなら、手札以外のカードで対処すればいいだけのことだ。
「リサイクル2! 墓地の《連唱 GENJI・ファイアー》を2マナで唱えるよ! その効果で、相手ブロッカーを一体破壊!」
「リサイクル呪文……! 《チェイサー》の効果で狙っていたのはこれ……!?」
「その通り! 破壊するのは当然《フラスコビーカ》だよ!」
墓地からでも唱えることのできるリサイクル呪文。手札になくとも唱えられ、また《GENJI・ファイアー》は、リサイクルで唱えるコストの方が少ない。
残ったマナをすべて使い切り、墓地から放たれた《GENJI・ファイアー》が、《フラスコビーカ》を焼き払う。
「っ……!」
「これで、とどめ!」
ブロッカーのいなくなった美琴に、身を守る術はない。
最後の防衛線を打ち砕かれ、墓地から戻って来た無法者の奇襲が迫る。
「《漆黒の猛虎 チェイサー》で、ダイレクトアタック!」