二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て14」 ( No.458 )
- 日時: 2016/09/02 20:10
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
『ワンデッキデュエル:リミテッド』ルール
・約600枚のカードが入った一つのワンデッキを使用する。
・ワンデッキはハイランダー、すべてのカードが一枚ずつしか入っていない。
・ワンデッキは互いのプレイヤーで共有する。ドローなど山札に関わる行動、効果はすべてワンデッキから行う。
・墓地も共有する。使用した呪文、破壊されたクリーチャーなどは、共有する墓地へと置かれる。
かくして始まった、浬と八のワンデッキデュエル。
デッキの大きさは凄まじいまでに大きい。普通のデッキの何倍も大きいので、横転防止のため、箱に入れた状態で横倒しのままデッキは配置された。
「んじゃ、とりあえずシールドを並べて——」
カードを適当に取って、五枚のシールドと手札にする浬。そこで、彼のシールドを展開する手が止まった。
「どうしたんすか? 浬さん?」
「……おい部長」
「なに?」
「なんか変なカード混ざってないか?」
見れば浬のシールドのうち一枚だけが、異彩を放っている。明らかに一枚だけがおかしい。どうおかしいかと言えば、
「かいりくんのシールド、一枚だけ赤いです……?」
「でも、デュエマのカードの裏面とよく似てるね」
「いきなり使用禁止カードが見えるってどういうことだ!」
そう、このカードは、デザインだけならデュエマのそれと酷似したカードなのだが、裏面が赤い。おおよそのカードゲームは、裏面が統一されているからこそ、各カードの区別がつかないようにしているので、一枚だけ赤いというのは問題だ。それゆえに禁止カードにされている。
だが、しかし、
「このレギュレーションで禁止とかそういうのないから。構築段階でのルールなんて存在しないわ。禁止殿堂すべてが入り乱れているのが、このデュエルよ」
「普通の色のカードもあるだろ! なぜわざわざ使用禁止の方を混ぜる!?」
「んー、面白いから?」
「こいつ……!」
非常にムカついたが、一騎らに宥められ、ひとまず落ち着く浬。
とりあえず、今は対戦だ。一枚がS・トリガーでないことが確定したが、それはそれとして置いておき、シールド展開の後に五枚の手札を引く。
その五枚を見た瞬間に、顔が引きつる。
その後枚は、《芸術機甲サン・オブ・サンダー》《メビウスの回廊》《ボーンブレイド・ドラグーン》《ブルーザー・ドラゴン》《獣達の輪舞》。
(なんだ、この手札は……)
綺麗に五色が揃った、ドマイナーなカードばかり並ぶ手札。シナジーもなく、単体のカードパワーも高くない。そもそも、効果がよくわからないカードも多い。
こんな手札でどう戦えと言うのだろうか。
「ええぃ、こうなった以上、やるしかない! 俺のターンからだな。《獣達に輪舞》をチャージしてターン終了だ」
「自分のターンっすね。《鎧亜の紅滅コルンダ》をチャージ。終了っす」
「俺のターン」
ドローしてきたのは、《霊峰の守護者ルキア・レックス》。
3コスト、光と自然のカードで、パワーアタッカーとターン終了時にアンタップするだけの、淡白なスペックのクリーチャーだが、
(まともに使えそうなカードが来たか……)
このルールだと、引いてきたカードと、その場その場での対応がものを言う。
さらに、なにが来るのか分からないので、駆け引きよりも、単純な殴り合いに発展することの方が多いだろう。
そう考えると、早めに使えるカードを持っておくのは、決して悪くない。
「《サン・オブ・サンダー》をチャージ。終了だ」
「自分のターンっす。ドローっす」
八はなにを考えているのか分からない。あまり作戦を立てるような性格には見えないが、どう動くのか。
「《大作家ホメロス》をチャージして、2マナで《フェアリー・ライフ》を唱えるっすよ」
「デッキに一枚しかない《フェアリー・ライフ》を、このタイミングで……!」
八のマナに置かれたのは、《超次元グリーンレッド・ホール》。
そのカードを見て、ふと浬が尋ねる。
「なぁ、これって超次元は……」
「超次元ゾーンなんてものはないわ」
「やっぱりか。それだとさっきの、物凄く悲しいカードになるぞ」
超次元ゾーンからクリーチャーが呼べないので、まるで効果のないバニラ呪文に成り下がる。多色バニラ呪文だなんて、どこにも需要がない残念すぎるカードだ。
「俺のターン」
次に引いたのは《偶発と弾幕の要塞》。
多色カードの上に、重く不確実な除去。正直いらないカードだが、これをチャージすると、このターンに3マナ使えない。
なので、《ブルーザー・ドラゴン》をマナに置く。
「3マナで《ルキア・レックス》を召喚! ターン終了だ」
「じゃあ自分のターンっすね。ドローして、こっちは、《ワンケングレンオー〜全速前進〜》をチャージ。4マナで《グシャット・フィスト》っすよ! パワー3000以下のクリーチャーを破壊っす!」
「っ、出したそばから破壊されたか……!」
せっかく出した《ルキア・レックス》が即座に破壊されてしまう。これは少々痛い。
「《偶発と弾幕の要塞》をチャージ。《ジオ・コーヒーボーイ》を召喚」
果たしてスペース・チャージがどれほど機能するかが疑問だが、出さないよりはマシだろうと思いつつ、今しがた引いたばかりのクリーチャーを展開する浬。しかし、たかが1000火力とはいえ、なにが来るのか分からないこのデッキなら、火のカードさえ手札にキープしていれば、使う機会はありそうだ。
「《聖霊王アルカディアス》をチャージっす」
「強いカード来てんな……」
出せるかどうかはさておき、あんなフィニッシャーを出されたら、相当きついだろう。マナに行って助かった。
というより、八はやたら使えない進化クリーチャーを引いているような気がする。沙弓は、デッキの中身は適当だと言っていたが、進化元になるクリーチャーは入っているのだろうか。
「2マナで《秘護精ラビリオン》召喚っす。これで食い止めるっすよ!」
「ただの2マナ3000の準バニラブロッカーだけどな」
しかし、攻めようとした手が止められたのは確かだ。貧弱な《ジオ・コーヒーボーイ》が殴れなくなった。
どうしようかと思いながら、浬がカードを引くと、
「! いいカードを引いた」
この状況を打開できるとは限らないが、それでも、かなりの“当たり”を引いたことは間違いないだろう。
わりと博打気味にはなるが、ここでこれを出さない理由はない。
「《ボーンブレイド・ドラグーン》をチャージ。4マナで《アクアン》を召喚だ!」
アクアン R 水文明 (4)
クリーチャー:サイバーロード 2000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から5枚を表向きにしてもよい。その中から光と闇のカードをすべて自分の手札に加え、残りを自分の墓地に置く。
※プレミアム殿堂
やはりというかなんというか、当然のように入っているプレミアム殿堂カード。その一枚、《アクアン》。
出た瞬間に最大で五枚の手札補充が可能な、4コストのクリーチャーにはあるまじきアドバンテージの塊。その強すぎるアドバンテージの獲得が、このクリーチャーをプレミアム殿堂に押し上げた。
しかし手にはいるカードは光と闇のカードのみ。多くのカードを得るには、デッキ構築を工夫しなければならなず、このデッキで十分にその力が発揮できるかは分からない。だが、試す価値は十分にある。
浬はカードを五枚捲る。捲った五枚のカードは《電脳聖者タージマル》《ライト・ディフェンス》《スカル・チェーンソー》《霊王機ブルファリオン》《五元のロードライト》。
「五枚すべて、光、闇のカードだ」
『おぉ!』
一同がざわめく。二、三枚の手札補充でも十分だったが、五枚も手に入るとは、嬉しい誤算だ。
決して有用なカードばかりではないが、手札を多く持っている。なにが引けるか分からない。また、デッキそのものに強いカードの少ないこのデュエルなら、その膨大なハンドアドバンテージだけでも武器になる。
なんにせよ、これで形勢は一気に浬が有利になったと言えるだろう。
「自分のターンっすね。《セイント・キャッスル》をチャージっす」
しかし八は、まるで動揺を見せない。ハンドアドバンテージに莫大な差が付いたことは彼にも分かっているだろう。それでもまったく反応を見せていなかった。
そもそも彼は、この対戦における手札の重要性を理解しているのだろうか。その場その場で対処するしかないこの対戦における、手札枚数の意義を。
浬がそう思った、次の瞬間、
「6マナで《ソウル・アドバンテージ》を唱えるっすよ!」
「な……っ!?」
戦国最悪のプレミアム呪文が放たれた。